先に結論:アルコール関連の脳病変

  • 長期の飲酒では大脳・小脳(特に小脳虫部の上部)の萎縮が起こり、まれに脳梁の壊死(Marchiafava-Bignami病)が見られます
  • Wernicke脳症はビタミンB1欠乏で、乳頭体・視床内側・中脳水道周囲・第3脳室周囲のT2/FLAIR高信号が特徴です。疑ったらすぐにビタミンB1を投与します
  • メタノール中毒では両側被殻の壊死(出血を伴うことも)と視神経障害が特徴的です
  • 飲酒歴のある人で脳梁に病変があればMarchiafava-Bignami病、痙攣のある人では白質の体積の減少が報告されています。脳梁の病変は、飲酒歴がなくても低栄養などで起こりうるので、画像だけで原因を決めません
  • 飲酒による脳萎縮は、断酒で一部回復しうることがMRIの追跡研究で示されています

症例 20歳代男性 飲酒後2日続く急性の錯乱と頭痛

メタノール中毒 MRI FLAIR 横断像
引用:Radiopaedia(Methanol poisoning)

FLAIR像で、両側の被殻に左右ほぼ対称な高信号がみられます。この症例では被殻の病変はT1強調像でも高信号、T2*強調像で信号低下を示し、拡散制限も伴っており、両側被殻の出血性壊死と診断されています。

アルコール関連脳病変のまとめ

  • エタノールの一次性(直接性)障害:神経毒性(大脳皮質/小脳変性、末梢神経障害)
  • まれな二次性可逆性合併症:Wernicke脳症
  • その他、多くの間接的影響(外傷,低栄養など)

アルコール関連脳病変

  • エタノール:小脳虫部上部に強い萎縮、びまん性萎縮。
  • メタノール:両側被殻の出血性壊死
  • Wernicke脳症:乳頭体の高信号、±造影効果。56例の検討(57%が非アルコール性)では、視床内側・第3脳室周囲の病変が80%、中脳水道周囲が59%、乳頭体が45%にみられました。乳頭体・視床の造影効果はアルコール性と有意に関連し、典型部位以外(非典型部位)の信号変化は非アルコール性の例にだけみられました。

慢性エタノール中毒

  • 側脳室の対称性拡大
  • 脳溝開大、大脳縦裂/Sylvius裂の開大
  • 摂取量に依存する。
  • 白質病変(T2強調像,FLAIRで高信号):両側側脳室周囲、脳梁:孤立性/融合性、Marchiafava-Bignami病:脳梁の壊死が特徴的。ただし脳梁膨大部だけの孤立した病変が速やかに消える場合は、別の病態のことがある(Hillbom 2014)。

アルコール多飲者の脳梁・皮質下白質の病変と痙攣

所見 考え方
脳梁の腫れ・高信号 Marchiafava-Bignami病(MBD)を考える。アルコール依存に多いが、報告された153例のうち11例(7.2%)は飲酒歴のない低栄養などの例だった(Hillbom 2014)
脳梁全体が腫れて意識障害が強い MBDのA型(意識障害が強く、早期のMRIで脳梁全体がT2高信号で腫れ、予後が悪い)。部分的な脳梁病変で意識障害が軽ければB型で、予後は良好(Heinrich 2004)
脳梁膨大部だけの孤立した病変 MBDに似た別の病態の場合がある。MBDに似た病態では、孤立して速やかに消える膨大部病変、症状が少ない(痙攣、片麻痺、四肢麻痺を除く)こと、速やかな回復がMBDと異なる点だった(Hillbom 2014)
脳梁に加え、前頭〜頭頂の皮質下白質 MBDの症例で、脳梁と同じ信号の病変が両側の前頭頭頂葉の皮質下白質にも見られた報告がある(Kawarabuki 2003)。皮質下白質の病変は、MBDの広がりの一部としても考える
橋・視床のT2高信号に、皮質髄質境界の線状の造影 浸透圧性脱髄症候群(組織で確認された1例の報告、Bourgouin 1995)。アルコール依存では低栄養や電解質異常を伴うことがあり、鑑別に入れる

MBDでは、症状が出てから2週間以内に非経口でビタミンB1(チアミン)を投与された例のほうが、経過が良かったと報告されています(Hillbom 2014)。画像で脳梁の病変を見つけたら、飲酒歴や栄養状態を確認して、主治医に伝えましょう。

痙攣との関係。アルコール依存の男性では、飲酒に関連した痙攣の既往がある11人は、既往のない35人より側頭葉の白質の体積が小さいという報告があります。白質の体積の減少が痙攣の危険因子なのか、結果なのかは分かっていません(Sullivan 1996)。

アルコール性小脳変性症(アルコールによる小脳萎縮)

