
先に結論:KHEは「境界不明瞭・浸潤性・不均一な濃染」の乳児の血管性腫瘍。血小板減少(KMP)があれば、まず乳児血管腫ではなくKHEを考える
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな病気か | 局所浸潤性(境界型)の血管性腫瘍。乳児期の発症が大半で、四肢・体幹に多い |
| Kasabach-Merritt現象 | 腫瘍内で血小板が消費され、高度の血小板減少と消費性凝固障害が起こる。KHEの約7割以上に合併 |
| MRI所見 | 境界不明瞭で、皮下・筋肉・骨へ浸潤。T2強調像で不均一な高信号、不均一で強い造影効果。周囲の浮腫・リンパ浮腫 |
| 乳児血管腫との違い | 乳児血管腫は境界明瞭で均一な腫瘤で、GLUT-1陽性。KMPの原因としてはKHE・房状血管腫が挙げられる。KHEはGLUT-1陰性 |
カポジ様血管内皮腫(KHE)とは
カポジ様血管内皮腫(Kaposiform hemangioendothelioma:KHE)は、ISSVA(国際血管腫・血管奇形学会)の分類で「局所浸潤性または境界型の血管性腫瘍」に入る、まれな腫瘍です。良性の乳児血管腫と、悪性の血管肉腫との間に位置づけられます。房状血管腫(tufted angioma)とは、別々の病気というより同じ病気の広がりの違い(スペクトラム)と考えられており、房状血管腫のほうが浅く軽い型とされます(Wildgruber 2019)。
ボストンの血管奇形センターに紹介された107人の検討では、マサチューセッツ州での有病率は小児10万人あたり約0.91人でした。93%が乳児期に発症し、60%は新生児期の発症でした(Croteau 2013)。中国の146人のコホートでは、52.1%で病変またはその前ぶれが出生時からあり、91.8%が1歳までに出現し、診断時の年齢の中央値は2.3か月でした。部位は四肢が50.7%と最も多く、63.0%は皮膚の病変と深部への浸潤をあわせ持つ「混合型」でした(Ji 2018)。
皮膚には紫斑や皮下出血のような色の変化を伴うことが多く、大きな病変では四肢が硬く張って腫れ、リンパ浮腫を伴うことがあります(Wildgruber 2019)。一方で、皮膚に所見がない例も11%あり(Croteau 2013)、後腹膜・縦隔・骨などの深部の病変では、画像が診断の入口になります。
Kasabach-Merritt現象(KMP)とは
Kasabach-Merritt現象(KMP)は、腫瘍の中で血小板が捕らえられて壊され、高度の血小板減少と、低フィブリノゲン血症を伴う消費性凝固障害が起こる状態です。命にかかわることがあり、KHEと房状血管腫に特徴的な合併症です(Wildgruber 2019)。
KHEでのKMPの頻度は、報告によっておおむね7〜8割です。どのような病変で起こりやすいかも報告があります。
| 報告 | 対象 | KMPの頻度と危険因子 |
|---|---|---|
| Croteau 2013 | 107人 | 71%にKMP。筋肉以深に浸潤する病変は表在の病変に比べ6.3倍、後腹膜・胸腔内では18倍KMPを起こしやすい。後腹膜は85%、胸腔内は100%でKMP。骨だけの病変や乳児期以降の発症ではKMPなし |
| Ji 2018 | 146人 | 約70%にKMP。多変量解析で、若い年齢(6か月未満)、大きな病変(5.0 cm超)、混合型がKMPと関連 |
| Hu PA 2018 | 25人(病理で確認) | 80%にKMP。びまん浸潤型は孤立型より大きく、KMPとリンパ浮腫を伴いやすい |
| Hu Y 2023 | 27人 | 81.5%にKMP。平均年齢105日 |
つまり、深くて大きい病変、体幹・後腹膜・縦隔の病変ほどKMPを伴いやすいということになります。画像で病変の深さと広がりを示すことは、診断だけでなく重症度の見積もりにも役立ちます。超音波とMRIを比べた検討でも、KMPを伴うKHEは、脂肪層や筋層への浸潤が多く、径が大きく、血流が豊富で、MRIでflow voidを伴うことが多いと報告されています(Li 2024)。
KHEの画像所見
病変の広がりを示すにはMRIが第一の検査とされます(Wildgruber 2019)。超音波は表在の病変の評価や血流の確認、CTは骨の変化や胸腹部の深い病変の評価に使われます。
超音波
不均一なエコーの腫瘤で、内部の血流が豊富です(Hu PA 2018)。線状・帯状の低エコーを伴い、血流が豊富または斑状にみられるとする報告もあります(Hu Y 2023)。
