小児脳梗塞のMRI CTが正常でも脳梗塞は否定できない

子どもが急に左手が動かなくなり、病院でCTを撮ったら「異常なし」でしたが、MRIで脳梗塞と言われました。子どもでも脳梗塞になるのですか?CTでは分からないのですか?
子どもの脳梗塞は大人よりずっとまれですが、実際に起こります。そして、CTでは見つからないことが少なくありません。小児の脳梗塞はMRI(特に拡散強調像、DWI)で診断するのが基本です。研修医の方が『子どもの突然の麻痺』を見たときに、画像で何を考え、何と区別するかを整理します。

先に結論:子どもの突然の神経症状は「まずMRI(DWI)」。CTが正常でも脳梗塞は否定できない

項目 ポイント
頻度 まれ。新生児は出生3,500人に1人、乳児期以降は年に10万人あたり1〜2人(報告によって幅がある)
症状 片麻痺・顔面の麻痺などの局所症状が多いが、頭痛・けいれん・意識障害のこともある。乳児はけいれんで始まりやすい
画像の要点 動脈性脳梗塞の診断率は、CTが66%、MRIが100%(英国の報告)。MRIをまず撮る
原因 動脈の異常(解離・局所脳動脈症・もやもや病など)、心臓の病気、凝固の異常、感染後など多様
似た病気 片頭痛、けいれん後の麻痺、ベル麻痺、心因反応が多く、脳卒中は少数

小児脳梗塞とは

脳梗塞は、脳の血管が詰まって、その血管が養う範囲の脳が障害される病気です。小児の脳梗塞は大人と違い、動脈硬化が原因になることはほとんどなく、原因が年齢によって異なります。頻度は新生児で出生3,500人に1人、乳児期以降で年に10万人あたり1〜2人とされ、周産期、5歳未満、思春期に多い傾向があります(Mastrangelo 2022)。カナダとドイツの前向き研究では、より低い発生率(10万人あたり0.41〜1.72)も報告されており、数字は研究の方法で変わります(Mastrangelo 2022)。

まれなため、診断が遅れやすいことが問題です。英国南部の集団調査では、動脈性脳梗塞(AIS)の診断に役立つ画像が撮られるまでの時間は中央値で24.3時間(脳出血は2.9時間)でした(Mallick 2015)。

症状:大人と違う点

小児の脳梗塞も、大人と同じ局所症状(片麻痺、顔面の麻痺、言語障害、視覚障害、失調)で起こりますが、それ以外の症状が多いのが特徴です。次の表は、総説にまとめられた頻度です(Mastrangelo 2022)。

症状 頻度
局所症状(全体) 82〜85%
 片麻痺 72%
 顔面の麻痺 41%
 言語障害 20〜50%
局所以外の症状(全体) 61〜64%
 意識の変化 17〜42%
 頭痛 23〜50%
けいれん 15〜31%

(Mastrangelo 2022)

年齢でも傾向が違い、1歳未満の乳児ではけいれんが半数以上(56〜75%)、学童では頭痛が多く(33〜50%)みられます(Mastrangelo 2022)。新生児期は、短い焦点性のけいれんと筋緊張の異常がよくある手がかりで、症状がはっきりしない例もあります。

脳卒中と「似た病気」の見分け

救急外来では、脳卒中ではない病気のほうがずっと多いのが現実です。急に局所の神経症状で受診した287人の前向き研究では、脳卒中は7%で、片頭痛28%、けいれん15%、ベル麻痺10%、心因反応6%でした(Mastrangelo 2022で引用)。脳卒中・一過性脳虚血発作102人と似た病気280人を比べた研究では、受診前の1週間は元気だったこと、腕の麻痺、顔の麻痺、歩けないことが脳卒中に関連しました。一方、けいれんや意識消失は、脳卒中とも似た病気とも関連せず、大人との重要な違いです(Mackay 2016)。症状だけで判断できないため、画像が必要になります。

画像診断:CTの限界とMRIの役割

英国の報告では、AISの初回画像はCTが68%で、CTで診断できたのは66%にとどまりました。MRIは100%で診断できています。最初の画像で診断がつかない場合、診断までの時間は中央値で44時間に延びました。時間外の受診では、最初の画像が遅れる傾向もありました(Mallick 2015)。この研究は、小児AISが疑われる場合のMRIを最初の画像として勧めています。

