有毛性ポリープ 新生児ののど 脂肪と茎の腫瘤

生まれてすぐの赤ちゃんが、ミルクでむせたり、ゼーゼーと息苦しそうにしたりして、のどに腫瘤があると言われました。「有毛性ポリープ」とは何ですか?
有毛性ポリープは、鼻の奥からのど(鼻咽頭・中咽頭)にできる、生まれつきの良性の腫瘤です。皮膚と同じ成分でおおわれ、中に脂肪や筋肉・軟骨を含みます。CTやMRIで「脂肪を含む、茎のある腫瘤」に見えるのが手がかりです。新生児の呼吸や哺乳の問題で出会うことがあるので、画像の見え方を整理します。

先に結論:新生児・乳児ののどの茎のある腫瘤で、脂肪を含めば有毛性ポリープを考える

項目 ポイント
何か 外胚葉(皮膚・毛・汗腺)と中胚葉(脂肪・筋肉・軟骨)からなる、まれな良性腫瘤(二胚葉性の迷入腫)
頻度・性別 出生4万人に1人未満。女児に多い(約3.5〜6倍)。左側に多い
症状 呼吸困難、ミルクでむせる、いびき、鼻づまり。生まれてすぐ窒息に至ることもある
画像の特徴 境界明瞭で脂肪を含み、中心に軟部組織の「茎」がある。茎はわずかに造影され、脂肪は造影されない
注意 気管挿管で隠れて見落とされる。ほかの先天異常(口蓋裂など)を伴うことがあり、画像で一緒に確認する

有毛性ポリープとは

有毛性ポリープ(hairy polyp)は、口腔から鼻咽頭にかけての領域にできる、まれな先天性の腫瘤です。組織を調べると、表面は成熟した重層扁平上皮(皮膚と同じ)におおわれ、毛包・脂腺・汗腺などの皮膚付属器を持ちます(外胚葉由来)。中には、線維脂肪組織・筋肉・軟骨などの中胚葉由来の成分があります(Yang 2023)。外胚葉と中胚葉の2つの胚葉からなるので、「二胚葉性」と呼ばれます。

  • 呼び名:類皮腫(dermoid)、有毛性ポリープ、迷入腫(choristoma)は、文献でしばしば同じ意味で使われ、奇形腫の最も原始的な形とも言われます(Yang 2023)
  • 成り立ち:はっきりしていません。迷入腫とする考えと、第1・第2鰓弓の発生の異常による奇形とする考えがあります(Yang 2023)
  • 頻度:出生4万人に1人未満とされますが、先天性の鼻咽頭の腫瘤では最も多いとされています(Yang 2023)
  • 性別:女児に多く、14例の検討では女児:男児が3.7:1でした。従来は6:1とも報告されています(Yang 2023)。文献147例の系統的レビューでも、女児と小児の発症が多いとされています(Hallak 2025)

どこにできて、どんな症状が出るか

鼻咽頭の外側壁、軟口蓋の上面(後面)から出ることが多く、扁桃・舌・硬口蓋・耳管・中耳から出ることもあります。耳管や中耳に由来するものは20〜45%とされます(Yang 2023)。14例の検討では、軟口蓋の後面から50.0%、咽頭の外側壁(耳管の開口部、耳管、咽頭陥凹を含む)から28.6%でした。左側が64.3%、右側が28.6%、正中が7.1%で、左側に多い傾向でした(Yang 2023)。左側が6.5倍多いという報告もありますが、理由は分かっていません(Yang 2023)。

症状(14例) 割合(Yang 2023)
呼吸困難 42.9%
多呼吸 35.7%
いびき・鼻づまり・口呼吸・口の周りのチアノーゼ・ミルクでむせる 各21.4%
難聴 14.3%
心肺蘇生が必要になった窒息 3例(21.4%)

14例のうち11例が新生児で、初発の時期の中央値は生後1日でした。一方、無症状で、風邪の診察のときに偶然見つかった例もありました(Yang 2023)。大きな鼻咽頭のポリープが、生まれてすぐに気道をふさぎ、挿管と手術が必要になった報告もあります(Benaim 2024)。茎が長いと、啼泣や嚥下で腫瘤が動き、咳で口の中に出てくることもあります(Yang 2023)。子どもの上気道の病気は子どもの上気道閉塞のレントゲン、喘鳴の鑑別は子どもの喘鳴・咳のレントゲンで解説しています。

