そもそもなぜ腎腫瘍の鑑別が必要か?
・治療方針が異なるから。
・手術(腎癌)なのか化学療法(悪性リンパ腫、転移)か。
・腎摘除術(腎癌)なのか腎尿管全摘除術(腎盂癌)か。
・治療薬の選択(化学療法、免疫療法、分子標的薬)が異なるから。
腎腫瘍の検査法
・エコーで病変を拾い上げ→CTで診断する。
・CTが腎腫瘍の画像診断の中心である。
CTでは、病変の検出、性状診断やリンパ節転移、遠隔転移の検索。原則的に単純CTに引き続き、ダイナミックCTを撮影する。
・MRIはCTの代替と考える。ダイナミックCTで診断が確定しない場合やヨードアレルギーが有る場合、腎機能不良例など。偽被膜の検出には優れる。
ダイナミックCTで何をみるか?
・単純 CT→石灰化や脂肪の検出
・皮髄相:30~80秒前後(早期皮髄相;30~35秒)→腎動静脈評価、腫瘍の血流評価
・腎実質相:90~130秒後 腎実質が均一に造影される→病変の検出
・排泄相:3~5分後 造影剤が排泄され腎盂が観察される→腎盂進展の評価
(腎癌取扱い規約 第4版)
腎腫瘤を見たときの思考順序
Step1:嚢胞(cyst)か充実(solid)か、何とも言えない(interminate)で分ける。
Step2:
・嚢胞(cyst)→Bosniak分類へ ・充実(solid)→膨張性(expansive)か、浸潤性(infiltrative)かで分類。 ・何とも言えない(interminate)→フォロー
充実性腫瘤の場合
・膨張性か浸潤性かで分ける。
膨張性(expansive)
・腎細胞癌(淡明細胞型>>乳頭状>嫌色素性) ・腺腫(オンコサイトーマ、後腎性腺腫(Metanephric adenoma)など) ・血管筋脂肪腫(AML) ・悪性リンパ腫 ・平滑筋腫、平滑筋肉腫 ・Wilms腫瘍
※ほとんどは、RCC。次にAMLを考える。
膨張性腫瘍 →脂肪がある→AML →脂肪がない→不均一濃染、早期濃染+washout→淡明細胞型腎癌 →脂肪がない→単純CTで高吸収、均一な造影→脂肪の少ないAML、乳頭状、平滑筋腫、後腎性腺腫
浸潤性(infiltrative)
・腎細胞癌(肉腫様変化を伴ったRCC、乳頭状(type2)、集合管癌(ベリニ管癌)など)は6%。 ・移行上皮癌(浸潤性腎盂癌) ・扁平上皮癌 ・転移 ・悪性リンパ腫 ・腎盂腎炎、腎梗塞
※基本的に悪性なので、いずれにしろ手術の方向。
腎に多発する楔状低吸収域の鑑別診断
・急性腎盂腎炎 ・腎梗塞 ・転移性腎腫瘍 ・リンパ腫 ・腎挫傷 ・血管炎
何とも言えない(interminate)場合
・サイズが小さい腫瘍 ・石灰化腫瘍 ・Bosniak分類のCategory ⅡF、Ⅲの嚢胞。 ・非典型的AML
・充実か嚢胞かも分からなかったり、上記のようになんとも言えない場合は、フォローする。小さい腎癌は予後がよいのでフォローして問題なし。
腫瘤のサイズによる良悪性の頻度
<3cm→25%は良性。 >4cm→90%は腎細胞癌