慢性硬膜下出血(chronic subdural hematoma:CSDH)
- 硬膜とくも膜の間(硬膜の中のくも膜に面している脆弱な層(dural border cell layer))に、通常3週間以上かけて三日月型、稀に凸レンズ型に徐々に血液が溜まった状態。
- 急性硬膜下血腫が慢性化したものとは限らない。
- 厚い外膜(硬膜側被膜)と薄い内膜(くも膜具側被膜)に血腫は包まれており、造影にて増強される被膜(外膜)形成が特徴的(急性硬膜下血腫には被膜はない。)
- 出血部位は架橋静脈(急性硬膜下血腫と同様)、特に硬膜に付着する部位。
- 発生部位は、前頭、側頭、頭頂部に渡ることが多く、通常は片側性であるが、両側性に発症することもある。
- 慢性硬膜下血腫の全体としての術後の再発率は5〜30%。部位としては頭蓋底部型が再発率最多で、円蓋部型が最も低く、肉眼的性状としては分離型の再発が多く、多小柱型が低いとされる。
- 症状は典型的には、頭痛、失語、精神活動の低下、尿失禁。他に、血腫による脳圧亢進症状、変動する意識障害、知能障害、巣症状など。血腫の増大が進行すると運動障害なども生じる。
- 男性に多く、特に60歳以上が約半数を占める。脳表と頭蓋骨内板の距離が離れている高齢者、幼児などに多く発生する。
- 自分でも忘れてしまう非常に軽い頭部打撲でも発症するが、外傷の既往がはっきりしないものもあり、詳しい発生原因は不明。脳血栓に対する抗凝固療法使用中に、また硬膜転移により硬膜下血腫が起こることもある。
- 長期にわたる神経変性疾患による脳の萎縮に伴って、硬膜下水腫が血性に変化した状態で認められることもある。
- 脳脊髄液に特異的な蛋白であるβ-trace proteinの硬膜下液における濃度が高い症例において、慢性硬膜下血腫、水腫の再発が多いことから、脳脊髄液の硬膜下腔への漏れが、再発の原因だと言われる。
- 保存的に吸収されて血腫が消失することもある。
- 鑑別は硬膜下膿瘍、低髄液圧症候群、髄膜腫など。
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CSDHの画像診断
CT所見
- 低〜高吸収。比較的新しい出血は高吸収域となる。
- 経過が極めて長期なものは線維性の隔壁や石灰化を認める。
- 形状は三日月型>>凸レンズ状。冠状断が有用。
MRI所見
- 血腫内容の不均一性を反映して様々(ステンドグラス様)。CTよりも描出に優れる。
- T1WIにて低〜高信号域、T2WIでは高信号域を呈することが多い。被膜は造影(外膜)される。血腫内に液面形成が認められることもある。
症例①
症例②
慢性硬膜下血腫のピットフォール
- 脳脊髄液減少症に慢性硬膜下血腫が発生することがある。再発性、両側性の場合には、背景にこの疾患が隠れていることがある。ただし、慢性硬膜下血腫に対する治療が、脳脊髄液減少症に対して逆効果となるため、注意を要する。
- 悪性腫瘍の転移(前立腺癌や乳癌、悪性リンパ腫など)が硬膜下に腫瘤を形成し、類似することがある。
- また硬膜の髄外造血が類似することもある。
ありがとうございました。有意義でした。