先に結論:縦隔の区分(CT横断像)と好発疾患

  • 縦隔は縦隔上部・前縦隔・中縦隔・後縦隔に分けます。縦隔腫瘍取扱い規約(2009)ではCT横断像で区分し、後縦隔は椎体前縁から1cm後ろより背側です
  • 前縦隔は胸骨の裏で心臓・大血管より前、中縦隔は心臓・気管・食道がある中央、後縦隔は胸椎のわきの部分です
  • 前縦隔は胸腺腫・胸腺癌・悪性リンパ腫・奇形腫・胸腺嚢胞、中縦隔はリンパ節腫大・前腸嚢胞(気管支原性・食道嚢胞)、後縦隔は神経原性腫瘍が代表です
  • 評価には単純CTで石灰化・脂肪、造影CTで充実部、MRIで嚢胞か充実かの区別を組み合わせます(国際的にはITMIGの3区分も使われます)

縦隔の分類

  • 縦隔は肺を除くすべての胸部内臓および構造を含む領域。
  • 前方は胸骨,後方は胸椎体前面,上方は胸郭入口部,下方は横隔膜で囲まれた領域と定義される。
  • 前縦隔・・・気管前面から心臓後面で形成される線より腹側
  • 後縦隔・・・椎体前縁より1cm背側の線より背側。
  • 中縦隔・・・これらに挟まれる領域

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☆縦隔腫瘍取扱い規約第1版が2009年に発行され、縦隔の区分法については新しく CT の横断像をその基準としている。この区分で病理確定した縦隔腫瘤445病変を分類した検討では、胸腺上皮性腫瘍の99%が前縦隔、縦隔内甲状腺腫の82%が縦隔上部に入り、中縦隔腫瘤の約3分の2は嚢胞、後縦隔腫瘤の約8割は神経原性腫瘍でした。

縦隔上部
  • 縦隔の上縁から左腕頭静脈が気管正中線と交差する高さまでの縦隔。
  • 前外側縁は内胸動静脈外縁,腕頭静脈外側縁または鎖骨下動脈第一分節外側縁。
  • 後外側縁は横突起の外縁で後胸壁に立てた垂線。
上縦隔の最下スライス(ここより上部が縦隔上部)

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前縦隔
  • 左腕頭静脈が気管正中線と交差する高さから下方,横隔膜に至る高さの縦隔。
  • 前縁は前胸壁後面で境界され,後縁は頭尾方向の位置および左右により異なるとされている。
  • 左は左腕頭静脈前縁,左鎖骨下動脈,大動脈後縁,肺動脈幹,左主肺動脈前縁,上肺静脈,下肺静脈,心臓後縁より形成。
  • 右は上大静脈前縁,上肺静脈,下肺静脈,心臓の後縁により形成される
中縦隔
  • 左腕頭静脈が気管正中線と交差する高さから下方,横隔膜に至る高さの縦隔であり,心臓,左腕頭静脈,上大静脈の後方,食道および気管,主気管支とその周囲とされている。
  • 後縁は椎体の前縁から 1 cm 後方とする。
後縦隔
  • 左腕頭静脈が気管正中線と交差する高さから下方,横隔膜に至る高さの縦隔椎体の周囲とするが,その前縁は椎体の前縁より 1 cm 後方と定められている。
  • 外側縁は,横突起外縁で後胸壁に立てた垂線とする。

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こちらにも詳しくまとめました。→【CT画像・図あり】縦隔とは?解剖・含まれる臓器をわかりやすく解説!

前縦隔・中縦隔・後縦隔とは?(含まれる臓器)

国際的に使われるITMIGの区分では、縦隔をCT横断像で血管前区画(前縦隔)・臓器区画(中縦隔)・椎体傍区画(後縦隔)の3つに分けます(Carter 2014、Carter 2017)。境界の考え方は上の規約とよく似ています。

  • 前縦隔(血管前区画):胸骨の裏から心膜・大血管の前まで。胸腺、脂肪、リンパ節、左腕頭静脈などがある。
  • 中縦隔(臓器区画):心臓・心膜、上大静脈、上行大動脈・大動脈弓・下行大動脈、肺動脈、気管・主気管支、食道、胸管、リンパ節などがある。
  • 後縦隔(椎体傍区画):胸椎のわきの軟部組織。交感神経幹や肋間神経の根元があり、神経原性腫瘍が多い。