CT
単純CTでは筋肉と同じくらいの濃度で、不均一な病変として写ります(Hu PA 2018、Hu Y 2023)。27人の検討では、単純CTのCT値は29.58±11.53 HU、動脈相では線状・層状の不均一な造影効果を示し、造影後のCT値は153.91±52.11 HUでした(Hu Y 2023)。石灰化や骨の変化を伴う例もあります(Ryu 2017)。
MRI
MRIの所見は次のようにまとめられます。
- 形・境界:境界が不明瞭で、組織の境(筋膜など)に関係なく軟部組織にしみ込むように広がり、隣の骨を壊すこともあります(Wildgruber 2019)。小児12人の検討では、CT・MRIのある10人のうち8人(80%)が局所浸潤性で、隣り合う2つ以上の臓器・組織に及んでいました(Ryu 2017)。
- 信号:T1強調像で筋肉と等信号(15人)またはわずかに高信号(7人)、T2強調像では筋肉より不均一な高信号で、点状の低信号を混じることが多い(77%)と報告されています(Hu PA 2018)。脂肪抑制像では高信号と低信号が混在します(Hu Y 2023)。
- 造影:不均一で強い造影効果が多く(Ryu 2017)、MRアンギオグラフィで太い流入動脈がみえ、動脈相の早い時期に病変の中心に強い濃染がみられます(Wildgruber 2019)。流入・流出血管が25人中15人でみられました(Hu PA 2018)。
- flow voidと動静脈短絡:flow voidはみられることがありますが、KHEは動静脈奇形のような動静脈短絡は示さないとされます(Wildgruber 2019)。
- 周囲の変化:浮腫・リンパ浮腫を伴い、皮膚に対して垂直に走る隔壁が特徴的で、この隔壁は遅い相で造影されます。周囲に拡張した流出静脈がみられることもよくあります(Wildgruber 2019)。
- 拡散強調像:明らかな拡散制限はないとする報告(Hu Y 2023)と、わずかな拡散制限(ADC 平均1.28±0.09×10-3 mm2/s、5人)とする報告(Hu PA 2018)があります。
症例 1歳男児 上腕のKHE(Kasabach-Merritt現象を伴う)

引用:Wildgruber M, et al. Insights Imaging 2019(Figure 6)(CC BY 4.0)
右上腕から肘にかけての大きな腫瘤で、強い紫斑・皮下出血を伴い、硬く張ってリンパ浮腫を伴っていました(A)。MRアンギオグラフィで流入動脈がみえ(B)、動脈相の後半に強い腫瘍濃染がみられます(C)。水を強調した画像(D、E)では、皮膚に垂直な隔壁を伴う広い浮腫がみられ、遅い相のT1強調像で隔壁が造影されています(F)。腫瘍の周りには拡張した静脈があります(G)。血管造影で太い流入動脈がみられましたが、動静脈短絡はありませんでした(H)。塞栓術(I、J)と薬物治療ののち、病変は小さくなり(K、L)、血小板数は3週間後に正常に戻っています。入院時の血小板数は7万/μLでした。
乳児血管腫との違い
乳児血管腫は小児で最も多い血管性腫瘍で、多くは治療を要しません。生後1〜3週ほどの静かな期間のあとに増大し始め、増大はおおむね3〜6か月で終わり、その後ゆっくり退縮します。退縮は4歳までに90%で完了するとされます。診断は、境界のはっきりした赤い皮膚病変が大きくなるという臨床経過からつけられ、画像や生検はほとんど要りません(Wildgruber 2019)。
画像が必要になるのは、深い場所の病変や診断に迷う例、合併症のある例です。乳児血管腫はMRIで、T1強調像で等〜中等度の信号、T2強調像で中等度〜高信号の、境界明瞭で均一な充実性腫瘤として写り、造影では強く比較的均一に染まります。内部にflow voidがみられることはありますが、動静脈奇形ほど目立ちません(Wildgruber 2019)。
| 項目 | 乳児血管腫 | KHE |
|---|---|---|
| 出現の時期 | 生後1〜3週の静かな期間のあと増大し、のちに退縮 | 出生時から、または乳児期早期(60%が新生児期) |
| 皮膚の見た目 | 境界のはっきりした赤い病変 | 境界のはっきりしない赤紫〜青みの腫れ。紫斑・皮下出血・リンパ浮腫を伴う |
| 血小板 | KMPの原因としては挙げられていない | 約7割以上でKMP(高度の血小板減少・凝固障害) |
| MRIの形 | 境界明瞭で均一な充実性腫瘤 | 境界不明瞭で、皮下・筋肉・骨へ浸潤 |
