多裂筋(たれつきん:multifidus muscle)は、脊柱の最深部に位置する固有背筋のひとつであり、胸椎から仙骨まで連続する重要な傍脊柱筋です。
とくに腰椎レベルでは発達が良好で、脊柱の分節的安定化に大きく関与するため、腰椎MRIだけでなく腹部CTや腰椎CTでもしばしば観察対象となります。
背中全体にわたる筋肉は、大きく分けて表層、中層、深層の筋肉が存在しますが、多裂筋はこのうち脊柱起立筋とともに深層に位置します。

多裂筋のCT、MRI画像の解剖
腹部のCTやMRI画像を読む上で多裂筋がどの場所にあるのか解剖をチェックしましょう。
CTの横断像では以下の場所に多裂筋があります。

腰椎横断CTでは、多裂筋は棘突起のすぐ外側に位置し、左右対称に見えることが多いです。さらに外側には長肋筋主体の脊柱起立筋が位置します。
上位腰椎では多裂筋は比較的小さく、棘突起の直外側にコンパクトに位置します。
下位腰椎では多裂筋は著明に発達し、後方筋群の中でも重要な割合を占めます。L4/5、L5/S1では筋量が大きく、棘突起から後外側にかけて厚い筋腹として見えます。
自分でCT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→多裂筋(multifidus muscle)のCT画像の解剖
多裂筋の起始と停止
多裂筋は頸椎、胸椎、腰椎で起始部に多少の違いがあるが、基本的には下位椎の後方要素から起こり、2〜4椎体上位の棘突起へ停止する構造をとる。一般的な起始停止は以下の通りである。
起始
- 仙骨後面
- 上後腸骨棘付近
- 仙腸靱帯後部
- 腰椎の乳頭突起
- 胸椎の横突起
- 頸椎の関節突起
停止
- 起始より2〜4椎体上位の棘突起
腰椎部では、とくに乳頭突起および仙骨後面から起こり、上位の棘突起に停止するという理解が重要である。つまり、腰椎多裂筋は「乳頭突起―棘突起」を結ぶ深層の分節筋として理解するとわかりやすい。
腰椎多裂筋の詳細な形態
腰椎多裂筋は、単なる一枚の筋ではなく、複数の筋束が規則的に並ぶ構造をもつ。古典的解剖学研究では、腰椎多裂筋は明瞭なcleavage planeにより5つの帯状構造に分けられるとされ、各帯はそれぞれ異なる椎体レベルの棘突起に集まる。すなわち、各棘突起ごとに筋束群が集まり、そこから下外側へ向かって広がる形となる。
この特徴のため、CT横断像では多裂筋は均一な円形筋ではなく、棘突起の両側に接する三角形〜扇形の筋塊として見えることが多い。とくに下位腰椎では筋量が大きく、L4〜S1で最も発達が目立つ。
多裂筋の作用
- 脊柱の分節的安定化
- 脊柱伸展の補助
- 片側収縮時の軽度回旋・側屈補助
- 椎体間の微細な運動制御
多裂筋は、脊柱起立筋のような大きな体幹伸展よりも、椎間の微細な安定化に強く関与する筋と理解するのが重要である。とくに腰椎では、姿勢保持や中間位での安定化に寄与する代表的筋とされる。
神経支配
多裂筋は脊髄神経後枝内側枝により支配される。腰椎部では、各棘突起に集まる筋束群が、そのレベルに対応する後枝内側枝から分節的に支配される。この分節支配は、除神経性萎縮や術後変化を考える際に重要である。
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参考文献:
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