  • 長期の大量飲酒で、小脳虫部の前上部を中心に萎縮が起こり、ふらつき・歩行の不安定(体幹失調)で気づかれることが多いです。
  • MRIでは正中矢状断で小脳虫部上部の脳溝(小脳溝)の開大を確認します。大脳のびまん性萎縮(脳溝・脳室の拡大)を伴うこともあります。
  • アルコール性小脳変性症には確実な診断マーカーがなく、遺伝性の脊髄小脳変性症(SCA6)がアルコール性と最初に診断された報告もあります。臨床や画像が典型的でない場合はほかの原因も考えます(Namiki 2026)。

断酒による脳萎縮の回復

  • 解毒直後のアルコール依存症15例を6〜7週の断酒後にMRIで再評価した研究では、全脳の体積が平均でほぼ2%増え、増加は小脳虫部上部・中脳周囲・脳室周囲・前頭葉で目立ちました(Bartsch 2007)。
  • 85例の追跡でも、前帯状回・前頭前野・海馬などの体積減少がみられ、1週〜7か月の断酒で扁桃体以外の領域の体積が増加しました(Zou 2018)。萎縮は「元に戻らないもの」とは限らず、一部は断酒で回復しうると考えられます。

メタノール中毒

  • メタノール→ホルムアルデヒド→ギ酸→炭酸ガス、水と分解される。ギ酸がanion gap アシドーシスを惹起。
  • 被殻、視神経に選択的毒性。
  • メタノールを含む製品:不凍液、ペンキ除去剤、コピー液
  • 両側被殻の出血性壊死。
  • 白質病変:出血性皮質下壊死、しばしば視神経も障害。

関連記事:メタノール中毒のMRI画像所見のポイント

Wernicke脳症

  • 造影T1強調像:乳頭体の造影効果
  • T2強調像:第3脳室周囲、視床内側、中脳水道周囲灰白質の高信号。古典的三徴(意識障害・失調・眼球運動障害)が揃うのは一部にすぎず(26例の検討で初診時38%)、原因の約半数はアルコール以外(低栄養、消化管手術後など)である。

関連記事:Wernicke脳症(ウェルニッケ脳症)とは?MRI画像診断のポイントは?

参考)画像診断ポケットガイド 脳Top100診断

アルコールと脳の変化でよくある疑問(Q&A)

Q. お酒をやめれば脳の萎縮は戻りますか?
A. 断酒後の追跡MRIで脳の体積が一部増えることが報告されています(Bartsch 2007、Zou 2018)。ただし、どこまで戻るかは人によって異なります。

Q. 「アルコール脳症」とは何ですか?
A. 決まった一つの病名ではなく、Wernicke脳症、Marchiafava-Bignami病、肝性脳症、小脳変性など、飲酒に関連した脳の障害をまとめて指すことが多い言い方です。

Q. 脳梁の病変はMarchiafava-Bignami病だけですか。
A. 違います。MBDに似た脳梁病変を作る病態があり、孤立した膨大部の病変が速やかに消える場合はMBDと区別されます(Hillbom 2014)。

Q. 飲酒の習慣がなくても、Marchiafava-Bignami病になりますか。
A. まれですが、あります。CT・MRIで確認された153例のうち11例(7.2%)は飲酒歴のない例でした。低栄養や長引く嘔吐などビタミンB1の不足を伴う状況が関係します(Hillbom 2014)。

Q. 痙攣を起こしたアルコール多飲者で、MRIでは何を見ますか。
A. 脳梁や皮質下白質の病変、Wernicke脳症の所見、脳萎縮、外傷後の変化などを確認します。痙攣の既往がある人で側頭葉の白質の体積が小さかったという報告があります(Sullivan 1996)。

ふらつき・物忘れ・意識の変化など気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。

関連記事:DWIで視床に高信号を認める疾患の鑑別診断|梗塞・静脈血栓症・Wernicke脳症など

参考文献

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  4. Zuccoli G, Gallucci M, Capellades J, et al. Wernicke encephalopathy: MR findings at clinical presentation in twenty-six alcoholic and nonalcoholic patients. AJNR Am J Neuroradiol. 2007;28(7):1328-31. PubMed
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  9. Hillbom M, Saloheimo P, Fujioka S, et al.. Diagnosis and management of Marchiafava-Bignami disease: a review of CT/MRI confirmed cases. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2014;85(2):168-73. PubMed
  10. Heinrich A, Runge U, Khaw AV. Clinicoradiologic subtypes of Marchiafava-Bignami disease. J Neurol. 2004;251(9):1050-9. PubMed
  11. Kawarabuki K, Sakakibara T, Hirai M, et al.. Marchiafava-Bignami disease: magnetic resonance imaging findings in corpus callosum and subcortical white matter. Eur J Radiol. 2003;48(2):175-7. PubMed
  12. Bourgouin PM, Chalk C, Richardson J, et al.. Subcortical white matter lesions in osmotic demyelination syndrome. AJNR Am J Neuroradiol. 1995;16(7):1495-7. PubMed
  13. Sullivan EV, Marsh L, Mathalon DH, et al.. Relationship between alcohol withdrawal seizures and temporal lobe white matter volume deficits. Alcohol Clin Exp Res. 1996;20(2):348-54. PubMed

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