ESPRESSO腹部救急画像診断 復習症例1

症例1

【症例】40歳代男性
【主訴】2日前から左側腹部痛
【データ】WBC 9900、CRP 14.33

画像はこちら

下行結腸に3層構造を保った壁肥厚を認めています。

周囲には脂肪織濃度上昇あり、また周囲筋膜の肥厚を認めています。

下行結腸には炎症を起こしていると考えられる憩室を認めており、下行結腸憩室炎が疑われます。

冠状断像でも左側に脂肪織濃度上昇・筋膜の肥厚を認めています。
左右差を見れば明らかです。

診断:下行結腸憩室炎

※保存的に加療されます。

関連:結腸憩室炎のCT画像診断のポイントは?症状、治療は?

その他:とくになし。

症例1の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

過去のコメント
  1. いつも症例提示ありがとうございます。
    今回の、症例を見て左側結腸の、浮腫がすぐにわかったのですが、憩室までは分からなかったので虚血性腸炎と判断してしまいました。
    腹部CT初心者なので浅はかな判断でした。
    憩室がわかりにくい場合の憩室炎と
    虚血性腸炎の鑑別はどのようにしたら良いでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >憩室がわかりにくい場合の憩室炎と
      虚血性腸炎の鑑別はどのようにしたら良いでしょうか?

      憩室炎の場合は、結腸の壁肥厚が局所的なのに対して、虚血性腸炎の場合は、下行結腸〜S状結腸に広範に認める事が多いです。
      あとは、虚血性腸炎の場合は中年女性、血便といった臨床情報が典型的です。

  2. 憩室炎自体を見つけることは出来ませんでしたが、状況として憩室炎が疑われ、
    アキシャルで脂肪部分にむけてガスが通り抜けているようにみえたので破裂かと勘違いしました。
    もっと注意深く観察しようと思います。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >アキシャルで脂肪部分にむけてガスが通り抜けているようにみえたので破裂かと勘違いしました。

      今回は穿通はしていないですが、穿通がないかをチェックすることは重要ですね。

  3. ちょっと読影が甘くなってしまいました.
    細かいところもしっかり読影できるように注意しようと思います.

    1. アウトプットありがとうございます。

      局所的な腹膜炎は生じていますが、腹膜垂炎の場合は、基本的に腸管に炎症波及せず、腸管の浮腫性変化は認めません。
      また復習しておいてください。

  4. 憩室が見えなかったこと、年齢が40歳と比較的若めであったことから憩室炎と診断できませんでした(憩室炎は高齢者とばかり考えていました)。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >憩室炎は高齢者とばかり考えていました

      若い方も結構あります!
      参考までに、すぐ役立つ救急のCT・MRI改訂第2版の書籍では掲載されている3症例とも40歳台です。

    2. 参考までに大腸の憩室自体の頻度ですが、
      40歳以下 10%以下
      50歳台  30%
      70歳台 50%
      80歳以上 70%

      と報告されています。
      ※大腸憩室炎の疫学・診断と治療,診断と治療 100:957-961,2012

  5. 炎症を起こしている憩室とその周辺組織の変化、signには気付けました。←大進歩です
    ただ、ぷつぷつと見える?airが腸間膜に続いているような気がして、深読みしすぎました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >ぷつぷつと見える?airが腸間膜に続いているような気がして

      これは条件を変えないとちょっと見にくかったですね。

  6. 同じ読み間違えをされる方はやっぱりいるものですね(虚血性腸炎)。

    既に先生の返信も書かれていて、なるほどと思いました。
    勉強になりました。またお願いします。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >同じ読み間違えをされる方はやっぱりいるものですね(虚血性腸炎)。

      そうですね。意外と多いですね(;゚ロ゚)

  7. 虚血性腸炎と間違えた一人です。
    憩室が見つけられず・・・
    他の人コメント、先生の返信から虚血性腸炎と憩室炎の臨床的な違いも分かりました。参考にしたいです。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >他の人コメント、先生の返信から虚血性腸炎と憩室炎の臨床的な違い

      そうですね、臨床的にも画像的にも異なりますね。

  8. いつも有用なコンテンツありがとうございます。

    放射線技師なのですが、憩室の見つけ方がよくわかりません。
    脂肪組織の白濁まではわかるのですが、その原因がいつも突き止められません。
    当院では腹痛でも即造影にはならない事が多く、単純での憩室の見つけ方、
    また非常に簡単な質問で申し訳ないのですが憩室炎と腫瘍の鑑別方法もなどをご教授頂ければ幸いです。

