
先に結論:全身MRI(拡散強調像DWIBSなど)は前立腺癌の骨転移を骨シンチより感度高く拾える。一方、PSMA PETより劣る報告もあり、検査は目的で使い分ける
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 見ているもの | T1強調像で骨髄が暗くなる所、拡散強調像(DWI)で光る所を探す。骨シンチは骨を作る反応、CTは骨の形を見る |
| 強み | CTで見えない骨梁間型の転移も拾える。1回の撮像で骨・リンパ節を調べ、治療効果の判定にも使える |
| 感度の目安 | メタ解析で、全身MRIの骨転移の感度94%、骨シンチ80%(特異度は99%と95%) |
| 弱み | 良性の病変を良性と判定する力は骨シンチより弱い報告がある。PSMA PETは全身MRIより骨転移の診断精度が高い報告もある |
| 読み方の標準 | MET-RADS-Pという報告の決まりで、全身を14の領域に分けて評価する |
前立腺癌の骨転移と、画像検査の役割
骨転移は、背骨・骨盤・肩・大腿骨の遠位に多く、脊髄や神経根の圧迫、病的骨折などを起こします。血液が骨盤などから椎骨の静脈叢(Batson静脈叢)に流れ込むことが、前立腺癌や乳癌が背骨や骨盤に転移しやすい理由の一つと考えられています(Nakanishi 2022)。骨転移の経路はBatson静脈叢とはでも解説しています。
| 検査 | 特徴(Nakanishi 2022) |
|---|---|
| 骨シンチ | 感度は高いが特異度は低い。骨を作る反応(骨芽細胞の活動)に集まる。外傷・炎症でも集まる |
| 単純X線 | 特異度は高いが感度が低い(44〜50%)。骨梁の中の病変は見えにくい |
| CT | 感度71〜100%。骨破壊や硬化像、軟部への進展は分かりやすいが、骨梁間型の広がりを見つける力は議論がある |
| MRI | 骨・軟部のコントラストが良く、感度・特異度とも良好。視野が狭い、撮像時間が長いという弱点を、全身MRIが補った |
骨シンチの見方と偽陽性は骨シンチの見方と偽陽性、骨転移の画像診断全般は骨転移の画像診断にまとめています。
全身MRIの撮り方と見方
拡散強調像(DWI)を全身に使う手法は、2004年に、呼吸をしたまま撮れて、背景の信号を抑えるDWIBS(diffusion-weighted imaging with background body signal suppression)として報告されました(Nakanishi 2022)。日本の施設の報告では、頭の下から大腿骨の近位までを多チャンネルコイルで覆い、次の系列を撮っていました(Nakanishi 2022)。
| 系列 | 目的 |
|---|---|
| 脊椎の矢状断T1強調像・STIR像 | 背骨の骨髄の変化(T1で暗い所、STIRで明るい所) |
| 体の冠状断(同相・逆相、Dixon法) | 全身の骨髄の分布と、脂肪の混ざり方 |
| 横断の拡散強調像(b値0と1000)とADCマップ | 転移を高信号で拾う。冠状断・放射状に再構成し、白黒を反転して見る |
この施設では、位置合わせを含めた全体の検査時間は約23分でした。T1強調像と拡散強調像を重ねた融合画像も作ります。読影は画像が多いため、矢状断・冠状断・横断の3方向を、基準線をつけて同時に見る環境が大切とされています(Nakanishi 2022)。撮る範囲から下腿を外してよいかは議論があり、ある試験では、下腿などの末梢だけに転移がある例はなく、見逃されたのは体幹の骨だけでした(Nakanishi 2022)。
骨転移の見え方
造骨型:T1で暗く、DWIで明るい
前立腺癌の骨転移は、造骨型(骨を作る型)が典型です。CTでは硬化像として見え、T1強調像で低信号、拡散強調像で高信号になります(Nakanishi 2022)。骨シンチ・CTの見方に慣れた読影者は、同じ病変がMRIでどう見えるかを組にして覚えると、読みやすくなります。
骨梁間型:CTで見えない転移
骨梁間型(inter-trabecular type)は、骨梁の形を変えずに骨髄のすきまに広がる転移で、CTでは見えず、MRIで見つかります。混合型や溶骨型も、MRIで見つかることがあります(Nakanishi 2022)。
症例 78歳男性 去勢抵抗性前立腺癌の骨転移(骨梁間型)

引用:Nakanishi K, et al. Jpn J Radiol 2022;40(3):229-244 (Figure 3) CC BY 4.0 PMC
前立腺癌の経過が4年で、去勢抵抗性に移行した患者さんです。T1強調像(a)で第8・第11胸椎などに低信号が多発し、矢状断に再構成した拡散強調像(b)でも高信号が多発しています。一方、CTの矢状断(c)では、明らかな硬化像や溶骨像がなく、CTだけでは多発骨転移の診断はできませんでした。論文では、これが骨梁間型の転移とされています(Nakanishi 2022)。
ほかの検査との比較
| 報告 | 結果 |
|---|---|
| 高リスク前立腺癌100人(Lecouvet 2012) | 骨転移の感度は、骨シンチ(+必要時の単純X線)86%、全身MRI 98〜100%。特異度はどちらも98%以上。骨シンチ陰性の55人のうち7〜8人で、全身MRIが骨転移を見つけた。リンパ節の腫大の検出はCTと同等(感度77〜82%) |