画像所見:脂肪と茎を探す

検査 典型的な見え方(Yang 2023)
CT 境界明瞭な、脂肪濃度の腫瘤で、中心に軟部組織濃度の芯(茎)がある。茎はわずかに造影され、脂肪は造影されない
MRI T1・T2強調像でともに高信号(脂肪と同じで、脂肪抑制で信号が落ちる)。中心の芯は筋肉と同じ程度の低信号で、わずかに造影される
拡散強調像 拡散の低下はない
エコー 境界明瞭な卵円形の、動く腫瘤として見える

14例の検討では、腫瘤の大きさは0.6〜4.3cmで、78.6%が「脂肪を含み、中心に軟部組織の芯がある、茎のある腫瘤」という典型的な形でした。形は、ソーセージ状(35.7%)、舌状(28.6%)、洋ナシ状(14.3%)などです(Yang 2023)。乳児6例の別の検討でも、腫瘤は脂肪の濃度または信号を持ち、茎のある、ポリープ状の境界明瞭な腫瘤で、茎はわずかに造影され、脂肪は造影されませんでした(Sheng 2021)。

CTは骨の評価(頭蓋底・外耳道・中耳・頸動脈管)や、口蓋裂・耳小骨の奇形など合併する異常の発見に向いています。MRIは、腫瘤の成分と範囲、血管や周囲の軟部組織との関係の評価に向いています。ただし、腫瘤が動きやすいため、MRIでは動きのアーチファクトが出ます(Yang 2023)。典型的な画像であれば、造影剤はいつも必要とは限りません。非典型な所見のときや、中耳・傍咽頭間隙のようなまれな場所では、造影が鑑別と範囲の評価に役立ちます(Yang 2023)。

症例 口蓋裂を伴う軟口蓋の有毛性ポリープ

口蓋裂を伴う軟口蓋の有毛性ポリープ CT・MRI(造影T1・矢状断T1・冠状断CT骨条件)
引用:Yang S, et al. Diagnostics (Basel). 2023;13(7):1328(Figure 1)、CC BY 4.0(図は加工していません)

生後まもなく呼吸困難と吸気性喘鳴をきたした女児の例です。軟口蓋の腫瘤が左の鼻腔に突出して両側の後鼻孔をふさいでおり、CT(A)では主に低吸収で、内部に不整な中等度吸収の茎があります。造影後のT1強調像(B)では茎がわずかに造影され、ほかは造影されません。矢状断T1強調像(C)では主に高信号の腫瘤の中心に低信号の茎があります。骨条件の冠状断CT(D)では、口蓋裂を伴っています。

症例 咽頭の外側壁から出る有毛性ポリープ

咽頭外側壁から出る有毛性ポリープ CT(矢状断・軸位断・造影)
引用:Yang S, et al. Diagnostics (Basel). 2023;13(7):1328(Figure 2)、CC BY 4.0(図は加工していません)

生後29日に咽頭の閉塞感で受診した女児の例です。矢状断・軸位断のCT(A、B)で、左の咽頭外側壁から出るソーセージ状の脂肪濃度の腫瘤(短い矢印)と、軟部組織濃度の芯(長い矢印)があります。造影後のCT(C)では、茎はわずかに造影され、ほかは造影されません。

合併する先天異常を見逃さない

有毛性ポリープは、特定の症候群とははっきり結びついていませんが、ほかの先天異常を伴うことがあります。14例のうち6例(42.9%)に別の異常があり、口蓋裂、耳小骨の離断、前頭部正中の脂肪腫、第1鰓裂瘻、下顎の腫瘍などがありました。5例は、撮像した範囲の偶然の所見でした(Yang 2023)。第1・第2鰓弓の異常を持つ患者さんで多いとされています(Yang 2023)。画像が、合併症を見つける機会になるので、臨床的に疑う場合は、CTやMRIで頭蓋底・耳・口蓋まで確認することが勧められています(Yang 2023)。

鑑別診断:脂肪を含む新生児ののどの腫瘤

CT・MRIで脂肪が多いことは、神経芽腫・血管腫・脳瘤、胸腺・舌・甲状舌管由来の嚢胞などを除く手がかりです。鑑別は、過誤腫・奇形腫・類皮腫・真珠腫に絞られます(Yang 2023)。