区分を決めるのは、腫瘤がどこから出たかで鑑別をしぼり、生検や手術の計画を立て、診療科の間で共通の言葉で話すためです(Carter 2014)。

縦隔疾患の好発部位・腫瘍の鑑別診断

前縦隔 胸腺腫、胸腺癌、悪性リンパ腫、成熟奇形腫、悪性胚細胞性腫瘍、縦隔内甲状腺腫、胸腺嚢胞、心膜嚢胞、リンパ管腫
(uncommon)胸腺脂肪腫、神経原性腫瘍、副甲状腺腺腫、傍神経節腫瘍、大網ヘルニア
中縦隔 悪性リンパ腫、縦隔内甲状腺腫、前腸嚢胞(気管支原性嚢胞、食道嚢胞)、心膜嚢胞、リンパ節腫大、食道裂孔ヘルニア
(uncommon)神経原性腫瘍、副甲状腺腺腫
後縦隔 神経原性腫瘍
(uncommon)椎体腫瘍、髄膜瘤、神経腸管嚢胞、奇形腫

関連記事)胸部CTで前縦隔腫瘤!鑑別診断は?経過観察は?

縦隔腫瘍のCT、MRI画像で見るべきポイント

  • 単純CT、造影CT(後期相も)、MRIを撮影する。
  • 被膜、隔壁、石灰化、脂肪、充実成分、嚢胞、
  • 壊死、出血について評価する。

単純CT

  • 石灰化(CT値>100HU)脂肪(CT値<-30HU) を評価。

造影CT

  • 充実成分、嚢胞、壊死について評価。

MRI

T1WI T2WI
被膜、隔壁 low low
脂肪 high high
嚢胞 low 強いhigh
壊死 low high
出血 出血の時期によりさまざま
  • 嚢胞が疑われるときはADC高値(拡散制限がないこと)を確認。
  • 脂肪成分の評価のためにT1WI fsを追加。
  • いずれの腫瘍でもT2WIが最も情報が多い。前縦隔腫瘍127例の検討では、第一診断の正診率はCT 61%、MRI 56%、両方を合わせて67%で、多くの腫瘍でCTはMRIと同等以上でした。ただし胸腺嚢胞はMRIの方が正診率が高く(46% vs 71%)、出血や炎症で充実性に見える嚢胞の確認にはMRIが有用です。

縦隔の区分でよくある疑問(Q&A)

Q. 前縦隔とは?
胸骨の裏側で、心臓や大血管より前の部分です。成人では胸腺が脂肪に置きかわって残っており、胸腺腫・胸腺癌・悪性リンパ腫・胚細胞性腫瘍などの好発部位です。

Q. 後縦隔とは?
胸椎の前縁より少し後ろから背側、胸椎のわきの部分です。後縦隔の腫瘤は神経原性腫瘍が大部分を占めます。

Q. 縦隔の区分は1つではないの?
胸部X線の側面像による古い区分、上の規約の区分、ITMIGの3区分などがあります。現在はCT横断像で決める方法が主流です。

実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの胸部CTの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。全体の見方は胸部CTの縦隔の解剖にまとめています。

参考文献

  1. Fujimoto K, Hara M, Tomiyama N, et al. Proposal for a new mediastinal compartment classification of transverse plane images according to the Japanese Association for Research on the Thymus (JART) General Rules for the Study of Mediastinal Tumors. Oncol Rep. 2014;31(2):565-572. PubMed
  2. Carter BW, Benveniste MF, Madan R, et al. ITMIG Classification of Mediastinal Compartments and Multidisciplinary Approach to Mediastinal Masses. Radiographics. 2017;37(2):413-436. PubMed
  3. Tomiyama N, Honda O, Tsubamoto M, et al. Anterior mediastinal tumors: diagnostic accuracy of CT and MRI. Eur J Radiol. 2009;69(2):280-8. PubMed
  4. Carter BW, Tomiyama N, Bhora FY, et al. A modern definition of mediastinal compartments. J Thorac Oncol. 2014;9(9 Suppl 2):S97-101. PubMed

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