先に結論:気管支異物

  • 気管支異物は3歳以下、特に1歳台に多く、ピーナッツなどの豆類が代表的です。誤嚥の場面を見ていないことも多いです
  • 小児ではチェックバルブで片側の肺が過膨張することが多く、吸気と呼気のX線(呼気で縦隔が健側へ移る)やCTが診断に役立ちます。ピーナッツはX線に写らないので、肺の過膨張などの間接所見を探します
  • 長引く喘鳴・治りにくい喘息・同じ場所の繰り返す肺炎では気管支異物を疑い、気管支鏡で除去します

気管支異物(異物誤飲)

  • 3歳以下、特に1歳台に多い。
  • 3歳以下ではピーナッツなどの食物が多い。
  • 4歳以上ではおもちゃなど、食べ物でないことが多い。
  • 症状は咳嗽や呼吸困難、チアノーゼなど。
  • 成人でも誤嚥の自覚がないまま咳や反復感染で経過し、診断が遅れることがある(255例中17.6%が30日以上経って診断、胸部X線で異物が見えたのは6.7%、CTでは65%)。
  • 小児の場合には気管支異物の診断は難しい事が多い。胸部X線が正常でも否定はできず、小児53例の検討では34%で胸部X線が正常で、最も多い所見は閉塞性肺気腫(53%)でした。疑わしければ気管支鏡での確認が勧められます。小児の異物誤嚥が疑われる場合のCTは、16研究・2056例のメタ解析で感度98.8%、特異度96.6%と報告されており、不要な気管支鏡を減らせる可能性があります。
  • 一つに小児の場合は、異物誤嚥のはっきりとした病歴が得られないため。
  • そのため、乳幼児の持続する喘鳴、治療抵抗性の喘息、同一部位の反復性肺炎は気管支異物も鑑別に入れる。
  • また成人の気道閉塞と異なり、小児の場合は、閉塞肺の過膨張や閉塞性肺気腫を生ずることが多い。
  • 気道狭窄を来し、チェックバルブ機構により吐けなくなるため。
  • 気管支異物は成人では無気肺を生ずることがほとんどだが、小児ではairtrappingを起こすことが多い。
呼気性喘鳴の鑑別
  • 気道感染
  • 先天性因子(気管支無力症、気管支狭窄)
  • 圧迫による気道狭窄:血管輪、縦隔腫瘍、リンパ節腫大、食道癌
  • 気管支異物

症例 5歳男児 呼吸困難

気管支異物 胸部単純X線 正面像
引用:Radiopaedia(Inhaled foreign body)

胸部単純X線正面像です。左肺は右肺より透過性が亢進して黒っぽく、縦隔は右へ偏位し、左横隔膜は平低化しています。気管支鏡で左主気管支のピーナッツが確認され、チェックバルブ機構で左肺にエアトラッピングが起きた症例です。

ピーナッツはレントゲンに写る?(気道異物のX線所見)

ピーナッツや豆などの食べ物はX線を通すため、胸部X線に異物そのものは写りません。片側の肺が黒く見える(過膨張)、横隔膜が平らになる、息を吐くと縦隔が健側へ移る、といった間接所見を探します。小児の検討では、通常の撮影に呼気の撮影を加えると感度が33%から62%に上がりましたが、側臥位の撮影を加えても感度は変わらず偽陽性が増えました(Brown 2013)。

チェックバルブ(チェックバルブ機構)とは

異物が気管支を部分的にふさぐと、吸気では空気が入り、呼気では気管支が細くなって出られなくなります。この一方通行の弁の働きで患側の肺に空気がたまり(エアトラッピング)、過膨張します。食べ物でむせたあとに咳やゼーゼーが続くなど気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。

呼気撮影とエアトラッピング:吸気と呼気を並べて見る

気管支異物が疑われるとき、通常の吸気で撮った胸部X線に加えて呼気で撮ったX線を見比べると、チェックバルブ機構によるエアトラッピングが見つかりやすくなります。

正常 気管支異物(チェックバルブ)
吸気 左右の肺が同じように黒く(含気が十分)見える 患側がやや黒く見える程度で、はっきりしないこともある
呼気 両側の肺が白っぽくなり、横隔膜が上がる。縦隔は中央のまま 患側の肺だけが黒いままで、患側の横隔膜は下がったまま(平らなまま)。縦隔は健側へ移動
患側と縦隔の関係 左右差が小さい 吸気では縦隔が中央に近く、呼気で健側に動くため、吸気だけでは見逃しうる

