
先に結論:子どもの脊椎・脊髄MRIは「年齢で正常が変わる」。大人の基準で異常とせず、年齢ごとの正常像を知ったうえで、見逃したくない病気を拾う
| 所見 | 多くは | 注意したい場合 |
|---|---|---|
| 脊髄円錐の中の小さな空洞 | 終室(第5脳室)という遺残腔 | 大きく拡張し、運動・感覚・排尿の症状がある |
| 椎体骨髄の造影効果 | 7歳未満では正常(2歳未満で強い) | 局所的・非対称、骨外への進展 |
| 乳児の椎体と軟骨の信号 | 月齢による正常の変化 | 年齢に合わない形や信号 |
| 脊髄のT2高信号 | ― | 軽い外傷後の急な麻痺:脊髄梗塞を考える |
| 原因不明の限局性の脊髄萎縮 | ― | 進行する脊髄症状:まれに脊髄腫瘍の初期像 |
1. 終室(第5脳室・ventriculus terminalis)
何か
終室は、脊髄円錐の中にある上衣で覆われた小さな遺残腔で、第5脳室とも呼ばれます(Atallah 2023; Matsubayashi 1998)。
MRIでの見え方
嚢胞状に拡張した終室は、辺縁が整った丸い空洞で、すべての撮像法で脳脊髄液と同じ信号を示し、造影されません(Matsubayashi 1998)。脊髄円錐に限局し、充実成分・造影効果・周囲の浮腫がないことが、嚢胞性腫瘍との区別の手がかりです。
症状を出すのはどんなときか
嚢胞状拡張の報告をまとめたレビューでは、患者の平均年齢は39歳で、運動障害(42.2%)と坐骨神経痛(37.7%)が多い症状でした(Atallah 2023)。運動・感覚・膀胱の障害の原因になっている場合には、開窓術などの手術が勧められています。無症状の子どもで見つかった小さな空洞は、まず終室を考えるのが読影の出発点です。脊髄円錐付近の先天異常は脂肪脊髄髄膜瘤(脊髄脂肪腫)のMRI画像診断も参照してください。
症例 30歳代女性 終室(第5脳室)

引用:Radiopaedia(Ventriculus terminalis)
下部胸髄の断面で、脊髄の中心に髄液と同じ高信号の部分があり、中心管が広がっています。症例ページでは脊髄円錐から下部胸髄にかけて最大約3.2mm、長さ約40mmの中心管の拡張があり、終室と考えられると記載されています。大人の症例ですが、子どもでも同じように見えます。
2. 子どもの椎体は正常でも造影される
7日〜9歳の58人の小児の造影MRIでは、7歳未満の全員で正常の椎体骨髄が造影され、強い造影は2歳未満に限られました(Sze 1991, Radiology 180)。また1歳半未満の全員で軟骨が造影され、乳児の脊椎の造影MRIで最も目立つ所見だとされています。理由として、血管が豊富で毛細血管の透過性が高く、血管外の空間が広いことが挙げられています。
| 年齢 | 正常の造影効果(Sze 1991, Radiology 180) |
|---|---|
| 1歳半未満 | 椎体骨髄に加え、軟骨も造影される |
| 2歳未満 | 椎体骨髄の造影が強い |
| 7歳未満 | 椎体骨髄の造影がみられる |
大人では椎体のびまん性の強い造影は骨髄の病気を示すことがありますが、同じ基準を子どもにあてはめないことが大切です。
3. 乳児の椎体の見え方は月齢で変わる
2歳以下の50人の腰椎MRIの検討では、椎体の骨化中心・軟骨・椎間板の信号と形が成長とともに大きく変わり、3つの段階に分けられました(Sze 1991, Radiology 181)。
| 段階 | 月齢の目安 | T1強調像の特徴 |
|---|---|---|
| Ⅰ | 出生〜1か月 | 骨化中心が著明な低信号、軟骨が高信号で厚い |
| Ⅱ | 約1〜6か月 | 骨化中心の信号が終板側から上がり、軟骨が目立たなくなる |
| Ⅲ | 約7か月以降 | 椎体が四角くなり中心から高信号に、軟骨はさらに薄くなる |
とくに新生児では、低信号の骨化中心と高信号の軟骨の組み合わせのため、上下の終板軟骨と椎間板をひとまとまりの椎体のように見誤ることがあります。この時期の信号と形の変化は大きな混乱のもとになるものの、注意して見れば月齢を推定できるほど規則的です(Sze 1991, Radiology 181)。
4. 軽い外傷のあとの脊髄梗塞
子どもの脊髄梗塞はまれですが、ささいな外傷のあとに起こる例が報告されています。3例の検討では、髄核が脊髄の微小循環に入り込む線維軟骨塞栓が機序として考えられ、乳児例も含まれていました(Reisner 2013)。6例の小児脊髄梗塞のまとめでは、診断時年齢の中央値は10歳で、背部・頸部・肩の痛みや片麻痺で発症し、多くは原因不明で、線維軟骨塞栓はしばしば疑われるものの確定されることは少ないとされています(Elgehiny 2025)。
