スライス厚とMPR CT画像の作り直し

CTの画像は「撮ったまま」ではなく、集めたデータから計算で作り直したもの(再構成)です。研修医のハジメくん、技師のマルオさんと一緒に、スライス厚・MPR・再構成関数が画像のどこを変えるのかを整理します。

先に結論

  1. CTの再構成とは、撮ったデータから計算で画像を作ること。スライス厚は画像1枚の厚さ、MPRは向きを変えて作った断面、再構成関数は画像のなめらかさ・くっきりさを決める計算の種類。
  2. 薄い画像は小さいものまで見えるがざらつく。厚い画像はなめらかだが、小さいものが薄まってぼやける。
  3. 薄いデータが残っていれば、冠状断・矢状断・斜めの断面は撮り直さずに作れる。肺や骨はシャープな関数、おなかや脳はやわらかい関数で作ることが多い。

目的から読む: 再構成とは / スライス厚とは / 薄い画像と厚い画像の違い / MPRとは / 再構成関数とは / 使い分け

CTの再構成とは? 冠状断は撮り直さなくても作れる

CTは体のまわりからX線を当てて集めたデータを、コンピュータで計算して画像にしています。この「データから画像を作る計算」が再構成です。同じデータから、厚さ・向き・なめらかさの違う画像をあとから作れます。

ハジメハジメ(研修医)
先生、さっきのCT、横断像しか届いていなくて…。冠状断で見たいので、撮り直しをお願いしたほうがいいですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
撮り直すと、患者さんがもう一度被ばくしますね。
ハジメハジメ(研修医)
あ、そうですよね…。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
その前に、ひとつ考えてみましょう。CTの画像は、撮った瞬間にできあがっていると思いますか?
ハジメハジメ(研修医)
はい、そう思っていました。違うんですか?
マルオマルオ(技師)
撮り直しはいりませんよ!撮ったときの薄いデータが残っていれば、冠状断はあとから作れます。いま作りますね!
ハジメハジメ(研修医)
えっ、あとから作れるんですか?画像は撮ったときに決まっているんだと思っていました。
図1 CTの画像ができるまで 体のまわりからX線で集めたデータを、計算(再構成)して画像にします。厚さ・向き・なめらかさは、この計算の段階で選べます。
図1 CTの画像ができるまで 体のまわりからX線で集めたデータを、計算(再構成)して画像にします。厚さ・向き・なめらかさは、この計算の段階で選べます。

スライス厚とは? 画像1枚の厚さのこと

スライス厚とは、CT画像1枚が体のどれだけの厚さをまとめて表しているかです。いまのCTは、撮影で集めたデータ(生データ)から、すき間のない薄い横断画像を計算で作れます。5mmなどの厚い画像は、生データから直接その厚さで作るほか、薄い画像を何枚分かまとめて作ることもできます。

ハジメハジメ(研修医)
5mmの画像って、5mmおきに撮っているんだと思っていました。あいだは写っていないのかと…。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
食パン1斤を、とても薄く切って全部とっておくところを思い浮かべてください。

5mmの画像は、その薄い切れを何枚か重ねて1枚にしたもの、と考えるとわかりやすいです。あいだが抜けているわけではありません。

図2 薄いデータを重ねて1枚にする 生データから作った、すき間のない薄い横断画像を何枚分か重ねて平均し、5mmの画像1枚にまとめる例です(生データから直接5mmで作ることもあります)。
図2 薄いデータを重ねて1枚にする 生データから作った、すき間のない薄い横断画像を何枚分か重ねて平均し、5mmの画像1枚にまとめる例です(生データから直接5mmで作ることもあります)。

薄いスライスと厚いスライスの違い ざらつきと小さいもの

薄い画像は小さいものまで見えますが、ざらつき(ノイズ)が多くなります。厚い画像はたくさんのデータを平均するのでなめらかですが、小さいものはまわりと混ざって薄まり、ぼやけます(Goldman 2007)。どちらが良い悪いではなく、目的で使い分けます。

ハジメハジメ(研修医)
じゃあ、いちばん薄い画像だけ見ていれば安心ですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこがよくある思い込みです。
  • 1mmの画像はざらざらして、肝臓の中のわずかな濃さの差は、厚い画像のほうが見やすいことがあります。
  • 逆に、細い血管や小さな結節は、厚い画像では薄まって見えにくくなります。

この「薄まる」しくみは#06 部分容積効果で、図と合わせて見られます。

図3 スライス厚で見え方が変わる 同じ場所を1mmと5mmで比べた模式図です。1mmは細い血管までくっきりですがざらつき、5mmはなめらかでも小さな点が薄れます。
図3 スライス厚で見え方が変わる 同じ場所を1mmと5mmで比べた模式図です。1mmは細い血管までくっきりですがざらつき、5mmはなめらかでも小さな点が薄れます。

