
先に結論:第4脳室は「底」「天井」「出口」で覚え、病変は「どこから出たか」で考える
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 場所 | 橋・延髄の背側、小脳の腹側。上は中脳水道につながり、下は脊髄の中心管へ続く |
| 底(菱形窩) | 顔面神経丘・舌下神経三角・迷走神経三角などの隆起があり、脳神経の核が近い |
| 出口 | 正中の1か所(Magendie孔)と左右の外側(Luschka孔)から髄液が脳槽へ出る |
| 画像のコツ | 正中矢状断で形と大きさを見て、軸位断で左右の側方陥凹と孔を確認する |
| 病変の位置 | 底から出る・天井(虫部)から出る・孔へ伸びる、の違いが鑑別の手がかり |
第4脳室の解剖:底・天井・出口
第4脳室は脳室系の一番下の部屋で、上は中脳水道、下は延髄の下端で脊髄の中心管につながります。形はテントのような三角形の空間で、前(腹側)に橋と延髄、後ろ(背側)に小脳があります。脳室の髄液の流れ全体は脳室と髄液の流れ(モンロー孔・中脳水道・ルシュカ孔)で解説しています。
| 部位 | 何があるか | 画像でのポイント |
|---|---|---|
| 底(前壁):菱形窩 | 橋と延髄の背面。正中溝、顔面神経丘、舌下神経三角、迷走神経三角、髄条など | 正中矢状断で、橋と延髄の背側の輪郭を見る |
| 天井(後壁) | 上髄帆、下髄帆、小脳虫部(小節・室頂)。下髄帆の部分に脈絡叢がある | 天井の頂点(室頂)と、後方の小脳虫部との位置関係 |
| 側壁 | 上方は上小脳脚、下方は下小脳脚と中小脳脚 | 軸位断で左右対称か。小脳脚は小脳脚のMRI解剖も参照 |
| 側方陥凹とLuschka孔 | 左右の外側へ伸びる袋と、小脳橋角槽へ開く孔 | 小脳橋角部へ脳室の一部が出ていないか |
| Magendie孔 | 正中の下の出口。大槽に開く | 正中矢状断で、第4脳室の下方から大槽への連続性 |
| 最下端(閂:obex) | 第4脳室の底の最も下の部分。中心管への移行部 | 下端の形。最後野(嘔吐中枢に関係する領域)が近い |
菱形窩の隆起は、神経外科の手術でも目印になります。第4脳室の底に電気刺激を加えて、顔面神経丘と舌下神経三角を手術中に、脳幹に入る前に確認した報告があり、この隆起が脳幹の中の神経核に近いことが実際に使われています(Strauss 1993)。脳幹に腫瘍がある場合は、この目印の位置がずれるため、解剖を知っておくことが大切です。
脈絡叢は髄液を作る組織で、第4脳室では下髄帆から外側陥凹へ伸びて、Luschka孔から小脳橋角槽へ少し出ることがあります。正常の見え方は脈絡叢はどこ?脈絡叢とはで確認できます。
MRIで第4脳室を見る順番
- 正中矢状断(T2・T1):中脳水道から第4脳室、下端のobex、中心管への連続を追う。形と大きさ、小脳虫部との位置関係。
- 軸位断(T2):橋の高さと延髄の高さで、左右対称か。側方陥凹とLuschka孔の周囲に腫瘤や髄液の貯留がないか。
- 造影T1:脳室内・壁・脈絡叢の造影。腫瘍では、造影の程度と範囲を見る。
- DWI・ADC:腫瘍の細胞密度の手がかり(後述)。
- 脳室の大きさ:第3脳室と側脳室も含めて、拡大があるか。
画像の基本は頭部MRIの解剖|横断像で部位の名前と場所をレベルごとに解説で、橋・延髄・小脳の高さを確認してから、第4脳室の形を見るとよいでしょう。
第4脳室そのものに病変が見えなくても、形の変化が間接的な手がかりになります。小脳や脳幹に腫瘤や浮腫があると、第4脳室は押されて細くなったり、左右どちらかへずれたり、消えて見えなくなったりします。反対に、出口の閉塞では第4脳室が丸みを帯びて拡大します。正中矢状断で形をいつも確認する習慣をつけると、小さな変化にも気づきやすくなります。
第4脳室の病気:位置と年齢で考える
第4脳室の腫瘍は、小児と成人で顔ぶれが違います。子どもの脳腫瘍は、後頭蓋窩(テント下)に最も多く(D’Arco 2018)、第4脳室に関わる腫瘍の代表は髄芽腫、上衣腫、毛様細胞性星細胞腫です。74例の検討では、第4脳室に関わる腫瘍は上衣腫21例、髄芽腫17例、毛様細胞性星細胞腫13例の順でした(Payabvash 2018)。