| メタ解析15研究1,939人(Sun 2020) | 全身MRIの感度94%、特異度99%。骨シンチは感度80%、特異度95% |
| 前立腺癌・乳癌36人(Gutzeit 2010) | 病変が10個を超える人では、DWIBSの感度0.97/0.91(2人の読影者)、骨シンチは0.48/0.42。病変が5個未満では差がなかった。良性病変を良性と判定する力は骨シンチが0.93/0.87、DWIBSが0.20/0.13 |
| 前立腺癌55人(Dyrberg 2019) | 骨転移の感度・特異度・精度は、PSMA PET/CT 100/100/100%、NaF PET/CT 95/97/96%、全身MRI 80/83/82%。精度はPSMA PET/CTが全身MRIより有意に高く、NaF PET/CTとは差がなかった |
| 前立腺癌134人(Van Damme 2021) | 骨・リンパ節・内臓をあわせた転移の検出は、PSMA PET/CTと全身MRIに有意差なし(AUC 0.96と0.90)。初回診断例のリンパ節転移の検出はPSMA PET/CTが有意に優れた |
報告ごとに結果が違うのは、対象者の数・病期・基準が異なるためです。全身MRIは、骨シンチやCTより転移を見つけやすい一方、PSMA PETと比べると骨転移の精度が劣った報告もあります(Dyrberg 2019)。病変が多い人では全身MRIの利点が大きく、少ない人では差が出にくいことにも注意が必要です(Gutzeit 2010)。PSMA PETについてはPSMA PETとはを参考にしてください。
治療効果の判定とMET-RADS-P
全身MRIは放射線を使わず、繰り返して撮れるため、治療の効果の判定にも使われます(Nakanishi 2022)。このときの報告の標準が、MET-RADS-P(METastasis Reporting and Data System for Prostate Cancer)です。撮像・読影・報告を標準化するための国際的な専門家の合意で、全身を14の領域に分けて評価する様式です(Padhani 2017、Nakanishi 2022)。
50件の全身MRIを、経験9年の放射線科医と、6カ月の研修を受けた研修医が別々に読んだ検討では、骨の領域では、脊椎・骨盤・四肢などで一致度が非常に高く(κ=0.81〜1.0)、骨盤のリンパ節や原発部の軟部では一致度が下がりました(Pricolo 2020)。
治療後に見られる変化に注意
治療後のCTで骨の硬化が見られる場合、転移そのものの骨硬化と、治療に反応して骨が再び硬くなった(re-ossification)場合の2通りがあります。CTでは見分けにくく、拡散強調像では、前者は高信号が残り、後者は信号や腫瘍の体積が下がります(Nakanishi 2022)。同じ患者さんで、治療に反応した病変と新しい病変が同時に見られることもあります(Nakanishi 2022)。
少数の転移(オリゴ転移)
オリゴ転移は、遠隔転移が少数にとどまる状態です。前立腺癌では、同時に3個の転移(骨・リンパ節)があることを、オリゴ転移を定義する基準に使うべきだという合意(パネルの85%)が報告されています(Nakanishi 2022)。CTは小さな病変の検出力が低く、病変の数を少なく見積もる可能性があり、全身MRIがオリゴ転移の検出に使われます(Nakanishi 2022)。
症例 82歳男性 前立腺癌の骨転移とリンパ節転移(少数の転移)

引用:Nakanishi K, et al. Jpn J Radiol 2022;40(3):229-244 (Figure 9) CC BY 4.0 PMC
全身の拡散強調像を再構成した画像(a)で、第2胸椎に高信号(矢頭)があり、右内腸骨リンパ節の腫大も疑われます(矢印)。第2胸椎の横断像(b)で高信号、骨盤の横断像(c)で右腸骨リンパ節の腫大と高信号が見られます。この時点のPSAは34.903ng/mLでした(Nakanishi 2022)。
読影のときのチェックポイント
| 場面 | 確認すること |
|---|---|
| 見る範囲 | 背骨・骨盤・肩・大腿骨近位(転移の好発部位)を、3方向で、基準線をつけて確認する(Nakanishi 2022) |
| DWIで高信号 | T1強調像で暗い所と対応するか、CTで硬化像があるかを見る。DWIの高信号だけで転移と決めない(Gutzeit 2010) |
| 正常の高信号 | 脾臓、精巣、脊髄、腸管などの正常構造は拡散が制限されて見える(Nakanishi 2022)。赤色髄は骨転移とMRIで間違えやすい赤色髄も参照 |
| CTで所見がない | 骨梁間型の転移の可能性を考え、T1強調像とDWIを確認する(Nakanishi 2022) |
| 治療後 | CTの硬化像が転移の進行か、再骨化かを、DWIの信号と合わせて判断し、新しい病変も探す(Nakanishi 2022) |
| 報告 | MET-RADS-Pの領域ごとに、病変の有無と治療前後の変化を記載する(Padhani 2017) |
検査の選び方や、結果の受け止め方は、年齢や病期、治療の状況で変わります。検査について気になることがあれば、主治医に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 骨シンチの代わりに全身MRIを撮れば十分ですか?