間違えやすいポイント

  • 黒い側が患側とは限りません。片側の肺が黒く見える原因には、この記事の異物のほか、反対側の肺の虚脱や、撮影時の体の傾き・回旋などがあります。吸気と呼気で見比べ、横隔膜と縦隔の動きで判断します(胸部レントゲンで片側の肺が黒いときも参照)。
  • 呼気の撮影は小さな子どもでは難しいのが実情です。息を合わせられない年齢では、吸気と呼気の区別が不十分なまま撮影されることがあります。側臥位の撮影を追加する方法もありますが、標準の撮影に加えても感度は変わらず偽陽性が増えました(Brown 2013)。診断に迷うときは、気管支鏡やCTが検討されます。
  • 呼気撮影を足しても万能ではありません。328例の小児での比較では、標準の撮影に呼気撮影を加えると、感度は33%から62%に上がり、特異度は70%から72%でした。ただし、それでも検査の精度は低く、臨床的な利点はまだはっきりしないとされています(Brown 2013)。
  • X線が正常でも異物は否定できません。小児53例では34%で胸部X線が正常でした(Chiu 2005)。

X線所見と症状を組み合わせる

硬性気管支鏡で調べた小児370例の検討では、片側の呼吸音の低下と胸部X線の片側の過膨張が最も感度(53〜79%)・特異度(68〜88%)が高い所見でした。「急な咳き込み・喘鳴・片側の呼吸音の低下」の3つがそろうと特異度は96〜98%と高くなりましたが、これらの所見の組み合わせでも異物の有無を確実に予測することはできないため、疑われる場合は気管支鏡での確認が必要とされています(Tomaske 2006)。

画像を見るポイントまとめ

  • 片側の肺が黒い(過膨張)・横隔膜が平ら→エアトラッピングを疑う
  • 吸気と呼気の両方を見る。呼気で患側が黒いまま、縦隔が健側へ移動すれば、チェックバルブ機構を示唆する
  • 小児の食べ物の異物(ピーナッツなど)は、X線に写らない前提で間接所見を探す
  • X線が正常でも否定できない。誤飲の場面を見ていた、咳き込みが続くなど疑いが強ければ、気管支鏡やCTを考える

気管支異物でよくある疑問(Q&A)

Q. 呼気のレントゲンでは、どこを見ればよいですか?
A. 左右の肺の黒さの差、横隔膜の高さ、縦隔(心臓や気管)の位置の3つです。呼気で片側の肺だけが黒いまま残り、縦隔が反対側へ移動していれば、エアトラッピングを疑います。

Q. ピーナッツを飲み込んだかもしれないとき、様子を見てよいですか?
A. 食べ物でむせたあとに咳やゼーゼー、息苦しさが続く場合は、早めに医療機関を受診してください。小児では、むせた場面を目撃していることが早い診断のいちばんの手がかりとされ、X線が正常でも気管支異物を除外する必要があるとされています(Chiu 2005)。

Q. CTはどのくらい当てになりますか?
A. 小児の異物誤嚥が疑われる2,056例(16研究)のメタ解析で、CTの感度は98.8%、特異度は96.6%でした(Azzi 2023)。CTで異物がなければ不要な気管支鏡を減らせる可能性があります。

あわせて読みたい:爪楊枝・ガラス・水で膨らむボールの誤飲

あわせて読みたい:胸部レントゲンで片側の肺が黒い(一側性透過性亢進)

あわせて読みたい:子どもの上気道閉塞のレントゲン

あわせて読みたい:子どもの喘鳴・咳のレントゲン

参考文献

  1. Tomaske M, Gerber AC, Stocker S, et al. Tracheobronchial foreign body aspiration in children – diagnostic value of symptoms and signs. Swiss Med Wkly. 2006;136(33-34):533-8. PubMed
  2. Chiu CY, Wong KS, Lai SH, et al. Factors predicting early diagnosis of foreign body aspiration in children. Pediatr Emerg Care. 2005;21(3):161-4. PubMed
  3. Azzi JL, Seo C, McInnis G, et al. A systematic review and meta-analysis of computed tomography in the diagnosis of pediatric foreign body aspiration. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2023;165:111429. PubMed
  4. Kara K, Ozdemir C, Tural Onur S, et al. Late Diagnosis of Foreign Body Aspiration in Adults: Case Series and Review of the Literature. Respir Care. 2024;69(3):317-324. PubMed
  5. Brown JC, Chapman T, Klein EJ, et al. The utility of adding expiratory or decubitus chest radiographs to the radiographic evaluation of suspected pediatric airway foreign bodies. Ann Emerg Med. 2013;61(1):19-26. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →