先に結論:免疫再構築症候群(IRIS)

  • IRISの読み方は「アイリス」で、HIV診療では免疫再構築症候群(Immune Reconstitution Inflammatory Syndrome)の略です
  • IRISはHIV感染者が抗HIV療法(ART)を始めて免疫が回復する途中で、隠れていた感染症などに対する炎症が強く出て、かえって悪化する現象です
  • 治療開始時にCD4数が少ない・ウイルス量が多い・日和見感染症の治療直後に起こりやすく、結核・非結核性抗酸菌症・クリプトコッカス・CMV・PML・カポジ肉腫などで見られます
  • 画像では病変の拡大や新たな造影効果が出るため、病気の悪化や別の感染と区別することが大切です。HIV以外でも免疫状態が変わる治療で起こることがあります

免疫再構築症候群(Immune reconstitution inflammatory syndrome:IRIS)とは?

  • 抗HIV治療(antiretroviral therapy:ART)が用いられるようになり、HIV感染者の生命予後は劇的に改善したが、ART開始後にAIDS患者の免疫状態が回復する過程において、日和見疾患をはじめとする様々な疾患が報告されるようになった。
  • この反応は免疫再構築症候群(Immune reconstitution inflammatory syndrome:IRIS(読み方はアイリス))と呼ばれ、それによって引き起こされる臓器障害は時にAIDS治療の妨げとなった。

なぜIRISが生じるのか?

  • 免疫不全が進行した状態でARTを開始すると、急速にHIV-RNA量が減少し、単球、マクロファージ、NK細胞などの機能回復や、CD4陽性Tリンパ球の増加をきたして患者の免疫能が改善する。
  • しかし、制御性T細胞活性の低下は持続しているため、体内に存在する病原性微生物などに対する免疫応答が過剰に誘導され、IRISが生じると考えられている。
  • IRISは日和見感染症に限定されたものではなく、悪性腫瘍や自己免疫性疾患など様々な疾患がIRISに関連づけて報告されている。
  • AIDS以外の治療でも免疫状態の変化によって医原性に生じることがわかっている。
  • 現時点においてIRIS全体に共通する確立した診断基準は存在しないが、結核関連IRISについては国際的な合意に基づく症例定義(INSHI, 2008年)が提唱されている。

IRISの2つのタイプ

  • 逆説型(paradoxical):治療中の日和見感染症がいったん良くなっていたのに、ART開始後に悪化・再燃する。
  • 顕在化型(unmasking):気づかれていなかった感染症が、ART開始後に強い炎症を伴って初めて表に出る。

結核関連IRISの国際的な症例定義でも、この2つは区別されています(Meintjes 2008)。

IRIS発症の危険因子

  • ART開始時のCD4陽性T細胞数低値(<50/μL)
  • 高HIV-RNA量(≧10万コピー/ml)
  • ART開始前の日和見感染症の存在
  • 日和見感染症治療直後短期間でのART開始
  • ART後の急速なHIV-RNA量低下

などが挙げられる。54コホート13,103例のメタ解析では、ART開始患者の16.1%に何らかのIRISが生じ、既知の日和見疾患別ではCMV網膜炎37.7%、クリプトコッカス髄膜炎19.5%、PML16.7%、結核15.7%であった。CD4数が低いほどIRISのリスクが高く、クリプトコッカス髄膜炎に伴うIRISの致死率は20.8%と高い。

IRISを起こす疾患

我が国では

  • 帯状疱疹
  • サイトメガロウイルス感染症
  • ニューモシスチス肺炎
  • 結核
  • 非結核性抗酸菌症
  • B型肝炎
  • カポジ肉腫

などが多い。

肺障害を来すIRISの代表的疾患

  • 結核
  • 非結核性抗酸菌症
  • ニューモシスチス肺炎
  • クリプトコッカス症
  • カポジ肉腫
  • サイトメガロウイルス感染症
  • サルコイドーシス

IRISの治療と予防

多くはARTを続けたまま原因の感染症を治療し、炎症が強い場合はステロイドを使います。結核治療中でCD4が100/μL以下の240人の試験では、ART開始後4週間のプレドニゾン投与で結核関連IRISが32.5%(プラセボ46.7%)に減り、重い感染症やがんの増加はみられませんでした(Meintjes 2018)。

症例 40歳代男性 運動失調、構音障害(HIV陽性、ART療法前、CD4+  70)

引用:Radiopaedia

両側小脳に斑状のT2WI高信号、T1WI低信号を認めます。造影効果は認めません。

進行性多巣性白質脳症(PML:progressive multifocal leukoencephalopathy)を疑う所見です。

ART療法が開始され2週間後、症状が増悪しました。(CD4+ 200)

両側小脳半球内の異常なT2WI 高信号の領域が増加しており、左中小脳脚にも及んでいます。

また異常高信号の辺縁に造影効果が出現しています。

MRI で見られる進行性の広がりと新たな造影効果は、特に治療開始後に症状が悪化する臨床所見を考えると、IRIS と一致しています。

ステロイド治療により改善を認めました。

IRIS は、臨床的および/または放射線学的炎症性疾患の逆説的な悪化の現象であり、抗レトロウイルス療法 (ART) を開始した AIDS 患者に見られることがあります。

これは、以前に抑制された炎症性免疫応答が回復したために発生すると考えられており、結核、クリプトコッカス、CMV、カポジ肉腫、PML など、さまざまな AIDS 関連疾患の患者で報告されています。

IRISでよくある疑問(Q&A)

Q. 画像でIRISと病気の悪化はどう見分けますか?
A. 画像だけでは難しく、ART開始やCD4の増加と症状悪化の時間関係、新しい造影効果の出現、別の感染症や薬の副作用の除外をあわせて判断します。

参考文献:臨床放射線 Vol.64 No.6 2019 P803-809

  1. Müller M, Wandel S, Colebunders R, et al. Immune reconstitution inflammatory syndrome in patients starting antiretroviral therapy for HIV infection: a systematic review and meta-analysis. Lancet Infect Dis. 2010;10(4):251-261. PubMed
  2. Meintjes G, Lawn SD, Scano F, et al. Tuberculosis-associated immune reconstitution inflammatory syndrome: case definitions for use in resource-limited settings. Lancet Infect Dis. 2008;8(8):516-523. PubMed
  3. Meintjes G, Stek C, Blumenthal L, et al. Prednisone for the Prevention of Paradoxical Tuberculosis-Associated IRIS. N Engl J Med. 2018;379(20):1915-1925. PubMed

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