A. 高リスクの前立腺癌で、骨シンチ(+必要時の単純X線)とCTの代わりになりうるという報告があります(Lecouvet 2012)。ただし、PSMA PETとの比較では全身MRIの骨転移の精度が劣った報告もあり(Dyrberg 2019)、実施できる検査や目的で使い分けます。
Q. CTで異常がないのに、MRIで骨転移と言われました。なぜですか?
A. 骨梁の形を変えずに骨髄に広がる骨梁間型の転移は、CTでは見えず、MRIで見つかります(Nakanishi 2022)。
Q. 拡散強調像で光れば、転移と考えてよいですか?
A. 転移でないこともあります。良性の病変を良性と判定する力は、骨シンチより弱い報告があります(Gutzeit 2010)。T1強調像やCTと合わせて判断します。
Q. 治療の効果も全身MRIで分かりますか?
A. 拡散強調像で、治療に反応した病変の信号や体積の低下と、新しい病変を同時に評価できます。報告の標準としてMET-RADS-Pがあります(Nakanishi 2022、Padhani 2017)。
あわせて読みたい:骨軟部腫瘍のWHO分類(2020年・第5版)、膝蓋腱・四頭筋腱断裂の画像診断、リン酸塩尿性間葉系腫瘍の画像診断
参考文献
- Lecouvet FE, El Mouedden J, Collette L, et al. Can whole-body magnetic resonance imaging with diffusion-weighted imaging replace Tc 99m bone scanning and computed tomography for single-step detection of metastases in patients with high-risk prostate cancer? Eur Urol. 2012;62(1):68-75. PubMed
- Sun G, Zhang YX, Liu F, et al. Whole-body magnetic resonance imaging is superior to skeletal scintigraphy for the detection of bone metastatic tumors: a meta-analysis. Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2020;24(13):7240-7252. PubMed
- Gutzeit A, Doert A, Froehlich JM, et al. Comparison of diffusion-weighted whole body MRI and skeletal scintigraphy for the detection of bone metastases in patients with prostate or breast carcinoma. Skeletal Radiol. 2010;39(4):333-43. PubMed
- Dyrberg E, Hendel HW, Huynh THV, et al. (68)Ga-PSMA-PET/CT in comparison with (18)F-fluoride-PET/CT and whole-body MRI for the detection of bone metastases in patients with prostate cancer: a prospective diagnostic accuracy study. Eur Radiol. 2019;29(3):1221-1230. PubMed
- Van Damme J, Tombal B, Collette L, et al. Comparison of (68)Ga-Prostate Specific Membrane Antigen (PSMA) Positron Emission Tomography Computed Tomography (PET-CT) and Whole-Body Magnetic Resonance Imaging (WB-MRI) with Diffusion Sequences (DWI) in the Staging of Advanced Prostate Cancer. Cancers (Basel). 2021;13(21). PubMed
- Padhani AR, Lecouvet FE, Tunariu N, et al. METastasis Reporting and Data System for Prostate Cancer: Practical Guidelines for Acquisition, Interpretation, and Reporting of Whole-body Magnetic Resonance Imaging-based Evaluations of Multiorgan Involvement in Advanced Prostate Cancer. Eur Urol. 2017;71(1):81-92. PubMed
- Nakanishi K, Tanaka J, Nakaya Y, et al. Whole-body MRI: detecting bone metastases from prostate cancer. Jpn J Radiol. 2022;40(3):229-244. PubMed
- Pricolo P, Ancona E, Summers P, et al. Whole-body magnetic resonance imaging (WB-MRI) reporting with the METastasis Reporting and Data System for Prostate Cancer (MET-RADS-P): inter-observer agreement between readers of different expertise levels. Cancer Imaging. 2020;20(1):77. PubMed
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