ESPRESSO腹部救急画像診断 復習症例2

症例2

【症例】50歳代女性
【主訴】早朝からの心窩部〜右季肋部痛(20日後に腹腔鏡下胆嚢摘出術が予定されている)
【身体所見】発熱なし、vital sign stable、腹部:下腹部正中に手術瘢痕、心窩部から右季肋部にやや硬、圧痛あり、筋性防御あり、反跳痛なし、murphy陽性。
【データ】AST/ALT=460/257、ALP 340、γ-GTP 286、T-Bil 0.85、D-Bil 0.20、WBC 7300、CRP 0.03

画像はこちら

3時間後、無治療にて腹痛の消失あり。

造影剤アレルギーのある方で腹部単純CTのみが撮影されています。

単純CTでは肝内胆管拡張を認めています。
(※periportal collarが併存しているように見えます。両者が併存しているようです。厳密な区別は困難です。)

また胆石および、総胆管結石を認めており、総胆管結石嵌頓による胆道の閉塞が疑われます。

採血時には、まだビリルビン値が上昇していませんが、閉塞性黄疸(もしくは前駆状態)が疑われます。

 

もともと胆石があり、20日後に胆摘の手術予定でしたので、一旦外科外来受診し、総胆管結石があるということで、ERCPなどの適応含め、その後消化器内科受診となりました。

しかし、最初のCT検査から3時間くらいが経過した時点で症状が消失しました。

最初のCT検査から4時間後のCTです。

先ほど認めていた総胆管結石が消失しています。

また、肝内胆管の拡張も消失しています。

この間、ERCPなど処置はしておりません。

総胆管結石の自然落石が疑われます。

診断:総胆管結石の自然落石、胆嚢結石

※胆石は残存しているため、数日後(元々の予定を早めて)に外科で胆摘が施行されました。

※腹部症状を来す重要な結石
総胆管結石・胆石
尿管結石
虫垂結石

関連:総胆管結石の画像診断のポイント!症状、原因、治療は?

その他所見:胆嚢底部に壁肥厚があり、胆のう腺筋腫症が疑われます。(胆摘後の病理所見でやはり胆のう腺筋腫症がありました。)

症例2の動画解説

追記:排石前の画像で胆嚢の緊満感についてはないと動画内で解説しているのですが、排石後の画像では虚脱しており、緊満感については著明ではありませんがあったのだと考えられますのでこちらで修正させていただきます。(コメントありがとうございます。)

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

過去のコメント
  1. 表現に難がありましたが(素人丸出し)、問題箇所については指摘できました。
    最初は、拡張した胃に目が行ってしまい、胃捻転?胃下垂による障害があるの?なんて
    色々脱線しちゃいましたが、最終的には胆管結石と胆管の拡張に気付くことができました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >最終的には胆管結石と胆管の拡張に気付くことができました。

      よかったです!同じ日に自然落石が起こり、その前後でCTが撮影されていたというある意味貴重な症例です!
      before→afterがあるとその違いがわかりやすいですね。

  2. いつものことですが、表現も勉強になります(画像だけでなく、臨床現場で説明もしやすくなると思います)。

    自然落石、覚えておきます。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >自然落石、覚えておきます。

      ERCPなどを行っていないので、自然ですね!

  3. 肝内胆管拡張を指摘できていませんでした。
    筋性防御はあるが反跳痛なしというのは、腹膜や腹直筋にまで炎症をきたしているわけではなく、痛みで腹直筋が硬くなっているだけということでしょうか。腫大した胆嚢が腹直筋のすぐ下の腹膜に接しているように見えますが、炎症所見は特になさそうということでよろしいでしょうか。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >筋性防御はあるが反跳痛なしというのは、

      このあたりは診察する人の感じ方もあると思うので参考程度ですね。

      >腫大した胆嚢が腹直筋のすぐ下の腹膜に接しているように見えますが、

      今回は胆嚢炎ではなく総胆管結石で痛みが生じています。

      ※腹部症状を来す重要な結石
      ▶総胆管結石・胆石
      ▶尿管結石
      ▶虫垂結石

      です。

  4. 今回の問題とは違いますが,最近救急でCT陰性の胆嚢結石の症例を経験しました.胆管拡張があればある程度わかりやすいですが,胆嚢の緊満感などはなかなか評価に難しいところもありますね.
    今回は結石を指摘しえたので,わかりやすかったです.
    また復習させていただきます.

