大腿骨内顆の軟骨下脆弱性骨折(subchondral insufficiency fracture of medial femoral condyle)
- 脆弱性骨折が関節軟骨直下に発生したものを軟骨下脆弱性骨折と呼ぶ。
- 軟骨下脆弱性骨折はSIF(subchondral insufficiency fracture)と略される。
- 高齢者の荷重部に骨軟骨欠損を生じる原因不明の疾患:SONK(spontaneous osteonecrosis of the knee)と同義。
- 弱い骨に慢性の機械的ストレスが加わり生じたmicrofractureで中年〜高齢者の荷重面に多い。
- 膝関節では75%は大腿骨内顆。次いで、脛骨内顆、大腿骨外顆に認めれる。
- 背景に変形性膝関節症や半月板損傷を有する人が多い点から、関節面に加わるストレスが関与していると考えられる。
- 特に内側半月板後節断裂、半月板逸脱は高リスクとされる。
- 骨粗鬆症や肥満のある高齢女性に多いが腎移植後や若年者の発症も報告がある。
- 発症時は強い痛みを訴えて歩行が困難になることが多い。
- 保存的治療で軽快することが多いが、関節面圧潰を来たし、特発性骨壊死と同様の所見を示すようになることがある点から特発性骨壊死の前駆状態と考えられている。
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大腿骨内顆の軟骨下脆弱性骨折の画像所見
- 単純X線では発症直後は異常所見を認めないことが多いが、その後骨折がない症例では1-3ヶ月後に軟骨下に仮骨形成による骨硬化像が出現する。骨折部は、軟骨下骨折線であるcrescent signとして認める。
- MRIでは軟骨下骨に関節面とほぼ平行するT1WI,T2WIにおける線状低信号を認め、その周囲にはSTIRや脂肪抑制T2WIで高信号を示す種々の程度の骨髄浮腫を認める。
- (病理学的には、軟骨下の骨折線とそれに沿った仮骨と肉芽組織。)
症例 60歳代女性
大腿骨内顆および脛骨内顆に関節面と平行な線状低信号があり、その周囲には著明な骨髄浮腫(※)を認めています。
T2WIでも大腿骨内顆および脛骨内顆に関節面と平行な線状低信号を確認できます。
T2*WIでは内側半月板後節に断裂を認めています。
大腿骨内顆および脛骨内顆の軟骨下脆弱性骨折と診断されました。
軟骨下脆弱性骨折と骨壊死の違いは?
- これまで特発性骨壊死とされていたものの一部に軟骨下脆弱性骨折が含まれている。軟骨下脆弱性骨折の一部が骨壊死へと進展することがある。
- 軟骨下脆弱性骨折は関節面に平行に近い走行をし、関節面には到達しないが、骨壊死は到達する。
- また、軟骨下脆弱性骨折は早期であれば造影MRIで造影されるが、骨壊死は造影されない。
軟骨下脆弱性骨折から骨壊死へと進展する予後不良な画像所見
- 嚢胞変性
- 病変部と母床の間に関節液の貯留(fluid-filled fracture cleft)
- 経時的な骨髄浮腫の増悪
- 初回MRIで病変が大きい場合
症例 70歳代女性
大腿骨内顆および脛骨内顆に骨髄浮腫があり、大腿骨内顆では病変部と母床の間に関節液の貯留、嚢胞変性があり、骨壊死を示唆する所見です。
左膝特発性骨壊死と診断されました。
軟骨下脆弱性骨折(SIF)と離断性骨軟骨炎(OCD)の違いは?
- SIFは発症年齢が中高年だが、OCDは小学生〜高校生。
- SIFは急性発症だが、OCDは亜急性〜慢性発症。
- SIFは荷重面に発症するが、OCDは顆間窩寄りに発症する。
- SIFTは骨髄浮腫の程度が広範だが、OCDは軽度なことが多い。
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参考文献:
- 骨軟部疾患の画像診断 第2版 P104-105
- 画像診断 Vol.35 No.11 臨時増刊号 2015 P11-14
- 膝MRI 第3版 P248-251