類上皮血管筋脂肪腫 脂肪の乏しい腎腫瘤と腎癌との区別

30歳代女性の健診で見つかった腎腫瘤です。単純CTで腎実質より高吸収、はっきりした脂肪はなく、造影では早く強く染まって後期相で少し抜けます。腎細胞癌と考えて部分切除したところ、病理は「類上皮血管筋脂肪腫」でした。血管筋脂肪腫なのに悪性になることがあると聞きましたが、画像で疑う手がかりはありますか?
類上皮血管筋脂肪腫(epithelioid angiomyolipoma:EAML)は、血管筋脂肪腫の仲間でも類上皮様の細胞が主体の型で、脂肪が乏しく、腎細胞癌によく似て見えます。単純CTで高吸収、T2強調像で低信号、早期に強く染まる腫瘤が多いと報告されていますが、画像だけで癌と分けるのは難しい病変です。また、通常の血管筋脂肪腫と違って転移・再発することがあり、切除後の経過観察が大切です。報告の数字を整理します。

先に結論:腎の類上皮血管筋脂肪腫は、脂肪の乏しい充実性腫瘤として見え、腎細胞癌との区別が難しい。単純CTで高吸収、T2強調像で低信号、早く染まる例が多い。悪性の経過をとることがあり、壊死・7cmを超える大きさ・腎外への進展や腎静脈浸潤などが危険因子

項目 ポイント
単純CT 腎実質より高吸収が多い(11例中8例、Liu 2015/7例中6例、Tsukada 2013)。脂肪は見えないことが多い
造影CT 早く強く染まり、ゆっくり抜ける(91%、Liu 2015)。不均一な造影73%
MRI T2強調像で主に低信号64.7%、拡散制限70.6%(Cong 2018)
経過 41例で再発17%、転移49%、腫瘍死33%(Nese 2011)

類上皮血管筋脂肪腫(EAML)とは

腎の血管筋脂肪腫(AML)は、血管周囲類上皮細胞腫瘍(PEComa)の仲間で、太い壁の血管・平滑筋・脂肪からなる良性の腫瘍です。多くは脂肪を含むため、CTで脂肪の吸収値を確かめれば診断できます(詳しくは腎血管筋脂肪腫(AML)の画像所見)。類上皮血管筋脂肪腫(EAML)は、このうち類上皮様の細胞が主体になった型で、悪性の経過をとりうる間葉系腫瘍とされています(Nese 2011)。組織でも肉腫様や高悪性度の腎細胞癌に似ることがあり、診断は血管周囲類上皮細胞と、HMB45やMelan-Aなどのメラノサイトのマーカーの免疫染色で確かめます(Tsai 2009、Cong 2018)。

純粋な類上皮型41例の検討では、平均年齢40.7歳(14〜68歳)、男女比は1対1で、79%が症状をもって受診し、12例は診断時にすでに転移がありました。9例は結節性硬化症(TSC)を伴っていました(Nese 2011)。TSCと腎腫瘍の関係は遺伝性腎腫瘍の画像診断で解説しています。

CTの所見

EAMLのCTの特徴は、単純CTで腎実質より高吸収、脂肪が乏しい、早く強く染まる、の3つにまとめられます。

報告 対象 主なCT所見
Tsukada 2013 8例 全例で腫瘍内の脂肪を検出できず。単純CTで7例中6例が高吸収。不均一な充実型4例、均一な充実型1例、出血を伴う多房嚢胞型3例
Liu 2015 11例(女性10例) 1.8〜10.3cm。脂肪あり4例。単純CTで高吸収8例・等吸収2例・低吸収1例。造影は著しく不均一73%、早く染まりゆっくり抜ける91%
Wang 2022 脂肪の乏しいEAML 20例 高吸収の腫瘤で、腎洞40%・皮質60%。早く染まりゆっくり抜ける100%、嚢胞変性90%、「眼球(eyeball)サイン」55%、腫瘍内の新生血管75%
Zhou 2025 27例 単発92.59%、女性66.67%。多くは高吸収で、13例に脂肪。4cm以下は早く染まり早く抜ける例が多く、大きいものは異常血管が目立つ

Wang 2022は、ほかの脂肪の乏しいAML 43例と比べ、嚢胞変性と皮髄相のCT値がEAMLを見分ける独立した因子で、2つを組み合わせたモデルはAUC 93.5%でした。腫瘍が大きいと異常な血管が目立ち、危険度の高い腫瘍では持続性または遅延性の造影を示す傾向があったと報告されています(Zhou 2025)。出血を伴いやすく、腎周囲の自然出血で見つかった例もあります(Tsukada 2013)。腎の自然出血の原因と画像は特発性腎出血(Wunderlich症候群)にまとめています。

