先に結論:神経原性腫瘍(縦隔)とは

  • 神経原性腫瘍(neurogenic tumor)とは、神経の組織から発生する腫瘍のことで、縦隔では背骨のわき(後縦隔・傍椎体)に多く、後縦隔腫瘍の代表的な種類です。「神経原生腫瘍」は誤記です
  • 大人では末梢神経(肋間神経など)由来の神経鞘腫・神経線維腫(ほとんど良性)が多く、子どもでは交感神経節由来の神経芽腫・神経節芽腫・神経節細胞腫が多いのが特徴です
  • CT・MRIでは、背骨のわきの境界明瞭な丸い腫瘤で、椎間孔を通って脊柱管の中と外に広がるダンベル型になることがあります。神経鞘腫は嚢胞変性を伴いやすく、神経線維腫は神経線維腫症1型に合併しやすい、などの違いがあります
  • MRIでは発生した神経(末梢神経・交感神経節・傍神経節)の違いが信号や造影の違いに表れるため、年齢・場所と合わせて種類を推定します(Nakazono 2011)

神経原性腫瘍

  • 後縦隔には交感神経、肋間神経、交感神経節、脊髄神経節といった大きな神経が存在しており、神経原性腫瘍の大部分が後縦隔から発生する。

神経原性腫瘍の分類(一覧表)

由来 代表的な腫瘍 多い年齢 画像のポイント
末梢神経(肋間神経など) 神経鞘腫・神経線維腫(良性)、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST) 成人 丸い境界明瞭な腫瘤。ダンベル型、神経鞘腫は嚢胞変性、神経線維腫はtarget sign
交感神経節 神経芽腫・神経節芽腫・神経節細胞腫 小児・若年。未熟な腫瘍ほど年少 神経芽腫は不均一で石灰化。神経節細胞腫は縦に長く、造影効果が弱い
傍神経節 傍神経節腫(paraganglioma) 成人 血流が豊富で強く造影される

末梢神経由来

 

  • 肋間神経由来が最多。
  • 末梢神経由来では、良性腫瘍としては、神経鞘腫(schwannoma)と神経線維腫(neurofibroma)がある。
  • 悪性腫瘍としては悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST:malignant peripheral nerve sheath tumor)がある。

神経鞘腫(schwannoma)

  • 成人に発生。
  • 細胞密度が高く血流も豊富であり、柵状配列を呈するAntoni A型と、細胞密度が低く血管に乏しく、粘液腫状変性を伴うAntoni B型組織が肉眼的に混在するのが特徴。
  • 傍椎体後部に発生し、円形・卵円形、胸壁との立ち上がりはシャープ。
  • 椎間孔を介して、脊柱管内と外にダンベル型の形状を呈する。
  • 嚢胞変性の頻度が高い。
  • Antoni B型成分がT2WIでより高信号。
  • 辺縁部がAntoni B(T2WIで高信号)、中心部がAntoni A(T2WIで低信号)の場合、神経線維腫で知られているtarget signとほぼ同様の所見を呈することがある。
  • 造影でAntoni A型成分は造影されやすく、Antoni B型成分は造影されにくい。
  • 良性でもFDG集積が亢進するので注意。SUVのばらつきは細胞密度で説明され、SUVが6.0を超えても神経鞘腫は否定できず、PETだけでは悪性末梢神経鞘腫瘍と区別できないとされる(Beaulieu 2004)。

神経線維腫(neurofibroma)

  • 神経線維腫症Ⅰ型に合併することが多い。
  • 均一で変性は少ない。schwann細胞と線維芽細胞の割合により内部に軽微な信号変化を認めるのみ。
  • 神経線維腫症Ⅰ型に合併した場合は、localized (限局性)、 plexiform (蔓状)およびdiffuse(びまん性)に分けられ、蔓状神経線維腫はいわゆるbag of worms appearanceを呈する。
  • 辺縁部の粘液変性がT2WIでの辺縁の高信号変化(target sign)を形成する。
  • 造影早期相では中心部がより濃染する(central enhancement) 現象が神経線維腫で見られることがある。