| 造影 | 強く比較的均一 | 強く不均一(線状・層状) |
| 周囲 | 浮腫は目立たない | 浮腫・リンパ浮腫、皮膚に垂直な隔壁、拡張した流出静脈 |
| 病理 | GLUT-1陽性 | GLUT-1陰性。リンパ管内皮のマーカー(D2-40など)が陽性 |
表の内容は Wildgruber 2019 を中心に、KMPの頻度は Croteau 2013・Ji 2018 によります。なお、GLUT-1は乳児血管腫の目印としてよく使われますが、ほかの腫瘍でも陽性になることがあり、陽性なら乳児血管腫と決まるわけではないと注意されています(Wildgruber 2019)。
症例 0歳男児 乳児血管腫(比較のため)

引用:Wildgruber M, et al. Insights Imaging 2019(Figure 1)(CC BY 4.0)
生後8か月の男児で、皮膚に赤い丘疹が散らばってみえます(A)。MRIでは、腫瘤はT2強調像で均一な信号(B)を示し、ガドリニウム造影後も均一に造影されています(C)。
そのほかの鑑別
- 先天性血管腫(RICH・PICH・NICH):出生時にすでに完成した大きさで、その後は増大しません。GLUT-1は陰性です。大きなものでは高拍出性心不全や血小板減少を起こすことがあります(Wildgruber 2019)。
- カポジ様リンパ管腫症(KLA):KHEと臨床・病理が重なる病気です。胸部に病変がある小児13人の比較では、肺と胸郭外に及ぶびまん性の病変はKLAにはみられましたが、KHEにはありませんでした。縦隔と肺のびまん性病変に、治療に反応しにくい血小板減少・凝固障害を伴うときはKLAを考えるとされます(Ji 2019)。
- 静脈奇形・リンパ管奇形:脂肪抑制T2強調像では血管腫と同じように高信号になりますが、静脈奇形はゆっくり造影剤が満ち、リンパ管奇形は嚢胞の縁だけが造影されます(Wildgruber 2019)。
- 動静脈奇形:太いflow voidと動静脈短絡が目立ちます。KHEは動静脈短絡を示さない点が手がかりになります(Wildgruber 2019)。
- そのほかの小児の腫瘤:KHEはさまざまな部位に発生するため、小児の腫瘤の鑑別に挙げておくことが大切です(Ryu 2017)。診断に迷うときは、生検と経験のある病理医による評価がすすめられています(Wildgruber 2019)。
診断と治療の流れ
KHEの診断は、臨床所見とMRI、そして何より血小板数などの検査値をあわせて行います(Wildgruber 2019)。KHEでKMPのある群は、ない群に比べて血小板とフィブリノゲンが低く、D-ダイマーが高く、PT・APTTが延長していました(Li 2024)。手術は、凝固障害のために十分に行えなかったり、行えなかったりすることがあるとされます(Wildgruber 2019)。
治療は、専門のチームのもとで多職種で検討されます。薬物療法(シロリムス、ビンクリスチン、ステロイドなど)、危険な状態での橋渡しとしての塞栓術、手術などが組み合わされます(Wildgruber 2019)。治療の選び方は小児の血管腫・血管奇形の専門チームと主治医が決めます。
治療後の経過の評価にもMRIが使われます。病変の縮小、浮腫の改善、造影効果の変化と、血小板数の回復をあわせてみます。
読影のポイント
- 乳児の軟部腫瘤で、境界不明瞭・浸潤性・不均一な強い造影があれば、乳児血管腫と決めずにKHEを挙げる。
- 血小板数を確認する。KMPがあれば、乳児血管腫よりKHE(または房状血管腫)を強く考える。
- 筋肉・骨への浸潤、後腹膜・縦隔への広がりの有無を忘れずに記載する(KMPの危険と関係)。
- 皮膚に垂直な隔壁を伴う浮腫・リンパ浮腫、拡張した流出静脈を探す。
- 動静脈短絡が目立つときは、動静脈奇形を考え直す。
- 肺や胸郭外にもびまん性の病変があれば、KLAも鑑別に入れる。
乳児の皮膚が急に赤紫色に腫れて硬くなる、紫斑が広がる、元気がない・出血しやすいといった変化があるときは、早めに小児科を受診してください。
関連する記事として、体表の血管腫と血管奇形、ISSVA分類、軟部組織の血管腫・静脈奇形のMRI画像所見、新生児・乳児の腹部腫瘤、小児・新生児の画像診断まとめもあわせてご覧ください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 乳児血管腫でもKasabach-Merritt現象は起こりますか?
