先に結論:高血圧性脳出血と非高血圧性脳出血

  • 高血圧性脳出血は高齢になるほど多く、被殻・視床・橋・小脳歯状核・皮質下の、太い動脈から直接出る細い穿通枝が破れて起こります
  • 高血圧がない・50歳未満・典型的でない部位(脳室内・橋以外の脳幹)、皮質下出血(高血圧性でも起こるが、血管奇形やアミロイドアンギオパチーなどの頻度が高い)・繰り返す出血・がんや凝固異常があるときは、血管奇形・アミロイドアンギオパチー・腫瘍・静脈洞血栓症などを疑って精査します
  • 精査にはMRI(SWI・FLAIR・造影)・CTA・MRAを使います。CTAのspot signは血腫が大きくなるサインです
  • 発症から数時間は血腫が大きくなりやすく、看護では意識レベルの低下・脳室穿破による水頭症・正中偏位に注意します

高血圧性脳出血の診断のポイント

  • 高齢になるほど多い。脳出血全体では、45〜54歳の発症率を1とすると、45歳未満は0.10、85歳超は9.6でした(van Asch 2010)。ただし若年発症もある。
  • 被殻>視床>橋、小脳、皮質下が好発部位である。
  • 出血近傍に脳血管奇形や脳腫瘍など二次性出血の原因となるような疾患がない。
  • 深部穿通動脈に高血圧性のラクナ梗塞や出血の既往がある。(必須ではない)
なぜ基底核や視床、脳幹、小脳に出血が多いのか?
  • これらの部位への穿通枝は、中大脳動脈や後大脳動脈、脳底動脈などの血管径の大きい動脈から直接分枝するため、血圧の影響を受けやすいから。
  • メカニズム:長く続く高血圧で穿通枝の壁が変性(リポヒアリノーシス)してもろくなり、微小動脈瘤(Charcot-Bouchard動脈瘤)ができて破れると考えられています。
責任動脈を覚えておく。
  • 被殻:中大脳動脈M1からの外側線条体動脈
  • 視床:後大脳動脈からの視床への穿通動脈
  • 脳幹(橋):脳底動脈からの傍正中枝・回旋枝
  • 皮質下:髄質動脈(中大脳動脈からの表在穿通枝)

※それぞれの血管支配域については、頭部画像診断ツールにてご確認ください。

逆にどのようなときに非高血圧性を考えればいいですか?
どんなときに非高血圧性を考えるか?
  • そもそも既往歴、現症に高血圧がない場合。
  • 部位が高血圧性に典型的ではない場合(小脳歯状核以外の小脳出血、橋以外の脳幹出血、脳室内出血、皮質下出血)
  • 50歳未満の発症例。
  • 血腫周囲に異常所見(腫瘍や異常血管など)がある場合。
  • 短期間で再発を繰り返す脳出血。
  • 心房細動、担癌患者、凝固能異常の発症例。

→更なる精査が必要。CTAで血管性の原因が見つかる率は、46歳未満(47%)、脳葉型やテント下の出血、高血圧も凝固異常もない例(33%)で特に高いと報告されています。CTAで異常がなくても、後日のMRI/MRAやDSAで初めて見つかる血管奇形・硬膜動静脈瘻があるため、疑いが残る場合は追加検査を検討します。

参考)CTA spot sign:CTAの元画像で、急性期脳内出血の内部に血管と連続しない点状の増強効果のことで、これがあれば血腫増大や予後不良のサインとされる。

なるほどやはり部位が特に大事なんですね。そもそも非高血圧性の原因ってどんなものがあるんですか?

症例 40歳代女性 3時間続く頭痛

被殻出血 単純CT 横断像
引用:Radiopaedia(Putaminal haemorrhage)

左被殻に大きな高吸収域(急性期の血腫)を認めます。発症3時間の頭痛で受診した症例で、被殻は高血圧性脳出血の好発部位です。

非高血圧性出血の原因

結構たくさんありますね…。
そうですね。高血圧性ぽくないな、と思ったら年齢や臨床情報を参照にして、鑑別診断を挙げましょう。

非高血圧性脳出血を疑うときMRIでどのように見るか?

  • T2WI:flow voidを呈する異常の血管がないかを探す。
  • FLAIR:SAHおよび静脈洞血栓の有無をチェック。
  • SWI:静脈奇形の描出、微量の出血、静脈うっ滞をチェック。脳葉型出血でアミロイドアンギオパチー(CAA)を疑うときは、2022年のボストン基準2.0を用います。50歳以上で、厳密に脳葉に限局した出血性病変(脳内出血・微小出血・皮質表在性ヘモジデリン沈着)が2つ以上、または1つ以上に白質所見(半卵円中心の高度な血管周囲腔拡大、多発斑状の白質高信号)が加わればprobable CAAとし、剖検例で感度74.5%・特異度95.0%でした。
  • 造影MRA:動脈解離、粥腫、静脈洞血栓、脳動静脈奇形、静脈奇形をチェック。