症例 40歳代女性 単純CTで高吸収を示した腎の類上皮血管筋脂肪腫

腎の類上皮血管筋脂肪腫 単純CTで高吸収の分葉状腫瘤と3相の造影CT
引用:Liu Y, Qu F, Cheng R, et al. CT-imaging features of renal epithelioid angiomyolipoma. World J Surg Oncol 2015;13:280(Fig. 1)(CC BY 4.0)

症状はなく、身体診察で腎腫瘤が見つかりました。単純CT(a)で左腎下極に分葉状の高吸収の腫瘤があり、造影CTの動脈相(b)・静脈相(c)・遅延相(d)では比較的均一に造影されています。

MRIの所見

病理で確かめた17例のMRIでは、88.2%が円形〜楕円形で、腫瘍と腎の境界は82.4%で丸みを帯びていました。T1強調像では88.2%が主に等信号、T2強調像では64.7%が主に低信号、拡散強調像では70.6%に拡散制限があり、ADCの平均は1.23±0.28×10-3mm2/sでした。オポーズドフェイズで信号が落ちる少量の脂肪は6例でみられました。造影では、皮髄相で強く染まる例が87.5%、早く染まり早く抜ける例が81.3%、網目状の造影が43.8%でした。不整な血管は23.5%、出血は41.2%にみられました(Cong 2018)。Tsukada 2013でも、MRIを撮った4例中3例で充実部や嚢胞壁がT2強調像で低信号でした。

著者らは、T2強調像の低信号、拡散制限、丸い腫瘍-腎の境界、網目状で強い造影(早く染まり早く抜ける)がそろうとEAMLを疑う手がかりになるとしています(Cong 2018)。ただし、T2低信号は乳頭状腎細胞癌や脂肪の乏しい通常のAMLでもみられる所見です。

腎細胞癌との区別

EAMLは画像上、腎細胞癌・腎肉腫・脂肪の乏しいAMLに似て見え、誤診されやすいとされています(Liu 2015)。自施設5例をまとめた報告では、全例がCTで腎細胞癌を疑われていました(Tsai 2009)。サイズを合わせたEAML 28例と淡明細胞型腎細胞癌56例の比較では、雪だるま型・アイスクリームコーン型の形(オッズ比16.3)と、皮髄相の腫瘍-皮質の造影比が低いこと(オッズ比33.4)がEAMLを示す独立した因子でした。CTのラジオミクスモデル(AUC 0.89)は泌尿生殖器を専門とする放射線科医(AUC 0.78、0.81)と同程度で、3年目の研修医(AUC 0.63)より良好でした(Kim 2022)。

腫瘍 画像の手がかり
類上皮血管筋脂肪腫 単純CTで高吸収、T2低信号、早く強い造影。嚢胞変性や異常血管。雪だるま型・アイスクリームコーン型の形
淡明細胞型腎細胞癌 皮髄相で皮質に近い強い造影、T2高信号が多い。皮髄相で腫瘍-皮質の造影比がEAMLより高い(Kim 2022)
乳頭状腎細胞癌 乏血性で、T2低信号(乳頭状腎細胞癌のCT・MRI)
脂肪の乏しい通常のAML 単純CTで高吸収、T2低信号、均一な造影。EAMLと比べ嚢胞変性は少ない(Wang 2022)

腎腫瘍全体の造影の見方は腎腫瘍の画像診断の進め方で整理しています。画像でEAMLを思い浮かべても、最終的には組織で確かめることになります。

悪性の経過と危険因子

41例のうち経過がわかった33例(平均44.5か月)では、再発17%、転移49%、腫瘍による死亡33%でした。リンパ節転移は24%で、転移先は肝臓63%、肺25%、腸間膜18.8%が多くみられました(Nese 2011)。