    よろしくお願い致します。

    1. コメントありがとうございます。

      造影でも単純でも憩室の見つけやすさはそれほど変わりません。
      結腸からポコッと飛び出しており内部にairを含むもの(便塊や糞石、バリウムがふくまれていることもありますが)が憩室です。

      憩室炎が起こっている場合、憩室炎を起こしている憩室そのものが
      ①同定できる。
      ②同定できない。
      ③糞石が嵌頓している。

      の3パターンがあります。今回は①に該当します。

      >憩室炎と腫瘍の鑑別方法

      腫瘍との鑑別はCTのみでは厳しいこともありますが、
      憩室炎など炎症の場合は、今回のように3層構造が同定できるのに対して、腫瘍の場合は3層構造が同定できず均一に造影されることが多い
      点である程度は鑑別できます。

  9. 症例の提示ありがとうございます。
    鑑別疾患である虚血性腸炎の画像所見ですが、造影の増強効果が強くなる場合もあるのでしょうか。ご教授ください。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >虚血性腸炎の画像所見ですが、造影の増強効果が強くなる場合もある

      粘膜の造影効果の増強は、憩室炎、虚血性腸炎ともにあるかと思います。

      両者の鑑別は、

      ・3層構造を保った壁肥厚の範囲(憩室炎は局所的)、
      ・炎症を起こしている憩室の有無

      ・あとは臨床症状、年齢、性別

      が重要です。

  10. 回答後、直ぐに解答、解説を送って下さり直後に画像を見直し非常に勉強になりました。他の方からの質問への解答も参考になり、憩室炎と虚血性腸炎との鑑別もよく理解できました。ありがとうございました。

    1. コメントありがとうございます。

      >回答後、直ぐに解答、解説を送って下さり直後に画像を見直し非常に勉強になりました。

      そうなんです(^o^)

      我ながらこのシステムよいですね!

  11. 3年目の若手放射線技師です。
    下行結腸に局所の3層構造とdirty fat signがあるなあ…までは分かりましたが、なんの病気だっ!とは出てこなかったですね…恥ずかしいです。

    画像に見慣れてる分、ある程度の異常なら見つけられるのですが、各病気の特徴的な所見を学んで行った方が良いのですね。
    検査で忙しい中でも、気になった所見は後で答え合わせすることって大切なんですね。

    1. コメントありがとうございます。

      >画像に見慣れてる分、ある程度の異常なら見つけられる

      まずはここが重要ですね。
      見慣れていない人は、異常にも気付きませんので。

      >検査で忙しい中でも、気になった所見は後で答え合わせすることって大切なんですね。

      忙しい場合はなかなか難しいかもしれませんが、気になる症例はメモして結果を追うことは大事ですね。

  12. 素晴らしい企画です。開業医で時間の都合上今直ぐ参加は難しいですが、次回必ずや参加させていただきたいと存じます。また、教えていただけると幸いです!

    1. 隈井先生
      温かいコメント頂きありがとうございます。
      また次回開催するときはメールさせていただきます!

  13. 今回は特に悩みませんでしたが「悩まず正解する」ことよりも「鑑別と比較していく」ことの方が数段上ですね(╹◡╹)

    コメントも参考に、虚血性腸炎・腹膜垂炎も思い出しておきます(^^)/

    1. アウトプットありがとうございます。

      まずは典型例を頭にたたき込んでいきましょう。

  14. 今回も虚血性腸炎と憩室炎で悩みました。

    冠状断像でみると下行結腸に広範に三層構造を保ったままの壁肥厚があるので虚血性腸炎?かな
    と思いつつ、
    でも憩室があり、その周辺で脂肪織の濃度上昇あるので憩室炎(腹膜垂炎もあるように見えましたが、よく見るとありませんでした。回答には書いてしまいました)
    だろう、と思い結果、
    憩室炎と疑いました。

    憩室炎の周りは局所的な炎症所見があっても、今回のように
    下行結腸に広範囲に炎症が波及するものなんですね。

    まだまだ迷います。

    1. アウトプットありがとうございます。

      憩室炎の場合はやはり炎症を起こしている憩室周囲に強い所見がありますので、
      上下方向の結腸に炎症波及による壁肥厚を認めてもやはり遠くなるほどその所見は軽微になっていきます。

