
先に結論:「レントゲンで写らない=飲んでいない」ではない。木と水で膨らむボールは写りにくい
| 異物 | レントゲン | 役立つ検査 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 爪楊枝(木) | 写りにくい | CT(ただし見落としもある)、内視鏡 | 腸に穴があく(穿孔)ことが多い。飲んだ自覚がない人も多い |
| ガラス | 2mm程度あれば多くは写る | CT(とても白く写る) | とても小さいかけらは写らないことも |
| 水で膨らむボール(高吸水性樹脂) | ほぼ写らない | エコー、CT | おなかの中で膨らんで腸閉塞に。乳幼児に多い |
レントゲンに写るもの・写りにくいもの
レントゲンは、金属や骨のようにX線を通しにくいものが白く写る検査です。木・プラスチック・水を含んだものは周りの体の組織と区別しにくく、写りにくくなります。小児の誤飲・誤嚥についての米国放射線学会(ACR)の適正使用基準(Appropriateness Criteria、2026年版)でも、最初の検査はレントゲンが基本ですが、レントゲンに写りにくい異物が強く疑われるときは低線量の胸部CT、レントゲンで見つからない誤飲ではCTなどが選択肢とされ、水で膨らむボールを飲んだと分かっている場合は腹部エコーが役立つとされています(ACR 2026)。
レントゲンに写る薬の包装(PTPシート)の誤飲はPTPシート誤飲はレントゲンに写る?、気管に入った異物は気管支異物とは?で解説しています。
爪楊枝(木の異物)を飲み込んだら
どのくらい危ない?
爪楊枝の誤飲の症例報告136例をまとめた研究では、次のような特徴がありました(Steinbach 2014)。
- 情報のある患者さんの半数以上が、爪楊枝を飲み込んだ自覚がなかった
- 症状は腹痛82%、発熱39%、吐き気31%
- 79%で消化管に穴があいた(穿孔)
- 見つかった場所は大腸37%、十二指腸23%、胃20%、小腸18%、食道2%
- 内視鏡・CT・エコーを行っても、35%では爪楊枝を見つけられなかった
- 58%が手術、死亡は9.6%
この研究は、爪楊枝の誤飲を救急の病気として扱い、原因のはっきりしない急な腹痛では爪楊枝も考えるよう求めています(Steinbach 2014)。症例報告の集まりなので、重い例が多く集まっている点には注意が要ります。
CTで見えにくい理由
木は中に空気を含むため、刺さった直後のCTでは空気の泡のように黒く見え、見逃されやすいことがあります。時間がたつと周りから水分を吸ってCTの値(白さ)が上がり、数か月後にはより白く見えるようになります。見え方が時間で変わるため、木の異物は画像診断の落とし穴とされています(Krimmel 2001)。穴があいたときのCT所見はフリーエアー(腹腔内遊離ガス)のCT・レントゲン所見、小腸穿孔とは?原因とCT画像所見も参考になります。
症例 40歳代男性 爪楊枝によるS状結腸穿孔

引用:Radiopaedia(Sigmoid colon perforation caused by ingested toothpick)
骨盤の中で、腸に刺さった細い線状の白い異物が見えます。症例ページでは、約4cmの線状の異物がS状結腸の壁を貫き、まわりの脂肪の炎症と膿瘍をともなっていて、手術で木の爪楊枝と確かめられたと記載されています。
ガラスの破片はレントゲン・CTに写る?