同じ検討で進行に関係した因子は、①TSCまたは通常のAMLの併存、②壊死、③7cmを超える大きさ、④腎外への進展または腎静脈への浸潤、⑤癌に似た増殖パターンの5つでした。0〜1個は低リスクで進行15%、2〜3個は中間リスクで64%、4個以上は高リスクで全例が進行しました(Nese 2011)。このうち壊死、大きさ、腎外進展・腎静脈浸潤は画像で評価できる項目です。MRIの17例でも、1例が診断時にリンパ節に広がり、手術後に遠隔転移しています(Cong 2018)。文献をまとめた報告でも、EAMLのおよそ3分の1が進行した状態で報告されていると述べられています(Tsai 2009)。画像の報告書では、腫瘍の大きさ、内部の壊死を疑う造影されない部分、腎周囲脂肪や腎静脈・下大静脈への進展、リンパ節の腫大を具体的に書いておくと、病理の結果と合わせた危険度の判断に役立ちます。

症例 40歳代男性 偶然見つかった腎の類上皮血管筋脂肪腫

腎の類上皮血管筋脂肪腫 左腎背側の外向性腫瘤 拡張した血管を伴う不均一な漸増性造影
引用:Liu Y, Qu F, Cheng R, et al. CT-imaging features of renal epithelioid angiomyolipoma. World J Surg Oncol 2015;13:280(Fig. 4)(CC BY 4.0)

単純CT(a)で左腎の背側から外へ突出する低吸収の腫瘤があり、造影CTの動脈相(b)・静脈相(c)・遅延相(d)で、内部に拡張した血管を伴い、不均一に漸増する造影を示しています。

よくある疑問(Q&A)

Q1. EAMLは良性の血管筋脂肪腫と同じですか?

同じではありません。血管筋脂肪腫の仲間ですが、悪性の経過をとりうる腫瘍とされ、41例では転移49%、腫瘍死33%でした(Nese 2011)。通常の血管筋脂肪腫と同じ感覚で経過を見ることはできません。

Q2. 脂肪があればEAMLは否定できますか?

否定できません。脂肪が見えないことが多いものの、11例中4例(Liu 2015)、27例中13例(Zhou 2025)でCTで脂肪がみられています。脂肪があっても、充実部が高吸収で強く染まる、壊死や異常血管が目立つといった所見があればEAMLも考えます。

Q3. 画像で腎細胞癌と区別できますか?

難しいことが多いです。自施設5例は全例がCTで腎細胞癌と考えられていました(Tsai 2009)。雪だるま型の形や皮髄相の造影の比が手がかりになるという報告はありますが(Kim 2022)、最終診断は組織で行います。

Q4. 手術のあとはどう経過を見ますか?

EAMLは悪性の経過をとりうるため、腎細胞癌と同じように治療と経過観察を行うことが勧められています(Tsai 2009)。画像では局所の再発と、肝臓・肺・リンパ節などへの転移を確かめます。具体的な間隔は危険因子をふまえて主治医が判断します。

参考文献

  1. Nese N, Martignoni G, Fletcher CD, et al. Pure epithelioid PEComas (so-called epithelioid angiomyolipoma) of the kidney: A clinicopathologic study of 41 cases: detailed assessment of morphology and risk stratification. Am J Surg Pathol. 2011;35(2):161-76. PubMed
  2. Liu Y, Qu F, Cheng R, et al. CT-imaging features of renal epithelioid angiomyolipoma. World J Surg Oncol. 2015;13:280. PubMed
  3. Cong X, Zhang J, Xu X, et al. Renal epithelioid angiomyolipoma: magnetic resonance imaging characteristics. Abdom Radiol (NY). 2018;43(10):2756-2763. PubMed
  4. Tsukada J, Jinzaki M, Yao M, et al. Epithelioid angiomyolipoma of the kidney: radiological imaging. Int J Urol. 2013;20(11):1105-11. PubMed
  5. Wang D, Gong G, Fu Y, et al. CT imaging findings of renal epithelioid lipid-poor angiomyolipoma. Eur Radiol. 2022;32(7):4919-4930. PubMed
  6. Kim TM, Ahn H, Lee HJ, et al. Differentiating renal epithelioid angiomyolipoma from clear cell carcinoma: using a radiomics model combined with CT imaging characteristics. Abdom Radiol (NY). 2022;47(8):2867-2880. PubMed
  7. Tsai CC, Wu WJ, Li CC, et al. Epithelioid angiomyolipoma of the kidney mimicking renal cell carcinoma: a clinicopathologic analysis of cases and literature review. Kaohsiung J Med Sci. 2009;25(3):133-40. PubMed
  8. Zhou J, Qin GC, Chen TT, et al. Imaging characteristics of renal epithelioid angiomyolipoma and its correlation with risk stratification. Sci Rep. 2025;15(1):30053. PubMed

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