くも膜顆粒は人間ドック(脳ドック)や健康診断のMRIやCTで、偶然見つかり、一見病変のように見えることがあります。
今回は別名パキオニ小体ともいわれる、くも膜顆粒(英語でarachnoid granulation)、について、画像や役割を含めまとめました。
くも膜顆粒とは?
脳や脊髄は3層の膜に覆われて守られていますが、外側から2層目のものをくも膜といいます。
また、外側の膜とこのくも膜の間には隙間があり、この隙間をくも膜下腔といいます。
くも膜下腔は脊髄液で満たされてる状態で、このくも膜下腔の血管が切れたりして出血を起こしてしまい、脳の脊髄液に血液が入り込むことを、「くも膜下出血」といいます。
静脈洞と言われる静脈が集まる太い静脈があります。
脈絡叢(読み方は「みゃくらくそう」左右の側脳室・第三脳室・第四脳室にそれぞれある、血管に富んだ組織のこと)で作られた髄液は、くも膜下腔からこの静脈洞へと流れます。
この髄液と静脈の間を取り持つのがくも膜顆粒です。
つまり、くも膜顆粒は頭蓋内静脈洞へのくも膜下腔の突出のことです。
この丸は何?などと感じてしまいがちな、この丸い部分がくも膜顆粒なんです。
くも膜顆粒のCT.MRI画像所見
くも膜顆粒はくも膜下腔と連続するためCT及びMRIにおいて脳脊髄液と同じ信号を示します。
つまり、
- CTでは髄液と同じ程度の低吸収
- MRIでは髄液と同じ程度にT2強調像では高信号
を示す分葉状の構造物として存在します。
特にCTでは骨に溶骨性病変のように見えるのが特徴です。
ただし、硬膜やその近くに生理的石灰化として認める場合、くも膜顆粒が原因と言われており、この場合は骨硬化像として認めることになります。
MRIの少し細かい話になりますが、T1強調像やFLAIR像では静脈洞のflow void内に低信号として存在するためこのくも膜顆粒は同定しにくいとされます。
一方でT2強調像ではflow void内に高信号の脳脊髄液貯留として描出されるため異常な結節様構造として同定することができます。
症例 70歳代 女性 T2強調像
この丸の部分、これがくも膜顆粒です。写真はMRIのT2強調像です。
中には静脈洞内の血栓(詰まり)や骨腫瘍と間違われることもありますが、画像を撮影した際の13%に見られ、病的ではありません。
このくも膜顆粒の実際のCTとMRI画像を見てみる→くも膜顆粒のCT,MRI画像
症例 70歳代 女性 CISS
別の画像で見てみると、白く見えるこれもくも膜顆粒です。
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くも膜顆粒の好発部位は?
このくも膜顆粒ですが、横静脈洞からS状静脈洞にかけてしばしば見られます。
その他、上矢状洞部などに見られます。
また、造影MRIの3次元gradient echo法では上矢状洞内に局所的な造影欠損としても高頻度に見られます。
くも膜顆粒の役割とは?
くも膜顆粒は静脈洞にできると申しましたが、突起する部分は静脈洞なものの、そもそもどこから突起するかといえば、最初にご説明したくも膜下腔の中から突起するため、くも膜顆粒の中身は脊髄液なのです。
くも膜顆粒には髄液の吸収、排出の役目があります。
脳の脊髄液はとても重要で、あらゆる神経の栄養機能も兼ね備えているため、くも膜顆粒から吸収排出されることによって栄養も行き渡るというわけです。
くも膜顆粒の大きさとしては、だいたい1cm未満のものがほとんどですが、稀に巨大化してしまい頭痛症状を伴うものもあります。
また幼少期にはなく、比較的高齢になり現れるもので、これがあるからどうするといった処置はありません。
動画で画像をご説明したものもありますので、合わせてご覧ください。