緊急放射線照射の適応は?
- 肺小細胞癌による上大静脈症候群。(27.7%)
- 転移性脊椎腫瘍による脊髄圧迫による脊髄横断不全麻痺。(42.3%)★
- 脳圧亢進(11.3%)
- 出血(8.5%)
- 狭窄(8.2%)
- その他(神経芽腫のびまん性肝転移による呼吸困難など)(2%)
画像診断でこれらを診断したときは、緊急で、担当医または放射線治療医に連絡する必要があり。
例) 「椎体病変は後方に突出して脊髄を圧迫している。」
→主治医に連絡し、ステロイドパルス→緊急照射。
※脊髄麻痺が出たらゴールデンタイム(golden time)は24-48時間。
それ以内に治療の開始が必要。
緊急放射線照射の治療効果は?
- 脊髄圧迫 50%
- 上大静脈症候群 70%
- 脳圧亢進 70%
- 出血 80%
- 軌道狭窄 70%
のそれぞれ症状改善を認めたと報告あり。
この中でも頻度の高い脊髄圧迫の症状改善が低い原因としては、症状が出現してから治療までの時間に大きく依存するためと考えられている。
姑息、対症照射をする症状
①原発巣の進行による症状
- 肺癌の上大静脈症候群(緊急照射の適応)
- Pancoast肺癌による疼痛など
②転移巣による症状
- 脊椎転移による脊髄症状(緊急照射の適応)
- 肺門リンパ節転移による閉塞性肺炎
- 骨転移による痛みなど
※脳腫瘍による片麻痺→ステロイドやグリセオール投与。
※癌性胸水による呼吸困難→ドレナージ。
※転移による病的骨折
※食道癌の瘻孔→カバー付き金属ステント留置。
をするため、緊急照射の適応にはならない。
転移性脊椎腫瘍による脊髄圧迫について
転移性脊椎腫瘍による脊髄圧迫は、全癌患者の5-10%に起こると言われている。
転移性脊椎腫瘍による脊髄圧迫を起こす原発巣は?
- 肺がん 31%
- 前立腺癌 18%
- 乳がん 17%
となっている。
転移性脊椎腫瘍による脊髄圧迫に対して緊急放射線照射を行うタイミングは?
上に述べたように、症状の改善が5割程度しか見られないのが、転移性脊椎腫瘍による脊髄圧迫であるので、症状が出る前に治療を開始する必要がある。
不全麻痺の状態に対して放射線照射を行うと40%程度の人が回復する可能性があるのに対して、完全麻痺の場合は7%程度の人にしか回復が望めないと言われている。
なので完全麻痺の場合は、緊急除圧手術+術後照射の方が回復率が高い。
また脊髄圧迫から症状が出るまでの時間は、原発巣に依存すると言われており、
- 肺がん:急速に麻痺を起こす
- 乳がん;緩徐に症状をきたす
傾向があると言われている。
参考文献)Acta Oncol. 2008;47(1):81-9.