リウマチ性髄膜炎 関節リウマチの髄膜炎のMRI所見

関節リウマチの家族が、急に手足が動かしにくくなりました。脳梗塞ではなく「リウマチ性髄膜炎の疑い」と言われたのですが、どういう病気ですか?
リウマチ性髄膜炎は、関節リウマチの炎症が脳を包む膜(髄膜)に起こるまれな合併症です。脳梗塞のような一時的な症状やけいれんで始まることが多く、MRIの髄膜の所見が診断の手がかりになります。

先に結論:リウマチ性髄膜炎は「前頭〜頭頂部の脳表に沿ったFLAIR・DWI高信号と造影効果」で疑い、感染や腫瘍を除外して診断する

項目 ポイント
何か 関節リウマチ(RA)の関節外病変の一つ。軟膜・くも膜(軟髄膜)や硬膜の炎症
症状 一過性の手足の麻痺など脳卒中に似た症状、けいれん、頭痛、精神症状
MRI 前頭〜頭頂部優位、片側または両側。FLAIR・DWIで脳溝(くも膜下腔)の高信号、造影で軟髄膜の増強
注意 RAの診断がない人にも起こる。関節症状がないことも多い
治療 感染・腫瘍を除外したうえで、ステロイドを中心とした免疫治療

リウマチ性髄膜炎とは

リウマチ性髄膜炎(rheumatoid meningitis:RM)は、関節リウマチのまれな神経合併症です。報告は世界で約165例とされます(Serra Smith 2024)。130例を集めた系統的レビュー・メタ解析(Villa 2021)によると、平均年齢は62歳で、RAの診断がある人にも、ない人にも起こります。

症状

症状 頻度(Villa 2021)
一過性の局所神経症状(麻痺など) 64.6%
全身症状 51.3%
発作性の頭痛 50.4%
精神神経症状 47.7%
関節の症状 27.4%のみ

脳卒中様のエピソードとけいれん発作が最も多い症状とされ、主な鑑別は血管性の病気と感染症です(Serra Smith 2024)。急な麻痺やけいれん、頭痛などがあれば、すぐに医療機関を受診してください。

MRI所見

分布:前頭〜頭頂部、片側のことも

MRIでは片側または両側の病変で、前頭頭頂部優位です。硬膜(pachymeninges)と軟髄膜(leptomeninges)の両方が侵されますが、軟髄膜のほうが多い(82.88%)とされます(Villa 2021)。39例のまとめでも、MRIの軟髄膜造影(69%)が診断の手がかりでした(Qin 2020)。

FLAIRとDWI:くも膜下腔の高信号

RMではDWIとFLAIRでくも膜下腔が高信号になることが多く、造影では軟膜の増強がみられます(Kira 2019)。FLAIRの高信号と軟髄膜の造影に加えて、病変の一部がDWIで斑状の高信号を示した症例では、DWIの範囲がFLAIRの範囲と一致する硬膜下膿瘍との区別に役立つ可能性が指摘されています。テント上の片側病変が多いことも特徴です(Matsuura 2008)。

髄膜の造影パターン(硬膜-くも膜型と軟膜-くも膜下腔型)の見分け方は髄膜の構造と異常増強効果|DAパターン・PSパターンで解説しています。

鑑別

  • 感染性髄膜炎(主な鑑別の一つ。Serra Smith 2024):髄膜炎の画像診断まとめ
  • 髄膜播種(癌性髄膜炎):髄膜播種(癌性髄膜炎)のMRI
  • 肥厚性硬膜炎をきたす免疫性疾患:IgG4関連疾患、神経サルコイドーシス、多発血管炎性肉芽腫症など。造影MRIが硬膜肥厚の評価に最も有用です(Matias 2023)

症例 20歳代女性 リウマチ性髄膜炎

リウマチ性髄膜炎 MRI 造影T1強調像 冠状断像
引用:Radiopaedia(Rheumatoid meningitis)

画像の向かって左(患者さんの右側)の大脳で、脳のしわ(脳溝)に沿って白い線状の造影効果が目立ちます。症例ページでは、関節リウマチのある方の片側だけの軟膜の造影効果としてリウマチ性髄膜炎と診断され、ステロイドで症状が消えたと記載されています。

