先に結論:海馬硬化症(内側側頭葉硬化症)のMRI

  • 海馬硬化症は難治性の側頭葉てんかんの最も多い原因で、海馬の神経細胞が減って硬くなる(グリオーシス)状態です。手術(海馬扁桃体切除など)で発作が改善することが多いため、MRIでの発見が重要です
  • MRIは海馬の長軸に直交する斜めの冠状断(T2・FLAIR)で撮り、海馬の萎縮・T2/FLAIR高信号・内部構造(層構造)の消失の3つが特徴です。左右を比べて評価します
  • 二次的に同じ側の脳弓・乳頭体の萎縮、側脳室下角の拡大も見られます。両側にあることもあるため注意します
  • 海馬はCTでは内部構造が分からず、評価はMRIで行います。アルツハイマー型認知症の海馬萎縮は両側性で信号変化が目立たない点が異なります

海馬硬化症

・側頭葉てんかんの原因疾患として最多。

・扁桃核硬化などを含めた側頭葉内側病変を総称して、内側側頭葉硬化(mesial temporal sclerosis)と呼ばれる。こちらの呼称の方がより適切と言われる。

・病理学的には、海馬、扁桃体から海馬傍回に及ぶ神経細胞脱落やグリオーシス。

・典型例(ILAE分類 type 1)では海馬内アンモン角のCA1とCA4領域に強い神経細胞脱落とグリオーシスがみられ、CA1優位(type 2)、CA4優位(type 3)の亜型もある。CA2および海馬台は比較的保たれることが多い。海馬硬化症は障害される亜領域によって組織学的な亜型に分けられ、一部の亜領域だけが侵される亜型では海馬全体の体積変化が乏しく、MRIで指摘しにくいことがあります。

MRI画像所見

・海馬長軸に直交する斜位冠状断が有用。
・ILAE神経画像タスクフォース(2019年)は、てんかん診療のMRIとして3次元撮像を中核とするHARNESS-MRIプロトコルを提唱し、新規発症の焦点てんかん・全般てんかんのいずれでも構造MRIを推奨している。

・海馬・扁桃体の萎縮。

・T2強調像やFLAIR像での海馬領域の高信号域。ただし大脳辺縁系は正常でもFLAIRで高信号を呈するので判断には注意を要する。

・冠状断(T2WI,FLAIR)におけるhippocampal striationと言われる線状の低信号(浅髄板と連続してアンモン角の深層に沿って認める白質線維)の部分消失。

・その他:海馬傍回の皮質白質境界の不鮮明化。海馬頭の凹凸(digitation)の平坦化。

・両側に認められることもある。

・二次所見としては、脳弓、乳頭体の萎縮、側脳室下角の開大や患側側頭葉〜大脳半球の萎縮。

正常な海馬のMRI解剖(冠状断の見方)

  • 位置:側頭葉内側で側脳室下角の内側に沿い、前から海馬頭・体・尾に分かれます。
  • 海馬頭と扁桃体:海馬頭は太く上面に凹凸(digitation)があり、扁桃体はその前上方にあります。
  • 正常の目安:左右がほぼ同じ大きさ・信号で内部の層構造が見え、下角は細いすき間程度です。

海馬はCTで見える?

CTは脳との濃度差が小さく側頭骨のアーチファクトも出るため、海馬の萎縮や信号変化の評価には向きません。疑えばMRIの冠状断で確かめます。

海馬萎縮の鑑別(アルツハイマー型認知症)

海馬硬化症は片側優位の萎縮+T2/FLAIR高信号でてんかんの患者さんにみられ、アルツハイマー型認知症の萎縮は両側性です。内側側頭葉萎縮の目視評価は簡便で、アルツハイマー型認知症の診断を強く支持すると報告されています(Scheltens 1992)。

症例 20歳代女性 難治性てんかん

海馬硬化症 MRI T2強調像 冠状断
引用:Radiopaedia(Mesial temporal sclerosis)

T2強調像の冠状断で、左海馬(矢印)が右に比べて小さく萎縮し、信号がやや高くなっています。左右差を比べることで分かる典型的な左海馬硬化症の所見です。

実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの頭部MRIの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。全体の見方は頭部MRIの解剖にまとめています。

あわせて読みたい:側頭葉幹(temporal stem)とは?MRI冠状断での解剖と臨床的意義、異所性灰白質とは?MRI画像所見と3つの病型・症状、頭部MRIの冠状断・矢状断の解剖

参考文献

  1. Malmgren K, Thom M. Hippocampal sclerosis–origins and imaging. Epilepsia. 2012;53 Suppl 4:19-33. PubMed
  2. Middlebrooks EH, Gupta V, Agarwal AK, et al. Radiologic Classification of Hippocampal Sclerosis in Epilepsy. AJNR Am J Neuroradiol. 2024;45(9):1185-1193. PubMed
  3. Blümcke I, Thom M, Aronica E, et al. International consensus classification of hippocampal sclerosis in temporal lobe epilepsy: a Task Force report from the ILAE Commission on Diagnostic Methods. Epilepsia. 2013;54(7):1315-29. PubMed
  4. Bernasconi A, Cendes F, Theodore WH, et al. Recommendations for the use of structural magnetic resonance imaging in the care of patients with epilepsy: A consensus report from the International League Against Epilepsy Neuroimaging Task Force. Epilepsia. 2019;60(6):1054-1068. PubMed
  5. Scheltens P, Leys D, Barkhof F, et al. Atrophy of medial temporal lobes on MRI in “probable” Alzheimer’s disease and normal ageing: diagnostic value and neuropsychological correlates. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1992;55(10):967-72. PubMed

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