ESPRESSO腹部救急画像診断 復習症例3

症例3

【症例】30歳代男性
【主訴】1日前からの右下腹痛、腰部痛
【身体所見】意識清明、BP 142/103、BT 36.5℃、SpO2 96%(RA)、腹部:平坦、右側腹部〜下腹部に自発痛、圧痛あり、筋性防御あり。
【データ】WBC 5700、CRP 3.71、尿潜血+、尿亜硝酸塩-、白血球-

画像はこちら

単純CTで右の腎盂の拡張を認めています。
また右腎の周囲には脂肪織濃度上昇を認めています。

右尿管を尾側に追っていくと、腎下極レベルで尿管結石を認めていることがわかります。

冠状断像では、右の腎杯〜腎盂の拡張および左と比べてやや右の腎腫大を認めています。
また左腎結石も認めています。

尿管結石が疑われる症例で造影CTが撮影される事は稀ですが、この方は尿管結石の他、虫垂炎の可能性も疑われたため造影CTが施行されています。

造影CTにおいても右腎周囲の脂肪織濃度上昇を認めています。
また、左の腎臓と比べて、右腎の実質の造影効果がやや不良です。造影遅延が起こっていると考えられます。

いずれも尿管結石による変化と考えられます。

診断:右尿管結石

関連:尿管結石の症状、CT画像診断のポイントは?

その他所見:左腎結石あり。

症例3解説動画

症例3補足動画

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。


過去のコメント
  1. 今回は画像をみれば(尿所見もあり)一発ですが、
    右下腹部の急性腹症で尿管結石は少なくとも第一には浮かばないと思うので、注意が必要かなと思いました。

    下腹部痛なら尿定性をとりあえずとってみる、というのもありかもしれないですね。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >右下腹部の急性腹症で尿管結石は少なくとも第一には浮かばないと思うので、注意が必要かなと思いました。

      そうですね。通常、今回のように虫垂炎か尿管結石かで迷われることは少ないかと思います。

      ・尿管結石の既往がある。
      ・痛がり方が半端ない。
      ・来院が早朝である。
      ・エコーで水腎症を認めている。
      ・男性である。
      ・ロキソニン内服が著効した。

      などがあれば典型ですかね。あとは尿検査で、場合によっては診断を確定させるためにCTが撮影される、と言う流れかと思います。

  2. お疲れ様です。
    今回は割と簡単な感じですぐにわかったのですが、

    「右腎の実質の造影効果がやや不良で造影遅延が起こっている」
    のは画像上ではわかりました。

    尿管結石の、影響で造影不良が起こるメカニズムがわかないのですが…

    ご指導お願いします。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >尿管結石の、影響で造影不良が起こるメカニズム

      尿管結石が存在すると尿路の狭窄ー閉塞が起こり尿路の圧が上昇する
      →動脈→尿細管から濾過される量が、対側と比べて相対的に減少する。
      →造影不良が起こる。

      のが機序だと思われます。

  3. 脂肪織濃度上昇や腎腫大など気付かなかった所見や挙げようか迷った所見もあったのでやっぱり所見としてとっていいと分かってよかったです。
    大動脈解離や他の疾患を疑った場合は造影CTを取ることもありますが、若手~中年男性の早朝の側腹部痛の方が尿検査赤血球++で、単純CTorレントゲンというプラクティスにどう思われますか。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >若手~中年男性の早朝の側腹部痛の方が尿検査赤血球++で、単純CTorレントゲンというプラクティスにどう思われますか。

      良いと思います。朝4時とか5時とかよく来られますよね。
      レントゲンでわからない場合は追加でCTとなることもありますね。

  4. 尿管結石症で良かったんですね。色々と深読みしすぎましたが、問題箇所の指摘は出来たということで・・・。
    尿管結石の影響で造影遅延が起こるのですね。初めて知りました。今回もありがとうございました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >尿管結石の影響で造影遅延が起こるのですね。

      そうですね。結石に限らず尿管腫瘍などで尿路が狭窄ー閉塞していると造影遅延が起こります。

  5. 右腎の造影効果が悪い気がしたのですが、そういうことだったのですね。
    機序まで理解することができ、勉強になりました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      尿路の閉塞や狭窄がある場合に、造影遅延が起こります。
      尿管結石疑いの方に、造影CTが撮影されることは稀かと思いますが、偶発的に尿管結石が認められる場合があり、このような所見を示すことがありますので覚えておいてください。

  6. 尿管結石の所見を見つけることができたこともあり何故造影するのだろうかと思いましたが疑われる所見は一つではないから一つ見つけて満足してはいけないと思いました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >何故造影するのだろうかと思いましたが疑われる所見は一つではないから一つ見つけて満足してはいけないと思いました。

      そうですね。CTを撮影するならば、尿管結石の場合は、基本は単純CTで診断しますのが、
      今回のように他の疾患も疑われる場合は造影もされることがあります。
      しかし、この際に単純CTもしっかり撮影しておくことが大事ですね。

