CTで筋肉量を測る 第3腰椎の骨格筋面積と腸腰筋

CTの画像で「筋肉が減っている」と言われることがあると聞きました。CTで筋肉の量はどう測るのですか?
お腹のCTでは、第3腰椎(L3)という背骨の高さの断面で、骨格筋の面積を測る方法がよく使われます。測った面積を身長の2乗で割った「骨格筋指数」で、体格の差を補正して比べます。腸腰筋だけを測る方法もありますが、全体の筋肉量の代わりとしては不十分という報告もあります。CTでわかるのは筋肉の量や質で、サルコペニアの診断は筋力などの検査と合わせて医師が行います。

先に結論:CTは「筋肉の量と質」を測れるが、サルコペニアの診断そのものはCTだけではしない

項目 ポイント
サルコペニアとは 全身の筋肉量と筋力が低下する病気。欧州の基準では、筋力の低下を中心に考え、筋肉の量や質の低下で確定する(Cruz-Jentoft 2019)
CTで測る場所 腹部では第3腰椎(L3)の高さが標準。L3がなければL2・L4などで代用できる(Derstine 2018)
測る指標 骨格筋の面積、面積を身長の2乗で割った骨格筋指数、筋肉のCT値(筋肉の質)
腸腰筋だけの測定 手軽だが、全ての筋肉を測った値の代わりにはならないとする研究がある(Pigneur 2023)
注意点 基準値(カットオフ)は研究ごとにばらつきがある(Amini 2019)。数値の判断は主治医に相談する

サルコペニアとは何か

サルコペニアは、加齢などで骨格筋(体を動かす筋肉)の量と力が落ちた状態です。欧州のワーキンググループ(EWGSOP2)は、サルコペニアを「筋肉の病気(筋不全)」と位置づけ、診断では、筋力の低下を重要な特徴として扱います。そのうえで、筋肉の量や質が低いことを確かめて診断を確定し、身体機能(歩く速さなど)が低いときは重症と考えます。高齢者に多い一方で、もっと若い年齢で起こることもあります(Cruz-Jentoft 2019)。

この考え方では、CTが担当するのは「筋肉の量や質が低いか」という部分です。CTの画像だけでサルコペニアと診断できるわけではありません。日本にも診断基準がありますが、この記事では数値を扱いません。診断は、筋力などの検査を含めて医師が行います。

なぜCTで筋肉を測るのか

CTは、がんの検査や健診などで、もともと撮影されることが多い検査です。すでに撮った画像から、筋肉や脂肪の量を追加で測れることが、大きな利点です。このように、ほかの目的で撮った画像を追加で活用する使い方を、機会的(opportunistic)な利用といいます。

がん患者50人の研究では、L3の高さの体組成を、DXA(体組成を測るX線検査)またはCTで解析すると、全身の脂肪量と除脂肪量(脂肪以外の量)をよく予測できました(相関係数0.86〜0.94)。CTは診断や経過観察のために広く撮影されている画像で、特定の筋肉や脂肪、臓器の情報も得られるため、実用性が高いと述べられています(Mourtzakis 2008)。

どこで測るのか:第3腰椎(L3)が標準

CTで筋肉量を測る研究を388件まとめたレビューでは、腹部で最もよく使われた目印はL3でした。腹壁全体の筋肉を測った142件のうち、123件がL3を使っています(Amini 2019)。

健康な18〜40歳の腎臓提供候補者の造影なしCTで、胸椎10番(T10)から腰椎5番(L5)まで、各高さの骨格筋面積を比べた研究があります。骨格筋面積はL3で最大になり、L3を主な測定部位とすることを支持しました。L3が撮影範囲に入っていないときの代わりの高さは、L2、L4、L5、L1、T12、T11、T10の順に勧められています(Derstine 2018)。

状況 測る高さ
腹部CT(L3が撮影範囲に入っている) L3(標準)
L3が入っていない(撮影範囲の都合) L2、L4、L5、L1、T12、T11、T10の順に代用を考える(Derstine 2018)

(Derstine 2018)

測定例 胸椎〜腰椎の骨格筋面積

健康な20歳男性のT10〜L5横断CT 骨格筋面積の測定
引用:Derstine BA, et al. Sci Rep. 2018;8:11369(Figure 3). PMC(CC BY 4.0)

