
ゼロからの画像診断 #08
CTには、体の中に本当はないすじや段差が写ることがあります。これをアーチファクトと言います。研修医のハジメくんと一緒に、よく出会う3つの原因と、病気との見分け方を図で整理します。
先に結論
- アーチファクトは、撮り方や体の状態のせいで画像に出る「本当はないもの」。よく出会う原因は金属・動き・硬い骨。
- 見分けるコツは、まっすぐなすじ・臓器の形と関係なく横切る・金属や骨から出ている・別の断面で形が変わる。
- 息止め・腕を上げる・金属用の作り直しなど、撮る側の工夫で減らせるものも多い。
背骨のまわりに黒い帯?
ハジメ(研修医)先生、この患者さん、背骨のまわりに黒い帯と白いすじがたくさんあります。大きな病気でしょうか…。
ごろ〜(指導医)その黒い帯は、どこから出ていますか?帯の両はしをたどってみてください。
ハジメ(研修医)えっと…背骨の中の、真っ白な2本の棒のあいだを通っています。
ごろ〜(指導医)その棒は、背骨の手術で入れた金属のねじですね。黒い帯とすじは、金属が原因のアーチファクトです。本当はそこに何もありません。
① 金属 ― 放射状のすじと黒い帯
ごろ〜(指導医)金属はX線をほとんど通さないので、装置が計算をまちがえて、金属から放射状に白と黒のすじが出ます。金属が2つあると、そのあいだに黒い帯が出やすくなります。

ハジメ(研修医)黒い帯が、腸も筋肉もおかまいなしに横切っていますね。
ごろ〜(指導医)そこがポイントです。本物の病気は臓器の形にそって出ますが、アーチファクトは臓器の形と関係なく、まっすぐ走ります。
② 動き ― 段差とぶれ
ごろ〜(指導医)次は動きです。CTは頭から足まで順番に撮るので、途中で息をしたり体が動いたりすると、つなぎ目にずれが出ます。冠状断で見ると、段差としてよくわかります。

ハジメ(研修医)右は肝臓のてっぺんがずれて、ギザギザになっています。肝臓が切れているわけではないんですね。
ごろ〜(指導医)そうです。横断で1枚ずつ見ていると気づきにくいので、冠状断や矢状断で確かめるとよいです。それから、1枚の撮影中に体が動くと、輪郭が二重にぶれて見えます。

③ 硬い骨 ― 骨と骨のあいだの黒いすじ
ごろ〜(指導医)3つめは硬い骨です。X線が厚く硬い骨を通ると、性質が変わって、骨と骨のあいだに黒いすじが出ます。頭のCTの、耳のあたりの硬い骨のあいだが有名な場所です。

ハジメ(研修医)これ、脳幹の梗塞と見まちがえそうです…。
ごろ〜(指導医)実際にまぎらわしいことがあります。骨と骨をむすぶ線の上にあるか、上下の画像で形が変わるかを見ます。迷うときは、ほかの検査で確かめることもあります。
マルオ(技師)撮る側からひとこと!おなかのCTで腕を下ろしたままだと、腕の骨のせいで横向きのすじがたくさん出ちゃいます。できるだけ腕を上げてもらっているのは、そのためなんです!

ごろ〜(指導医)最後に、アーチファクトを見分けるコツと、減らす工夫をまとめておきましょう。

ハジメ(研修医)最初の黒い帯、金属のねじと金属のねじをむすぶ線の上でした。病気じゃなくてよかったです。
ごろ〜(指導医)ただし、アーチファクトの下に本物の病気がかくれることもあります。見えにくい場所があったら、「アーチファクトで見えにくい」と書いておくのも大切ですよ。
よくある勘違い
Q. 黒い帯や白いすじは、病気のサイン?
金属や硬い骨から出ていて、臓器の形と関係なくまっすぐ走るなら、アーチファクトのことが多いです。
Q. 肝臓のてっぺんがずれて見えたら、肝臓が裂けている?
撮影中の息で段差ができることがあります。冠状断で、横隔膜の動きによるずれかを確かめます。
Q. アーチファクトがあるところは、見なくていい?
アーチファクトの下に本物の病気がかくれることもあります。見えにくい範囲として意識し、必要ならほかの方法で確かめます。
今日のまとめ
- アーチファクトは画像に出る「本当はないもの」。よく出会う原因は金属・動き・硬い骨。
- まっすぐ・臓器と関係なく横切る・金属や骨から出る・別の断面で形が変わる、が見分けのコツ。
- 息止め・腕を上げる・金属用の作り直しで減らせる。見えにくい場所は意識して読む。
図はすべてコードで描いた模式図で、実際の画像ではありません。
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