先に結論:耳下腺間隙とは

  • 耳下腺間隙は、首の筋膜に包まれた耳下腺(耳の前〜下にある唾液腺)のスペースで、耳下腺・リンパ節・顔面神経・下顎後静脈・外頸動脈が含まれます。耳の穴から下あごの角あたりまで広がります
  • 顔面神経は耳下腺の中を通り、浅葉(外側)と深葉(内側)を分ける目安になります。神経そのものは画像で見えにくいため、すぐ内側を走る下顎後静脈を目印にします
  • 耳下腺腫瘍(多形腺腫・ワルチン腫瘍など)が浅葉か深葉かは、手術の方法や顔面神経まひのリスクに関わるため重要です。深葉の腫瘍は茎突下顎トンネルを通って傍咽頭間隙へ広がることがあります
  • 正常の耳下腺は脂肪を含むため、CTでは筋肉より低い濃度、MRIのT1強調像では比較的高信号に写ります

耳下腺間隙(PS:parotid space)とは?

  • 深頸筋膜浅葉が耳下腺を囲むことにより形成された領域で、耳下腺・リンパ節・顔面神経・下顎後静脈、外頸動脈が含まれる。
  • 上・中咽頭レベルにおいて最外側に位置する間隙で、外耳道から下顎角の範囲に存在する。
  • 耳下腺深葉は茎下顎裂(茎突下顎トンネル)を介して傍咽頭間隙方向に伸びている。傍咽頭間隙との間の筋膜は薄く、欠損することもある。このため内側の傍咽頭間隙への耳下腺病変の進展路となることがある。
  • 顔面神経の画像での認識は難しいため、すぐ内側を走行する下顎後静脈を指標にする。
  • 外頸動脈は耳下腺前縁近くで、下顎枝後縁に近接しながら頭尾方向に走行し、下顎枝後方に見られる2本の血管の内側の細いもの。下顎後静脈は外頸動脈の外側にある。

耳下腺間隙病変の画像所見

  • 耳下腺腫瘍では、下顎後静脈を参考に浅葉か深葉かを判定する。下顎後静脈の外側縁を顔面神経の目印とする方法では、浅葉腫瘍の部位予測は感度0.91・特異度0.86と報告されている。一方、21研究のメタ解析では各種画像指標による深葉判定は感度0.67・特異度0.92にとどまり、深葉腫瘍は見落とされうるため、この限界を踏まえて報告する。
  • 顔面神経の走行路を確認し、神経周囲進展の有無を確認する。

下顎後静脈と顔面神経の位置関係

  • 下顎後静脈は耳下腺の中を下顎枝の後ろに沿って縦に走る静脈で、顔面神経はその外側を通ることが多いため「静脈より外側=浅葉、内側=深葉」が目安になります。
  • ただし位置関係は一定ではなく、屍体50側では静脈が神経の内側にあったのは90%でした(Kopuz 1995)。24側の検討でも、神経が静脈の内側を通る型が4.1%ありました(Poutoglidis 2024)。

正常な耳下腺のCT・MRI(顎下腺との違い)

項目 耳下腺 顎下腺
場所 耳の前〜下、下顎枝の外側と後方 下顎骨の内側の下
CT 脂肪を含み筋肉より低い濃度 耳下腺より濃い
MRI T1強調像 比較的高信号 耳下腺より低信号

Q. 耳下腺の浅葉と深葉に境目はありますか?
A. 膜で仕切られているわけではなく、顔面神経が通る面で便宜的に分けたものです。浅葉は神経より外側の大部分、深葉は下顎枝の後ろを内側へ回り込む部分です。

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参考文献:

  1. 画像診断 Vol.37 No.4 増刊号 2017 P73-4
  2. 頭頸部 画像診断の勘ドコロNEO  P328
  3. カンゲキするほどわかる頭頸部間隙の画像診断 P96-105
  4. Divi V, Fatt MA, Teknos TN, et al. Use of cross-sectional imaging in predicting surgical location of parotid neoplasms. J Comput Assist Tomogr. 2005;29(3):315-319. PubMed
  5. Kang YJ, Cho JH, Hwang SH. Diagnostic value of various criteria for deep lobe involvement in radiologic studies with parotid mass: a systematic review and meta-analysis. Radiol Med. 2022;127(10):1124-1133. PubMed
  6. Vaiman M, Luckman J, Sigal T, et al. Correlation between preoperative predictions and surgical findings in the parotid surgery for tumors. Head Face Med. 2016;12:4. PubMed
  7. Kopuz C, Ilgi S, Yavuz S, et al. Morphology of the retromandibular vein in relation to the facial nerve in the parotid gland. Acta Anat (Basel). 1995;152(1):66-8. PubMed
  8. Poutoglidis A, Triaridis S, Paraskevas GK, et al. The Relationship Between the Retromandibular Vein and the Extratemporal Segment of the Facial Nerve: A Prospective Cadaveric Study of 24 Hemifaces. Cureus. 2024;16(5):e59637. PubMed

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