ガラスは「写らない」と思われがちですが、多くはレントゲンに写ります。ビール瓶のかけらを鶏の脚に埋めて2方向のレントゲンを撮った実験では、検出率は2mmで99%、1mmで83%、0.5mmで61%でした(Courter 1990)。つまり、とても小さいかけらほど見落とされやすくなります。
CTでは、ガラスは少なくとも2000HU程度ととても高いCT値を示し、眼の周りの模型を使った実験で、ガラスの種類ごとに検出できる大きさの下限が調べられています(Hoffstetter 2011)。
水で膨らむボール(高吸水性樹脂ビーズ)の誤飲
水を吸って大きく膨らむカラフルなボールは、おもちゃや飾りとして売られています。飲み込むと腸の中で膨らみ、腸閉塞(腸がつまる病気)の原因になります。
| 報告 | 内容 |
|---|---|
| Caré 2022(43例のまとめ) | 年齢は6〜36か月。全例が吐き続ける症状。家族が飲み込んだと申告していたのは43例中10例だけ。腸閉塞になったときのボールの直径は中央値30mm(25〜65mm)。ボールはすべて小腸にあった |
| Caré 2022(画像) | レントゲン(31例)では一度も異物が見えなかった。CTでは10例中5例で腸の中の塊が見えた。エコーでは34例中28例で腸の中の丸い構造が見えた |
| Sandifer 2025(87例のまとめ) | 平均14か月。レントゲンでボールが見えたのは5.6%、エコーでは85.7%。多くが手術でボールを取り出していた |
CTでも10例中5例でしか腸の中の塊が見えず、見落とされることがあります。エコーでは腸の中の丸い構造として見えやすい一方、エコーでボールが見えても腸閉塞の原因として正しく診断できたのは34例中15例でした(Caré 2022)。腸閉塞のレントゲンの見方はイレウス・腸閉塞のレントゲン所見と見方で解説しています。
次にすること
- 飲み込んだかもしれないものがあれば、何を・いつ・どのくらいをメモし、同じ物(爪楊枝・ボールの実物や袋)を持って受診すると伝えやすくなります。
- レントゲンで写らなくても、症状や状況から主治医がCTやエコー、内視鏡を検討します(ACR 2026)。
- 小さな子どもがいる家では、水で膨らむボールを手の届かない所に置くことが大切です。
おなかの痛み、くり返す嘔吐、発熱、便が出ない・おなかが張るなど気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。検査や治療の方針は、診察した主治医に相談しましょう。
よくある疑問(Q&A)
Q. レントゲンで何も写っていないと言われました。安心してよいですか?
A. 木や水で膨らむボールはレントゲンにほとんど写りません(Caré 2022、Steinbach 2014)。症状が続く・悪くなるときは、もう一度受診してください。
Q. 爪楊枝は自然に便で出ませんか?
A. 出てくることもありますが、報告例では79%で消化管に穴があいていました(Steinbach 2014)。重い例が集まった報告ではありますが、腹痛や発熱が出たら早めに受診しましょう。
Q. 水で膨らむボールは小さいままなら大丈夫ですか?
A. 腸の中で水を吸って大きくなり、腸閉塞を起こした例の直径は中央値30mmでした(Caré 2022)。飲み込んだと分かった時点で医療機関に相談してください。
参考文献
- Expert Panel on Pediatric Imaging, Meyers ML, Moore MM, et al. ACR Appropriateness Criteria® Ingested or Aspirated Foreign Body-Child. J Am Coll Radiol. 2026;23(1):143-158. PubMed
- Steinbach C, Stockmann M, Jara M, et al. Accidentally ingested toothpicks causing severe gastrointestinal injury: a practical guideline for diagnosis and therapy based on 136 case reports. World J Surg. 2014;38(2):371-7. PubMed
- Krimmel M, Cornelius CP, Stojadinovic S, et al. Wooden foreign bodies in facial injury: a radiological pitfall. Int J Oral Maxillofac Surg. 2001;30(5):445-7. PubMed
- Courter BJ. Radiographic screening for glass foreign bodies–what does a “negative” foreign body series really mean? Ann Emerg Med. 1990;19(9):997-1000. PubMed
- Hoffstetter P, Friedrich C, Framme C, et al. [Detection of intraorbital foreign material using MDCT]. Rofo. 2011;183(6):543-8. PubMed
- Caré W, Dufayet L, Paret N, et al. Bowel obstruction following ingestion of superabsorbent polymers beads: literature review. Clin Toxicol (Phila). 2022;60(2):159-167. PubMed
- Sandifer S, Greene AC, Erturk Q, et al. The Hidden Dangers: Superabsorbent Polymer Beads as a Cause of Bowel Obstruction in Children. J Surg Res. 2025;315:113-120. PubMed
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