健康な20歳の男性で、T10からL5までの横断CT(各高さ)に、骨格筋面積を示した図です。青く塗られた部分が骨格筋で、腹部の外側の筋膜(黄の線)と、筋肉の内側の壁(赤の線)の間の領域として測っています。L3の画像は上段の右にあります。

CTでの測り方と指標

測定は、画像処理のソフトで筋肉の領域を選び、面積を計算する流れです。研究では、L3の高さの全ての骨格筋の断面積(CSMA)を測り、身長の2乗で割った骨格筋指数(SMI、単位はcm²/m²)を使うことが多く、腹部の筋肉の評価では最も広く使われています(Pigneur 2023、Amini 2019)。

指標 内容 何がわかるか
骨格筋面積(SMA、CSMA) L3の高さの全ての骨格筋の断面積 筋肉の量。体格が大きいほど大きくなる
骨格筋指数(SMI) 面積÷身長の2乗 体格の差を補正した筋肉の量
筋肉のCT値(減弱、SMRA) 筋肉の平均のCT値 筋肉の質。脂肪が入ると低くなる
筋間脂肪(IMAT) 筋肉の間にある脂肪の量 筋肉の質(脂肪化)

(Amini 2019、Derstine 2018、Garcia-Diez 2024)

基準値(カットオフ)は研究によって異なります(Amini 2019)。健康な若い人の平均から標準偏差の2倍を引いて基準にする方法もあります(Derstine 2018)が、どの基準を使うかで「低い」と判定される人の割合は変わります。数値の意味づけは、診断基準や研究の背景を知る医師に相談してください。また、測定の条件(造影の有無やスライス厚)も重要ですが、報告していない研究が多く、造影の使用を書いていない研究は94%、スライス厚は63%にのぼります(Amini 2019)。

腸腰筋だけを測る方法とその限界

腸腰筋(大腰筋と腸骨筋)は、腰椎の両脇にある太い筋肉で、画像上で場所がわかりやすく、輪郭も取りやすい筋肉です。そのため、全ての筋肉の代わりに、腸腰筋だけを測る方法も使われています。腸腰筋の解剖は骨盤・大腿部周辺の筋肉のCT画像解剖まとめで確認できます。

しかし、転移のあるがん患者766人を対象とした前向きの研究では、L3の腸腰筋指数(PMI)と全筋肉の骨格筋指数(SMI)の相関係数は0.69でした。この研究で作ったPMIの基準を別の243人で確かめたところ、33.3%でSMIによる判定と食い違いました。研究は、腸腰筋だけを測る方法は、サルコペニアの判定には信頼性が足りず、評価するときはL3の全ての筋肉の面積を考えるべきだと結論しています(Pigneur 2023)。

一方、日本の大腸がんの高齢者(80歳以上の150人)で、腸腰筋の断面積と、3次元CTで測った腸腰筋の体積を比べた研究があります。体積で判定した群は、生存率が有意に悪く(p<0.01)、断面積で判定した群では差がありませんでした(p=0.77)(Takahashi 2024)。腸腰筋を使う方法は、測り方(面積か体積か)によっても結果が変わることを示しています。

測り方 特徴 注意
L3の全ての骨格筋の面積 標準的な方法。研究が最も多い(Amini 2019) 筋肉の領域を選ぶ作業が必要
腸腰筋の面積(PMI) 輪郭が取りやすく手軽 全筋肉の判定とは食い違いが多い(Pigneur 2023)
腸腰筋の体積 3次元CTのソフトで測る 1つの研究では生存の予測で面積より差がついた(Takahashi 2024)。まだ研究段階

筋肉の「質」:筋肉の中に入る脂肪

筋肉は、量が減るだけでなく、筋線維の間や中に脂肪が入り込むことがあります。これを筋脂肪化(myosteatosis)といい、筋力や運動能力の低下と関連します。サルコペニアと同じ意味ではなく、追加の指標として扱われます。CTでは、筋肉のCT値(減弱)や、筋肉の間の脂肪(筋間脂肪)の測定で評価できます。ただし、標準的な定義や評価方法はまだ確立していません(Garcia-Diez 2024)。

画像を見るときのサインを整理すると、次のようになります。

見るポイント 画像での見え方
筋肉の量 L3の高さの背中・腹壁・腸腰筋が、全体に薄く細い
筋肉の質 筋肉の中に脂肪の低吸収(黒っぽい筋状)が混ざり、筋肉全体のCT値が低い
体重との関係 脂肪が多い人でも、筋肉量が少ないことがある。肥満のある人では、筋肉の量を別に評価する必要がある(Prado 2008)

なぜ筋肉量を測るのか:臨床での意味

肺や消化管の固形がん2,115人のうち、肥満(BMI30以上)は325人で、CTで評価できた250人のうち38人(15%)が筋肉量の少ないサルコペニアと分類されました。サルコペニアを伴う肥満は、機能状態が悪く、生存の独立した予測因子でした(ハザード比4.2、95%信頼区間2.4〜7.2)(Prado 2008)。体重やBMIだけでは見えない筋肉の少なさを、CTが示すことがあります。

また、同じ体表面積でも、除脂肪量(筋肉などの脂肪以外の量)には個人差があり、抗がん剤の効き方や副作用に影響する可能性が指摘されています(Prado 2008)。

読影・報告のときの注意点

  • 測定する高さ(L3かどうか)と、使う指標(全筋肉か腸腰筋だけか)を明記する
  • 造影の有無、スライス厚、使ったソフトなど、測定条件も記録する(Amini 2019)
  • どの基準値と比べたかを記載する。基準は研究や診断基準で異なる(Amini 2019)
  • CTの結果だけでサルコペニアとは診断せず、筋力や身体機能の評価と合わせて判断する(Cruz-Jentoft 2019)
  • 腹部の他の所見は腹部CTの読み方の手順で確認する

筋肉の解剖は、腹壁の筋肉4つの解剖とCT画像と背中の筋肉の名前一覧と分類で確認できます。

よくある疑問(Q&A)

Q. 健診や病院のCTで、筋肉の量を測ってもらえますか?
A. お腹のCTがあれば、あとから筋肉の面積を測ることは技術的に可能です(Mourtzakis 2008)。ただし、実際に測るかどうかは、施設や医師の方針によります。気になるときは、主治医に相談してください。

Q. CTで筋肉が少ないと言われたら、サルコペニアですか?
A. CTでわかるのは筋肉の量や質です。サルコペニアの診断では、筋力の低下を重視し、筋肉の量や質の低下で確認します(Cruz-Jentoft 2019)。診断は、筋力などの検査と合わせて医師が判断します。

Q. 腸腰筋だけ測れば十分ですか?
A. 腸腰筋だけの測定は手軽ですが、全ての筋肉を測った結果と食い違うことが多く、サルコペニアの判定の代わりとしては信頼性が足りないと報告されています(Pigneur 2023)。

Q. 体重が多くても筋肉が少ないことはありますか?
A. あります。肥満のある人の中にも、筋肉の少ない人がいて、その場合は生存との関連が示されています(Prado 2008)。体重だけでなく、筋肉の量を見ることが大切です。

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参考文献

  1. Cruz-Jentoft AJ, Bahat G, Bauer J, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis. Age Ageing. 2019;48(1):16-31. PubMed
  2. Mourtzakis M, Prado CM, Lieffers JR, et al. A practical and precise approach to quantification of body composition in cancer patients using computed tomography images acquired during routine care. Appl Physiol Nutr Metab. 2008;33(5):997-1006. PubMed
  3. Prado CM, Lieffers JR, McCargar LJ, et al. Prevalence and clinical implications of sarcopenic obesity in patients with solid tumours of the respiratory and gastrointestinal tracts: a population-based study. Lancet Oncol. 2008;9(7):629-35. PubMed
  4. Amini B, Boyle SP, Boutin RD, et al. Approaches to Assessment of Muscle Mass and Myosteatosis on Computed Tomography: A Systematic Review. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2019;74(10):1671-1678. PubMed
  5. Derstine BA, Holcombe SA, Ross BE, et al. Skeletal muscle cutoff values for sarcopenia diagnosis using T10 to L5 measurements in a healthy US population. Sci Rep. 2018;8(1):11369. PubMed
  6. Pigneur F, Di Palma M, Raynard B, et al. Psoas muscle index is not representative of skeletal muscle index for evaluating cancer sarcopenia. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2023;14(4):1613-1620. PubMed
  7. Garcia-Diez AI, Porta-Vilaro M, Isern-Kebschull J, et al. Myosteatosis: diagnostic significance and assessment by imaging approaches. Quant Imaging Med Surg. 2024;14(11):7937-7957. PubMed
  8. Takahashi M, Sakamoto K, Kogure Y, et al. Use of 3D-CT-derived psoas major muscle volume in defining sarcopenia in colorectal cancer. BMC Cancer. 2024;24(1):741. PubMed

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