内側半月板(MM)と外側半月板(LM)
- 内側半月板は半径は大きく開き気味で、後節は大きい。
- 外側半月板は半径は小さく、より閉じたC字型に近い。
半月板の血管支配
- 外側の1/4は血行があるので、red zoneと呼ばれる。そこに生じた辺縁断裂は自然治癒も期待される。関節包内を通る内・外側膝動脈(medial/lateral genicular artery)の分枝である半月板周囲毛細血管叢(perimeniscal capillary plexus)により栄養されている。血流があるため、損傷を受けた際も経過観察や縫合で修復される可能性がある。
- 内側の3/4は血流がなくwhite zoneと呼ばれる。血流がないため損傷を受けた際に修復されることはなく、切除するしかない。
半月板内部の高信号と断裂
- T2*WIやPDWI(プロトン密度強調像)で評価する。T2WIでは半月板損傷の評価は難しいことが多い。
- 点状のものや線状のものは非常によく見られる。
- 特に内側半月板後節に高頻度で見られる。ほとんどは粘液(myxoid)あるいはムコイド変性。これらはgrade1、2(Minkらの分類)と分類されているが、無視してよい。安易に拾い上げることはムダな検査を増やすだけ。
- 相手にするのは、関節面に達したGrade3のみ。
- 関節面は下面だけでなく上面に達したものも断裂とする。
- ただし、外周方向のみに開口したものは生理的範囲なのでこれを断裂としないように注意。
関連記事:膝関節MRIの正常構造と信号パターン
半月板断裂の分類
- 垂直断裂(vertical tear)と水平断裂(horizontal tear)に大きく分けられる。
- 垂直断裂はさらに、縦断裂(longitudinal tear)、バケツ柄断裂(bucket handle tear)、放射状断裂(radial tear)、斜断裂(oblique tear)に分けられる。
- 垂直断裂は若年者に多い。
- 長軸断裂は、後角に始まり、中節に進行することが多い。
- 放射状断裂は通常、半月板の自由縁に始まり、辺縁方向に延びる。
- また、上下の関節面に断裂が連続する場合を完全断裂という。
- 上下どちらか片方の関節面にのみ限局する場合は、部分断裂という。
- 水平断裂は高齢者に多い。
- 複合断裂による挫滅や強い変性により、その形態を失った半月板は、挫滅半月板=macerated meniscusと呼ばれ、半月板損傷の終末像である。
特殊な半月板断裂
- バケツ柄断裂(bucket handle tear)
- 根部断裂(root tear)
- 半月板関節包離開(meniscocapsular separation)
根部断裂(root tear)
- 半月板の根部の顆間隆起付着部での断裂。
- 内側半月板の後角根部に起こることが多く、この場合変性によることが多い。
- 外側半月板の後角根部に起こることもあるが、この場合は外傷性で前十字靱帯断裂を伴うことが多い。
- MRIでは根部の矢状断像で不明瞭化(ghost meniscus sign)(後十字靱帯が付着するところまで見えているのが正常)、冠状断像では根部の連続性消失を確認できる。
半月板関節包離開(meniscocapsular separation)
- 半月板と関節包の付着部で離開が起こること。
- 内側半月板が大部分で、しばしば内側側副靱帯損傷を合併する。
- 自然治癒や縫合による治癒が期待できる。
- MRIでは半月板と関節包の間にT2WI高信号を認める。また関節包に腫脹や高信号を認める。
半月板断裂の間接的所見
- 半月板嚢胞(半月板嚢腫)
- 半月板逸脱
- 軟骨下骨髄浮腫
半月板嚢胞(半月板嚢腫)
- 半月板の水平断裂により半月板の辺縁に形成される。
- 関節腔と交通があり、滑液包やガングリオンとは区別される。
半月板逸脱
- 半月板が外周方向に逸脱するもので半月と脛骨の辺縁間が3mm以上あるもの。
- 半月板の付着部断裂のある場合に見られることが多い。
軟骨下骨髄浮腫
- 半月板付着部近傍の軟骨下骨に、関節面から5mm未満の深さで認める骨髄浮腫。
- 半月板断裂に伴う関節面への荷重の影響で起こる二次的所見。
関連記事:半月板断裂と誤診しないために知っておくべき3つの偽病変
参照)
- 膝MRI 第3版 P146-161
- 骨軟部画像診断の勘ドコロ