非造影MRAの選び方 TOF・QISS・4D flowの違い

造影剤を使わないMRA(非造影MRA)には、TOF、QISS、Time-SLIP、4D flowなど、いろいろな名前があって混乱します。どれが何に向いているのですか?
非造影MRAは、血液そのものの動きや磁化の性質を使って血管を白く描く検査です。どの手法も「血流が流れ込む」「血流の位相が変わる」「血液の信号を選んで残す」のどれかを使っていて、得意な部位が違います。頭ならTOF、足ならQISS、血流の量や向きを知りたいなら位相コントラスト、というふうに整理すると選びやすくなります。

先に結論:非造影MRAは「血流で信号を作る」手法(TOF・位相コントラスト)と「血流に頼らない」手法(bSSFP・Time-SLIP・FBI・QISSなど)に分けると整理しやすい。頭部はTOF、下肢はQISSなどが中心で、手法ごとのアーチファクトの出方を知っておくことが大切

手法 しくみ 向いている部位の例
TOF(time-of-flight) 流入する血液の高信号を利用。周囲は飽和で抑える 頭部・頸部の血管
位相コントラスト(4D flowを含む) 血流による位相の差から速度・流量・向きを画像化 血流の量・向きの評価、心大血管
bSSFP系・Time-SLIP bSSFPで撮り、血液を選んで反転・標識して背景と区別 腎動脈などの腹部の血管
FBI・QISS 心電同期で動脈と静脈の信号差、または静止組織の信号を抑える間隔を利用 下肢の動脈

なぜ非造影MRAを使うのか

CT血管撮影(CTA)と造影MRAは、広い範囲の血管病変で有用な検査です。一方、MRAの強みは、造影剤を使わずに撮れることにあります(Edelman 2019)。造影MRAのガドリニウム造影剤では腎性全身性線維症(NSF)、CTAのヨード造影剤では腎臓への負担が心配されるため、腎機能が低下した人では非造影MRAが選択肢になります(Saini 2018、Wu 2016)。

造影CTとMRAの使い分けはCTAとMRAの違いと使い分けで説明しています。この記事では、非造影MRAのなかの手法の違いに絞ります。

血流が信号を作るしくみ

MRIでは、血管内の信号は「血液が動いているかどうか」で大きく変わります。基本は次の3つです。流れに関わる細かい解説はflow voidとは?MRIで血管内の信号を決定する因子も参考にしてください。

要因 何が起こるか 画像での影響
流入効果(inflow effect) 撮像範囲の外から、まだ励起されていない血液が流れ込む 流入した血液が高信号になる
飽和効果 撮像範囲内に長く留まった血液や静止組織は、繰り返しのRFパルスで信号が落ちる 静止組織は低信号になり、血管とのコントラストが出る。血流が遅いと血管内も低信号に近づく
位相分散 血流が磁場勾配の方向に流れると、位相がずれる 血管内の信号が低下する。乱れた流れや狭窄の後ろで目立つ

主な非造影MRAの種類

TOF(time-of-flight)MRA

頭部・頸部の標準的なMRAです。流入する血液が高信号になる効果を使い、周囲の静止組織は飽和効果で抑えます。撮像範囲(スラブ)が厚いと、流れの下流側で血液も飽和して信号が落ちるため、下流側のフリップ角を大きくしたり、薄いスラブを複数重ねたりして対処します。

弱点は、撮像断面に対して平行に流れる血管では流入効果が弱くなることです。TOFはT1強調像のため、血管ではない高信号も混ざります。脂肪、粘稠な液体、軽度の石灰化、血腫、出血性プラークなどです。血管ではない高信号の例は漿液、高蛋白、石灰化、脂肪、壊死、出血、線維成分のCT、MRI画像所見にまとめています。