    1. アウトプットありがとうございます。

      >今回の問題とは違いますが,最近救急でCT陰性の胆嚢結石の症例を経験しました.

      胆道のCT陰性結石は、
      胆嚢結石>総胆管、肝内胆管
      と胆嚢内の方が多いので、CTで見えない→結石がない!とは言えないのは胆嚢ほどその頻度が高いです。

      総胆管、肝内胆管で胆嚢よりも見えることが多いのは過去の感染が関与していると考えられています。

  5. お世話になっております。
    今回、肝内胆管拡張(総胆管結石)の症例ですが、門脈の両サイドに浮腫状の低信号が見られることから、門脈周囲の浮腫(periportal collar sign)があると判断してもよろしいでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >門脈の両サイドに浮腫状の低信号が見られることから、門脈周囲の浮腫(periportal collar sign)があると

      そうですね。今回は総胆管結石で、胆管炎は臨床所見からもはっきりせず、肝内胆管拡張がベースだと思いますが、おっしゃるように門脈周囲の浮腫(periportal collar sign)も混載していると思われます。

  6. すいません、あともう一点、胆嚢底部に限局性の壁肥厚あるように見えますが、胆嚢腺筋腫症でしょうか?

    1. >胆嚢底部に限局性の壁肥厚あるように見えます

      確かにありそうですね。オペもされているので、手術記録をチェックし本当にあったのかも確認して追記しておきます。

      1. オペレコをチェックしたところ、胆のう腺筋腫症がやはりありました。追記しておきます。

  7. 正確な回答とまでいきませんでしたが注目点は合っていたので良かったです。
    胆石もすぐ分かるような大きいものではなかったので一枚ずつ丁寧に見ることで分かりました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >胆石もすぐ分かるような大きいものではなかった

      そうですね。小さな胆石でしたが、高吸収部位があったので診断することができました。
      カルシウム部位がなければ(コレステロール胆石)の場合、CTではわからないこともあるので注意が必要ですね。

  8. 本症例では急性胆のう炎、急性胆管との診断にはなりますでしょうか?発熱がなかったり、採血結果から炎症反応上昇なく急性胆のう炎、胆管炎とはいえないのでしょうか??

    1. アウトプットありがとうございます。

      >発熱がなかったり、採血結果から炎症反応上昇なく急性胆のう炎、胆管炎とはいえないのでしょうか??

      おっしゃるとおりです。

      http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/TG/CPGs_TG2013_Ch05.pdf

      のガイドラインにもあるように胆管炎というには、やはり

      ・発熱(悪寒戦慄を伴うこともある)
      ・血液検査:炎症反応所見

      のAの項目をまずは満たす必要があります。

      胆汁に感染を合併したものが胆管炎であり、
      今は単に総胆管結石が嵌頓して、このときは胆汁うっ滞が起こっているだけですので、
      胆管炎とはいえないですね。

  9. 早朝から腹痛があったのでおそらく朝食はそんなにとらずに救外など来院されたものと思いますが、胃が拡張して、胃内容物の停滞があるのは総胆管結石嵌頓により消化管の蠕動運動が抑制されているからと考えればよいでしょうか。
    本筋とは関係ない質問すいません。

    1. コメントありがとうございます。

      >早朝から腹痛があったのでおそらく朝食はそんなにとらずに救外など来院されたものと思います

      カルテ確認したところ、この日の最終の食事は
      朝6時半 ホットドッグ、コーヒー、ヨーグルト
      となっていました。その後は食事は摂取していないようです。

      >胃が拡張して、胃内容物の停滞がある

      若干拡張はしていますが、胃内容物の停滞があるというのは言い過ぎな気がします。

      胃内に残渣があるのは、
      http://medicalimagecafe.com/case/Ck3acqtV.html

      これくらいの状態が持続している場合であり、

      >総胆管結石嵌頓により消化管の蠕動運動が抑制されている

      もちろんこの影響もあるかもしれませんが、胃については有意にとらなくてよいと考えます。

  10. 素人の質問で申し訳ありません。
    胃と腎に挟まれた部位の膵臓がやや腫大しているように感じたのですが正常な所見でしょうか。

    1. コメントありがとうございます。

      そうですね、年齢の割にやや膵臓が大きく見えますが、正常範囲と考えます。
      周りに炎症所見も認めていません。

  11. > すいません、あともう一点、胆嚢底部に限局性の壁肥厚あるように見えますが、胆嚢腺筋腫症でしょうか?

