認知症の血流パターン 脳血流SPECT・FDG-PETでの違い

認知症の検査で脳血流SPECTやFDG-PETを受けると言われました。アルツハイマー型とレビー小体型、前頭側頭型では、画像の見え方がどう違うのでしょうか?
どの部分の血流・糖代謝が下がるかが、認知症の種類ごとに違います。アルツハイマー型は後ろ(後部帯状回・楔前部・頭頂側頭)、レビー小体型は後頭葉が加わり、前頭側頭型は前のほうが下がります。パターンの早見表と、DATスキャン・心臓MIBGとの組み合わせ、統計画像を見るときの注意点を整理します。

先に結論:「どこが下がるか」で認知症の種類を絞る。ただし重なりがあり、単独では決めない

疾患 低下しやすい場所 目印
アルツハイマー型 後部帯状回・楔前部、続いて側頭頭頂 初期は後部帯状回・楔前部から
レビー小体型 AD型に加えて後頭葉 cingulate island sign(後部帯状回が相対的に保たれる)
前頭側頭型 前頭葉・側頭葉前部 前方優位の低下
血管性 梗塞・白質病変に対応する部位 局所性・まだら状
PSP・CBD PSPは前頭葉、CBDは左右差のある前頭頭頂 臨床症状と併せて

脳血流SPECTとFDG-PETは何を見ているのか

脳血流SPECTは脳の血流を、FDG-PETはブドウ糖の消費(糖代謝)を見る検査です。神経細胞の働きが落ちた場所は、血流も糖代謝も下がります。形の変化(萎縮)が目立つ前に、機能の低下を先に捉えられることが、MRIやCTにはない強みです。脳血流SPECTは神経変性を示すバイオマーカーとして、認知症の評価に役立つとされています(Imokawa 2024)。

この記事では、認知症のパターンの見分けに絞って整理します。

アルツハイマー型認知症:後ろが下がる

アルツハイマー型認知症(AD)では、血流低下は病気の早い時期から後部帯状回と楔前部に見られ、その後に側頭頭頂葉の皮質へ広がります。軽度認知障害(MCI)の段階でも、楔前部や頭頂連合野の低下はADへの進行を予測する指標になります(Imokawa 2024)。

典型的でない型(後方型、logopenic型、前頭型、大脳皮質基底核症候群)のADでは、症状に関係する部位に低下が出ます(Imokawa 2024)。「記憶障害が目立たないからADではない」とは言えません。ADの脳血流の画像診断はアルツハイマー病における脳血流シンチグラフィの画像診断も参照してください。

レビー小体型認知症:後頭葉の低下とcingulate island sign

レビー小体型認知症(DLB)では、AD型にみられる低下に加えて、後頭葉の血流・糖代謝低下があるのが特徴です(Imokawa 2024)。DLBはFDG-PETで頭頂後頭葉の低下を示し、楔部にも及びます(Keir 2024)。後頭葉の低下は、神経細胞が壊れたというより、コリン作動系やドパミン系の障害による機能低下を反映すると考えられています(Imokawa 2024)。

もう一つの目印がcingulate island signです。楔前部の低下に比べて、中部〜後部の帯状回が相対的に保たれる所見で、DLBの診断を支持します(Ishii 2020)。DLBとADを比べた研究では、楔前部+楔部に対する後部帯状回の代謝比(cingulate island sign)がDLBでADより高く、この所見はアミロイドの量とは独立でした(Graff-Radford 2014)。同じ研究で、cingulate island signが強いほどBraakの神経原線維変化ステージが低いことも示され、DLBにどの程度ADの病理が合併しているかを反映する所見と考えられています(Graff-Radford 2014、Imokawa 2024)。

症例 70歳代女性 cingulate island sign(FDG PET/CT)

cingulate island sign FDG PET/CT 軸位断像 レビー小体型認知症
引用:Radiopaedia(Cingulate island sign)

矢印の部位(後部帯状回)の集積が、周囲の頭頂後頭部に比べて保たれています。症例ページでは、レビー小体型認知症では頭頂後頭部の集積が両側で低下し、後部帯状回が相対的に保たれる(cingulate island sign)と説明されています。

DLBの診断基準(DLBコンソーシアム第4版)は、症状と検査(バイオマーカー)を分けて整理し、REM睡眠行動障害と123I-MIBG心筋シンチの診断上の重みを高めました(McKeith 2017)。

前頭側頭型認知症(FTLD):前方が下がる

前頭側頭葉変性症(FTLD)は、前頭葉と側頭葉(特に前方)の萎縮と、代謝・血流の低下が特徴です(Ishii 2020)。臨床型(行動障害型、意味性、進行性非流暢性)ごとに、症状に対応した部位の低下が出ます(Imokawa 2024)。

病理で確定したAD 31例とFTD 14例を対象にした研究では、FDG-PETの統計画像(SSP)を専門医が視覚的に読むと、診断精度は89.6%(感度86%、特異度97.6%)で、臨床情報だけの判断を上回りました(Foster 2007)。AD・FTLDの鑑別のしかたは前頭側頭葉変性症(FTLD)とは?分類、症状、画像診断のポイントも参考になります。

血管性認知症・特発性正常圧水頭症:パターンが違う

血管性認知症では、AD型のような後方優位のパターンではなく、梗塞や白質病変に対応する局所的・まだら状の低下が主体です。病変から離れた場所の血流も二次的に下がることがあり(遠隔効果)、たとえば交叉性小脳ダイアスキシスがその一例です(脳血流SPECTの遠隔効果(diaschisis)とは?)。MRIの所見と対応させて読みます。

特発性正常圧水頭症では、シルビウス裂周囲と脳梁周囲の低下と、高位円蓋部(頭頂部の上方)の血流増加がみられます(Imokawa 2024)。AD・DLBの低下パターンとは分布が違うことを知っておくと、取り違えを防げます。

PSP・CBD:パーキンソン症状を伴う変性疾患

進行性核上性麻痺(PSP)と大脳皮質基底核変性症(CBD)は、認知症というよりパーキンソン症状・運動障害が前に出ます。FDG-PETでは、PSPは前頭葉の糖代謝低下(構造画像では中脳の萎縮)、CBDは臨床症状の反対側の大脳半球と皮質下の左右差のある低下を示します(Keir 2024)。

大脳皮質基底核症候群(CBS)の剖検例29例では、背景病理で低下のパターンが違いました(Pardini 2019)。

背景病理 FDG-PETの低下
CBD 大脳基底核を含む、より明瞭な両側性の低下
AD 後方優位で非対称(外側頭頂・側頭、後部帯状回)
PSP 前方優位(内側前頭、前部帯状回)

「CBSの画像=CBD」とは限らず、ADの病理でも起こり得る点が重要です(Pardini 2019)。

DATスキャン・心臓MIBGとの組み合わせ

脳血流SPECTやFDG-PETが「脳の皮質の機能」を見るのに対し、DATスキャンはドパミン神経の線条体への集積、心臓MIBG心筋シンチは心臓の交感神経の障害を見ます。DLBでは、DATの取り込み低下と心筋MIBG集積の低下が診断を支持する指標です(Ishii 2020)。

検査 何がわかるか 役立つ場面
脳血流SPECT・FDG-PET 皮質の機能低下の分布 AD・DLB・FTLDなどのパターン診断
DATスキャン ドパミン神経の脱落 DLBの支持、パーキンソン病と本態性振戦・薬剤性などの区別。ただし変性疾患どうしの区別は限られる(Ba 2015)
心臓MIBG心筋シンチ 心臓の交感神経の障害 DLB・パーキンソン病を支持。パーキンソン病と他の変性パーキンソニズムの区別では、遅延像のH/M比で感度89.7%・特異度82.6%(Orimo 2012)

DATスキャンはダットスキャン(DATスキャン)とは?、MIBGはMIBG心筋シンチとは?H/M比の基準値とパーキンソン病・DLBの診断で詳しく解説しています。

統計画像(eZIS・3D-SSP)を見るときの注意点

脳血流SPECTではeZIS、FDG-PETでは3D-SSPなどの統計画像(Zスコアマップ)がよく使われます。正常のデータベースと比べて、有意に下がっている場所を色で示す方法です。eZISは、後部帯状回・楔前部の血流低下を指標にした、早期のADと正常の判別で、多施設研究でも有用性が示されています。40例のAD患者と40例の健常者で、専門性の異なる10人が読影した曲線下面積(AUC)は平均0.866、ボクセルを使った自動解析では0.895でした(Matsuda 2007)。3D-SSPなどの統計画像を専門医が視覚的に読むと、ADとFTDの鑑別精度が上がることも示されています(Foster 2007)。