脳動脈瘤の検出では、3D-TOF MRAを調べた18研究(患者3,463人)のメタ解析で、感度0.89(95%信頼区間 0.82〜0.94)、特異度0.94(0.86〜0.97)でした。動脈瘤の大きさ別では、3 mmを超えるものの感度が0.89、3 mm以下では0.78と、小さいほど見つけにくくなっていました(HaiFeng 2017)。頭部MRAの見方の基本は頭部MRAとは?MRIとの違い・わかることで、見つかった動脈瘤の経過観察は未破裂脳動脈瘤が見つかったらで説明しています。

位相コントラストと4D flow

位相コントラスト法は、動いている水素原子と止まっている水素原子で位相が異なることを利用し、その差を画像にします。画素の値が血流の速度を表すので、血流の速度、流量、パターンなどを数値として測れます。速度の上限は、撮像前に設定するVENC(velocity encoding)で決まり、実際の速度がVENCより速いと折り返し(エイリアシング)が起こり、遅いと信号が低くなります。静脈の描出ではVENCを低く設定します。

これを時間と3次元に広げたものが4D flow MRIで、1回の撮像で血流を広く評価できます(Bissell 2023)。「血管の形」を見るというより、「血液がどう流れているか」を見る検査です。

bSSFP系とTime-SLIP

bSSFP(balanced steady-state free precession)は、TRとTEが短く、3方向の磁場勾配が相殺されて流速補正が成り立ちます。そのため、断面に平行な血管の内部も高信号になり、流れの影響を受けにくい撮像法です。MRAのほかに、心臓シネ、MRエンテログラフィー、MRCPなどにも使われます。

Time-SLIPは、空間選択的な反転パルス(タグ)を血液に当て、一定の時間(TI)を置いて信号を取る手法で、目的の血管だけを選んで描出できます。通常はbSSFPで信号を取ります。TIが長くなるほど、目的の血流と背景の信号差は小さくなります。名称は装置メーカーによって異なり、キヤノンのTime-SLIP、GEのInhance、シーメンスのNATIVE、フィリップスのTRANCEなどがあります。

FBIとQISS

FBI(fresh blood imaging)は、心電同期の高速スピンエコーを使い、拡張期と収縮期で動脈の血流速度が違うことで生じる信号差を使い、2つの画像を引き算して動脈を描出する方法です。QISS(quiescent-interval single-shot)は、心電同期で静止組織の信号を抑えるパルスを当て、血液が流れ込む「静止の間隔(quiescent interval)」をおいてから、1断面ずつ信号を取る方法です。扱いやすく、撮像時間が短い点が特徴とされています(Zhang 2015)。

非造影MRAの種類:血流で信号を作る手法(TOF・位相コントラスト)と、血流に頼らない手法(bSSFP系・Time-SLIP、FBI・QISS)

引用元の図 TOFとQISSの違い(下肢)

骨盤・下肢のTOF MRAとQISS MRAの比較
引用:Saini A, et al. Diagnostics 2018(Figure 2)(CC BY 4.0)

図:同じ患者の骨盤・下肢のMRA。冠状断のTOF(A)とQISS(B)、大腿動脈の分岐部の高さの軸位断のTOF(C)とQISS(D)です。論文では、QISSで大動脈遠位部、腸骨動脈、大腿動脈の細かい構造と信号の保たれ方が良いと説明されています。

下肢の動脈:QISSを中心に

TOFや位相コントラストは、下肢では画質が悪い、撮像時間が長い、アーチファクトが出やすい、といった問題が指摘されていました。QISSは、こうした弱点を克服するために開発された手法です(Saini 2018)。

報告 対象 主な結果
メタ解析(Verma 2022) 17研究・459人。基準は血管造影(DSA)または造影MRA 区域ごとの感度0.88(0.85〜0.91)、特異度0.94(0.92〜0.96)
QISSとCTAの比較(Wu 2016) 32人、3テスラ 狭窄(50%以上)の感度はQISSが94.25%・93.26%、CTAが90.11%・89.13%(2人の読影者)。有意差なし
石灰化の強い区域(Wu 2016) 同上 感度はQISSが95.83%(2人とも)、CTAが74.19%・76.67%で、QISSが有意に高い