  15. >憩室炎の場合は、結腸の壁肥厚が局所的なのに対して、虚血性腸炎の場合は、下行結腸〜S状結腸に広範に認める事が多いです。
    >あとは、虚血性腸炎の場合は中年女性、血便といった臨床情報が典型的です。

    憩室炎との鑑別で虚血性腸炎の話が出ていたので質問させてください.
    虚血性腸炎はS状結腸近位,脾彎曲部などのwatershed areaに多いと教科書的にも記憶しているのですが,管理人さんがおっしゃるように,実際の症例では下行結腸〜S状結腸まで広範に肥厚を認める虚血性腸炎が多くいつも疑問でした.
    一箇所の分水嶺の虚血なら局所的に壁肥厚が起こるはずなのに,どうしてかと.
    もともと下腸間膜動脈の動脈硬化で全体的に血流が低下しているところに,脱水などで全体的に血流が落ちるからでしょうか.

    1. アウトプットありがとうございます。

      >実際の症例では下行結腸〜S状結腸まで広範に肥厚を認める虚血性腸炎が多くいつも疑問でした.
      一箇所の分水嶺の虚血なら局所的に壁肥厚が起こるはず

      広範に肥厚を認めながらも、やはり分水嶺に局所的に壁肥厚が目立つこともあると思います。
      分水嶺の脳梗塞のようにDWIで綺麗に境界に高信号とはならないので、難しいところですが・・・。

  16. 前腎筋膜、後腎筋膜、円錐筋膜など用語をしっかり覚えなければなりませんね

    1. そうですね。筋膜というひとくくりでもとりあえずはよいかもしれませんが、正確に表現するにはこれらの解剖名も出てくる必要がありますね。

  17. 復習症例ありがとうございます。よろしくおねがいいたします。
    憩室と思うが、腹膜垂の可能性も否定できたかったため、鑑別で憩室炎≫腹膜垂炎とは思いましたが自信がありませんでした。
    しかし、上の方へのコメントで
    ゛腹膜垂炎の場合は、基本的に腸管に炎症波及せず、腸管の浮腫性変化は認めません。”
    から、憩室炎でよいと納得できました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      腹膜垂炎の場合は腸管外のみ脂肪織濃度上昇があり、腸管には壁肥厚を認めない点で憩室炎と診断可能です。
      また炎症を起こしている憩室を認めない点も確認できればなおさらです(憩室炎→必ずしも炎症を起こしている憩室そのものを同定できるわけではありませんが)。

  18. 復習症例をありがとうございます。
    他の方も書いていますが、憩室がはっきりしないように思われましたが、下行結腸の三層構造を保った壁肥厚や周囲脂肪織濃度上昇、周囲筋膜の肥厚などがあり、腸炎にしては短い範囲から憩室炎と診断しました。解説動画を見たあと、また問題画像をスクロールして憩室が複数見えてきました。
    引き続きよろしくお願いいたします。

    1. アウトプットありがとうございます。

      憩室炎の憩室は同定できないこともしばしばあります。

      >憩室がはっきりしないように思われましたが、下行結腸の三層構造を保った壁肥厚や周囲脂肪織濃度上昇、周囲筋膜の肥厚などがあり、腸炎にしては短い範囲から憩室炎

      ですのでこの思考の流れでOKです。

      引き続きよろしくお願いします。

  19. 筋膜肥厚や脂肪織濃度上昇、3層構造の保たれた壁肥厚など 単純、造影、平衡層とも大きな変化がないように思いましたが、
    それぞれの撮像方法での違いを教えて下さい。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >筋膜肥厚や脂肪織濃度上昇、3層構造の保たれた壁肥厚など 単純、造影、平衡層とも大きな変化がないように思いました

      基本的に違いはありませんが、造影した方が層構造が明瞭になりわかりやすいことが多いです。

  20. 回答とは直接関係ないのですが、冠状断スライス25(おそらく横断面スライス48)の上行結腸にある丸い構造物が気になったのですが、何か教えていただけると幸いです。スライスの切れ方によるものでしょうか・・。

    1. アウトプットありがとうございます。

      回腸が合流する回盲部ですね。
      回盲部がこのように見えることはよくあるのですが、確かにそれにしては周りの脂肪層が目立ちますので、小さな脂肪腫があるのかもしれません。