オーストラリアの報告でも、最初の画像はCTが61%、MRIが32%でした。CTは中央値1.5時間で撮れた一方、MRIは10.9時間で、診断に役立つMRIまでの時間は中央値15.1時間でした。MRIは鎮静が必要になることが多く、5歳未満では特に多い点が背景にあります(Daverio 2016)。総説では、CTで診断を逃す割合は44〜83%とされ、ガイドラインはMRIを優先するとしています(Mastrangelo 2022)。

MRIで見る順番

順番 画像 見ること
1 DWIとADC 拡散低下(梗塞)の有無と、血管の支配領域に一致するか
2 T2強調像・FLAIR 発症からの時間、既存の病変(陳旧性梗塞)の有無
3 MRA 血管の狭窄・閉塞・解離。頭蓋内だけでなく頸部も
4 T1強調像(脂肪抑制) 血管壁の高信号(解離の壁内血腫)
5 T2*・SWI 出血の有無、出血性変化
6 ASL(造影剤なしの灌流画像) 血流の低下。造影剤が不要で小児に向く(Mastrangelo 2022)

症例 10歳女児 内頚動脈解離による脳梗塞

10歳女児 内頚動脈解離による脳梗塞 CT・DWI・MRA・T1脂肪抑制・CTA
引用:Otake S, et al. Asian J Neurosurg. 2020;15(3):716-718 (Figure 1) PMC(CC BY-NC-SA)

左片麻痺で搬送された10歳女児です。CT(a)は異常がありませんが、DWI(b)では右内包後脚に拡散低下があります。頭蓋内MRA(c)では右内頚動脈の描出が不良(矢印)で、頸部MRA(d)では右内頚動脈に細い分節状の狭窄があります。T1強調像(脂肪抑制、e)では血管壁に沿った高信号(矢印)があり、解離を示します。CT血管造影(f)では大動脈弓や他の主要動脈に異常はありませんでした。

この症例はCTで異常がなく、MRIで診断できた典型です。報告者は、外傷の既往がなくても、原因不明の神経症状があればMRIを撮るべきだと述べています(Otake 2020)。内頚動脈解離の画像は内頚動脈解離の記事に詳しくまとめています。

原因と、画像で手がかりになること

小児では、動脈硬化以外の動脈の病気(非動脈硬化性動脈症)、心臓の病気、凝固が起こりやすい状態が多くを占めます。動脈症は全年齢で最多で、5〜9歳で最も多いとされます(Mastrangelo 2022)。病変の分布が原因を推測する手がかりになります。

原因 画像の手がかり
動脈解離 血管壁のT1高信号(壁内血腫)、狭窄。頸部MRAも確認する(Otake 2020)
局所脳動脈症(FCA) 前方循環の片側の動脈狭窄。感染や炎症に関連する動脈症とされる。同じ子の中でも動脈ごとに重症度がばらつく(Mastrangelo 2022、Oesch 2021)
もやもや病 内頚動脈終末部の狭窄と側副血行。もやもや病の記事
心臓の病気 両側性・多発性で、前方循環と後方循環の両方に及ぶ。出血性変化を起こしやすい(Mastrangelo 2022)
ヘルペス関連 多発性で辺縁系と大脳基底核に及び、軟膜の造影効果を伴う(Mastrangelo 2022)
鎌状赤血球症 前大脳動脈と中大脳動脈の境界域に多く、後方循環は比較的保たれる(Mastrangelo 2022)

FCAは、片側の前方循環に限局した動脈狭窄で、小児の動脈性脳梗塞の最大4分の1を占めると報告されてきました。ただし、2009〜2019年の単一施設の検討では、動脈症77例のうちFCAは15例(19%)で、これまで考えられたより少ない可能性があります。診断時の年齢の中央値は6.8歳で、長期の後遺症は片麻痺(73%)が最も多く、中大脳動脈の病変と関連していました(Oesch 2021)。