本人や家族が外傷を重く受け止めていないこともあるため、急に始まった脊髄症状で、炎症性の脊髄炎として説明しにくい場合は、梗塞を鑑別に入れ、軽い外傷や運動の有無を聞くことが役立ちます。MRIの所見は脊髄梗塞のMRI画像診断、外傷の評価は脊椎・脊髄外傷の画像診断(SCIWORAなど)を参照してください。
5. 萎縮だけで始まる脊髄腫瘍
原発性の脊髄髄内胚腫(germinoma)は報告が30例に満たないまれな腫瘍です。報告された小児例では、初回のMRIで腫瘤はなく限局性の脊髄萎縮だけがみられ、それがゆっくり大きくなる髄内病変の最初の徴候でした(Madhukar 2013)。進行する脊髄症状があり、説明のつかない限局性の萎縮がある場合は、腫瘤がなくても経過を追う必要があります。髄内腫瘍の鑑別は脊髄髄内腫瘍の鑑別診断にまとめています。
よくある疑問(Q&A)
Q. 子どもの脊髄円錐に小さな空洞があれば、精密検査が必要ですか?
脳脊髄液と同じ信号で造影されない小さな空洞なら、終室をまず考えます。症状の有無と大きさの変化を主治医と確認します。
Q. 何歳まで椎体骨髄の造影は正常ですか?
58人の検討では、7歳未満の全員で正常の骨髄が造影され、強い造影は2歳未満でした(Sze 1991, Radiology 180)。年齢とあわせて、局所的か・左右差があるかを見ます。
Q. 子どもでも脊髄梗塞は起こりますか?
まれですが起こります。軽い外傷のあとに起こる例も報告されています(Reisner 2013)。
お子さんに背中の痛みや手足の動かしにくさ、排尿の異常など気になる症状があれば医療機関を受診し、検査結果については主治医に相談してください。
あわせて読みたい:子どものX線で見逃したくない骨所見
参考文献
- Atallah O, Badary A, El-Ghandour NMF, et al. Cystic dilatation of the ventriculus terminalis: A narrative review. J Craniovertebr Junction Spine. 2023;14(4):319-329. PubMed
- Matsubayashi R, Uchino A, Kato A, et al. Cystic dilatation of ventriculus terminalis in adults: MRI. Neuroradiology. 1998;40(1):45-7. PubMed
- Sze G, Bravo S, Baierl P, et al. Developing spinal column: gadolinium-enhanced MR imaging. Radiology. 1991;180(2):497-502. PubMed
- Sze G, Baierl P, Bravo S. Evolution of the infant spinal column: evaluation with MR imaging. Radiology. 1991;181(3):819-27. PubMed
- Reisner A, Gary MF, Chern JJ, et al. Spinal cord infarction following minor trauma in children: fibrocartilaginous embolism as a putative cause. J Neurosurg Pediatr. 2013;11(4):445-50. PubMed
- Elgehiny A, Wright M, Srivaths L, et al. Spinal Cord Stroke in the Pediatric Population: A Clinical Overview. Pediatr Neurol. 2025;170:38-42. PubMed
- Madhukar M, Maller VG, Choudhary AK, et al. Primary intramedullary spinal cord germinoma. J Neurosurg Pediatr. 2013;11(5):605-9. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
