
先に結論:結核性関節炎は「1つの関節が長く腫れて痛む」ときに考える、まれだが見逃したくない病気
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 結核菌が関節の滑膜や骨に感染して起こる関節炎。骨・関節の結核の中では脊椎に次いで多い |
| 多い場所 | ふつうは1関節(単関節炎)。膝と股関節が多い |
| 症状 | ゆっくり進む関節の痛みと腫れ。一般的な治療で良くならず、診断まで長くかかることがある |
| 画像 | MRIが中心。滑膜炎・関節液・骨びらん・関節の外の膿瘍(のうよう)を見る |
| 確定診断 | 関節液や組織の培養・病理検査(生検)が必要なことが多い |
結核性関節炎とは
結核性関節炎(tuberculous arthritis)は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)が関節に感染して起こる関節炎です。肺以外の結核(肺外結核)の一つで、筋骨格系の結核は結核全体の1〜3%とされます(Abid 2024)。筋骨格系では結核性脊椎炎が最も多く、関節の病変はそれに次いで多く、画像では滑膜炎が主な所見です(Rodriguez-Takeuchi 2019)。
脊椎の結核(脊椎カリエス)については結核性脊椎炎(脊椎カリエス)の画像診断で詳しく解説しています。
原因:肺に結核がなくても起こる
肺外結核は、活動性の肺病変がない患者さんにも起こりえます(Rodriguez-Takeuchi 2019)。関節結核13例の検討では、肺結核を伴っていたのは1例だけでした(Al-Sayyad 2011)。「胸のレントゲンがきれいだから結核ではない」とは言えないのが、この病気の難しいところです。肺の結核については肺結核の症状とCT画像所見も参考にしてください。
症状と好発部位
関節の結核は単関節性が特徴で、膝と股関節が最も多いとされます(Engin 2000)。先の13例では股関節・膝・肘が多く、他院で治療しても良くならない単関節の痛みと腫れで受診し、診断までの遅れは平均2年でした(Al-Sayyad 2011)。
気になる関節の痛みや腫れが続く場合は、整形外科などの医療機関を受診してください。
画像所見(レントゲン・MRI)
レントゲン(X線)
骨・関節の結核では、MRIが診断と広がりの評価に最も適した検査とされ、脊椎以外の結核の画像所見は非特異的で他の病気に似ることが多いとされます(Abid 2024)。レントゲンは骨の破壊や関節の状態の確認に使われますが、滑膜炎や膿瘍の評価はMRIで行います。
MRI:化膿性関節炎との違い
結核性関節炎29例と化膿性(細菌性)関節炎13例を比べた研究(Hong 2001)の結果です。
| 所見 | 結核性関節炎 | 化膿性関節炎 |
|---|---|---|
| 骨びらん | 83%と多い | 46% |
| 軟骨下骨髄の信号異常 | 59% | 92%と多い |
| 関節外への進展の境界 | 平滑が70% | 不整が83% |
| 膿瘍の辺縁の造影 | 薄く平滑(16例中16例) | 厚く不整が多い(7例中5例) |
T2強調像での滑膜病変の信号には有意差がありませんでした(Hong 2001)。骨びらんがあるのに骨髄浮腫が目立たない、薄く平滑な壁の膿瘍は結核を考えるきっかけになります。
MRI:関節リウマチとの違い
どちらも慢性の滑膜炎と骨びらんを起こすため、関節リウマチ(RA)との区別が問題になります。
| 所見 | 結核性関節炎で多い | 関節リウマチで多い |
|---|---|---|
| 滑膜の肥厚 | 均一な肥厚 | 不均一で厚い肥厚 |
| 骨びらん | 大きい・辺縁が造影される | — |
| 関節外の嚢胞状腫瘤(膿瘍) | 多く、数も多い | — |
| その他 | 膿瘍壁の肥厚、米粒体(rice body)、関節裂隙が比較的保たれる | 関節裂隙の狭小化 |
上の表はChoi 2009とTing 2026の結果をまとめたものです。RAのMRI所見は関節リウマチ(RA)のMRI画像診断で解説しています。
症例 20歳代男性 股関節の結核性関節炎

引用:Radiopaedia(Tuberculous arthritis of the hip)
画像の向かって右(患者さんの左)の股関節で、大腿骨頭と臼蓋(骨盤側の受け皿)の骨が壊れて形がくずれています。症例ページでは、まわりの筋肉へ広がる関節液のたまりもあり、関節穿刺で抗酸菌と壊死性の肉芽腫が確かめられたと記載されています。
診断と治療