  7. いつも配信を楽しみにしております。楽しみ以前臨床的に尿管結石(突然発症の側腹部痛あり)の方で、単純CTで結石がみつからず、造影CTでは造影遅延のみで(もちろん腎梗塞や、大動脈病変などもありません)結局尿管結石の疑い(CT陰性結石か排石後)と考えた症例があったのですが(帰宅時は痛み軽快しておりました)、CT陰性の結石は経験されますか?感度はほぼ100%に近いとおもわれるのですがどうお考えでしょうか。

    1. コメントありがとうございます。

      >CT陰性の結石は経験されますか?感度はほぼ100%に近いとおもわれるのですがどうお考えでしょうか。

      おっしゃるように臨床的に極めて尿管結石が疑わしいのに、thin sliceを作ってもどうしても同定できない!ということはありましたが、それが陰性結石なのかは確認できませんね(;゚ロ゚)

      基本胆石とは異なり、尿管結石はほぼ100%同定できると思います。

  8. 初歩的な質問ですみません。
    結腸拡大と小腸の浮腫があるように思ったのですが間違いでしょうか。
    またあるとすれば尿管結石とどのような関わりがあるのでしょうか(疼痛によるサイトカイン…?)

    1. コメントありがとうございます。

      おっしゃるようにやや結腸の拡張があり、上行結腸にはニボー像を認めており、下痢症状があるのかもしれませんが、尿管結石とは関係がないと思われます。

  9. 今日もコメントスタディをしています (^^)

    「尿管結石が存在すると尿路の狭窄ー閉塞が起こり尿路の圧が上昇する
    →動脈→尿細管から濾過される量が、対側と比べて相対的に減少する。
    →造影不良が起こる。」

    めちゃんこ分かりやすいですね(^^♪
    関連ページの「画像診断まとめ」への記載も是非ご検討ください(^▽^)/

    1. コメントスタディいいですね。

      ありがとうございます。追記しました。

  10. こんにちは。
    検査所見から否定的なのですが、
    腸管拡張があったこともあり、尿管結石→水腎症→腎盂腎炎→腹腔内への炎症の波及→腸管の麻痺性イレウス
    のようなストーリーを勝手につくってしまいました。
    まだまだ基本ができていないことを痛感しました。がんばります!
    膀胱入口部付近にも石灰化が認められる(スライド166)のですが、これも尿管結石でしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >腸管拡張があったこともあり、尿管結石→水腎症→腎盂腎炎→腹腔内への炎症の波及→腸管の麻痺性イレウス
      のようなストーリーを勝手につくってしまいました。

      尿管結石→水腎症→腎盂腎炎ここまでは炎症反応高値やCVA tenderness陽性、尿所見などからあるとは思いますが、
      そこから腹腔内への炎症波及というのはあまり考えられないですね。腎臓は後腹膜臓器ですので。

      ただ、結腸の拡張が少し目立つのと液貯留を認めていますので記載はありませんでしたが、下痢があるのかもしれませんね。

      >膀胱入口部付近にも石灰化が認められる(スライド166)のです

      非常に尿管が下の方では追いにくい症例ですが、膀胱に入るのはスライド162あたりだと思います。

  11. 復習しています。いつもすみません。
    これはAFBN(造影効果不良から)や腎盂腎炎(周囲の脂肪織濃度上昇)とは言えないのでしょうか。

    1. アウトプットありがとうございます。

      おっしゃるように腎盂腎炎やAFBNでも造影不良を来しますが、今回は

      ・尿路感染を疑う臨床所見・尿所見がない。
      ・尿管結石があり、尿路が停滞している。

      点から違うと判断できます。

  12. たくさんの症例を経験させてもらってきたので、今回の症例はあれかしら?これかしら?と頭の中を巡る疾患が増えたような感じです。ごろ~さんの頭の中はどうなっているのでしょう。
    今回の症例は上行結腸の拡張とニボー像みたいなものもあって、む?と思いましたが、腎盂尿管の拡張が目に入り、尿管結石まで見つけることができました。腎杯も少し拡張しているとのことですが、腎杯の拡張の有無はどう見たらいいですか。また164~167/177で小さな石灰化が多数見られていますが、動脈の石灰化でしょうか、静脈石でしょうか。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >たくさんの症例を経験させてもらってきたので、今回の症例はあれかしら?これかしら?と頭の中を巡る疾患が増えたような感じです。

      それはよかったです。

      >腎杯も少し拡張しているとのことですが、腎杯の拡張の有無はどう見たらいいですか。

      今回は少し拡張していますが、腎盂と腎臓の間にあるのが腎杯です。
      腎杯も正常だと見えないものなので、見えると言うことは拡張していると考えることができます。

      関連
      https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/5349

      >また164~167/177で小さな石灰化が多数見られていますが、動脈の石灰化でしょうか、静脈石でしょうか。

      動脈硬化も目立たない30歳代の方ですので、いずれも静脈石でよいですね。

      また、コメントが反映されなかった件ですが、同じコメントを2度されていたためスパムボックスに入っていました。
      救出しましたので、今後は大丈夫だと思いますが、それでもたまになぜかコメントが反映されないトラブルがありますね・・・。

      1. つながったようで、安心しました。ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。