硬膜下水腫(subdural hygroma)とは?
- 外傷後、硬膜下に髄液と等濃度の液体貯留が見られることがある。
- うち、硬膜下水腫(subdural hygroma)はくも膜の断裂によって、脳脊髄液が硬膜下腔に漏出することにより生じる。なので、くも膜下腔と交通あり。裂けたくも膜がバルブ様に働くと考えられている。
- 原因は?頭部外傷の5%程度に認める。受傷後数日で発生するが、多くは経過観察で軽快する。急性硬膜下血腫の合併が多い。
- くも膜と交通がないものは、被膜によって被包化され、subdural effusionと呼ばれ、慢性硬膜下血腫に移行することがある。関連記事)慢性硬膜下血腫とは?CT、MRI画像診断のポイントは?
- 硬膜下水腫および慢性硬膜下血腫は、しばしば画像での鑑別は困難で、併せて硬膜下液体貯留(subdural fluid collection)と呼ばれることあり。
- 硬膜下水腫は、髄膜炎や低髄液圧症候群で見られることもあり。髄膜炎では、特にインフルエンザ菌による髄膜炎を発症した小児に多い。
硬膜下水腫の画像所見
- 脳表の三日月型液体貯留として認められる。
- 萎縮によるくも膜下腔の拡大との鑑別が困難なことがあるが、血管が内部に走行していれば、くも膜下腔の拡大である。
- 水腫と血腫は、CTでは鑑別困難でもMRIのT1WIやFLAIRでは鑑別できることが多い。
症例 60歳代男性 交通事故
受傷直後のCTでは、左の前頭葉に外傷性のくも膜下出血を生じている。
1ヶ月後のCTでは外傷性のくも膜下出血は消失しているが、両側の硬膜下に水腫が生じており、脳を圧排している。
両側の硬膜下水腫を疑う所見。(ただしCTのみでは血腫との区別は厳密にはできない。下記症例を参照ください。)
※外傷直後のCTがなければ、両側性であり萎縮との鑑別は困難な症例。
参考症例 80歳代 男性 右慢性硬膜下血腫術後
頭部CTで両側慢性硬膜下水腫を疑う低吸収域を認めています。
MRIのT2強調像では特に左側では、内部に血管の走行を認めず、水腫でも問題なさそうです。
しかし、FLAIR像及びCISS像をみてみると、髄液よりもやや信号が高く(CISSの場合は低く)、硬膜下水腫の場合、髄液と等信号になるはずですので、水腫ではなく血腫であることがわかります。
右側にも血腫の残存を認めています。
両側硬膜下血腫を疑う所見です。