先に結論:真菌性副鼻腔炎の主なタイプとCT・MRI

  • 真菌性副鼻腔炎(副鼻腔真菌症)は、アスペルギルスやムコールなどのカビ(真菌)による副鼻腔炎で、真菌が組織に入り込む「浸潤性」と入り込まない「非浸潤性」(菌球・アレルギー性)に分けられます
  • 菌球(fungus ball):最も多いタイプ。片側の上顎洞に多く、CTで洞の中心にある点状・塊状の石灰化(高吸収)、MRIのT2強調像で黒い(低信号)のが特徴。手術(内視鏡)で取り除けば治ります
  • 急性浸潤性:糖尿病・抗がん剤治療中など免疫が低下した人に起こり、真菌が血管を通って眼窩・頭蓋内へ急速に広がる命にかかわるタイプ(ムコール・アスペルギルス)。副鼻腔の外の脂肪のにごりや粘膜の造影不良が早期の手がかりです
  • 慢性浸潤性:数か月かけて骨を壊しながら広がり、腫瘍と紛らわしいタイプ。アレルギー性:喘息を伴う若い人に多く、CTで洞を広げる高吸収の粘液が特徴です

※片側の鼻づまり・悪臭のある鼻汁、目の腫れや見えにくさ・顔の痛みがあるときは、耳鼻咽喉科を早めに受診してください。

真菌性副鼻腔炎(fungal sinusitis)

  • アスペルギルス、ムコールなど(免疫低下状態、糖尿病)
  • 急性浸潤性、慢性浸潤性、慢性肉芽腫性浸潤性、菌球、アレルギー性の5つに分類(慢性肉芽腫性は主にアフリカなどでみられる)、各々の移行や合併の場合もある。浸潤型の診断は、画像で副鼻腔炎を確認したうえで、病理で粘膜・粘膜下・血管・骨の中に菌糸を証明することによります(deShazoの診断基準)。
タイプ 経過・背景 画像の特徴 治療の柱
菌球 非浸潤性。免疫正常の人にも 片側の洞の中心に石灰化(CT高吸収・T2低信号) 内視鏡手術
アレルギー性(AFRS) 非浸潤性。若年、喘息・アトピー 洞を広げる高吸収の粘液、T2で無信号 手術と局所ステロイド
急性浸潤性 4週間未満。免疫低下・糖尿病 洞周囲脂肪のにごり、骨欠損、眼窩・頭蓋内への進展 緊急の治療(抗真菌薬・外科的切除)
慢性浸潤性・肉芽腫性 3か月以上かけて局所に広がる 骨破壊を伴う腫瘤、腫瘍と紛らわしい 外科的切除と抗真菌薬

(経過の区切りはChakrabarti 2009、菌球・AFRSの治療はGrosjean 2007、Chua 2023による)

菌球(寄生型)慢性真菌性副鼻腔炎

  • 真菌性鼻副鼻腔炎の中では比較的頻度が高い病態。
  • 菌糸に凝血塊や白血球などが絡まり、真菌塊(fungus ball)を形成する。
  • ほとんどが片側性。
  • 上顎洞が最も多く、次いで蝶形骨洞。篩骨洞・前頭洞はまれ。
  • 患者の免疫状態が低下した場合、浸潤性病変に移行する可能性あり。
  • 35例の検討では上顎洞75%・蝶形骨洞25%で、69%にCTで微小石灰化がみられた。全例が内視鏡手術で治り、再発はなかった(Lop-Gros 2016)。

菌球(寄生型)慢性真菌性副鼻腔炎の画像所見

  • 菌球は洞中心部に位置し、内部の菌糸を反映する鉄分、マンガン、集簇する石灰化などの常磁性物質を反映して、CTで高吸収、T2WIで低信号を示すのが特徴。(アスペルギルスの発育には鉄が必要)
  • 菌球の石灰化はほとんどが副鼻腔の中心部に球状に存在するのに対し、非真菌性の慢性副鼻腔炎の石灰化は多くが辺縁部に存在する。

症例 70歳代男性

引用:Radiopaedia

左上顎洞に広範な粘膜肥厚あり。中心部にCTで高吸収、T1WIでは等信号、T2WIで低信号域を認めています。

アスペルギルスによる副鼻腔炎を疑う所見です。

急性浸潤性真菌性副鼻腔炎

  • 進行が速く、重篤化しやすい特徴がある。臨床経過は4週間以内であり、免疫不全者、糖尿病、ステロイド投与など、免疫抑制状態の患者に血管浸潤を起こすとされている。多数の限局性骨破壊を認め、悪性腫瘍との鑑別が難しい場合もあり。
  • 初期症状は頭痛、発熱など。進行に伴い、眼痛、眼瞼腫脹、眼筋麻痺、視力低下などの重篤な症状を呈することがある。