検査と診断

血液ではリウマトイド因子(89.71%)、抗CCP抗体(89.47%)、CRP・赤沈の上昇が多く、髄液では蛋白上昇(76.14%)と単核球優位の細胞増多がみられます。生検は72.52%で行われていました(Villa 2021)。

RAの既往がない人のRMでは感染症の合併が多かったという報告があり、新たに発症したRMでは感染の評価が重要とされます(Rodriguez Alvarez 2020)。

治療と経過

RMは見かけの似た病気が多いため、まず感染症・腫瘍・血管の病気などを丁寧に除外することが欠かせません。症状が一過性のエピソードを繰り返す場合も、徐々に悪くなる場合もあり、けいれん発作がよくみられます。悪化が続く場合や、臨床・画像で決めきれない場合は、積極的な免疫抑制療法が勧められています(Serra Smith 2024)。

導入療法の中心はステロイドパルス療法で、維持療法も重要とされ、抗TNF薬を導入療法に使うことは勧められていません。再発は31.17%、後遺症なく回復したのは54.54%でした(Villa 2021)。2000年以降、MRI・髄液・生検による早期発見とステロイド・免疫治療により死亡率は下がっています(Qin 2020)。治療方針は主治医と相談してください。

関節リウマチのその他の画像所見は関節リウマチ(RA)のMRI画像診断も参考にしてください。

読影のチェックポイント

  • 前頭〜頭頂部の脳表に沿ったFLAIR高信号(片側のことも)
  • 同じ部位のくも膜下腔のDWI高信号
  • 軟髄膜の造影効果(硬膜にも及ぶことがある)
  • 脳実質の梗塞では説明しにくい分布か
  • RAの既往、RF・抗CCP抗体、髄液所見を臨床側に確認

RAの活動性が落ち着いている時期にも起こることがあり、FLAIRとDWIを繰り返し撮ることが軟髄膜病変の経過観察に役立ったと報告されています(Matsuura 2008)。治療後にDWIの高信号が改善した例もあります(Matsuura 2008)。

39例のまとめでは約59%が女性で、56%が神経脱落症状で発症していました(Qin 2020)。RAの活動性と罹病期間は予後の悪さと関連していました(Villa 2021)。

よくある疑問(Q&A)

Q. 関節リウマチと言われたことがなくても起こりますか?
A. 起こります。RAの診断がない人の報告も多く、関節症状があるのは3割弱です(Villa 2021)。

Q. 脳梗塞とはどう違いますか?
A. 症状は似ますが、MRIでは脳実質の梗塞ではなく、脳表のくも膜下腔や髄膜にFLAIR・DWI高信号や造影効果がみられます(Kira 2019)。

Q. 再発しますか?
A. 約3割で再発が報告されており(Villa 2021)、維持療法と経過観察が大切です。

参考文献

  1. Villa E, Sarquis T, de Grazia J, et al. Rheumatoid meningitis: A systematic review and meta-analysis. Eur J Neurol. 2021;28(9):3201-3210. PubMed
  2. Serra Smith C, Montero Reyes FJ, Contreras Chicote A, et al. Rheumatoid meningitis: a case series report and review of modern therapeutic schemes and outcome. Neurol Sci. 2024;45(12):5875-5887. PubMed
  3. Qin Z, Kim J, Valencia D, et al. Rheumatoid meningitis: A case report and review of the literature. Neurol Clin Pract. 2020;10(1):73-83. PubMed
  4. Rodriguez Alvarez M, Rodríguez Valencia LM, Seidman R, et al. Rheumatoid meningitis and infection in absence of rheumatoid arthritis history: review of 31 cases. Clin Rheumatol. 2020;39(12):3833-3845. PubMed
  5. Kira Y, Shibata KI, Inamizu S, et al. [A case of possible elderly onset rheumatoid meningitis without arthritis]. Rinsho Shinkeigaku. 2019;59(8):520-524. PubMed
  6. Matsuura D, Ohshita T, Nagano Y, et al. [Case of rheumatoid meningitis: findings on diffusion-weighted image versus FLAIR image]. Rinsho Shinkeigaku. 2008;48(3):191-5. PubMed
  7. Matias TB, Cordeiro RA, Duarte JA, et al. Immune-Mediated Hypertrophic Pachymeningitis and its Mimickers: Magnetic Resonance Imaging Findings. Acad Radiol. 2023;30(11):2696-2706. PubMed

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