結核性脊椎炎(tuberculous spondylitis)
・全結核菌感染症の1%を占め、骨関節領域の結核性感染症の25-60%(最多)を占める。
・肺感染巣からの血行感染がほとんど。
・比較的長期間(数ヶ月〜2,3年)続き、腰部または、背部に軽度〜中等度の鈍痛が多い。
・下位胸椎、腰椎に多い。特に胸腰椎移行部に好発。
・化膿性脊椎炎に比べて20〜30歳代と若い世代で発症することが多い。
・病理学的に中心性乾酪性壊死を伴う肉芽腫の形成が特徴的。進行すると肉芽腫は線維組織や石灰化に置換される。
・初回の感染は前部椎体に発生する(化膿性脊椎炎は終板に接する前軟骨下層)。そこから前縦靭帯または後縦靭帯下を経由するか、もしくは軟骨終板を浸透して隣接する椎間板に病変が波及する。
・Mycobacteriumが蛋白分解酵素を持たないために、椎間腔が比較的長期にわたり保たれるとされる。
・緩徐に進行して、局所の骨破壊を示す。病巣の拡大とともに乾酪壊死に陥る。
・一方、結核性肉芽は椎体の骨皮質を覆って、前縦靭帯下に膿瘍(滞留膿瘍や流注膿瘍)を形成する(前縦靭帯下を上下に進展するため3椎体以上の多椎体を侵す頻度が高い)。
・それらは椎体の破壊あるいは症状の程度に比べて大きく(感染徴候に乏しい冷膿瘍(cold abscess)を生じることあり。)、しかも原発巣から遠くはなれた部位まで進展する(膿瘍が腸腰筋に沿って大腿部・臀部まで及ぶ場合がある(流注膿瘍)。)ことが特徴。
・病変が椎体後方に進展すると、硬膜外腔に肉芽や膿瘍を形成する。椎体が広範に侵されると圧潰を起こす。次々に圧潰されると亀背となる。
・石灰化を伴った腸腰筋の膿瘍を認めることもある。
結核性脊椎炎の画像所見
・連続した3つ以上の椎体を侵す傾向。
・多発病変。
・椎間板の破壊の進行がゆっくり。
・骨硬化像を欠くか軽微。
・脱落した骨小片を認めることがある。
・前・後縦靭帯下を進展する傾向がある。
・MRIにおいて椎体の信号変化が不均一。 造影MRIでは、病変の周囲が造影される。
・病変の周囲、特に外側と腹側に向かって進展する傾向がある。
鑑別診断
・化膿性脊椎炎
・ブルセラ脊椎炎
・転移性脊椎腫瘍
・クリプトコッカス脊椎炎
→画像は結核性に類似。HIV感染者に多い。 結核性脊椎炎の治療無効例に疑う。