| 腫瘍 | 主な年齢・位置 | MRIのポイント |
|---|---|---|
| 髄芽腫 | 小児。第4脳室の天井(虫部)側から | 拡散が制限され、ADCが低い。造影される |
| 上衣腫 | 小児に多い。第4脳室の底や壁から | 孔(Luschka孔・Magendie孔)を通って周囲の槽へ伸びる。石灰化・嚢胞を伴うことがある |
| 毛様細胞性星細胞腫 | 小児。小脳半球や虫部から第4脳室へ | 嚢胞と壁在結節。ADCは高い |
| 上衣下腫(subependymoma) | 成人(中央値52歳)。第4脳室の下部〜obex | T1等信号・T2高信号で造影される例が多い。孔へ伸びることがある |
小児の3つの腫瘍では、ADCの平均が髄芽腫0.76、上衣腫1.10、毛様細胞性星細胞腫1.49(いずれも×10-3 mm2/sec)と、髄芽腫が最も低く、毛様細胞性星細胞腫が最も高いと報告されています(7研究のメタ解析、Dury 2022)。上衣腫と髄芽腫を分けるカットオフは0.96、上衣腫と毛様細胞性星細胞腫を分けるカットオフは1.26でしたが、研究によって測り方が違うため、数値は参考にとどめます(Dury 2022)。前述の74例の検討では、ADC・腫瘍の形・造影のパターン・Luschka孔やMagendie孔への伸び・年齢を組み合わせると、上衣腫・髄芽腫・毛様細胞性星細胞腫を感度71〜82%、特異度91〜95%で見分けられたと報告されています(Payabvash 2018)。上衣腫の全体像は上衣腫とは?子ども(第4脳室)と大人(脊髄・テント上)の特徴にまとめています。
症例 第4脳室の上衣下腫のMRI

引用:Haider AS, et al. Neuroradiology 2022;64:1795-1800(Figure 1)。PMC、CC BY 4.0
第4脳室の上衣下腫(subependymoma)のMRIです。A 造影T1矢状断で、第4脳室の体部より下の中程度に造影される腫瘤が、obexに向かって伸びています。B 造影T1矢状断で、ほとんど造影されない腫瘤も同じ低い位置にあり、造影のされ方に幅があることが分かります。C T2軸位断で、正中にあって軽度のT2高信号を示し、Magendie孔の方へ伸びる典型的な例です。D T2軸位断で、より強いT2高信号を示し、両側のLuschka孔を通って伸びています。
29例の検討では、全例が第4脳室の体部の下端からobexの間に位置し、14例でMagendie孔またはLuschka孔への進展がありました。T1で等信号が22例、T2で高信号が22例、造影されたのが24例でした(Haider 2022)。この一定の場所は、画像診断の手がかりになります。
なお、腫瘍の診断名や悪性度は、2021年のWHO分類(第5版)で分子診断も取り入れる形に改訂されています(Louis 2021)。画像は、組織や遺伝子の診断の前に「どんな腫瘍を考えるか」を絞る役割を持ちます。
第4脳室が拡大しているとき:水頭症の見方
第4脳室の出口(Magendie孔・Luschka孔)や、その先の大槽・小脳橋角槽が閉塞すると、髄液が流れずに脳室全体が拡大する水頭症になります。腫瘍が出口をふさぐ場合は、画像で「どこで閉塞しているか」を、拡大している脳室の範囲で考えます。
| 拡大している脳室 | 閉塞が疑われる場所 |
|---|---|
| 側脳室と第3脳室が拡大、第4脳室は正常または小さい | 中脳水道(第3脳室と第4脳室の間) |
| 側脳室・第3脳室・第4脳室すべてが拡大 | 第4脳室の出口、またはその先の槽(大槽・小脳橋角槽など) |
このような「どこから拡大しているか」の考え方は、脳室と髄液の流れの記事でイラストとともに確認できます。
見落としやすいところ・よくある間違い
| 間違いやすい点 | 考え方 |
|---|---|
| 第4脳室が小さい=異常なし | 腫瘍が第4脳室を埋めたり、孔へ伸びたりしている場合、形の変化は小さいことがある。孔の周囲と小脳橋角槽を見る |
| 脈絡叢は異常 | 第4脳室の脈絡叢は、外側陥凹からLuschka孔へ伸びる。左右対称で、年齢相応の石灰化は異常とは限らない |
| 矢状断だけ見て終わる | 側方陥凹・Luschka孔の評価には軸位断が必要 |
