先に結論:慢性硬膜下血腫とは
- 軽く頭を打ったあと、3週間〜数か月かけて、脳の表面と硬膜の間(硬膜下)にじわじわ血液がたまる病気です。高齢の男性・お酒をよく飲む人・血をさらさらにする薬を飲んでいる人に多く、打ったことを覚えていないこともあります
- 症状は頭痛、物忘れ・ぼんやりする(認知症のように見える)、片側の手足の力が入りにくい、歩きにくい、尿失禁などで、ゆっくり進みます。「治る認知症」の原因の一つとして重要です
- CSDHは chronic subdural hematoma(慢性硬膜下血腫)の略です。MRIはCTで脳と同じくらいの濃さ(等吸収)になって見えにくい血腫や、両側の薄い血腫の確認に役立ちます
- CTでは脳の表面に沿った三日月形の血のたまりで、時期により黒〜灰色〜白とさまざまな濃さに見え、新旧の血液が混ざって液面や層ができることもあります。症状があれば穿頭血腫ドレナージ術(頭に小さな穴を開けて血を抜く手術)でよくなることが多い一方、再発することもあります
※頭を打ってから数週間後に頭痛・物忘れ・歩きにくさが出てきたときは、脳神経外科を受診してください。
慢性硬膜下血腫(chronic subdural hematoma:CSDH)
- 硬膜とくも膜の間(硬膜の中のくも膜に面している脆弱な層(dural border cell layer))に、通常3週間以上かけて三日月型、稀に凸レンズ型に徐々に血液が溜まった状態。
- 急性硬膜下血腫が慢性化したものとは限らない。
- 厚い外膜(硬膜側被膜)と薄い内膜(くも膜側被膜)に血腫は包まれており、造影にて増強される被膜(外膜)形成が特徴的(急性硬膜下血腫には被膜はない。)
- 出血部位は架橋静脈(急性硬膜下血腫と同様)、特に硬膜に付着する部位。
- 発生部位は、前頭、側頭、頭頂部に渡ることが多く、通常は片側性であるが、両側性に発症することもある。
- 慢性硬膜下血腫の全体としての術後の再発率は5〜30%と報告されています(Santarius 2009)。部位としては頭蓋底部型が再発率最多で、円蓋部型が最も低く、肉眼的性状としては分離型の再発が多く、多小柱型が低いとされる。CT上の内部性状は、均一型から層状型、分離型を経て、吸収過程で小柱型へと経時的に変化すると考えられています(Nakaguchi分類)。穿頭術後に硬膜下ドレーンを留置しないと再発が多く、ランダム化比較試験では再発がドレーンあり9.3%、なし24%でした(Santarius 2009)。近年は再発予防として中硬膜動脈塞栓術(MMA塞栓術)が注目されています。2024年のランダム化比較試験(EMBOLISE、400例)では、手術に塞栓術を加えると90日以内の再手術を要する再発・増大が4.1%で、手術単独の11.3%より少なくなりました。一方、中国の試験(722例)では症候性の再発・増大が6.7%対9.9%で、統計学的な有意差はありませんでした。
- 症状は典型的には、頭痛、失語、精神活動の低下、尿失禁。他に、血腫による脳圧亢進症状、変動する意識障害、知能障害、巣症状など。血腫の増大が進行すると運動障害なども生じる。
- 高齢・男性に多く、抗血小板薬・抗凝固薬の使用も危険因子です(Yang 2017)。脳の萎縮で脳表と頭蓋骨内板の距離が離れている高齢者に多く発生する。
- 自分でも忘れてしまう非常に軽い頭部打撲でも発症するが、外傷の既往がはっきりしないものもあり、詳しい発生原因は不明。脳血栓に対する抗凝固療法使用中に、また硬膜転移により硬膜下血腫が起こることもある。
- 長期にわたる神経変性疾患による脳の萎縮に伴って、硬膜下水腫が血性に変化した状態で認められることもある。
- 脳脊髄液に特異的な蛋白であるβ-trace proteinの硬膜下液における濃度が高い症例において、慢性硬膜下血腫、水腫の再発が多いことから、脳脊髄液の硬膜下腔への漏れが、再発の原因だと言われる。
- 保存的に吸収されて血腫が消失することもある。
- 鑑別は硬膜下膿瘍、低髄液圧症候群、髄膜腫など。
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CSDHの画像診断
CT所見
- 低〜高吸収。比較的新しい出血は高吸収域となる。
- 経過が極めて長期なものは線維性の隔壁や石灰化を認める。
- 形状は三日月型>>凸レンズ状。冠状断が有用。
- 両側性は9〜22%とされます(Nouri 2021)。両側が同じくらいの量だと正中偏位(ミッドラインシフト:血腫に押されて透明中隔などの正中構造が反対側へずれること)が目立たず、見落としやすいので注意します。
CTの濃さと内部構造(Nakaguchi分類)
CTでの血腫の内部の見え方は、次の4型に分けられます(Nakaguchi 2001)。
| 型 | CTでの見え方 | 時期の目安 |
|---|---|---|
| 均一型(homogeneous) | 全体がほぼ同じ濃さ(低・等・高吸収のいずれも) | 初期 |
| 層状型(laminar) | 内膜側に沿って薄い高吸収の層がある | 均一型から移行 |
| 分離型(separated) | 上が低吸収、下が高吸収に分かれ、液面(ニボー)をつくる | 成熟した時期 |
| 小柱型(trabecular) | 内部に隔壁(しきり)が走る | 吸収されていく時期 |
- 22研究・5566例のメタ解析では術後再発は14.4%で、高吸収成分を含む血腫(均一な高吸収・混合吸収)が最も強い再発の予測因子でした(相対リスク2.83)。血腫の厚さや正中偏位が大きいことも再発と関連していました(Miah 2021)。
- 等吸収の血腫は脳と同じ濃さになり見えにくくなります。脳溝が片側だけ見えない、側脳室が圧排されている、灰白質と白質の境界が内側へ押されている、といった間接所見に注意し、迷うときはMRIで確認します。
