
先に結論:肺胞性は「境界のぼやけた塊とair bronchogram」、間質性は「線・網目・粒で血管が見える」
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 肺胞性陰影 | 肺胞の中が液体・膿・血液・細胞で埋まる。境界がぼやけた濃い影で、融合しやすい。気管支の空気が黒く抜けるair bronchogramを伴う |
| 間質性陰影 | 肺胞の壁や小葉間の仕切りが厚くなる。細かい網目(網状影)、線状影、小さな粒(粒状影)で、肺の血管や構造が見えたまま |
| 混ざる場面 | 肺水腫のように、間質性の所見から肺胞性の所見へ進むものも多い。「どちらが主か」で考える |
| 限界 | レントゲンだけでは分けきれないことも多く、迷えばCTで確かめる |
肺胞性と間質性は「どこが白くなったか」の違い
肺は、空気が入る肺胞という小さな袋が集まってできています。肺胞の外側には、袋の壁や血管・気管支を支える間質という組織があります。胸部レントゲンで影が出たとき、この2つのどちらが主役かを考えると、鑑別の入り口を絞りやすくなります。
- 肺胞性(肺胞充満):肺胞の中の空気が、液体・膿・血液・細胞などに置き換わった状態です。CTでは、あまり体積の減らない均一な濃度上昇として見え、境界は不明瞭で、気管支内の空気(air bronchogram)をよく伴います(Lee 2001)。
- 間質性:肺胞の壁、小葉間の仕切り(小葉間隔壁)、気管支や血管のまわりが厚くなった状態です。空気は残っているので、肺の構造が見えたまま細かい線や粒が増えます。
胸部画像の用語は、Fleischner Societyが用語集として定めています。2008年版(Hansell 2008)は2024年に改訂され、現在は2024年版が用語の基準です(Bankier 2024)。報告書に書かれる「浸潤影」「網状影」「粒状影」といった言葉も、この用語集に沿って使われます。
肺胞性陰影の見え方:境界・融合・air bronchogram
肺胞の中が埋まると、肺全体が一様に白くなるのではなく、ふわっとした境界の不鮮明な濃い影になります。次の4点を順に確認します。
| 見る点 | 肺胞性陰影の特徴 |
|---|---|
| 境界 | 全体にぼやける。ただし、胸膜や葉間裂に接する面だけは、肺葉の境で急にシャープになる |
| 融合 | 小さな斑状の影が集まって大きな影になる(隣り合う肺胞へ広がるため) |
| air bronchogram(気管支透亮像) | 埋まった肺の中に、空気の入った気管支が黒い枝のように抜けて見える |
| 分布 | 区域や葉に沿う、または肺門から広がる(両側の肺門周囲なら「蝶形」のこともある) |
air bronchogramは、肺胞が埋まっても気管支の中には空気が残るために黒い枝として見えるサインで、胸部単純X線の代表的なサインの1つです(Algın 2011)。肺胞性の影を考える手がかりになりますが、特定の病気だけに出るサインではなく、肺炎でもそれ以外の病変でも見られます。CTでの意味はair bronchogram(気管支透亮像)とは?胸部CTでの意味と見られる疾患にまとめています。
肺胞性の代表は、肺炎(肺胞性(大葉性)肺炎のCT画像診断)、肺水腫、肺胞出血などです。数時間から数日で形が変わるような速い経過のものには、肺胞性が多い傾向があります。
症例 55歳男性 心原性肺水腫

引用:Radiopaedia(Cardiogenic pulmonary edema)
両側の肺門周囲を中心に、境界のぼやけた肺胞性の陰影が蝶形(バットウィング)に広がり、一部は融合して浸潤影になっています。症例ページでは、その間に間質性の成分が混ざっていると記載されています。また右肺の末梢にはKerley B線が見られると説明されています。
間質性陰影の見え方:網状影・線・粒・Kerley線
間質が厚くなると、肺の中に細かい線や粒が増え、血管や気管支の輪郭がぼやけたり太くなったりします。ここでは次の4つの型を押さえます。
| 型 | 見え方 | 考える病態(例) |
|---|---|---|
| 網状影 | 細かい網の目のような線の重なり | 肺線維症などの慢性の間質性肺疾患 |
| 線状影・Kerley線 | 肺底部の外側で、胸膜に垂直に接する短い水平線(Kerley B線)など | 小葉間隔壁の肥厚(間質性肺水腫、リンパ管の病変など) |
