
先に結論:緩和照射は「痛みと神経症状を和らげる」治療。画像では、病的骨折の危険(Mirels・SINS)と、脊髄圧迫の有無を確認する
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 目的 | 骨転移による痛みや、脊髄・馬尾の圧迫による症状をやわらげる。根治ではなく、生活の質を保つための治療 |
| 長管骨(手足の長い骨) | Mirelsスコア:部位・痛み・病変の性状・大きさの4項目で骨折の危険を点数化。皮質(骨の外側の硬い部分)の破壊の長さも重要 |
| 脊椎 | SINS:部位・痛み・病変の性状・アライメント・椎体の潰れ・後方要素の6項目で不安定性を評価 |
| 脊髄圧迫 | MRIが基本の検査。症状があれば急ぐ(緊急照射や手術の判断) |
| 照射後の画像 | 溶骨性病変の硬化(再石灰化)や、造骨性病変の骨の薄まりなどが起こる。画像の変化と痛みの関係は、まだ十分にはわかっていない |
骨転移の緩和照射とは
がんが骨に転移すると、痛みや骨折、脊髄の圧迫などが起こります。緩和照射は、その痛みや神経の症状をやわらげるための放射線治療です。照射の線量や回数は、症状や全身の状態、予想される経過によって決まるため、この記事では触れません。治療を選ぶ判断は主治医と行ってください。
米国放射線腫瘍学会(ASTRO)の2024年のガイドラインでは、次のようにまとめられています(Alcorn 2024)。
| 状況 | ガイドラインの推奨(ASTRO 2024) |
|---|---|
| 骨転移による痛み | 放射線治療を行うことを推奨 |
| 脊椎転移(脊髄・馬尾の圧迫の有無を問わない) | 痛みの治療として放射線治療を推奨 |
| 脊髄・馬尾の圧迫がある脊椎転移 | 手術と術後の放射線治療を、放射線治療のみより条件付きで推奨。デキサメタゾンを推奨 |
| 手術が必要な脊椎以外の骨転移 | 術後の放射線治療を推奨 |
骨転移の画像診断は、溶骨性病変を来す疾患の鑑別、溶骨性骨転移と造骨性骨転移の違い、骨シンチの見方と偽陽性で整理しています。
長管骨:Mirelsスコアと皮質破壊
大腿骨や上腕骨などの長い骨は、病変が大きくなると体重や動きで折れることがあります。この危険を点数にしたのがMirelsスコアです。1989年にMirelsは、照射した長管骨の転移を、画像と臨床の4つの危険因子で評価する方法を提案しました。照射のみで経過をみた78病変のうち、6か月以内に骨折したのは27病変で、平均点は骨折しなかった群が7点、骨折した群が10点でした。原著では、7点以下は照射で骨折の心配が少なく、8点以上は照射の前に予防的な固定が必要と提案されています(Mirels 1989)。
| 項目 | 1点 | 2点 | 3点 |
|---|---|---|---|
| 部位 | 上肢 | 下肢 | 転子部周囲 |
| 痛み | 軽い | 中等度 | 強い |
| 病変の性状 | 造骨性 | 混合 | 溶骨性 |
| 大きさ(皮質の幅に対する割合) | 1/3未満 | 1/3〜2/3 | 2/3より大きい |
使われる基準は報告で異なります。上腕骨の検討(Evans 2008)では、Mirelsの定義(9点以上を切迫骨折)にすると、骨折の予測の感度は14.5%、特異度は82.9%でした。7点以上にすると感度は81%に上がり、特異度は32%に下がりました。再現性は中等度で、感度を上げると特異度が下がるという限界が示されています(Evans 2008)。点数だけで決めず、整形外科と放射線治療の医師が、画像と症状を合わせて判断します。
もう一つの目安が、皮質の破壊の長さです。大腿骨転移の検討(オランダの骨転移試験に参加した102人、110病変)では、骨の長軸方向に皮質が侵される長さが30 mmを超える病変が、骨折を有意に予測しました。骨折した14病変のうち12病変が30 mm超で、30 mm以下では骨折しにくく、陰性的中率は97%でした。回数の少ない照射のほうが骨折は多く見えましたが、皮質の侵された長さで補正すると、照射のスケジュールは有意な因子ではありませんでした(van der Linden 2003)。ただし、これは大腿骨での結果です。
脊椎:SINSで不安定性を見る
背骨では、Spine Oncology Study Groupが作ったSINS(Spine Instability Neoplastic Score)が使われます。症状と画像の6つの項目に点数をつけ、脊椎が不安定かどうかを推測して、手術の相談が必要かの目安にします(Fisher 2010)。
| SINSの項目 | 画像で見ること |