病気 有毛性ポリープとの違い(Yang 2023)
奇形腫 嚢胞と充実部からなり、石灰化が約半数にある。男女差がない。悪性の場合がある(有毛性ポリープで悪性の報告はない)
類皮腫(嚢胞) 薄い壁の嚢胞で、口腔の中央から前方に多い。内部は不均一で、液面形成やMRIで拡散制限がある
過誤腫 より不均一で、成人に多い
真珠腫(中耳) 耳小骨や乳突蜂巣の骨のびらんを伴う。造影されず、拡散強調像で拡散制限がある(中耳の有毛性ポリープは芯がわずかに造影され、拡散制限がない)

奇形腫の一般像は縦隔成熟嚢胞性奇形腫、未熟奇形腫、中耳・錐体骨の病変との鑑別はコレステリン肉芽腫と真珠腫の違いも参考になります。

経過と見落としの注意

治療は、茎の根元での外科的な切除が標準です(Hallak 2025、Yang 2023)。14例の全例で切除され、1年以上の経過で再発はありませんでした。悪性化の報告はなく、再発も極めてまれとされます(Yang 2023)。自然に脱落した例も2例、報告されています(Yang 2023)。7例の報告では、出血で亡くなった1例があり、術後は気道の閉塞だけでなく、出血にも注意して経過をみることが大切と述べられています(Yu 2018)。

研修医が見落としやすい点

  • 気管挿管で腫瘤が隠れる:腫瘤はやわらかく動くため、挿管したチューブの陰で口の中の診察では見落とされることがあります。MRIで診断された例があります(Yang 2023)
  • 小さな腫瘤でも症状が出る:茎のある小さなポリープでは、症状が目立たず、成長してから見つかることもあります(Yang 2023)
  • 乳児だけの病気ではない:組織診断された4例では、年齢が生後1か月から18歳に及び、生下時から症状のあった例と、10代で見つかった例がありました(Tariq 2013)
  • 新生児の呼吸・哺乳の問題で、胸部X線に異常がないときは、鼻咽頭・咽頭の腫瘤も考えます。

よくある疑問(Q&A)

Q1. 有毛性ポリープは悪性ですか?

悪性化の報告はなく、良性の腫瘤です。ただし、位置や大きさによっては気道をふさぐため、早めの対応が必要になります(Yang 2023、Hallak 2025)。

Q2. なぜ「毛」のポリープと呼ぶのですか?

表面が皮膚と同じ組織でおおわれ、毛包や皮脂腺などの付属器があるためです(Yang 2023)。年齢・茎・細い毛が、診断の手がかりになるとされています(Yu 2018)。

Q3. CTとMRIのどちらを撮りますか?

どちらも有用で、CTは骨の評価、MRIは成分や周囲との関係に向いています(Yang 2023)。赤ちゃんの検査は、必要性と負担を考えて、小児科・耳鼻咽喉科・放射線科のチームで決められます。

Q4. 症状はなくても見つかることはありますか?

あります。風邪の診察で偶然見つかった無症状の例も報告されています(Yang 2023)。赤ちゃんの呼吸や哺乳に気になる様子があれば、早めに医療機関に相談してください。

あわせて読みたい:頭頸部癌の治療後画像の読み方、多発外傷の頭頸部評価、頭頸部のサルコイドーシス

参考文献

  1. Yang S, Li H, Gao J, et al. CT and MRI Features of Hairy Polyps in Neonates and Infants: A Retrospective Study of 14 Patients. Diagnostics (Basel). 2023;13(7). PubMed
  2. Sheng M, Mi Y, Gao F, et al. Imaging features of pharyngeal hairy polyps in infants. Oral Radiol. 2021;37(1):95-100. PubMed
  3. Hallak D, McColl LF, Lind MM, et al. Pediatric Hairy Polyp of the Naso-Oropharynx: A Case Report and Systematic Literature Review. Laryngoscope Investig Otolaryngol. 2025;10(5):e70262. PubMed
  4. Tariq MU, Din NU, Bashir MR. Hairy polyp, a clinicopathologic study of four cases. Head Neck Pathol. 2013;7(3):232-5. PubMed
  5. Benaim EH, Worden CP, Bantumilli S, et al. Large Nasopharyngeal Hairy Polyp Causing Immediate Respiratory Distress at Birth. Laryngoscope. 2024;134(9):4118-4121. PubMed
  6. Yu Z, Cao Z, Fu H, et al. Focusing on the clinical diagnosis and risk of hairy polyp: A report of 7 cases. Turk J Pediatr. 2018;60(4):460-463. PubMed

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