MPRとは? データのブロックを好きな向きで切る

MPR(多断面再構成)とは、薄い横断のデータを積み重ねたブロックから、冠状断・矢状断・斜めの断面を作り直す方法です。撮り直しはいりません。もとのデータが薄いほど、どの向きでもきれいに作れます(Dalrymple 2005)。

ごろ〜ごろ〜(指導医)
薄いデータの束は、体の形をしたブロックのようなものです。ブロックなら、縦にも横にも、斜めにも切れますね。

横断・冠状断・矢状断の向きのおさらいは、#02 横断・冠状断・矢状断で見られます。

図4 データのブロックを好きな向きで切る(MPR) 薄いデータを積んだブロックは、横断・冠状断・矢状断のほか、斜めの面でも切れます。これを多断面再構成(MPR)と呼びます。
図4 データのブロックを好きな向きで切る(MPR) 薄いデータを積んだブロックは、横断・冠状断・矢状断のほか、斜めの面でも切れます。これを多断面再構成(MPR)と呼びます。
マルオマルオ(技師)
撮る側からひとこと!MPRは、もとのデータが薄いほどきれいにできます。
ハジメハジメ(研修医)
え、どうしてですか?
マルオマルオ(技師)
5mmの画像から冠状断を作ると、上下の向きにがたがたの段ができちゃうんです!
ハジメハジメ(研修医)
腎臓のふちが階段みたいになるのは、上下の向きは5mmごとにしか情報がないから、ですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そのとおりです。

データの1つ1つの小さな箱が、縦・横・高さでほぼ同じ大きさ(等方性ボクセル)に近いほど、どの向きで切ってもなめらかになります。だから、薄いデータを残しておくことが大事なんです。残しておく期間や形は施設で決まっているので、必要なら早めに技師さんに相談しましょう。

図5 もとのデータの厚さとMPRのきれいさ 同じ腎臓の冠状断を比べた模式図です。1mmのデータから作るとふちがなめらかで、5mmのデータからだと上下の向きに段ができます。
図5 もとのデータの厚さとMPRのきれいさ 同じ腎臓の冠状断を比べた模式図です。1mmのデータから作るとふちがなめらかで、5mmのデータからだと上下の向きに段ができます。

MPRのほかに、明るいものだけを重ねて血管を追うMIPや、立体に見せるVRなどの作り方もあります。それぞれの使い分けはMPR・MIP・MinIP・VRとはで、血管・気道・骨の例と合わせて見られます。

再構成関数とは? なめらかさとくっきりさを選ぶ計算

再構成関数(カーネル、フィルタ)とは、データから画像を作るときに使う計算の種類です。やわらかい関数はざらつきが少なく、臓器のわずかな濃さの差が見やすい画像になります。シャープな関数は輪郭がくっきりしますが、ざらつきも強くなります(Goldman 2007)。

ハジメハジメ(研修医)
再構成関数って、ウィンドウを肺野条件や骨条件に変えるのと同じことですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
似ているようで別のものです。
  • ウィンドウは、できあがった画像のCT値に白黒をどう割り当てるかです。
  • 再構成関数は、その手前の画像そのものの作り方です。

骨のふちをくっきりさせたいならシャープな関数、おなかの臓器の濃さの差を見たいならやわらかい関数、と「何を見分けたいか」で選びます。ウィンドウのしくみは#01 CT値とウィンドウで見られます。

図6 やわらかい関数とシャープな関数 背骨のあたりを2つの関数で作った模式図です。やわらかい関数はなめらかで臓器の差が見やすく、シャープな関数は骨の輪郭がくっきりです。
図6 やわらかい関数とシャープな関数 背骨のあたりを2つの関数で作った模式図です。やわらかい関数はなめらかで臓器の差が見やすく、シャープな関数は骨の輪郭がくっきりです。
マルオマルオ(技師)
ここは気をつけてほしいところです!