|---|---|
| 部位 | 病変のある脊椎の高さ。動きの大きい移行部は不安定になりやすい |
| 痛み | 動きや荷重で痛みが出るか(臨床情報) |
| 骨病変の性状 | 溶骨性・混合・造骨性。溶骨性は弱くなりやすい |
| アライメント | 脊柱の並び(亜脱臼や変形)がないか |
| 椎体の潰れ | 椎体がどの程度潰れているか |
| 後側方要素 | 椎弓根や椎間関節など、背骨の後ろ側への進展(片側・両側) |
放射線治療後に椎体の圧迫骨折が起きる危険をSINSで予測できるかを調べたメタ解析(14研究)では、曲線下面積は0.776でした。カットオフを7点にすると、感度は0.790、特異度は0.546で、中等度の精度でした。項目別では、椎体の潰れは骨折との関連が中等度で、溶骨性の病変は精度の高い項目でした(Kim 2021)。点数が高くても骨折するとは限らない点に注意が必要です。脊椎の骨転移の画像所見は椎体骨転移のCT・MRI画像診断を参照してください。
脊髄圧迫は緊急
骨転移が脊柱管に広がり、脊髄や馬尾を圧迫すると、麻痺や排尿・排便の障害につながります。診断にはMRIが最も有用で、転移性脊髄圧迫の診断で、感度93%・特異度97%と報告されています。CTミエログラフィは造影MRIと同程度の成績で、通常のCTはMRIより診断能が劣りますが、MRIをすぐに撮れない緊急時には役立ちます(Kuah 2022)。緊急照射の考え方は緊急放射線治療(緊急照射)の適応とゴールデンタイムで解説しています。
圧迫の程度は、硬膜外脊髄圧迫(ESCC)の分類(Bilsky分類)で、骨内に限局するもの(0)から、脳脊髄液の腔が消えて脊髄が圧迫されるもの(3)まで段階分けされます(Kuah 2022)。
放射線科の読影では、これらの点を意識して、病変の部位と数、溶骨性か造骨性か、皮質が破壊された長さ、骨折の有無、椎体の潰れの程度、脊柱管への進展の有無を、治療する医師が使いやすい形で伝えることが役立ちます。上の表は、画像報告のチェック項目としても使えます。
図 転移性脊髄圧迫のMRI(Bilsky 1bと3)

引用:Kuah T, et al. State-of-the-Art Imaging Techniques in Metastatic Spinal Cord Compression. Cancers (Basel). 2022;14(13):3289(Figure 2)、CC BY 4.0
肺癌の患者さんの脊椎転移のMRIです。上段(a〜c)はT6のレベルで、T2強調像(a)で、硬膜外に腫瘍が進展して硬膜嚢を圧排していますが、脊髄には接していません(Bilsky 1b)。下段(d〜f)は同じ患者さんのT4のレベルで、脳脊髄液の腔がすっかり消えている高度な圧迫です(Bilsky 3)。T1強調像で椎体が低信号なのは腫瘍の骨髄浸潤を、造影後の増強は腫瘍の硬膜外と椎体の成分を示しています。
受診の目安
骨転移のある人で、次の症状が出たときは、次の外来を待たず、すぐに主治医や病院に連絡してください。背中や腰の痛みが急に強くなった、横になっても痛む、足や手に力が入らない、しびれが広がる、歩きにくい、尿や便の調子がおかしい、などです。脊髄の圧迫は、早い対応が麻痺の予防につながります。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。
照射後の骨の画像変化
照射のあと、骨転移の見え方は変わります。体幹部以外の骨転移に定位放射線治療(SBRT)を行った例を集めた報告では、次の変化が見られました。ただし、放射線治療の効果を画像でどう判定するかの合意はまだなく、8例の選ばれた症例の報告です(Chiu 2016)。
| 変化 | 内容(Chiu 2016) |
|---|---|
| 溶骨性病変の再石灰化 | 骨が抜けていた部分に骨が戻り、CTで硬く(白く)なる |
| 造骨性病変の脱灰 | 白く硬かった病変の濃度が下がる |
| 病的骨折 | 照射後にも骨折が起こりうる |
| 大きさの増大と縮小 | 病変ごとに反応が異なり、進行する病変と反応する病変が混在する |
| 肺線維化 | 肋骨転移への照射では、近くの肺に線維化が起こる |
画像の変化と痛みの改善、局所の制御の関係は、今後の検討課題とされています(Chiu 2016)。MRIの構造的な画像や機能的な画像は、治療後の経過観察で役立つ可能性があります(Kuah 2022)。骨シンチでは、治療後に集積が一時的に強まるflare現象があり、悪化との区別が必要です。詳しくは骨シンチの見方と偽陽性に解説があります。
よくある疑問(Q&A)
