先に結論:大腿骨内顆の軟骨下脆弱性骨折(SIFK)とは
- 大腿骨内顆(内側顆)は、太ももの骨の膝側の端で内側のふくらみの部分です。軟骨下骨はその関節軟骨のすぐ下の骨のことです
- 軟骨下脆弱性骨折(SIFK)は、骨がもろくなった中高年(特に女性)で、軟骨のすぐ下の骨に小さな骨折が起こるものです。大きなけががなくても急に膝の内側が強く痛み、歩きにくくなるのが典型で、内側半月板の後ろの部分の断裂(後根断裂)を伴うことが多いです。以前「特発性骨壊死(SONK)」と呼ばれたものの多くがこれにあたると考えられています。SIFKは英語の頭文字(subchondral insufficiency fracture of the knee=膝の軟骨下脆弱性骨折)です
- レントゲンでは初めは写らないことが多く、MRIで関節面に平行な黒い線(骨折線)と、そのまわりの骨髄のむくみが見えれば診断できます。多くは体重をかけない保存療法でよくなりますが、関節面がつぶれて(圧潰)手術が必要になることもあります
※膝の痛みが急に強くなり歩けないときは、整形外科を受診してください。
大腿骨内顆の軟骨下脆弱性骨折(subchondral insufficiency fracture of medial femoral condyle)
- 脆弱性骨折が関節軟骨直下に発生したものを軟骨下脆弱性骨折と呼ぶ。
- 軟骨下脆弱性骨折はSIF(subchondral insufficiency fracture)と略され、膝に起こったものはSIFK(subchondral insufficiency fracture of the knee)と呼ばれる。SIFKは膝の外傷・障害全体の2〜4%を占めると報告されている(Musbahi 2023)。
- 高齢者の荷重部に骨軟骨欠損を生じる原因不明の疾患:従来SONK(spontaneous osteonecrosis of the knee)と呼ばれてきた病態の多くは、軟骨下脆弱性骨折が一次的な病変と考えられている。
- 弱い骨に慢性の機械的ストレスが加わり生じた微小骨折(microfracture)で、中年〜高齢者の荷重面に多い。
- 膝関節では大腿骨内顆の荷重部に最も多い。74例の検討では、大腿骨内顆64.9%、大腿骨外顆と脛骨内顆が各16.2%、脛骨外顆2.7%であった(Ochi 2022)。
- 背景に変形性膝関節症や半月板損傷を有する人が多い点から、関節面に加わるストレスが関与していると考えられる。
- 特に内側半月板後節断裂、半月板逸脱は高リスクとされる。SIFK 253例の検討では、内側半月板断裂が77.1%、内側半月板の後根断裂または後節の横断裂が71.1%にみられ、後者の91%で3mm以上の半月板逸脱を伴っていた(Clark 2024)。MRIでSIFKを見つけたら、内側半月板の後根も確認する。
- 骨粗鬆症や肥満のある高齢女性に多いが腎移植後や若年者の発症も報告がある。
- 発症時は強い痛みを訴えて歩行が困難になることが多い。
- 保存的治療で軽快することが多いが、関節面圧潰を来たし、特発性骨壊死と同様の所見を示すようになることがある点から特発性骨壊死の前駆状態と考えられている。
関連記事:骨折の種類まとめ!ストレス骨折、病的骨折と外傷性骨折の違いは?
大腿骨内顆の軟骨下脆弱性骨折の画像所見

- 単純X線では発症直後は異常所見を認めないことが多いが、その後、圧潰をきたさない症例では経過とともに軟骨下に仮骨形成による骨硬化像が出現する。骨折部は、軟骨下骨折線であるcrescent signとして認める。
- MRIでは軟骨下骨に関節面とほぼ平行するT1WI,T2WIにおける線状低信号を認め、その周囲にはSTIRや脂肪抑制T2WIで高信号を示す種々の程度の骨髄浮腫を認める。
- (病理学的には、軟骨下の骨折線とそれに沿った仮骨と肉芽組織。)
症例 60歳代女性