画質は、4段階評価でQISSがCTAよりわずかに低い(3.70・3.72 対 3.80・3.82)という結果でした(Wu 2016)。石灰化が多い下腿の動脈では、CTAでは石灰化に隠れて閉塞や狭窄の程度が分かりにくいことがありますが、QISSでは石灰化の影響が少ないとされています。

引用元の図 QISS・CTA・DSAの比較

下肢動脈のCTA・QISS MRA・血管造影の比較
引用:Wu G, et al. J Cardiovasc Magn Reson 2016(Figure 2)(CC BY 4.0)

図:QISS MRAの論文の図です。(a)CTAでは、右大腿動脈に複数の狭窄、右膝窩動脈に閉塞(矢印)がありますが、下腿の閉塞は石灰化が多く判断しにくくなっています。(b)QISSでも右膝窩動脈の閉塞(矢印)が分かり、石灰化は問題になりません。(c)DSAで右膝窩動脈の閉塞が確認されています。

糖尿病の26人の下腿動脈を調べた報告では、FSD(flow-sensitive dephasing)併用のSSFPと、QISSを比べています。診断に使える動脈区域は153のうちFSDが151(98%)、QISSが147(96%)、50%以上の狭窄の感度は95%と93%で差がなく、特異度はFSDが99%、QISSが92%でFSDが高い結果でした。一方、QISSは扱いやすく撮像時間が短いことから、下肢動脈の迅速なスクリーニングに適するとされています(Zhang 2015)。

引用元の図 FSD・QISS・造影MRAの比較(下腿)

下腿動脈のFSD・QISS・造影MRAの比較
引用:Zhang N, et al. PLoS One 2015(Figure 3)(CC BY 4.0)

図:糖尿病と腎機能低下がある65歳男性の下腿動脈のMIP像。(a)FSD、(b)QISS、(c)造影MRAです。左前脛骨動脈の広範な高度病変と、右前脛骨動脈・左後脛骨動脈の閉塞がみられ、論文ではFSDがQISSより病変や細い側副血行路をよく描出していると説明されています。

腎動脈:bSSFP系の非造影MRA

腎動脈狭窄が疑われた201人(400本の腎動脈)で、反転パルス併用のbSSFP法による非造影MRAと、造影MRAを比べた報告があります(糸球体濾過量が30 mL/分/1.73 m2を超える人が対象)。血行動態的に有意な狭窄(50%超の狭窄または閉塞)を、非造影MRAは72人(95本)で正しく診断し、2人(2本)では狭窄を過小評価しました。2つの検査の一致度は優れており、造影剤を使えない人で非造影MRAは有力な選択肢とされています(Lal 2021)。

アーチファクトと見落としやすい点

手法 起こりやすいこと 対処・注意
TOF スラブの下流側の信号低下、断面に平行な血管の信号低下、血管以外のT1短縮高信号の混入 多スラブ撮像、下流側のフリップ角を大きくする(ramped RFパルス)、元画像の確認
位相コントラスト VENCが低すぎると折り返し、高すぎると信号が小さくなる 想定される最大速度に合わせてVENCを設定する
QISS 信号低下による偽の狭窄や、軟部組織のアーチファクト(Zhang 2015の図) 造影MRAやCTAなど他の画像との比較
共通 乱れた流れや、狭窄の後ろの位相分散で信号が落ち、狭窄を過大評価することがある MIP像だけでなく元画像を見る

なお、非造影MRAのエビデンスの水準は、手法や部位によって違います。使える部位や適応の全体像はEdelmanらの総説にまとまっています(Edelman 2019)。