Q. 照射を受ければ骨折しませんか?
A. いいえ。大腿骨では、皮質が長く侵されている病変は照射後にも骨折しやすく、予防的な手術が勧められています(van der Linden 2003)。Mirelsスコアが高い病変では、照射の前に固定術が検討されます(Mirels 1989)。
Q. Mirelsスコアは何点で手術ですか?
A. 原著(1989年)では、8点以上で予防的な固定が提案されました(Mirels 1989)。後の検討では、9点以上を切迫骨折の定義として評価しており、感度と特異度のバランスに限界があります(Evans 2008)。点数は目安で、整形外科と放射線治療の医師が総合的に判断します。
Q. 脊髄が圧迫されていると言われたら、放射線だけで治療しますか?
A. 脊髄や馬尾の圧迫がある脊椎転移では、手術と術後の放射線治療が、放射線治療のみより条件付きで推奨されています。デキサメタゾンも推奨されています(Alcorn 2024)。全身の状態や予後によって方針は変わるため、主治医と相談してください。
Q. 照射後のCTで骨が白くなりました。良くなったのですか?
A. 溶骨性病変が再石灰化して白く見えるのは、反応のひとつとして報告されています(Chiu 2016)。ただし、画像の変化と痛みの改善の関係はまだ十分にわかっていないため、症状や経過と合わせて評価します。
あわせて読みたい:陽子線治療・重粒子線治療とは
参考文献
- Alcorn S, Cortés ÁA, Bradfield L, et al. External Beam Radiation Therapy for Palliation of Symptomatic Bone Metastases: An ASTRO Clinical Practice Guideline. Pract Radiat Oncol. 2024;14(5):377-397. PubMed
- Mirels H. Metastatic disease in long bones. A proposed scoring system for diagnosing impending pathologic fractures. Clin Orthop Relat Res. 1989;(249):256-264. PubMed
- Evans AR, Bottros J, Grant W, et al. Mirels’ rating for humerus lesions is both reproducible and valid. Clin Orthop Relat Res. 2008;466(6):1279-84. PubMed
- van der Linden YM, Kroon HM, Dijkstra SP, et al. Simple radiographic parameter predicts fracturing in metastatic femoral bone lesions: results from a randomised trial. Radiother Oncol. 2003;69(1):21-31. PubMed
- Fisher CG, DiPaola CP, Ryken TC, et al. A novel classification system for spinal instability in neoplastic disease: an evidence-based approach and expert consensus from the Spine Oncology Study Group. Spine (Phila Pa 1976). 2010;35(22):E1221-9. PubMed
- Kim YR, Lee CH, Yang SH, et al. Accuracy and precision of the spinal instability neoplastic score (SINS) for predicting vertebral compression fractures after radiotherapy in spinal metastases: a meta-analysis. Sci Rep. 2021;11(1):5553. PubMed
- Kuah T, Vellayappan BA, Makmur A, et al. State-of-the-Art Imaging Techniques in Metastatic Spinal Cord Compression. Cancers (Basel). 2022;14(13):3289. PubMed
- Chiu N, Probyn L, Raman S, et al. Radiological changes on CT after stereotactic body radiation therapy to non-spine bone metastases: a descriptive series. Ann Palliat Med. 2016;5(2):116-24. PubMed
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