乳癌の遠隔転移の疫学

  • 初期乳癌診断時の約6%に遠隔転移あり。
  • 全ての早期乳癌の20~30%に遠隔転移あり。
  • 遠隔転移は、術後2~3年もしくは5年前後くらいに起こることが多い。ただし10〜20年後に初めて認めることもある。
  • 長期生存者に遭遇することも多く、20年以上再発していない人もいる。
  • 化学療法中は2〜4サイクルごと、内分泌療法中は2〜6ヶ月ごとに撮影することを提案している(NCCNガイドライン)。
  • 転移を疑う症状がある場合はFDG-PETでの全身検索が有用だが、脳転移に関しては造影MRIが原則。

乳癌の遠隔転移の画像所見の特徴

  • 好発部位:骨・肺・肝臓・リンパ節・脳(その他の部位への転移もしばしば)。

  • 乳癌の転移としては最多。
  • 骨シンチグラフィやFDG-PETが診断に有用。
  • 偽陽性には注意が必要。
  • 骨修飾薬(ビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体)による副作用として、顎骨壊死や大腿骨骨幹部骨折が生じることもある。
  • 大腿骨骨幹部骨折は大腿骨骨幹部外側の皮質肥厚を伴った不全骨折が特徴的。

  • 乳癌の肺転移は非常に多彩。
  • 血行性転移、リンパ行性転移(癌性リンパ管症)、気管支内転移、胸膜播種、癌性胸膜炎いずれも生じ、しばしば非典型的な形態(不整形や空洞・嚢胞形成・石灰化・浸潤影)を呈する。
  • 孤立性転移も起こしやすい。
  • 肺動脈腫瘍塞栓を生じることもあり、特殊型としてpulmonary tumor thrombotic microaniopathy(PTTM)という病態も知られている。
  • 治療関連の合併症もしばしば見られ、放射線治療後の変化(放射線肺障害や器質化肺炎)や、化学療法に伴う薬剤性障害の可能性も常に念頭に置く。

肝臓

  • 肝転移は、造影CTで多発する低吸収の腫瘤として認められることが多い。
  • 乳癌治療でタモキシフェンを投与されている場合はしばしば脂肪肝が生じ、造影CTでは肝実質と同程度に増強されるため、かえって肝転移が不明瞭になる場合がある。
  • 肝転移の治療後は、しばしば肝臓に線維化・変形が生じる(偽肝硬変(psuedocirrhosis))ため、治療効果の判定が困難になることもある。

症例 40歳代女性 乳癌 タモキシフェン投与

タモキシフェン投与前後で、脂肪肝が出現しています。

症例 50歳代女性 乳癌

多発肝転移を認め、あたかも慢性肝障害や肝硬変のように肝に変形を認める。偽肝硬変(psuedocirrhosis)の状態。

治療効果なのか増悪所見なのか紛らわしいことがある

  • 治療開始後早期には、治療による反応が画像上にみられることがあり、初回の効果判定に骨シンチグラフィやFDG-PETが施行された場合、病変の増悪とフレア現象(一過性に集積亢進をきたすこと。骨芽細胞が活性化することにより生じる一過性の骨硬化を反映)の判別が難しい場合がある。
  • CTでも、溶骨性病変やみえていなかった骨梁間の病変や骨髄転移が治療効果によって骨硬化を呈することがある。(臨床所見や腫瘍マーカー、その後の経過も併せた判定が必要)。
  • 奏効例においてpseudoprogressionという現象を認めることがあり、特に分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬の導入によって頻度が増加している。
  • 免疫チェックポイント阻害薬では導入初期に急激に腫瘍増大(hyper-progression)を来すこともあり、画像での判別が難しい場合がある。

正しいものを一つ選べ。

  • 乳癌の遠隔転移は脳が最多である
  • 乳癌の遠隔転移は皮膚が最多である
  • 乳癌の遠隔転移は骨が最多である

正解!

不正解...

正解は乳癌の遠隔転移は骨が最多であるです。

乳癌の遠隔転移は多彩で、骨・肺・肝臓・リンパ節・脳(その他の部位への転移もしばしば)などがありますが、中でも骨が最多です。

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参考文献:画像診断 Vol.43 No.11 増刊号 2023 P72-5

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