大腿骨内顆および脛骨内顆に関節面と平行な線状低信号があり、その周囲には著明な骨髄浮腫(※)を認めています。

T2WIでも大腿骨内顆および脛骨内顆に関節面と平行な線状低信号を確認できます。
T2*WIでは内側半月板後節に断裂を認めています。
大腿骨内顆および脛骨内顆の軟骨下脆弱性骨折と診断されました。
軟骨下脆弱性骨折と骨壊死の違いは?
- これまで特発性骨壊死とされていたものの一部に軟骨下脆弱性骨折が含まれている。軟骨下脆弱性骨折の一部が骨壊死へと進展することがある。
- 軟骨下脆弱性骨折は関節面に平行に近い走行をし、関節面には到達しないが、骨壊死は到達する。
- また、軟骨下脆弱性骨折は早期であれば造影MRIで造影されるが、骨壊死は造影されない。
軟骨下脆弱性骨折から骨壊死へと進展する予後不良な画像所見
- 嚢胞変性
- 病変部と母床の間に関節液の貯留(fluid-filled fracture cleft)
- 経時的な骨髄浮腫の増悪
- 初回MRIで病変が大きい場合初回MRIのT2強調像で軟骨下低信号域の厚さが4mmを超える、または長さが14mmを超える場合は、不可逆的な骨壊死(圧潰)へ進展しやすいと報告されている。この基準を示した検討(23例)では、厚さ>4mmの感度は100%、長さ>14mmの特異度は87〜93%でした。一方、骨髄浮腫の広がりは一過性病変と不可逆病変で差がなく、浮腫の範囲だけで予後を判断しないことが大切です。

症例 70歳代女性

大腿骨内顆および脛骨内顆に骨髄浮腫があり、大腿骨内顆では病変部と母床の間に関節液の貯留、嚢胞変性があり、骨壊死を示唆する所見です。
左膝特発性骨壊死と診断されました。
軟骨下脆弱性骨折(SIF)と離断性骨軟骨炎(OCD)の違いは?
- SIFは発症年齢が中高年だが、OCDは小学生〜高校生。
- SIFは急性発症だが、OCDは亜急性〜慢性発症。
- SIFは荷重面に発症するが、OCDは顆間窩寄りに発症する。
- SIFは骨髄浮腫の程度が広範だが、OCDは軽度なことが多い。
SIFKのレントゲン病期と治療・経過
レントゲンでは、病期分類(Koshino分類)が使われます(Ochi 2022)。
| 病期 | レントゲン所見 |
|---|---|
| Stage I | 異常なし(早期はMRIで診断する) |
| Stage II | 荷重部の軟骨下に透亮像 |
| Stage III | 透亮像が広がり周囲に硬化、軟骨下骨の圧潰 |
| Stage IV | 骨棘と骨硬化(変形性関節症の状態) |
- 圧潰がない早い時期は、免荷(体重をかけない)を中心とした保存療法が第一選択とされる(Ochi 2022)。
- 保存療法で経過をみた20例では、症状が消えるまで平均4.8か月(3〜8か月)、MRIが正常化するまで平均8か月(3〜18か月)かかったと紹介されている(Ochi 2022)。
- 治らずに骨壊死・圧潰へ進んだ例や進行例では、人工膝関節置換術などの手術が検討される(Ochi 2022)。
関連記事:
参考文献:
- 骨軟部疾患の画像診断 第2版 P104-105
- 画像診断 Vol.35 No.11 臨時増刊号 2015 P11-14
- 膝MRI 第3版 P248-251
- Yamamoto T, Bullough PG. Spontaneous osteonecrosis of the knee: the result of subchondral insufficiency fracture. J Bone Joint Surg Am. 2000;82(6):858-866. PubMed
- Lecouvet FE, van de Berg BC, Maldague BE, et al. Early irreversible osteonecrosis versus transient lesions of the femoral condyles: prognostic value of subchondral bone and marrow changes on MR imaging. AJR Am J Roentgenol. 1998;170(1):71-77. PubMed
- Gorbachova T, Amber I, Beckmann NM, et al. Nomenclature of subchondral nonneoplastic bone lesions. AJR Am J Roentgenol. 2019;213(5):963-982. PubMed
- Ochi J, Nozaki T, Nimura A, et al. Subchondral insufficiency fracture of the knee: review of current concepts and radiological differential diagnoses. Jpn J Radiol. 2022;40(5):443-457. PubMed
- Clark SC, Pareek A, Hevesi M, et al. High incidence of medial meniscus root/radial tears and extrusion in 253 patients with subchondral insufficiency fractures of the knee. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2024;32(11):2755-2761. PubMed
- Musbahi O, Waddell L, Shah N, et al. Subchondral Insufficiency Fractures of the Knee: A Clinical Narrative Review. JBJS Rev. 2023;11(10):e23.00084. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

無料講座
腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
