筋強直性ジストロフィー(myotonic dystrophy:DM)
- 成人の筋ジストロフィーのなかで最多。10万人に5~7人程度と推計される。
- 常染色体優性遺伝を示し、遺伝学的にDMIとDM2の2つの型があるが、わが国ではほとんどがDM1(myotonic dystrophy type 1)。
- DM1では、第19番染色体(19q13.3)のDMPK遺伝子上のCTGリピートの異常伸長。ミオトニー(筋強直現象:収縮した筋肉がなかなか弛緩しない状態)、進行性の筋萎縮、筋力低下がある。
- 飲みにくさ、噛みにくさ、躓きやすい、ペットボトルの蓋があけにくいなどの初期症状で気付かれる。
- 西洋斧様顔貌が特徴(咬筋、側頭筋萎縮を反映)。クローバー状舌、若年からの前頭部禿頭を認める。
- 多臓器に及ぶ障害を認め、中枢神経神経では白質脳症、認知機能障害、精神発達遅滞(特に先天性)を認める。
- 他、呼吸障害、心筋症、嚥下障害、甲状腺、副甲状腺機能障害、下垂体障害、性腺機能障害、糖尿病、高脂血、白内障、斜視(特に先天性)、難聴、頭蓋骨肥厚、副鼻腔が大きいなど
- 頭皮に石灰化上皮腫が多く認められる。
筋強直性ジストロフィーの画像所見
- 側頭葉優位に大脳白質に、T2強調像で高信号を認める。(DM2では認めない)
- 咀嚼筋、側頭筋の萎縮、前頭洞の拡大、頭蓋骨肥厚を認めることがある。
- 基底核の石灰化、大脳鎌の石灰化、骨化が目立つ例がある。
症例 50歳代男性
両側側頭葉の大脳白質に異常な低吸収域を認めています。
両側の著明な咀嚼筋、側頭筋の萎縮を認めています。
また、前頭洞の拡張を認めています。
筋強直性ジストロフィー(DM1)を疑う所見です。
引用:radiopedia
上で用いている50歳代女性の頭部CTの正常例はこちら。
前側頭極皮質下高信号を呈する鑑別疾患
- CADASIL/CARASIL:側頭極だけでなく、白質病変や微小出血、ラクナを合併する点がポイント
- 筋強直性ジストロフィー
- 神経梅毒
- 前頭側頭葉変性症
- 認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症
参考文献:
- 頭部 画像診断の勘ドコロNEO P315-317
- 画像診断 Vol.35 No.5 2015 P484
- 新版 所見から迫る脳MRI P266
- 画像診断 Vol.37 No.13 2017 P1340,1290