新生児・周産期の脳梗塞

周産期の脳梗塞は、生涯の脳卒中の中で成人に次いで頻度が高く、脳性麻痺や認知機能障害、てんかんの原因になります。リスク因子は小児期と異なり、複数の要因が重なることが多く、在胎週数(早産か正期産か)によって、病変の分布や経過も異なります。画像の役割は、脳卒中の診断、似た病気の除外、動脈性か静脈性かの区別、予後の見通しで、MRIが中心です(Biswas 2020)。新生児の脳の低酸素性障害との違いは、新生児HIEの記事が参考になります。

脳梗塞に見える別の病気

MRIで脳梗塞のように見えても、梗塞ではない病気があります。ミトコンドリア病のMELASは、血管支配域に一致しない病変が特徴で、MELASの記事で解説しています。ほかに、低血糖や一酸化炭素中毒などは脳梗塞に似た病気の記事にまとめています。

読影のチェックリスト

確認すること 理由
CTが正常でも、臨床で局所症状があればMRI(DWI)を提案したか CTの診断率は66%で、診断の遅れにつながる(Mallick 2015)
病変は動脈の支配域に一致するか 一致しなければ、静脈性・代謝性・脳症など別の病気を考える
頸部を含めたMRAを確認したか 解離は頸部にあることがある(Otake 2020)
両側性・多発性ではないか 心原性、ヘルペス関連、全身性の原因を考える
出血の有無(T2*・SWI) 梗塞と出血は診断の最初の分かれ目になる
乳児ではけいれん・筋緊張異常でも脳卒中を考えたか 症状が局所でないことが多い(Mastrangelo 2022)

よくある疑問(Q&A)

Q. 子どもの脳梗塞はなぜ見逃されやすいのですか?

まれで、症状が頭痛やけいれんなど、脳卒中らしくない形で始まることが多いためです。さらに、最初にCTを撮ると診断できないことがあり、診断までの時間が延びます(Mallick 2015)。

Q. CTが正常なら安心ですか?

いいえ。動脈性脳梗塞をCTで診断できたのは66%にとどまりました(Mallick 2015)。症状が続く場合は、MRIを行うかどうかを医師と相談してください。

Q. 子どもの突然の麻痺は、どんなときに急いで受診すべきですか?

顔や腕の麻痺、歩けない、言葉が出ない、それまで元気だったのに急に起きた、という場合は脳卒中の可能性が高まります(Mackay 2016)。気になる症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。

Q. 頭の外傷がなくても血管が裂けることはありますか?

あります。10歳女児の内頚動脈解離の報告では、外傷の既往がなく、自然に起きたと考えられました(Otake 2020)。

あわせて読みたい:小児急性脳症のMRI、急性小脳炎のMRI、新生児・乳児けいれんのMRI

参考文献

  1. Mastrangelo M, Giordo L, Ricciardi G, et al. Acute ischemic stroke in childhood: a comprehensive review. Eur J Pediatr. 2022;181(1):45-58. PubMed
  2. Mackay MT, Yock-Corrales A, Churilov L, et al. Differentiating Childhood Stroke From Mimics in the Emergency Department. Stroke. 2016;47(10):2476-81. PubMed
  3. Mallick AA, Ganesan V, Kirkham FJ, et al. Diagnostic delays in paediatric stroke. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2015;86(8):917-21. PubMed
  4. Daverio M, Bressan S, Gregori D, et al. Patient and Process Factors Associated With Type of First Neuroimaging and Delayed Diagnosis in Childhood Arterial Ischemic Stroke. Acad Emerg Med. 2016;23(9):1040-7. PubMed
  5. Oesch G, Perez FA, Wainwright MS, et al. Focal Cerebral Arteriopathy of Childhood: Clinical and Imaging Correlates. Stroke. 2021;52(7):2258-2265. PubMed
  6. Biswas A, Mankad K, Shroff M, et al. Neuroimaging Perspectives of Perinatal Arterial Ischemic Stroke. Pediatr Neurol. 2020;113:56-65. PubMed
  7. Otake S, Tajima Y, Hayasaka M, et al. Acute Ischemic Stroke due to Internal Carotid Artery Dissection in a 10-Year-Old Child. Asian J Neurosurg. 2020;15(3):716-718. PubMed

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