    今回、この所見を指摘できた方は非常に少ないのではないかと思います (^-^;
    「すごいな~(*‘∀‘)」と思う一方で、よく見ると、所見としては「重箱の隅」ではなさそうで、
    「オーダーしたら、その範囲にある臓器には必ず目を通す」という「イロハのイ」の再確認になりました (^▽^)/

    1. アウトプットありがとうございます。

      >今回、この所見を指摘できた方は非常に少ないのではないかと思います (^-^;
      「すごいな~(*‘∀‘)」と思う一方で、よく見ると、所見としては「重箱の隅」ではなさそう

      単純CTなのもあり、やや指摘しにくいかも知れませんがおっしゃるように重箱の隅ではないですね!

  12. 胆管炎と診断してしまいました。しっかり疾患の定義を確認しておく必要を感じました‥

    1. アウトプットありがとうございます。

      胆管炎の診断基準など再度チェックしましょう。

  13. 胆嚢腺筋腫症を見落としたのは悔しいです…
    骨盤内の直腸両側に、小さい円形の高吸収が規則正しく配列しているように見えますが、なんでしょうか?
    下腹部正中に手術瘢痕ありとのことで、婦人科の手術でもなされたのでしょうか?子宮はあるように見えますが、両側卵巣が同定できないので卵巣摘出後?のペッツ?と迷走しております。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >胆嚢腺筋腫症を見落としたのは悔しいです…

      ここはそんなに重要な所見でもないので、あまり悔しがらなくてもいいかもしれません(^_^;)

      >骨盤内の直腸両側に、小さい円形の高吸収が規則正しく配列しているように見えますが、なんでしょうか?

      尿管結石でもないので、かといってここだけ動脈硬化があるのも不自然なので静脈石だと思われます。
      卵巣は50歳代ですので、単純CTではわからないことはしばしばあります。

  14. 今回は大外れでした。。
    時間がなく急いでいるとだめですね。もう一回じっくりと見たいと思います。。

    1. アウトプットありがとうございます。

      結石自体は単純の方がわかりやすいですが、肝内胆管の拡張は造影の方がわかりやすいので、今回ちょっとわかりにくかったかもしれませんね。

  15. 今回はうまく所見が取れました。ところで、自然落下した石はどこに行ったのかしら、と探してみると、横断像で31/76,冠状断像で23/45の小腸内の高吸収のものでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >探してみると、横断像で31/76,冠状断像で23/45の小腸内の高吸収のものでしょうか?

      確かにこれっぽいですね。落下したあとの石は探していませんでした。ありがとうございます。

  16. 本日もありがとうございました。
    結石は造影CTよりも単純CTの方が見やすそうですね。(という意図もあって単純CTが提示されたのかなと思いました)
    今回は石灰化を含む部分があったのでCTで見やすかったですが、見にくい場合は超音波でも併せて確認が必要そうですね。

    p.s. 先生のストレッチの話を読んでいて思いましたが、何事もはじめは”意識すること”が大切なのでしょうね。。慣れている放射線科の先生は”無意識に”正しい読影が出来るのだと思うのですが、その裏にはたくさん”意識して”努力をした過去があるはずで。。ということを伝えようとしてくださったのだと思いました。(違ったらすみませんが、、)

    1. アウトプットありがとうございます。

      >結石は造影CTよりも単純CTの方が見やすそうですね。(という意図もあって単純CTが提示されたのかなと思いました)

      おっしゃるとおりです。
      造影CTを撮影すれば単純もカバーできると思ったら大間違いですね。(一部の方は造影CTは単純CTに勝る、MRIはCTに勝ると思い込んでおられることがあるので注意が必要です)
      むしろ総胆管結石が単純CTで見られるのに造影すると見えにくくなることがあることが知られています。
      造影する場合も、必ず単純を撮影した後で、とするべきです。

      >その裏にはたくさん”意識して”努力をした過去があるはずで。。ということを伝えようとしてくださったのだと思いました。(違ったらすみませんが、、)

      メルマガへのツッコミありがとうございます。
      同じ感想をラインでもいただきました。
      少しそのような意図もありましたが、ありのままを書いていたら結果的にそうなったな、という感じです(^_^;)

  17. お世話になります。いつも大変勉強させて頂いております。
    左大腿骨頭下端の前方外側の筋肉内ないしは筋肉辺縁にある比較的低吸収の腫瘤構造は何を見ているのか、ご教授願いませんでしょうか(slice73)。
    脂肪腫にしてはやや高吸収でしょうか…