手法の選び方の目安

  1. 頭部・頸部の血管を見たい:TOF MRAが標準的。小さな動脈瘤は見落とされやすい点に注意する
  2. 下肢の動脈を、腎機能が低下した人でも評価したい:QISSやFSD併用のSSFPなど
  3. 腎動脈など腹部の動脈:bSSFP系の非造影MRA(呼吸の影響に配慮が必要)
  4. 血流の速度・量・向きを知りたい:位相コントラスト、4D flow
  5. 石灰化の強い動脈を評価したい:QISSなどの非造影MRAも選択肢(Wu 2016)

実際の検査の選択は、病気、腎機能、装置や施設の方針によって変わります。検査の前に、主治医・検査施設の案内に従ってください。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. 非造影MRAは、造影MRAより画質が劣りますか?
A. 部位と手法によります。下肢では、QISSの画質はCTAよりわずかに低い(4段階評価で3.70・3.72 対 3.80・3.82)ものの、狭窄の感度と特異度はCTAと同程度と報告されています(Wu 2016)。腎動脈では、造影MRAとの一致度が高いと報告されていますが、一部で狭窄を過小評価した例もあります(Lal 2021)。

Q. TOFで脳動脈瘤は見落とされませんか?
A. 3D-TOF MRAのメタ解析では、3 mm以下の動脈瘤の感度(0.78)は、3 mmを超えるもの(0.89)より低くなっています(HaiFeng 2017)。画像で異常が疑われる、または症状があるときは、CTAや血管造影などで確認することもあります。

Q. 4D flowは血管の形を見る検査ですか?
A. 血管の形というより、血流の速度・流量・向きなど、血液の動きを調べる検査です。1回の撮像で心臓や大血管の血流を広く評価できます(Bissell 2023)。

Q. 造影剤を使わなければ、まったく安全ですか?
A. 造影剤の副作用の心配は避けられますが、MRIの検査そのものには、体内金属の確認など別の注意があります。詳しくはMRIと金属の記事を参照してください。

あわせて読みたい:CTAとMRAの違いと使い分け、flow voidとは?MRIで血管内の信号を決定する因子

参考文献

  1. Edelman RR, Koktzoglou I. Noncontrast MR angiography: An update. J Magn Reson Imaging. 2019;49(2):355-373. PubMed
  2. Saini A, Wallace A, Albadawi H, et al. Quiescent-Interval Single-Shot Magnetic Resonance Angiography. Diagnostics (Basel). 2018;8(4). PubMed
  3. Wu G, Yang J, Zhang T, et al. The diagnostic value of non-contrast enhanced quiescent interval single shot (QISS) magnetic resonance angiography at 3T for lower extremity peripheral arterial disease, in comparison to CT angiography. J Cardiovasc Magn Reson. 2016;18(1):71. PubMed
  4. Verma M, Pandey NN, Singh V, et al. A meta-analysis of the diagnostic performance of quiescent-interval-single-shot magnetic resonance angiography in peripheral arterial disease. Eur Radiol. 2022;32(4):2393-2403. PubMed
  5. Zhang N, Zou L, Huang Y, et al. Non-Contrast Enhanced MR Angiography (NCE-MRA) of the Calf: A Direct Comparison between Flow-Sensitive Dephasing (FSD) Prepared Steady-State Free Precession (SSFP) and Quiescent-Interval Single-Shot (QISS) in Patients with Diabetes. PLoS One. 2015;10(6):e0128786. PubMed
  6. HaiFeng L, YongSheng X, YangQin X, et al. Diagnostic value of 3D time-of-flight magnetic resonance angiography for detecting intracranial aneurysm: a meta-analysis. Neuroradiology. 2017;59(11):1083-1092. PubMed
  7. Lal H, Singh RKR, Yadav P, et al. Non-contrast MR angiography versus contrast enhanced MR angiography for detection of renal artery stenosis: a comparative analysis in 400 renal arteries. Abdom Radiol (NY). 2021;46(5):2064-2071. PubMed
  8. Bissell MM, Raimondi F, Ait Ali L, et al. 4D Flow cardiovascular magnetic resonance consensus statement: 2023 update. J Cardiovasc Magn Reson. 2023;25(1):40. PubMed

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