腹部CTを読影していると尿管結石と間違われやすいのが「静脈石」です。
今回は、静脈石のCT画像所見における重要なポイントを解説します。
先に結論:静脈石と尿管結石の見分け方
- 静脈石は、骨盤の静脈の中の血栓が石灰化したもので、加齢とともによく見られる病気ではない所見です。CTで骨盤の中の丸い石灰化(中心が少し抜けて見えることも)として見えます
- 尿管結石との区別が大切で、尿管結石は周りに尿管の壁のふち(soft tissue rim sign)があり、その上の尿管や腎盂が拡張していることが多いのに対し、静脈石は石から静脈が尾を引くように見える(comet tail sign)のが手がかりです。Boridyらの検討では、comet tail signは静脈石の65%に見られ、尿管結石では0%(特異度100%)でした。ただし感度は高くないため、tail signがないことは静脈石を否定する根拠にはなりません。
- 迷うときは冠状断・矢状断で尿管を腎臓から連続して追うことが確実です
静脈石(phlebolith)とは?
- 静脈石は、静脈内の血栓が石灰化をきたしたもの。
- 加齢による生理的変化と考えられており、一般的には病的な意義はないとされる。
- 16〜79歳の1000人の検討では、骨盤の静脈石は44.2%にみられ(男性37.3%、女性50.1%)、年齢が高いほど数が多く、右より左に多くみられた(Mattsson 1980)。
- 特に骨盤底の静脈叢内に発生する生理的石灰化病変として認められることが多く,CT検査では尿管結石と誤認されやすい。
静脈石(phlebolith)のCT画像所見
- 形態的特徴:静脈石は、CT画像で辺縁が平滑な円形として描出されることが多い。特に骨条件で観察すると、この特徴がより明確になる。また、特徴として中心が透亮性(CT値が低い)の円形結石として同定されることがある。
- CT値:静脈石は石灰化しているため高いCT値を示す。静脈石の平均CT値は尿管結石より低く、278HUを超える静脈石はなかったとの報告がある(Bell 1998)が、尿管結石の多くもカルシウム結石で高いCT値を示すため、CT値は形や周囲の所見と組み合わせて判断する。
- 好発部位:静脈石は、主に骨盤底部の臓器周囲の静脈叢に多く発生する。具体的には、直腸、膀胱、前立腺、子宮、腟などの周囲の蔓状管状構造として同定される。また、精巣や卵巣の静脈内にも生じることがある。骨盤底部では尿管と静脈叢が同定しやすく、結石の部位から鑑別が比較的容易な場合がある。
- 静脈奇形(海綿状血管腫)の内部にも血栓や静脈石がよくみられる(Ali 2020)。軟部の腫瘤の内部に球形の石灰化(静脈石)があれば、静脈奇形を考える手がかりとなる。
静脈石(phlebolith)と鑑別を要することがあるもの
- 尿管結石:生理的狭窄部(腎盂尿管移行部,総腸骨動脈交差部,膀胱尿管移行部)で嵌頓し,付随所見として腎盂拡張を伴うことが多い。尿管走行を追跡する。尿管壁の浮腫が結石を輪状に囲むsoft tissue rim signは尿管結石の77%、静脈石の8%にみられ(感度77%・特異度92%)、小さい結石ほど陽性になりやすいと報告されている。また中心透亮像は静脈石の9%にみられたが、尿管結石ではみられなかった。
- 動脈石灰化:内腸骨動脈枝など血管走行に沿う線状・斑状の石灰化を示す。血管ルートを同定して区別。
- 子宮筋腫石灰化:子宮領域に限局し,不規則な石灰化パターン。骨盤内複数点に石灰化があれば静脈石を優先的に考慮する。
静脈石・尿管結石・子宮筋腫の石灰化の比較
| 石灰化 | 場所 | 手がかり |
|---|---|---|
| 静脈石 | 骨盤の静脈叢(複数・左右にあることが多い) | 丸く辺縁平滑。静脈が尾を引く(comet tail sign) |
| 尿管結石 | 尿管の走行上 | 周りに尿管壁(rim sign)、上流の尿管・腎盂の拡張 |
| 子宮筋腫の石灰化 | 子宮の腫瘤の中 | 子宮と連続する腫瘤内の不規則な石灰化 |
症例 60歳代男性 スクリーニング

また、前立腺静脈叢の一部に石灰化を認めており、静脈石を疑う所見です。
尿管結石などと間違えないように注意が必要です。
症例 70歳代女性 スクリーニング

左卵巣静脈の軽度拡張および静脈石疑う石灰化を認めています。
関連記事:尿管結石と静脈石のCT画像上でウインドウ幅/レベルを変更して鑑別する方法
静脈石でよくある疑問(Q&A)
Q. 静脈石は治療が必要ですか?放置してよいですか?
A. 骨盤の静脈石は加齢に伴う変化で、一般的には病的な意義はないとされ、静脈石そのものに対する治療は通常行いません。ただし、わき腹や背中の痛み・血尿などの症状があるときは、尿管結石などほかの原因がないか医療機関で相談してください。
Q. レントゲン(単純X線写真)では見分けられますか?
A. 単純X線写真では静脈石の66%に中心の透亮像がみられましたが、通常のCTでは99%で中心の低吸収が見えませんでした(Traubici 1999)。CTでは中心が抜けて見えないことが多いため、ほかの所見とあわせて判断します。
あわせて読みたい:体表の血管腫と血管奇形、ISSVA分類とは?画像所見と静脈石
参考文献・出典
- Traubici J, Neitlich JD, Smith RC. Distinguishing pelvic phleboliths from distal ureteral stones on routine unenhanced helical CT: is there a radiolucent center? AJR Am J Roentgenol. 1999;172(1):13-7. PubMed
- 森澤信子. 第6章 腎・尿管 Q4 尿管結石と静脈石の区別がつきません.どうしたらわかりますか? 画像診断 41(4):S106-S108, 2021
- Boridy IC, Nikolaidis P, Kawashima A, et al. Ureterolithiasis: value of the tail sign in differentiating phleboliths from ureteral calculi at nonenhanced helical CT. Radiology. 1999;211(3):619-621. PubMed
- Heneghan JP, Dalrymple NC, Verga M, et al. Soft-tissue “rim” sign in the diagnosis of ureteral calculi with use of unenhanced helical CT. Radiology. 1997;202(3):709-711. PubMed
- Bell TV, Fenlon HM, Davison BD, et al. Unenhanced helical CT criteria to differentiate distal ureteral calculi from pelvic phleboliths. Radiology. 1998;207(2):363-367. PubMed
- Mattsson T. Frequency and location of pelvic phleboliths. Clin Radiol. 1980;31(1):115-8. PubMed
- Ali B, Panossian A, Taghinia A, et al. Diffuse Venous Malformations of the Upper Extremity (Bockenheimer Disease): Diagnosis and Management. Plast Reconstr Surg. 2020;146(6):1317-1324. PubMed
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