厚さや向きは、送った薄い画像からでも作り直せます。でも再構成関数を変えるには、撮影したときの生データ(raw data)から計算し直す必要があります。

マルオマルオ(技師)
生データは装置に短い期間しか残らないことが多いので、別の関数の画像がほしいときは早めに声をかけてください!
図7 再構成関数とウィンドウの違い 生データから関数を選んで画像を作り、できた画像にウィンドウで白黒を割り当てます。関数は作るとき、ウィンドウは見るときに選びます。
図7 再構成関数とウィンドウの違い 生データから関数を選んで画像を作り、できた画像にウィンドウで白黒を割り当てます。関数は作るとき、ウィンドウは見るときに選びます。

ざらつきを減らす別の計算として、逐次近似再構成(IR)もあります。しくみと画像の質感の変わり方は逐次近似再構成(IR)とはで整理しています。

スライス厚と再構成関数の使い分け 送られてくる画像の組み合わせ

多くの施設では、全体をざっと見る厚い画像と、細かいところやMPR用の薄い画像を分けて送ります。体の長さ40cmを撮ると、5mmなら80枚、1mmなら400枚になります(計算)。肺や骨はシャープな関数、おなかや脳はやわらかい関数で作ることが多く、同じ撮影から関数の違うシリーズが並ぶこともあります。

見たいもの 厚さの目安 関数の目安
全体をざっと見る・臓器の濃さの差 厚め(5mm前後) やわらかい
小さな結節・細い血管・MPRを作る 薄い(1mm前後) 目的による
肺の細かい構造・骨のふち 薄い シャープ

厚さ・関数の決め方は施設や装置で異なります。上の表は代表的な目安です。

ハジメハジメ(研修医)
400枚は、1枚ずつ全部めくるのは大変ですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
だから、まず厚い画像で全体を見て、気になるところを薄い画像やMPRで確かめる、という順番がよく使われます。

どのシリーズが何の厚さ・関数なのかは、シリーズ名や画像の情報欄で確かめておきましょう。

マルオマルオ(技師)
はい、冠状断できました!薄い画像のシリーズも一緒に送っておきますね!
ハジメハジメ(研修医)
ありがとうございます!撮り直しを頼むところでした…。
図8 スライス厚と画像の枚数 体の長さ40cmを撮ったときの画像の枚数を、スライス厚ごとに比べたグラフです。5mmなら80枚、1mmなら400枚になります。
図8 スライス厚と画像の枚数 体の長さ40cmを撮ったときの画像の枚数を、スライス厚ごとに比べたグラフです。5mmなら80枚、1mmなら400枚になります。

CTの厚さ・再構成・ウィンドウ・造影の時相までを1ページで振り返るならCT検査の基本まとめ、薄いスライスが読影をどう変えたかはマルチスライスCT(MDCT)とスライス厚で読めます。次の#08では、本当はないものが写るアーチファクトを扱います。

よくある勘違い

Q. 冠状断が見たいときは、撮り直しが必要?

薄いデータが残っていれば、撮り直さずに作り直せます(MPR)。まず技師さんに相談します。

Q. スライス厚は薄いほど、いつでも良い?

薄いと小さいものは見えますが、ざらつき(ノイズ)が増え、枚数も多くなります。目的で使い分けます。

Q. 再構成関数とウィンドウは同じもの?

ちがいます。ウィンドウはできた画像の白黒の割り当て、再構成関数は画像そのものの作り方(なめらかさ・くっきりさ)です。関数を変えるには生データからの作り直しが要ります。

今日のまとめ

  1. CTは撮影で集めた生データから、計算で画像を作っている(再構成)。厚い画像は生データから直接作るほか、薄い画像をまとめて作ることもある。
  2. 薄い画像は細かいがざらつく、厚い画像はなめらかだが小さいものが薄まる。
  3. 薄いデータがあれば好きな向きの断面(MPR)を作れる。なめらかさは再構成関数で変わり、変えるには生データが要る。

根拠(もう少し詳しく)

  • CTの画質は、コントラスト・空間分解能・ノイズ・アーチファクトで表されます。ノイズと空間分解能はどちらも再構成関数(再構成フィルタ)の影響を強く受け、診断に足る画質を適切な線量で得るには、管電圧・管電流・スライス厚・再構成関数を含めた撮影条件の設計が必要とされます(Goldman 2007)。
  • マルチスライスCTでは薄い断面を連続して集められ、縦・横・高さがほぼ同じ大きさのボクセル(等方性ボクセル)に近づくと、MPR・MIP・VRなどの再構成画像が横断像と同じくらいの細かさで作れます(Dalrymple 2005)。
  • 画像の枚数は「撮った長さ÷スライス厚」の計算です(例: 400mm÷5mm=80枚、400mm÷1mm=400枚。再構成の間隔を厚さと同じにした場合)。

参考文献

  1. Goldman LW. Principles of CT: radiation dose and image quality. J Nucl Med Technol. 2007;35(4):213-225. PubMed
  2. Dalrymple NC, Prasad SR, Freckleton MW, Chintapalli KN. Informatics in radiology (infoRAD): introduction to the language of three-dimensional imaging with multidetector CT. Radiographics. 2005;25(5):1409-1428. PubMed

症例画像は各図の引用元のとおりです。

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