O-RADSとは 卵巣腫瘤のMRIスコア・US分類

卵巣の腫れでMRIを撮ったら「O-RADS MRI 3」と書かれていました。これって悪いものなんですか?
O-RADS(オーラッズ)は、卵巣・付属器の病変が悪性である可能性を段階で示す仕組みです。スコア3は「低リスク」で、多くは良性です。エコー版とMRI版があるので、順番に整理しますね。

先に結論:O-RADSのポイント

項目 ポイント
何か ACRの卵巣・付属器病変のリスク分類。O-RADS US(2019年、2022年改訂)とO-RADS MRIがある
段階 0(評価不十分)・1(正常)・2(ほぼ確実に良性)・3(低リスク)・4(中間リスク)・5(高リスク)
MRIの要点 造影される充実部分の有無と、その造影パターン(TIC)でスコアが決まる
悪性の割合(MRI) スコア2:0.3%、3:5.6%、4:49.2%、5:89.5%(Thomassin-Naggara 2020)
次にすること 2は基本的に良性、3は経過観察など、4・5は婦人科(腫瘍)専門医へ


O-RADS MRIスコアとO-RADS USカテゴリーの表

O-RADSとは

O-RADS(Ovarian-Adnexal Reporting and Data System)は、アメリカ放射線学会(ACR)の委員会がまとめた、卵巣・付属器病変の用語の統一とリスク層別化・管理の目安です。O-RADS US は2019年に公表され、北米で使われてきたパターン認識の方法と、欧州のIOTA(International Ovarian Tumor Analysis)のADNEXモデルを組み合わせ、0〜5の6カテゴリーで表します(Andreotti 2020)。

エコーで良悪性がはっきりしない付属器腫瘤は約4分の1にのぼり、その評価に用いるのが O-RADS MRI です(Thomassin-Naggara 2020)。卵巣腫瘍のMRIでの考え方は 卵巣腫瘍・骨盤内腫瘤の分類とMRI画像診断 と 卵巣腫瘍の画像診断|単房性・多房性嚢胞と充実成分 も参考にしてください。

O-RADS US(v2022)のカテゴリー

カテゴリー 意味 悪性の可能性
0 評価不十分 —
1 正常卵巣(卵胞・黄体など生理的なもの) —
2 ほぼ確実に良性 1%未満
3 低リスク 1〜10%未満
4 中間リスク 10〜50%未満
5 高リスク 50%以上

(Guo 2026)

2022年の改訂(v2022)の主な変更点は次のとおりです(Strachowski 2023、Guo 2026)。

  • 充実部分のない2房性(bilocular)の嚢胞を、多房性と区別して良性寄りに評価(平滑な隔壁1本で10cm未満ならカテゴリー2)
  • 辺縁平滑な充実性病変で音響陰影(shadowing)を伴うものを良性寄りに評価
  • 悪性の区切りとしてO-RADS 4が適切とされ、切除しないO-RADS 3はエコーで経過観察
  • 充実性病変や充実部分のある嚢胞性病変では、特異度の高いMRIでの追加評価を重視

外部検証では、悪性の割合はO-RADS 2で0%、3で3%、4で35%、5で78%でした(Hack 2022)。

O-RADS MRIスコア1〜5の定義

スコア 主な所見 陽性的中率の目安
0 造影なし・撮像不十分などで評価不完全 —
1 正常卵巣、生理的所見(卵胞・黄体、閉経前の3cm以下の出血性嚢胞) —
2
ほぼ確実に良性
充実部分のない単房性嚢胞(単純性液体・内膜症性液体)、脂肪を含み造影される充実部分のない病変、T2・拡散強調像ともに均一な低信号の充実部分(dark T2/dark DWI)、単純性液体の卵管留水腫、傍卵巣嚢胞 0.5%未満
3
低リスク
蛋白・出血・粘液性の液体の単房性嚢胞、充実部分のない多房性嚢胞、充実部分が低リスクTIC 約5%
4
中間リスク
充実部分が中間リスクTIC、脂肪を含み造影される充実部分が多い病変、(ダイナミックができない場合)30〜40秒で子宮筋層以下の造影 約50%
5
高リスク
充実部分が高リスクTIC、(ダイナミックができない場合)30〜40秒で筋層より強い造影、腹膜・腸間膜・大網の結節や不整な肥厚 約90%

(Nougaret 2024)