神経節由来

  • 神経節由来では神経芽細胞腫、神経節芽細胞腫、神経節細胞腫がある。

神経芽細胞腫(neuroblastoma)

  • 小児がんの約10%を占め、小児がんによる死亡の15%を占める(Lonergan 2002)。
  • 乳幼児に多い。
  • VMA、HVA、NSEが高値を示す。
  • 日本ではこれらのマーカーを用いた生後6ヶ月の尿によるマス・スクリーニングが行われていたが、2004年に中止された(Tajiri 2009)。
  • CTで内部は不均一な充実性腫瘤。よく造影される。
  • 出血、壊死、石灰化を有することあり。
  • T1強調像で低信号、T2強調像では高信号を示す。脊柱管内進展の評価にはMRIは有用。神経芽腫の病期は、2009年に提唱された国際神経芽腫リスク群(INRG)病期分類で、手術前の画像所見をもとに決めるようになりました。限局例は、画像で定義される危険因子(IDRF:image-defined risk factors)があるかどうかで2つの病期に分けられるため、画像診断の役割が大きくなっています。

神経節細胞腫(ganglioneuroma)

  • 神経節から発生する良性の神経芽腫群腫瘍。
  • 頸部・後縦隔・副腎・後腹膜・骨盤など、交感神経のある場所に発生する(Lonergan 2002)。
  • 椎間孔へ進展して亜鈴状の形態を呈することあり。
  • 頭尾方向に長い境界明瞭な紡錘状の形態が特徴的。
  • 小児の後縦隔腫瘍で最も多いのは神経芽腫(神経節細胞腫ではない)。
  • 時折成人でも発見されることがある。神経芽腫群腫瘍では、未熟な神経芽腫は2歳弱(中央値)の乳幼児に、成熟した神経節細胞腫は7歳前後(中央値)の年長児に多くみられます。
  • ほとんどは無症状で偶然発見される。
  • カテコラミンや血管作動性腸管ペプチドを産生することにより、高血圧や慢性下痢を来すことあり。
  • 水分含量に富みT2WIで比較的高信号を呈する。
  • 長期間の経過のうちに、内部が粘液腫状に変性あるいは脂肪変性を来す。
  • 内部に渦巻き状の線状構造(whorled appearance)を呈することあり。
  • 比較的均一で、造影効果は乏しい傾向にあり。
  • 造影効果が弱いため、CTでは評価困難なことがある。
  • 胸部の神経節細胞腫22例の検討では、19例が後縦隔に発生し、単純CTの値は平均29.1HUと低く、動脈相ではほぼ造影されないかわずかに造影され、遅延相で徐々に軽く造影された(Guan 2012)。

傍神経節由来

  • 傍神経節からは、傍神経節腫(paraganglioma)が発生する。

傍神経節腫(paraganglioma)

  • 副腎髄質や交感神経節に存在するクロム親和性細胞が腫瘍化したもの。
  • 発生部位により副腎褐色細胞腫(副腎髄質由来)と副腎外褐色細胞腫(傍神経節由来、paraganglioma(傍神経節細胞腫))に分類される。
  • なので傍神経節腫は副腎外に発生したもの。
  • 頸部、後縦隔、傍大動脈領域、膀胱などに腫瘤を形成する。
  • 大動脈交感神経傍神経節から発生した場合、後縦隔に発生する。
  • 肝、リンパ節、骨などに転移を来たし、悪性腫瘍としての経過を示すことがある。
  • WHO分類(2017・2022)では、すべての褐色細胞腫・傍神経節腫が転移リスクをもつ悪性腫瘍とされ、良性・悪性ではなく転移の有無(転移性)で表現する。
  • 画像の特徴としては、豊富な血流を反映して強い増強効果がある。腫瘍が大きい場合は壊死や石灰化を認める。T2WIで高信号を示す。腫瘍の局在がヒントとなる。