| 粒状影 | びまん性に散らばる小さな粒 | 粟粒結核、サルコイドーシス、塵肺など |
| 気管支周囲の肥厚 | 肺門付近の気管支が輪の形で厚く見える(peribronchial cuffing) | 間質性肺水腫、気管支の炎症 |
Kerley B線は、小葉間隔壁が厚くなった所見です。僧帽弁狭窄の27例の検討では、肺の水分量(血管外肺水分量)が増えていることを示す所見としてKerley B線は役立つものの、血管内のうっ血がある場合に限られると報告されています(Slutsky 1984)。「Kerley B線がある=肺水腫」と決めつけず、心臓の大きさや胸水、症状と合わせて考えます。
症例 90歳代女性 心不全とKerley B線

引用:Radiopaedia(Cardiac failure with Kerley B lines)
心臓は大きく、肺の間質の線が増え、側方の胸膜に向かう水平な細い線が多数見られます。症例ページでは、うっ血性心不全に伴う間質性浮腫で、これらはKerley B線(小葉間隔壁に水分がたまった所見)であると説明されています。ペースメーカーが入っています。
急性か慢性かで考える
型を決めたら、次は経過です。同じ型でも、急に出たか、ゆっくり出たかで原因が変わります。
| 型 | 急に出た(数時間〜数日) | ゆっくり出た(数週間以上) |
|---|---|---|
| 肺胞性 | 肺炎、肺水腫、肺胞出血 | 器質化肺炎、肺胞蛋白症、腫瘍に似た浸潤影など |
| 間質性 | 間質性肺水腫、ウイルスや薬剤による肺障害 | 肺線維症、サルコイドーシス、塵肺、リンパ管の病変など |
この表はあくまで考える入口で、診断を決めるものではありません。発熱、体重の増減、服用中の薬、職業などの情報を合わせて、原因を絞ります。
2つが混ざるとき:肺水腫は間質性から肺胞性へ進む
実際の患者さんでは、2つの型がはっきり分かれないことがよくあります。代表が肺水腫です。肺水腫は、原因によって、間質性の所見(小葉間隔壁の線、気管支周囲の肥厚)から、重くなると肺胞性の所見(中心性の肺胞性浮腫)へと進みます(Gluecker 1999)。肺水腫の画像は肺水腫の原因・症状とCT画像診断と肺水腫・心不全の胸部レントゲン・CT画像所見で、症例とともに詳しく見られます。
そこで、迷ったときは「どちらが主か」を考えます。
- 境界のぼやけた塊や融合する影が目立つ→肺胞性を主に考える
- 細かい線・網目・粒が全体に広がり、血管が見える→間質性を主に考える
- 両方ある→経過(急性か慢性か)、分布(上中下・中枢か末梢)、心臓の大きさ、胸水の有無で絞る
読む手順チェックリスト
- まず撮影条件を確認する:吸気が浅いと、肺底部の血管が詰まって間質性の網状影に見えます。回旋や臥位撮影でも血管の見え方が変わります。
- 左右を比べる:片側だけか、左右対称か。対称な肺門周囲の影は肺水腫などを考えます。
- 境界を見る:ぼやけるか、血管の輪郭は見えるか。見える血管が影の中で消えるなら肺胞性寄りです。
- air bronchogramを探す:影の中の黒い枝を確認します。
- 線と粒を探す:肺底部の外側(Kerley B線)、肺門周囲の気管支の輪を探します。
- 心臓・胸水・肺の大きさを見る:心拡大と胸水が揃うと肺水腫、肺が小さくなる網状影なら線維化を考えます。
- 過去の画像と比べる:同じ影が昔からあるのか、急に出たのかで意味が大きく変わります。見落としやすい場所は胸部レントゲンで見落としやすい場所も参考にしてください。
レントゲンで分けるときの限界
胸部レントゲンは間質の変化に鈍い検査です。全身性強皮症の23例の比較では、高分解能CT(HRCT)で91%に間質病変が見られたのに対し、胸部レントゲンで明らかな間質の影が見られたのは39%で、35%は正常でした(Schurawitzki 1990)。レントゲンが正常でも、息切れや咳が続くなら間質性肺疾患は否定できません。
また、レントゲンの読影は人によってばらつきます。市中肺炎の806例で、二人の読影者が浸潤影の有無を判定したときの一致率は77.7%でした(Pauls 2007)。同じ画像でも「影がある」「ない」で意見が割れることがあり、淡い影ほど迷います。
| 状況 | 次に考えること |
|---|---|
| 影はあるが、肺胞性か間質性か決められない | 経過・症状・検査値と合わせる。必要ならCTで確認する |
| レントゲンは正常だが、息切れや咳が続く | 医師に相談してCT(特にHRCT)を検討する |
| 急に呼吸が苦しくなり、両側に影がある | 肺水腫・肺炎などを考え、速やかな評価が必要 |
肺の影の意味はレントゲンだけでは決まりません。息切れ、咳、発熱などの症状がある場合は、医療機関で診てもらってください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 「浸潤影」と「肺胞性陰影」は同じ意味ですか?
A. ほぼ同じ内容を指して使われます。浸潤影は、肺胞の空気が液体や細胞で置き換わって濃度が上がった影を指す用語で、肺胞性陰影はその成り立ちを言い表した言い方です。用語の定義はFleischner Societyの用語集で確認できます(Bankier 2024)。
Q. 間質性陰影があると、間質性肺炎ということですか?
A. いいえ。間質性陰影は画像の見え方の名前で、病名ではありません。心不全による間質性肺水腫でも同じ見え方をしますし(Gluecker 1999)、間質性肺炎は症状・経過・CTなどを合わせて診断します。
Q. 肺胞性と間質性のどちらが重いのですか?
A. どちらが重いとは言えません。肺胞性は急性の肺炎や肺水腫で、間質性は慢性の線維化や急性の浮腫でと、どちらも軽症から重症まで幅があります。大切なのは、症状や経過と合わせて原因を探すことです。
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参考文献
- Hansell DM, Bankier AA, MacMahon H, et al. Fleischner Society: glossary of terms for thoracic imaging. Radiology. 2008;246(3):697-722 PubMed
- Bankier AA, MacMahon H, Colby T, et al. Fleischner Society: Glossary of Terms for Thoracic Imaging. Radiology. 2024;310(2):e232558 PubMed
- Lee KS, Kim EA. High-resolution CT of alveolar filling disorders. Radiol Clin North Am. 2001;39(6):1211-30 PubMed
- Gluecker T, Capasso P, Schnyder P, et al. Clinical and radiologic features of pulmonary edema. Radiographics. 1999;19(6):1507-31; discussion 1532-3 PubMed
- Algın O, Gökalp G, Topal U. Signs in chest imaging. Diagn Interv Radiol. 2011;17(1):18-29 PubMed
- Schurawitzki H, Stiglbauer R, Graninger W, et al. Interstitial lung disease in progressive systemic sclerosis: high-resolution CT versus radiography. Radiology. 1990;176(3):755-9 PubMed
- Pauls S, Krüger S, Richter K, et al. [Interobserver agreement in the assessment of pulmonary infiltrates on chest radiography in community-acquired pneumonia]. Rofo. 2007;179(11):1152-8 PubMed
- Slutsky RA, Olson LK, Costello D, et al. Extravascular lung water in patients with mitral stenosis: relationship to pulmonary capillary wedge pressure and Kerley B lines. Radiology. 1984;153(2):317-20 PubMed
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