結核はMycobacterium tuberculosisによる感染症で、飛沫咳(空気)感染をします。

肺結核は1999年以降、年々減少していますが、近年その減少カーブは鈍化しています。

2013年では人口10万人に対して16人の人が結核にかかっており、欧米の実に4倍以上の罹患率と多いのが、日本の結核の特徴です。

その結核症の中でも約8割を占めるのが、肺結核です。

今回は、肺結核について、まずはどのようなものか説明した上で

  • 症状
  • 診断
  • 好発部位
  • 画像の特徴

までをまとめました。

肺結核とは?

肺結核は、結核菌による呼吸器感染症で、全結核症の中でも、この肺結核が約8割を占めます。

この肺結核は、初感染から発病に至る経過により、

  • 早期に発病する→一次結核(初感染結核)
  • 長期間たって後で発病する→二次結核(既感染発病)

に分けられます。

肺結核は空気感染をするため、いつの間にか菌を体に取り込んでしまうことになりますが、中には免疫機能の働きにより生涯を通じて発病しない人もいるためです。

つまり、菌を持っているから肺結核になるというのではなく、

  • 菌を持っていても発病しない人
  • すぐに発病する人(一次感染)
  • 時間が長く経過して発病する人(二次感染)

という3パターンがあることになります。

 

一次結核と二次結核について、さらに詳しく解説します。

一次結核

結核にかかっている人からの塗抹に含まれる結核菌を吸入し、呼吸細気管支〜肺胞へ結核菌が入り込むことにより、感染が成立します。

 

一次結核として発症するのは、以下の場合です。

  • 感染した結核菌の量が多い時
  • 免疫能が低下している人
  • 小児(ただし減少傾向)

これらの人は、初感染でいきなり結核を発症するリスクがあり、1年以内に5%程度で発症すると言われています。

二次結核

次に、二次性について説明します。

多くの人は免疫能が落ちておらず、結核に感染しても発症せずに潜伏します。

そして

  • 感染した人が弱った時(免疫能の低下時
  • 免疫能が落ちていない状態であっても、新たに結核菌を吸入したとき

に発症することがあり、これを二次結核と言います。

そして、一次結核よりも多いのはこの二次結核なのです。

上の図のように、結核に感染して潜在的に潜伏した5%の人に生じるとされます。

 

結局、一次結核も二次結核も免疫能が落ちた時に発症しやすいということです。

肺結核の症状は?

肺結核の症状は、以下のような非特異的な症状です。

全身症状(発熱・全身倦怠感・胸痛・食欲不振など)

  • 呼吸器症状(咳嗽・喀痰・血痰など)

などがあり、初期には風邪と間違えるような症状ですが、2週間以上続く咳の場合、肺結核を疑い検査をすることをオススメします。

先ほど説明しましたように、発症しなければ潜在性結核感染として菌は体に残っていても、症状はありません。

また、80%は上記のような自覚症状で発覚しますが、中には無症状なこともあります。

その無症状となるのは、高齢者で結核既感染者が多く、とくに入院中の院内感染もありえます。

 

肺結核の検査は?診断は?

肺結核の診断は、症状や画像検査で結核を疑うことから始まります。

結核を疑うことができれば、その後、喀痰検査で抗酸菌を検出することが診断する上で最も重要です。

喀痰検査には、

  • 塗抹検査
  • 培養検査
  • 核酸増殖法(PCR)

などがありますが、塗抹検査での抗酸菌の陽性率は高くないため、通常は3日連続で喀痰を検査します。

喀痰の採取が難しい時などは、胃液や気管支洗浄液を採取することもあります。

抗酸菌=結核のことではありません。

抗酸菌には結核菌と、非結核性抗酸菌(いわゆるMAC症)があります。

塗抹検査で陽性になっても25%程度に非結核性抗酸菌であるため、菌種を同定する必要があります。

これに核酸増殖法(PCR)が用いられます。

QTFとは?

ツベルクリン反応に代わる結核感染を、補助的に診断する検査として普及しているのが、QFT(クオンティフェロン:QuantiFERON®TB-2G)です。

BCGや非結核性抗酸菌の感染の影響を受けずに、INF-γを測定し結核感染を診断する方法で、高い感度および特異度を示します。

ただし、結核の既往と最近感染したの結核との区別がつかないことや、免疫機能低下状態では結核であっても陽性にならないことがあり、あくまで補助的として使うことが重要です。

肺結核の好発部位は?

肺結核(二次結核)の好発部位は以下の通りです。

  • 上葉S1(右葉)
  • 上葉S2(右葉)
  • 上葉S1+2(左葉)
  • 下葉S6

つまり、上葉の上の方、下葉の上の方に発症しやすいということです。

ただし、感染者の免疫能などにより、様々な部位に発症しうるので注意が必要です。

 

どうして肺葉の上の方に多いのかというと、 結核菌が好む環境だからと言われています。

肺の上の方は、

  • 酸素分圧が高い
  • リンパによるクリアランスが悪い

という特徴があります。

ですので、肺の上の方が偏性好気性菌である結核菌が増殖しやすい環境であるからです。

肺外結核とは?

肺以外に結核菌が移動して病巣を作ることがあり、肺外結核と言います。

肺外結核は結核症の10-20%に起こり、

  • 血行性散布(粟粒結核)
  • 胸膜
  • リンパ節
  • 脳・髄膜
  • 腸管
  • 尿路

などに病巣を形成します。

肺結核のCT画像の特徴は?

結核菌は、気道を埋めるように進展し、終末細気管支よりも末梢である、呼吸細気管支や肺胞が乾酪性肉芽腫によって充填されます。

tree-in-bud appearance

そして、境界明瞭で高コントラストの粒の小さな病変をつくります。

気道を埋める様子と粒の様子を、小葉中心性病変(細葉性病変)といい、その分布の様子をtree-in-bud appearance(木の芽様の分枝状影)と表現します。

これらは、結核の活動性の高い病変として重要な指標と言われています。

このtree-in-bud appearanceは結核に特徴的な所見ではなく、気管支肺炎や細気管支炎で見られる所見ですが、この粒が小さくて明瞭であるのが結核の特徴です。

これは肉芽腫が充実性であり、周囲の肺に炎症波及をしないためと言われています。

もちろん典型例ばかりではありませんが。

 

では実際のCT画像をみてみましょう。

症例 50歳代男性

【CT所見】

胸部CTの肺野条件の画像です。

左下葉S6に一部tree-in-bud apparanceを認めています。

細気管支炎を疑う画像所見ですが、非常に粒が細かいのが結核の特徴です。

粒が細かい所見は陰影が弱いところで探しましょう。

 

塗抹検査の結果、肺結核と診断されました。

空洞性病変

より広範にこの変化が生じ、乾酪性肉芽腫に凝固壊死が起こると、中心部が排出され空洞を形成することがあります。

空洞ができれば空気が増えるので、結核菌はそこで増殖し、結核菌を散布する原因となります。

空洞のサイズが大きく、壁が厚いほど排菌のリスクが高くなると報告1)されています。

空洞の中に液面形成が見られた場合は、細菌感染の合併を考えます。

症例 30歳代女性

【CT所見】

左下葉S6に空洞性病変(実は右にさらに大きな空洞があるのですが・・・)を認めています。

多発小結節あり。

粟粒結核及び空洞性病変を伴う活動性肺結核と診断されました。

非典型的なCT画像を示す場合は?

免疫状態が低下している場合、とくに

  • 糖尿病
  • 腎不全・透析
  • AIDS
  • 低栄養
  • アルコール多飲
  • ステロイド使用
  • 抗がん剤
  • 生物学的製剤(TNF-α阻害薬など)

などの場合、通常の特徴的な画像を示さないことがあります。

単なる肺炎として扱われ、一般病棟に入院をすると結核菌をばらまくリスクを生じるため注意が必要です。

また、一次結核の場合は、

  • 結核性リンパ節炎
  • 結核性胸膜炎
  • 粟粒結核

を来たしやすいとされます。

肺病変は、他の肺炎と鑑別が困難な陰影を示すことが多いとされます。

 

参考文献
1)J Thoracic Imaging 22:154-159,2007
結核症の基礎知識 改訂第4版
病気がみえるvol.4呼吸器P102〜114

最後に

今回の肺結核についてまとめます。

  • 肺結核は、結核菌による呼吸器感染症
  • 肺結核は、全結核症の約8割を占める
  • 2週間以上続く咳は、肺結核も念頭において検査を
  • 喀痰検査で抗酸菌を検出することが、診断する上で最も重要
  • 上葉の上の方、下葉の上の方に発症しやすい
  • CT画像では、気道を埋めるように進展し、呼吸細気管支や肺胞が、乾酪性肉芽腫によって充填されるのがわかる
  • 肺病変は、他の肺炎と鑑別が困難な陰影を示すことが多い

 

結核の症状から、診断方法、画像診断の特徴についてみていきました。

結核診断の第一歩はまずは疑うことです。

とくに、臨床症状や特徴的なCT所見をまずは覚えておき、

「ん?いつもの肺炎とは違うぞ」
「結核ぽいな」

と思えることが重要です。

もちろん、典型的な場合ばかりじゃない点も覚えておきましょう。

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