PTP(Press Through Package)包装シートの誤飲は、特に高齢者や認知症患者に多く見られ、誤飲したことを自覚せずに咽頭痛や胸痛で受診することもあり、診断が困難になるケースがあります。
このような状況において、CT画像診断はPTP誤飲の特定に非常に重要な役割を果たします。
ここでは、PTP誤飲のCT画像所見のポイントについて解説します。
PTP包装シートとは
- PTPは、薬剤を包む凸型の樹脂シート(プラスチックのドーム)とアルミニウム箔で構成されており、錠剤やカプセルが1錠ずつ包まれている。
- シートの材質には、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリプロピレン(PP)のほか、ポリエチレン(PE)などが使用されている。
PTP包装の誤飲のCT画像を見る前に知っておくべきこと
- PTP誤飲の9割は食道に存在する。
- 食道に引っかかった場合は、穿孔、縦隔炎を起こし、致死的となることがある。食道から消化管全体を注意深く観察し、穿孔に伴う皮下気腫や縦隔気腫、膿瘍形成などの所見がないかを確認することが重要。
- 食道に見つかった場合は、内視鏡にて摘出をする。摘出されなかった場合は多くは自然排出される。
- まれではあるが回腸末端などの狭窄部位で穿孔をきたすこともある。
PTP包装シートのCT画像所見のポイント
- PTP誤飲の診断にはCTが有用だが、その見え方は様々な要因に左右される。
- ウィンドウレベル(WL)やウィンドウ幅(WW)を調整することで、輪郭がはっきりし、低吸収の異物でも見えやすくなることがある。
- 未開封のPTPでは、薬剤とPTP内に存在する薬剤周囲の空気とのコントラストにより、ターゲット像として特徴的な所見を認めることがある。薬剤自体は比較的吸収値が高いため、CT上で高吸収の構造物として認識されやすい。
- 錠剤がシート内に残っている場合、その周囲の空気によって、PTPシートとの間隙にある空気の濃度が特徴的に観察されることがある。この空気の層は「カニの爪」や「三日月」のような形状を示すこともある。
- PTPシートの材質はCTでの見え方に大きく影響する。ポリ塩化ビニル(PVC)はX線吸収値が高く認識しやすいが、ポリプロピレン(PP)はX線吸収値が低く、特に周囲が水と同程度の濃度の場合、ほとんど認識できないことがある。
- シートの中に錠剤があるかどうかでも見え方は変わる。錠剤のほとんどはCTで認識可能であるため、たとえシート自体がCTに写らない透過性の素材であっても、錠剤の存在によって診断が可能となる場合がある。しかし、錠剤がなく、シートも透過性の素材の場合は、同定が非常に困難になる可能性がある。
- 食道内のPTPを正面から見ているか、側面から見ているかによっても所見は変わるため、MPR(Multiplanar Reconstruction)により多方向から観察することが推奨される。
症例 70歳代女性 PTP誤飲
下部食道にPTPの形状をした高吸収異物を認めています。
横断像だけで薬剤の形状がわかります。
穿孔など合併症を疑う所見は認めません。
症例 80歳代女性 PTP誤飲
頸部食道にPTPの形状をした高吸収異物を認めています。縦隔条件より肺野条件の方が気づきやすいかも知れません。
MPR(Multiplanar Reconstruction)により多方向から観察することでより形状や場所が分かります。
参考文献:
- 画像診断 Vol.39 No.11 増刊号 2019:p.A90〜A143
- 臨床画像 Vol.34 No.10 増刊号,2018 P173-4
- 救急画像診断のロジック P218-220
- 画像診断別冊KEY BOOKシリーズわかる!役立つ!消化管の画像診断 P220-221
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