急性浸潤性真菌性副鼻腔炎の画像所見

  • 隣接する洞内に浮腫や軟部影を伴い、進行すると骨破壊を伴うことが多い。上顎洞周囲の脂肪織の濃度上昇(periantral fat infiltration)は、骨破壊がはっきりしない段階で唯一の所見となることがあり、最も早期の画像所見となりうる。高リスク患者のCTを検討した研究では、上顎洞周囲脂肪織・骨の欠損・眼窩浸潤・鼻中隔潰瘍・翼口蓋窩・鼻涙管・涙嚢の7項目のうち1項目でも異常があれば感度95%・特異度86%、2項目以上で特異度100%と報告されている(Middlebrooks 2015)。
  • 菌球と同様の理由でT2WIで低信号病巣として認め、不均一な造影効果を呈する。
  • 眼窩先端部アスペルギルス症の場合は、視神経にT2WI低信号、DWI高信号、神経周囲に造影効果を呈する点が重要。

アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎(AFRS)

  • 若年者に好発。
  • アトピー性皮膚炎や喘息の合併が多い。
  • 鼻腔ポリープを特徴とする。
  • 真菌に対する1型および3型アレルギー反応、ならびに2型炎症により生じる鼻副鼻腔炎。
  • 診断には古くからBent and Kuhnの基準(Ⅰ型アレルギー、鼻ポリープ、特徴的なCT所見、組織に浸潤のない好酸球性ムチン、真菌の証明)が使われ、5項目すべてを満たす必要がある。治療は手術と局所ステロイドが中心(Chua 2023)。

アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎(AFRS)の画像所見

  • CTで好酸球性ムチン(eosinophilic mucin、従来のアレルギー性ムチン)を反映した副鼻腔を充満する高濃度域を認める。
  • MRIではT1WIで淡い高信号から低信号、T2WIで無信号を示す。
  • やや片側優位の分布や左右差を示すことが多い。

真菌性副鼻腔炎でよくある疑問(Q&A)

Q. アスペルギルスとムコールはどう違いますか?

ムコールはコントロール不良の糖尿病や免疫抑制の患者に多く、血管に入り込んで急速に進みます。CT所見は非特異的で、早期のMRIでは造影されない鼻甲介(black turbinate sign)が手がかりになるとされています(Safder 2010)。菌球を作るのは主にアスペルギルスです。

参考文献

  1. Aribandi M, McCoy VA, Bazan C. Imaging features of invasive and noninvasive fungal sinusitis: a review. Radiographics. 2007;27(5):1283-1296. PubMed
  2. deShazo RD, O’Brien M, Chapin K, et al. A new classification and diagnostic criteria for invasive fungal sinusitis. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 1997;123(11):1181-1188. PubMed
  3. Grosjean P, Weber R. Fungus balls of the paranasal sinuses: a review. Eur Arch Otorhinolaryngol. 2007;264(5):461-470. PubMed
  4. Chakrabarti A, Denning DW, Ferguson BJ, et al. Fungal rhinosinusitis: a categorization and definitional schema addressing current controversies. Laryngoscope. 2009;119(9):1809-1818. PubMed
  5. Middlebrooks EH, Frost CJ, De Jesus RO, et al. Acute invasive fungal rhinosinusitis: a comprehensive update of CT findings and design of an effective diagnostic imaging model. AJNR Am J Neuroradiol. 2015;36(8):1529-1535. PubMed
  6. Silverman CS, Mancuso AA. Periantral soft-tissue infiltration and its relevance to the early detection of invasive fungal sinusitis: CT and MR findings. AJNR Am J Neuroradiol. 1998;19(2):321-325. PubMed
  7. Lop-Gros J, Gras-Cabrerizo JR, Bothe-González C, et al. Fungus ball of the paranasal sinuses: Analysis of our serie of patients. Acta Otorrinolaringol Esp. 2016;67(4):220-5. PubMed
  8. Chua AJ, Jafar A, Luong AU. Update on allergic fungal rhinosinusitis. Ann Allergy Asthma Immunol. 2023;131(3):300-306. PubMed
  9. Safder S, Carpenter JS, Roberts TD, et al. The “Black Turbinate” sign: An early MR imaging finding of nasal mucormycosis. AJNR Am J Neuroradiol. 2010;31(4):771-4. PubMed

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