看護・ケアで知っておきたい脳出血のCTのポイント

  • 血腫の増大:発症3時間以内の103例では、最初のCTから1時間後までに26%で血腫が大きく増え、さらに12%で20時間後までに増えました。1時間以内の増大は意識レベルや神経症状の悪化と関連していました(Brott 1997)。意識レベルの低下や麻痺の悪化があれば、再度CTで確認します。
  • 脳室穿破:血腫が脳室に破れると、髄液の流れが妨げられて急性水頭症を起こすことがあります。CTでは脳室の拡大を確認します。
  • 正中偏位・脳ヘルニア:大きな血腫や周囲の浮腫で脳が押され、正中構造がずれます。小脳出血では脳幹の圧迫と水頭症に特に注意します。

突然の激しい頭痛、片側の手足の麻痺、ろれつが回らないなどの症状があれば、すぐに救急要請をしてください。

脳出血のCT:よくある疑問(Q&A)

Q. 脳出血を疑ったら、CTとMRIのどちらを撮りますか?
A. 急性の脳卒中症状の初期評価では、非造影の頭部CTが標準の検査です。発症6時間以内の200例を比べた研究では、急性の脳出血の検出はMRI(GRE)とCTで同等(一致率96%)でしたが、微小出血などの古い出血はMRIのほうが多く見つかりました(Kidwell 2004)。

Q. CTで血腫の量(大きさ)はどう測りますか?
A. ABC/2法が簡便です。Aは血腫の最大径、BはAと直交する径、Cは出血が写っているスライス数×スライス厚で、A×B×C÷2で体積を見積もります。118例で計測ソフトの値とよく一致し、1分未満で測れると報告されています(Kothari 1996)。血腫量は30日死亡の強い予測因子です。

Q. 造影しない脳出血のCTでも、血腫が大きくなるサインはありますか?
A. あります。25研究・10,650例のメタ解析で、black hole sign、swirl sign、blend sign、island sign、不均一な吸収値、内部の低吸収域、不整な形が、血腫増大と転帰不良の両方に関連していました。とくにisland signは血腫増大のオッズ比7.87と強い関連を示しました(Morotti 2020)。造影CTのspot signと合わせて確認します。

参考文献

  1. Greenberg SM, Ziai WC, Cordonnier C, et al. 2022 Guideline for the Management of Patients With Spontaneous Intracerebral Hemorrhage: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2022;53(7):e282-e361. PubMed
  2. Wada R, Aviv RI, Fox AJ, et al. CT angiography “spot sign” predicts hematoma expansion in acute intracerebral hemorrhage. Stroke. 2007;38(4):1257-62. PubMed
  3. Delgado Almandoz JE, Schaefer PW, Forero NP, et al. Diagnostic accuracy and yield of multidetector CT angiography in the evaluation of spontaneous intraparenchymal cerebral hemorrhage. AJNR Am J Neuroradiol. 2009;30(6):1213-21. PubMed
  4. van Asch CJ, Velthuis BK, Rinkel GJ, et al. Diagnostic yield and accuracy of CT angiography, MR angiography, and digital subtraction angiography for detection of macrovascular causes of intracerebral haemorrhage: prospective, multicentre cohort study. BMJ. 2015;351:h5762. PubMed
  5. Charidimou A, Boulouis G, Frosch MP, et al. The Boston criteria version 2.0 for cerebral amyloid angiopathy: a multicentre, retrospective, MRI-neuropathology diagnostic accuracy study. Lancet Neurol. 2022;21(8):714-725. PubMed
  6. Hilkens NA, van Asch CJJ, Werring DJ, et al. Predicting the presence of macrovascular causes in non-traumatic intracerebral haemorrhage: the DIAGRAM prediction score. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2018;89(7):674-679. PubMed
  7. Kidwell CS, Chalela JA, Saver JL, et al. Comparison of MRI and CT for detection of acute intracerebral hemorrhage. JAMA. 2004;292(15):1823-30. PubMed
  8. Kothari RU, Brott T, Broderick JP, et al. The ABCs of measuring intracerebral hemorrhage volumes. Stroke. 1996;27(8):1304-5. PubMed
  9. Morotti A, Arba F, Boulouis G, et al. Noncontrast CT markers of intracerebral hemorrhage expansion and poor outcome: A meta-analysis. Neurology. 2020;95(14):632-643. PubMed
  10. van Asch CJ, Luitse MJ, Rinkel GJ, et al. Incidence, case fatality, and functional outcome of intracerebral haemorrhage over time, according to age, sex, and ethnic origin: a systematic review and meta-analysis. Lancet Neurol. 2010;9(2):167-76. PubMed
  11. Brott T, Broderick J, Kothari R, et al. Early hemorrhage growth in patients with intracerebral hemorrhage. Stroke. 1997;28(1):1-5. PubMed

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