MRI所見
- 血腫内容の不均一性を反映して様々(ステンドグラス様)。CTよりも描出に優れる。
- T1WIにて低〜高信号域、T2WIでは高信号域を呈することが多い。被膜は造影(外膜)される。血腫内に液面形成が認められることもある。
症例1



症例2


慢性硬膜下血腫のピットフォール
- 脳脊髄液減少症に慢性硬膜下血腫が発生することがある。再発性、両側性の場合には、背景にこの疾患が隠れていることがある。ただし、慢性硬膜下血腫に対する治療が、脳脊髄液減少症に対して逆効果となるため、注意を要する。
- 悪性腫瘍の転移(前立腺癌や乳癌、悪性リンパ腫など)が硬膜下に腫瘤を形成し、類似することがある。
- また硬膜の髄外造血が類似することもある。
慢性硬膜下血腫の類似疾患・正常変異
正常解剖・アーチファクト
- 蝶形頭頂洞(sphenoparietal sinus)
- 横静脈洞の発達(prominent transverse sinus)
- 前頭葉が中頭蓋窩へ張り出して見える所見
- 小脳フロックルス(片葉)
- ビームハードニングアーチファクト
- 体動アーチファクト
腫瘍
虚血性
- 低酸素性虚血性脳障害
感染/炎症性
- 肥厚性硬膜炎
- 膿瘍
- Rosai-Dorfman disease(ロザイ・ドルフマン病)
外傷性/医原性
Lim M, Kheok SW, Lim KC, et al. Subdural haematoma mimics. Clin Radiol. 2019;74(9):663-675.
慢性硬膜下血腫でよくある疑問(Q&A)
Q. 頭を打ってから何か月後に起こりますか?
A. 通常は3週間以上たってから、数週間〜数か月かけて症状が出てきます。打撲から症状が出るまでには、症状のない時期(潜伏期)があるのが特徴です(Yang 2017)。打ったことを覚えていないこともあります。
Q. CTとMRIのどちらで分かりますか?
A. 多くはCTで診断できます。CTで脳と同じ濃さになって見えにくい血腫や、薄い両側性の血腫はMRIのほうが分かりやすいことがあります。
参考文献
- Nakaguchi H, Tanishima T, Yoshimasu N. Factors in the natural history of chronic subdural hematomas that influence their postoperative recurrence. J Neurosurg. 2001;95(2):256-262. PubMed
- Kristof RA, Grimm JM, Stoffel-Wagner B. Cerebrospinal fluid leakage into the subdural space: possible influence on the pathogenesis and recurrence frequency of chronic subdural hematoma and subdural hygroma. J Neurosurg. 2008;108(2):275-280. PubMed
- Lim M, Kheok SW, Lim KC, et al. Subdural haematoma mimics. Clin Radiol. 2019;74(9):663-675. PubMed
- Davies JM, Knopman J, Mokin M, et al. Adjunctive Middle Meningeal Artery Embolization for Subdural Hematoma. N Engl J Med. 2024;391(20):1890-1900. PubMed
- Liu J, Ni W, Zuo Q, et al. Middle Meningeal Artery Embolization for Nonacute Subdural Hematoma. N Engl J Med. 2024;391(20):1901-1912. PubMed
- Santarius T, Kirkpatrick PJ, Ganesan D, et al. Use of drains versus no drains after burr-hole evacuation of chronic subdural haematoma: a randomised controlled trial. Lancet. 2009;374(9695):1067-1073. PubMed
- Yang W, Huang J. Chronic Subdural Hematoma: Epidemiology and Natural History. Neurosurg Clin N Am. 2017;28(2):205-210. PubMed
- Miah IP, Tank Y, Rosendaal FR, et al. Radiological prognostic factors of chronic subdural hematoma recurrence: a systematic review and meta-analysis. Neuroradiology. 2021;63(1):27-40. PubMed
- Nouri A, Gondar R, Schaller K, et al. Chronic Subdural Hematoma (cSDH): A review of the current state of the art. Brain Spine. 2021;1:100300. PubMed
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ありがとうございました。有意義でした。