TICは充実部分の時間-信号強度曲線を子宮外層筋層と比べたもので、低リスク型・中間リスク型・高リスク型に分けます。目視よりTIC解析の方が正確で、目視では浸潤癌の21%が低リスクと判定されたという報告があります(Wengert 2022)。

「充実部分」に入るもの・入らないもの

  • 充実部分:造影される乳頭状突起、3mmを超える壁在結節、不整な隔壁・壁、その他の大きな充実部分
  • 充実部分としない:脂肪、凝血塊、デブリ、正常卵巣実質、Rokitansky結節(造影されても充実部分としない)、平滑な壁・隔壁

(Nougaret 2024)

O-RADS MRIの根拠となった多施設研究

エコーで判定困難な付属器腫瘤の女性1340人を対象にした欧州15施設の前向き研究で、スコアごとの悪性(境界悪性を含む)の割合は次のとおりでした(Thomassin-Naggara 2020)。

スコア 悪性の割合 陽性尤度比
2 0.3%(2/571、いずれも境界悪性) 0.01
3 5.6%(12/213) 0.27
4 49.2%(60/122) 4.42
5 89.5%(119/133) 38.81

スコア4・5を悪性とすると感度0.93、特異度0.91で、経験の浅い読影医との一致率も良好(κ=0.784)でした。スコア2に浸潤癌はありませんでした(Thomassin-Naggara 2020)。

代表的な病変とスコア

症例 年齢不詳 女性 付属器腫瘤

卵巣類内膜腺癌(O-RADS MRI 4) 骨盤MRI 横断像・矢状断像
引用:Radiopaedia(O-RADS MR Risk Score 4 – example)

付属器の多房性の嚢胞性腫瘤で、嚢胞内には出血性の液体と液面形成があり、大きな充実部分・壁在結節・不整な隔壁を伴います。右下の造影サブトラクション像で充実部分は造影されますが、その造影が外側の子宮筋層より弱いため、O-RADS MRIスコア4と判定されています。病理は深部子宮内膜症から生じた類内膜腺癌でした。

よくある疑問(Q&A)

Q. エコーのO-RADS 4とMRIのスコア4は同じ意味?
A. 名前は同じ「中間リスク」ですが、エコーの悪性リスクとMRIの陽性的中率は互換ではありません(Guo 2026)。

Q. MRIは単純撮影だけでもスコアがつく?
A. 造影がないと原則としてスコア0(評価不完全)です。ダイナミック造影ができない場合の代替基準はあります(Nougaret 2024)。

Q. スコア3と言われたら手術?
A. 悪性の割合は約5%で、多くは良性です。経過観察か手術かは症状や年齢を含めて婦人科の主治医と相談してください。

参考文献

  1. Andreotti RF, Timmerman D, Strachowski LM, et al. O-RADS US Risk Stratification and Management System: A Consensus Guideline from the ACR Ovarian-Adnexal Reporting and Data System Committee. Radiology. 2020;294(1):168-185. PubMed
  2. Strachowski LM, Jha P, Phillips CH, et al. O-RADS US v2022: An Update from the American College of Radiology’s Ovarian-Adnexal Reporting and Data System US Committee. Radiology. 2023;308(3):e230685. PubMed
  3. Thomassin-Naggara I, Poncelet E, Jalaguier-Coudray A, et al. Ovarian-Adnexal Reporting Data System Magnetic Resonance Imaging (O-RADS MRI) Score for Risk Stratification of Sonographically Indeterminate Adnexal Masses. JAMA Netw Open. 2020;3(1):e1919896. PubMed
  4. Nougaret S, Razakamanantsoa L, Sadowski EA, et al. O-RADS MRI risk stratification system: pearls and pitfalls. Insights Imaging. 2024;15(1):45. PubMed
  5. Wengert GJ, Dabi Y, Kermarrec E, et al. O-RADS MRI Classification of Indeterminate Adnexal Lesions: Time-Intensity Curve Analysis Is Better Than Visual Assessment. Radiology. 2022;303(3):566-575. PubMed
  6. Hack K, Gandhi N, Bouchard-Fortier G, et al. External Validation of O-RADS US Risk Stratification and Management System. Radiology. 2022;304(1):114-120. PubMed
  7. Guo Y, Strachowski LM, Shinagare AB, et al. O-RADS for assessment of adnexal lesions: current status, challenges and future directions. Cancer Imaging. 2026;26(1):129. PubMed

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