Swiss cheese appearance(スイスチーズアピアランス)とは、胸部CTで認められる特徴的な所見のひとつで、空気を含む多数の小嚢胞状構造や気腔が肺野に散在する様子が、スイスチーズの穴のように見えることからその名が付けられています。

Swiss cheese appearanceの名前の由来とイメージ

“Swiss cheese”とは、エメンタールチーズなどに代表される多数の孔(ホール)を持つチーズのことです。

CT上で、肺実質の中に多数の気腔や嚢胞、空洞が“虫食い状”に存在する像が、あたかもスイスチーズの断面のように見えることから、Swiss cheese appearanceという比喩的表現が用いられています。

出現しやすい疾患

  • COPDに合併した細菌性肺炎(近年最も典型的):肺実質の壊死性変化+気腔形成が虫食い状に分布
  • 肺結核:特に空洞形成性結核で古典的な虫食いパターン
  • 非結核性抗酸菌症(MAC症):線維空洞型で類似所見を呈する
  • 肺癌(粘液性腺癌など):腫瘍壊死や粘液性分泌で空洞を形成することがある

    Swiss cheese appearanceの画像所見:COPD+肺炎における誤認に注意

    COPD(特に肺気腫)に細菌性肺炎が合併すると、既存の肺気腫部分には浸出性変化が起きにくいため、炎症が気腫の外縁に限定されます。
    その結果、病変部と気腫嚢胞のコントラストが強調され、まるで多発する嚢胞状陰影=Swiss cheese appearanceのように見えることがあります。

    このパターンは、しばしば蜂巣肺(honeycombing)や間質性肺炎と誤認されやすいため、以下の点に注意が必要です:

    • 蜂巣肺では嚢胞の壁が厚く、層状に整列しているのに対し、
    • COPD+肺炎でのSwiss cheese像では、気腫性嚢胞の周囲に炎症性浸潤がまばらに重なる不規則な構造をとります。

    肺気腫+肺炎でSwiss cheese appearanceが現れた場合は、背景にあるCOPDの存在と気腫分布の左右差・壁の厚み・層状構造の有無を慎重に観察することが誤診防止の鍵です。

    症例 70歳代男性 喘鳴、右胸痛

    中葉に広範なコンソリデーションを認めています。

    気腫性変化がベースにあり、いわゆるSwiss cheese appearanceを呈しています。

    気腫性変化がベースにある場合は、ベターと広がるコンソリデーションの中にスイスチーズのように穴が空いて見える(低吸収の空洞が見える)点が重要です。

    鑑別が必要な他の空洞性所見との違い

    所見名 特徴 代表疾患
    Swiss cheese appearance 虫食い状の気腔・空洞が多数存在 肺結核、肺癌、NTM、COPD合併症例
    meniscus sign 空洞内の球状陰影とその上に半月状の空気像 アスペルギローマ
    air crescent sign 壊死組織が収縮し、周囲にcrescent状の空気像 IPA回復期

    まとめ

    • Swiss cheese appearanceは、空洞性肺疾患における重要なCT所見の一つ
    • 虫食い状の空気を含んだ構造が肺内に散在する様子がスイスチーズに例えられる
    • COPD、肺結核、肺癌、NTM、アスペルギルス症など、さまざまな慢性肺疾患で出現
    • 鑑別には空洞の形態、分布、背景疾患との関連を評価することが重要

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    参考文献:

    • Kuhlman JE, Fishman EK, et al. Characteristic CT findings of invasive pulmonary aspergillosis: Swiss cheese and halo sign.
    • Radiology. 1985;157(3):611–614.
    • 臨床放射線 Vol.67 No.11(2022)
    • 画像診断 Vol.33 No.12(2013)

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