| ADCの数値だけで腫瘍を決める | カットオフは研究ごとに違い、測り方で変わる(Dury 2022)。形・造影・位置・年齢と組み合わせる |
| 脳室内の腫瘤は上衣腫 | 子どもでは髄芽腫、毛様細胞性星細胞腫、成人では上衣下腫など、年齢と位置で鑑別する(Payabvash 2018、Haider 2022) |
よくある疑問(Q&A)
Q. 第4脳室の「閂(obex)」とは何ですか?
A. 第4脳室の底の最も下の端で、中心管へ移る部分です。この付近は、嘔吐に関わる最後野があります。上衣下腫の29例では、全例の腫瘍が第4脳室の体部の下端からobexの間にありました(Haider 2022)。
Q. 第4脳室の出口をふさぐと、どうなりますか?
A. 髄液が流れなくなり、第4脳室より上の脳室全体が拡大する水頭症になります。画像では、側脳室・第3脳室・第4脳室すべてが拡大し、出口か、その先の槽での閉塞を疑います。
Q. 小児の第4脳室の腫瘍は、ADCで見分けられますか?
A. 7研究のメタ解析では、ADCの平均が髄芽腫0.76、上衣腫1.10、毛様細胞性星細胞腫1.49(×10-3 mm2/sec)と差がありました。ただし、測り方の違いがあるため、形・造影・位置・年齢と組み合わせて判断します(Dury 2022)。
Q. 頭痛や吐き気、ふらつきが続いています。第4脳室の病気が心配です。
A. 頭痛、嘔吐、ふらつき、歩きにくさなどが続くときは、医療機関を受診して相談してください。急に強い症状が出た場合は、早めの受診が大切です。
あわせて読みたい:脳神経の解剖、脊髄伝導路の解剖、辺縁系・Papez回路の解剖
参考文献
- Haider AS, El Ahmadieh TY, Haider M, et al. Imaging characteristics of 4th ventricle subependymoma. Neuroradiology. 2022;64(9):1795-1800. PubMed
- Dury RJ, Lourdusamy A, Macarthur DC, et al. Meta-Analysis of Apparent Diffusion Coefficient in Pediatric Medulloblastoma, Ependymoma, and Pilocytic Astrocytoma. J Magn Reson Imaging. 2022;56(1):147-157. PubMed
- Payabvash S, Tihan T, Cha S. Volumetric voxelwise apparent diffusion coefficient histogram analysis for differentiation of the fourth ventricular tumors. Neuroradiol J. 2018;31(6):554-564. PubMed
- D’Arco F, Khan F, Mankad K, et al. Differential diagnosis of posterior fossa tumours in children: new insights. Pediatr Radiol. 2018;48(13):1955-1963. PubMed
- Strauss C, Romstöck J, Nimsky C, et al. Intraoperative identification of motor areas of the rhomboid fossa using direct stimulation. J Neurosurg. 1993;79(3):393-9. PubMed
- Louis DN, Perry A, Wesseling P, et al. The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: a summary. Neuro Oncol. 2021;23(8):1231-1251. PubMed
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