画像だけで結核と決めることは難しく、関節液や滑膜の検査が重要です。先の13例では菌の検査が陽性になったのは69%、病理検査では92%で診断がつき、全例で抗結核薬による治療が行われ、関節破壊の程度に応じて手術が加えられました(Al-Sayyad 2011)。治療の方針は主治医とよく相談してください。
なぜ診断が遅れやすいのか
肺外結核は結核全体の約15%を占めますが、画像や症状だけでは診断が難しく、多くの場合で生検が必要です(Rodriguez-Takeuchi 2019)。脊椎以外の骨・関節の結核は画像所見が非特異的で他の病変に似るため、特に免疫が低下した患者さんでは鑑別に挙げておくことが大切とされます(Abid 2024)。
読影のチェックポイント
- 単関節の慢性関節炎か(膝・股関節が多い)
- 骨びらんが大きく、びらんの辺縁が造影されるか
- 骨髄浮腫が骨びらんの割に目立たないか
- 関節外に嚢胞状の病変・膿瘍があり、壁が薄く平滑に造影されるか
- 米粒体(rice body)があり、関節裂隙が比較的保たれているか
以上はHong 2001、Choi 2009、Ting 2026の所見をまとめたものです。関節内の遊離体をきたす病気には滑膜性骨軟骨腫症もあります。慢性の膝や股関節の痛みでは、単純X線で異常のない股関節痛の鑑別診断も参考になります。
よくある疑問(Q&A)
Q. 肺に結核がないと言われました。それでも結核性関節炎はありますか?
A. あります。肺外結核は活動性の肺病変がなくても起こりえます(Rodriguez-Takeuchi 2019)。
Q. MRIで結核と分かりますか?
A. 骨びらん・薄い壁の膿瘍・関節外の嚢胞状病変などで疑うことはできますが、確定には関節液や組織の検査が必要になることが多いです。
Q. リンパ節など他の場所の結核とも関係しますか?
A. 肺外結核で最も多いのはリンパ系の病変です(Rodriguez-Takeuchi 2019)。結核性リンパ節炎もあわせてご覧ください。
参考文献
- Abid W, Ladeb MF, Chidambaranathan N, et al. Imaging of musculoskeletal tuberculosis. Skeletal Radiol. 2024;53(10):2081-2097. PubMed
- Rodriguez-Takeuchi SY, Renjifo ME, Medina FJ. Extrapulmonary Tuberculosis: Pathophysiology and Imaging Findings. Radiographics. 2019;39(7):2023-2037. PubMed
- Engin G, Acunaş B, Acunaş G, et al. Imaging of extrapulmonary tuberculosis. Radiographics. 2000;20(2):471-88; quiz 529-30, 532. PubMed
- Al-Sayyad MJ, Abumunaser LA. Tuberculous arthritis revisited as a forgotten cause of monoarticular arthritis. Ann Saudi Med. 2011;31(4):398-401. PubMed
- Hong SH, Kim SM, Ahn JM, et al. Tuberculous versus pyogenic arthritis: MR imaging evaluation. Radiology. 2001;218(3):848-53. PubMed
- Choi JA, Koh SH, Hong SH, et al. Rheumatoid arthritis and tuberculous arthritis: differentiating MRI features. AJR Am J Roentgenol. 2009;193(5):1347-53. PubMed
- Ting SW, Chen JF, Yu SF, et al. MRI Characteristics Distinguishing Tuberculous Arthritis from Rheumatoid Arthritis: A Comparative Study. Eur J Rheumatol. 2026;13(2):1-5. PubMed
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