腹部CTを読影していると尿管結石と間違われやすいのが「静脈石」です。
今回は、静脈石のCT画像所見における重要なポイントを解説します。
静脈石(phlebolith)とは?
- 静脈石は、静脈内の血栓が石灰化をきたしたもの。
- 加齢による生理的変化と考えられており、一般的には病的な意義はないとされる。
- 特に骨盤底の静脈叢内に発生する生理的石灰化病変として認められることが多く,CT検査では尿管結石と誤認されやすい。
静脈石(phlebolith)のCT画像所見
- 形態的特徴:静脈石は、CT画像で辺縁が平滑な円形として描出されることが多い。特に骨条件で観察すると、この特徴がより明確になる。軟部条件では、尿管結石と同様に不整形に見えることもある。また、特徴として中心が透亮性(CT値が低い)の円形結石として同定されることがある。
- CT値:静脈石の主成分はハイドロキシアパタイトであると報告されており、これは歯牙にも多く含まれる成分である。そのため、概ね1200HU以上という高いCT値を示すことが多い。しかし、尿管結石の多くもカルシウム結石であり高いCT値を示すため、CT値だけで尿管結石と静脈石を区別することはできない。
- 好発部位:静脈石は、主に骨盤底部の臓器周囲の静脈叢に多く発生する。具体的には、直腸、膀胱、前立腺、子宮、腟などの周囲の蔓状管状構造として同定される。また、精巣や卵巣の静脈内にも生じることがある。骨盤底部では尿管と静脈叢が同定しやすく、結石の部位から鑑別が比較的容易な場合がある。
- 静脈奇形(海綿状血管腫)の内部にもしばしば形成される。これは、血流うっ滞や局所の凝固能異常が原因とされる。骨軟部に嚢胞性腫瘤があり、その内部に特有の球形結石(静脈石)が同定できれば、その腫瘤は静脈奇形である可能性が高い。
静脈石(phlebolith)と鑑別を要することがあるもの
- 尿管結石:生理的狭窄部(腎孟尿管移行部,総腸骨動脈交差部,膀胱尿管移行部)で嵌頓し,付随所見として腎盂拡張を伴うことが多い。必ず尿管走行を追跡する。
- 動脈石灰化:内腸骨動脈枝など血管走行に沿う線状・斑状の石灰化を示す。血管ルートを同定して区別。
- 子宮筋腫石灰化:子宮領域に限局し,不規則な石灰化パターン。骨盤内複数点に石灰化があれば静脈石を優先的に考慮する。
症例 60歳代男性 スクリーニング
また、前立腺静脈叢の一部に石灰化を認めており、静脈石を疑う所見です。
尿管結石などと間違えないように注意が必要です。
症例 70歳代女性 スクリーニング
左卵巣静脈の軽度拡張および静脈石疑う石灰化を認めています。
関連記事:尿管結石と静脈石のCT画像上でウインドウ幅/レベルを変更して鑑別する方法
参考文献・出典
- Traubici J, et al. Distinguishing pelvic phleboliths from distal ureteral stones on routine unenhanced helical CT: is there a radiolucent center? AJR. 1999;172:13–17.
- 画像診断 2021;41(4増刊):S107-S108
ご案内
腹部画像診断を学べる無料コンテンツ
4日に1日朝6時に症例が配信され、画像を実際にスクロールして読影していただく講座です。現状無料公開しています。90症例以上あり、無料なのに1年以上続く講座です。10,000名以上の医師、医学生、放射線技師、看護師などが参加中。胸部レントゲンの正常解剖を学べる無料コンテンツ
1日3分全31日でこそっと胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学んでいただく参加型無料講座です。全日程で簡単な動画解説付きです。
画像診断LINE公式アカウント
画像診断cafeのLINE公式アカウントで新しい企画やモニター募集などの告知を行っています。 登録していただくと特典として、脳の血管支配域のミニ講座の無料でご参加いただけます。