神経原性腫瘍でよくある疑問(Q&A)

Q. 神経原性腫瘍とは何ですか?良性ですか?
A. 神経の組織(末梢神経、交感神経節、傍神経節)から発生する腫瘍の総称です。成人の後縦隔では良性の神経鞘腫瘍が多く、後縦隔神経原性腫瘍121例の手術例でも大多数が良性の神経鞘腫瘍でした(Chen 2019)。一方、小児の神経芽腫や、悪性末梢神経鞘腫瘍・転移を起こした傍神経節腫のように悪性のものもあります。

Q. 傍椎体腫瘍とはどこにできる腫瘍ですか?
A. 背骨(椎体)のすぐ横、後縦隔の背中側にできる腫瘍の呼び方です。この場所には肋間神経や交感神経幹が走っているため、神経原性腫瘍がまず考えられます。椎間孔から脊柱管の中へ広がっていないか(ダンベル型)をMRIで確認することが大切です。

Q. 肋間神経鞘腫とは何ですか?
A. 肋間神経から発生した神経鞘腫で、末梢神経由来の神経原性腫瘍で多いタイプです。肋骨に沿った胸壁や傍椎体に、境界明瞭な丸い腫瘤として見えます。症状がなく、健診の胸部X線やCTで偶然見つかることもあります。気になる症状や画像の異常を指摘された場合は、医療機関で相談してください。

あわせて読みたい:神経節細胞腫(神経節神経腫)のCT・MRI画像所見

あわせて読みたい:extrapleural sign・incomplete border signとは

参考文献

  1. Pavlus JD, Carter BW, Tolley MD, et al. Imaging of Thoracic Neurogenic Tumors. AJR Am J Roentgenol. 2016;207(3):552-61. PubMed
  2. Lonergan GJ, Schwab CM, Suarez ES, et al. Neuroblastoma, ganglioneuroblastoma, and ganglioneuroma: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2002;22(4):911-34. PubMed
  3. Mete O, Juhlin CC. Recent progress in the pathologic classification of pheochromocytomas and paragangliomas. Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2024;38(6):101958. PubMed
  4. Brisse HJ, McCarville MB, Granata C, et al. Guidelines for imaging and staging of neuroblastic tumors: consensus report from the International Neuroblastoma Risk Group Project. Radiology. 2011;261(1):243-57. PubMed
  5. Carter BW, Benveniste MF, Madan R, et al. ITMIG Classification of Mediastinal Compartments and Multidisciplinary Approach to Mediastinal Masses. Radiographics. 2017;37(2):413-436. PubMed
  6. Nakazono T, White CS, Yamasaki F, et al. MRI findings of mediastinal neurogenic tumors. AJR Am J Roentgenol. 2011;197(4):W643-52. PubMed
  7. Beaulieu S, Rubin B, Djang D, et al. Positron emission tomography of schwannomas: emphasizing its potential in preoperative planning. AJR Am J Roentgenol. 2004;182(4):971-4. PubMed
  8. Tajiri T, Souzaki R, Kinoshita Y, et al. Risks and benefits of ending of mass screening for neuroblastoma at 6 months of age in Japan. J Pediatr Surg. 2009;44(12):2253-7. PubMed
  9. Guan YB, Zhang WD, Zeng QS, et al. CT and MRI findings of thoracic ganglioneuroma. Br J Radiol. 2012;85(1016):e365-72. PubMed
  10. Chen X, Ma Q, Wang S, et al. Surgical treatment of posterior mediastinal neurogenic tumors. J Surg Oncol. 2019;119(6):807-813. PubMed

あわせて読みたい:後縦隔のミュラー管嚢胞(Hattori cyst)のCT・MRI|椎体傍の扁平な嚢胞と気管支原性嚢胞との区別

あわせて読みたい:脊柱管内の髄外造血とは|傍脊椎・硬膜外の腫瘤のMRI所見と脊髄圧迫、腫瘍との見分け方

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →