VSRAD:voxel-based specific regional analysis system for Alzheimer’s Diseaseとは?
アルツハイマー病は、嗅内皮質や海馬の選択的な灰白質容積の減少を捉えることにより早期診断が可能です。
しかし視覚的にそれらの容積の減少を捉えるのは、よほど進行しているものでないと非常に難しいです。
そこで、VSRADの登場です。コンピュータを用いた統計画像処理をしてくれて、そこから算出された正常データベースと比較した内側側頭部のZ scoreというものは、側頭部容積と良好な相関を示します。
また、VSRAD advanceでは、灰白質のみならず、白質の萎縮も評価可能であり、進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症など他の認知症疾患との鑑別にも役立ちます。
VSRADを使用するにあたっての注意点
①VSRADの結果のみでアルツハイマー病の診断はできない。神経心理学的検査などとともに総合的に判断する必要がある。
②内側側頭部の萎縮を来たす疾患には前頭側頭型認知症、血管性認知症、嗜銀顆粒性認知症などの他の認知症性疾患以外にも種々の精神神経疾患がある。そのため診断にはZスコアのみではなく、全脳の萎縮パターンを評価することが重要。
③VSRADには54〜86歳の健常者のMRIデータベースが搭載されている。
・高齢健常者では若年健常者に比べて内側側頭部は他の大脳皮質よりも相対的に容積が保たれている。つまり、若い人(50歳未満)では、偽陽性に出やすい。
④65歳未満の早期発症のアルツハイマー型認知症では、内側側亜頭部よりも頭頂側頭葉皮質の萎縮が顕著な傾向にある。つまり、この場合偽陰性になりやすい。
⑤VSRADの値は、再現性を考慮して判断する。
つまり、VSRAD advanceの同一機種での1週間空けたZスコアは0.01+0.08:3.6~4.4%(変動値:変動率)の誤差があることを知っておく。
⑥健常者データベースの撮像機種と各施設の撮像機種・条件は異なるため、機種間差や施設間差が生じる。変動率は10%前後あることを知っておく。
⑦3.0TのMRI装置を用いた場合、1.5TのMRI層装置よりも内側側頭部のZスコアは9%程度低く出る。
Z scoreの目安
- 1-2:ADと健常人が混ざっている。
- >2:ADといっていいかも。
※ADでも1以下たくさんいる。→あくまで1つの目安。
※leukoaraiosis著明だときちんと描出されないこともある。
症例 70歳代女性 物忘れ