KMPはKHEと房状血管腫でみられる合併症として扱われ、乳児血管腫の合併症としては挙げられていません。乳児の血管性腫瘍で高度の血小板減少があれば、まずKHE・房状血管腫を考えます。ただし、大きな先天性血管腫でも血小板減少を起こすことがある点には注意が必要です(Wildgruber 2019)。
Q2. 皮膚に変化がなくてもKHEのことはありますか?
あります。107人の検討では11%に皮膚の所見がなく、後腹膜や胸腔内の病変はKMPを伴う割合が高いと報告されています(Croteau 2013)。原因のはっきりしない乳児の血小板減少では、深部の腫瘤を画像で探すことが診断につながります。
Q3. 拡散強調像で悪性腫瘍と区別できますか?
KHEでは明らかな拡散制限がないとする報告と、わずかな拡散制限があるとする報告があり、数も少ないため、拡散強調像だけで区別するのは難しいと考えられます(Hu Y 2023、Hu PA 2018)。境界・周囲の浮腫・血小板数など、ほかの所見とあわせて判断します。
Q4. 年長児や大人でもKHEはできますか?
大半は乳児期の発症ですが、それ以降の発症もあり、その場合は筋骨格系の痛みなど非典型的な症状で見つかることがあります。乳児期より後に発症した例や骨だけの病変では、KMPはみられませんでした(Croteau 2013)。
参考文献
- Wildgruber M, Sadick M, Müller-Wille R, et al. Vascular tumors in infants and adolescents. Insights Imaging. 2019;10(1):30. PubMed
- Croteau SE, Liang MG, Kozakewich HP, et al. Kaposiform hemangioendothelioma: atypical features and risks of Kasabach-Merritt phenomenon in 107 referrals. J Pediatr. 2013;162(1):142-7. PubMed
- Ji Y, Yang K, Peng S, et al. Kaposiform haemangioendothelioma: clinical features, complications and risk factors for Kasabach-Merritt phenomenon. Br J Dermatol. 2018;179(2):457-463. PubMed
- Hu PA, Zhou ZR. Clinical and imaging features of Kaposiform Hemangioendothelioma. Br J Radiol. 2018;91(1086):20170798. PubMed
- Hu Y, Song D, Wu C, et al. Clinical and imaging features of Kaposiform hemangioendothelioma in infants. Heliyon. 2023;9(5):e15425. PubMed
- Ryu YJ, Choi YH, Cheon JE, et al. Imaging findings of Kaposiform Hemangioendothelioma in children. Eur J Radiol. 2017;86:198-205. PubMed
- Li C, Shen Z, Sun Q, et al. Analysis of ultrasound and magnetic resonance imaging characteristics of kaposiform hemangioen dothelioma. Cancer Imaging. 2024;24(1):150. PubMed
- Ji Y, Chen S, Peng S, et al. Kaposiform lymphangiomatosis and kaposiform hemangioendothelioma: similarities and differences. Orphanet J Rare Dis. 2019;14(1):165. PubMed
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