尿管結石と静脈石の鑑別方法として、soft tissue rim sign,comet signが知られています、このサインなかなか分かりにくいのが現実です。
そこでウインドウ幅やウインドウレベルを変更して両者を鑑別する方法を紹介したいと思います。
結石の形態による鑑別
尿管結石は、もともとは腎臓内で形成された腎結石が、尿管に落石したものです。
腎臓内で形成される原因としては、長期にわたる尿の停滞や慢性感染があります。
慢性的に結晶化・凝集を繰り返して増大するため、尿管結石の多くは針状結晶、もしくは多数の凹凸を表面にもつ不整形な形態をとります。
一方で、静脈うっ滞などにより静脈壁に生じた血栓を核として、同心円状に層状の石灰沈着や膠原繊維束形成を繰り返すため、特有な球状結石が形成されます。
この中心部の血栓の部分はほとんどが中心透亮像を示します。
ですので、ウインドウレベル/幅を調節して、
- 凹凸不整で中心部に透亮像がない→尿管結石
- 球形でかつ中心部に透亮像がある→静脈石
と鑑別することができます。
CT値による鑑別はできる?
主な尿路結石の成分と平均CT値は以下の様に報告されています。
結石の種類 | 平均CT値(HU) |
シュウ酸カルシウム結石 | >1500 |
リン酸カルシウム結石 | >1500 |
リン酸マグネシウムアンモニウム結石 | 1000~1100 |
シスチン結石 | 700~900 |
尿酸結石 | 350~600 |
1)P106表を引用。
一方で、静脈石の主成分はハイドロキシアバタイトとする報告が多く、概ね1200HU以上の高いCT値を呈するため、CT値による両者の鑑別はできません。
結石の発生部位による鑑別
骨盤部の静脈石は、直腸、膀胱、前立腺、子宮、膣など骨盤底部の臓器周囲の静脈叢に多く生じます。
骨盤底部の静脈叢は、臓器周囲の蔓状管構造として同定され、部位による静脈石の識別は比較的容易ですが、静脈石は精巣・卵巣静脈内にも生じることがあり、尿管と近接した位置であれば単純CTでの鑑別が難しいことがある点に注意が必要です。
参考文献:
1)ビギナーのための腹部画像診断 (画像診断 Vol.41 No.4 増刊号2021)P106-108