ただし、統計画像は「元の画像の代わり」ではありません。次の点に注意が必要です。

  • 正常データベースとの相性:撮影装置・薬剤・年齢構成が違うと、結果がずれることがあります。
  • 萎縮の影響:脳が萎縮している部分は、実際の血流低下がなくても低く出ることがあります(部分容積効果)。
  • 基準にする領域:全脳、小脳、橋など、基準にした領域によって「下がって見える場所」が変わります。
  • 脳梗塞・薬の影響:局所の脳梗塞や、検査時の薬の影響がないかは、元画像と臨床情報で確認します。

統計画像は、元の断層像、MRIの形態、臨床症状とセットで読むものです。VSRADなどのZスコアの意味はVSRAD(advance 2)を用いた認知症の画像診断を参考にしてください。

検査の準備や薬の扱いは、主治医・検査施設の指示に従ってください。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. 初期のアルツハイマー型で、最初に下がるのはどこですか?
A. 後部帯状回と楔前部です。その後に側頭頭頂皮質へ広がります(Imokawa 2024)。

Q. レビー小体型では、なぜ後頭葉が下がるのですか?
A. 後頭葉の低下は、神経細胞の変性そのものよりも、コリン作動系やドパミン系の障害による機能低下を反映すると考えられています(Imokawa 2024)。

Q. cingulate island signがあれば、レビー小体型と決まりますか?
A. 決まりません。DLBの診断を支持する所見で、DLBに合併するADの病理(Braakステージ)が低いほど強く出ることが示されています(Graff-Radford 2014)。臨床症状、DATスキャンや心臓MIBGと合わせて判断します。

Q. 前頭側頭型とアルツハイマー型は、画像で区別できますか?
A. 前頭・側頭前方か、後部帯状回・頭頂側頭かという分布の違いで区別でき、FDG-PETの視覚的な読影は臨床判断より精度が高かったと報告されています(Foster 2007)。ただし、軽症例や非典型例では重なります。

あわせて読みたい:核医学検査(シンチ・PET)の種類と読み方まとめ

参考文献

  1. Imokawa T, Yokoyama K, Takahashi K, et al. Brain perfusion SPECT in dementia: what radiologists should know. Jpn J Radiol. 2024;42(11):1215-1230. PubMed
  2. Ishii K. Diagnostic imaging of dementia with Lewy bodies, frontotemporal lobar degeneration, and normal pressure hydrocephalus. Jpn J Radiol. 2020;38(1):64-76. PubMed
  3. Graff-Radford J, Murray ME, Lowe VJ, et al. Dementia with Lewy bodies: basis of cingulate island sign. Neurology. 2014;83(9):801-9. PubMed
  4. McKeith IG, Boeve BF, Dickson DW, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium. Neurology. 2017;89(1):88-100. PubMed
  5. Keir G, Roytman M, Mashriqi F, et al. Atypical Parkinsonian Syndromes: Structural, Functional, and Molecular Imaging Features. AJNR Am J Neuroradiol. 2024;45(12):1865-1877. PubMed
  6. Foster NL, Heidebrink JL, Clark CM, et al. FDG-PET improves accuracy in distinguishing frontotemporal dementia and Alzheimer’s disease. Brain. 2007;130(Pt 10):2616-35. PubMed
  7. Matsuda H, Mizumura S, Nagao T, et al. An easy Z-score imaging system for discrimination between very early Alzheimer’s disease and controls using brain perfusion SPECT in a multicentre study. Nucl Med Commun. 2007;28(3):199-205. PubMed
  8. Pardini M, Huey ED, Spina S, et al. FDG-PET patterns associated with underlying pathology in corticobasal syndrome. Neurology. 2019;92(10):e1121-e1135. PubMed

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