低髄液圧症候群spontaneous intracranial hypotension syndrome /CSF hypovolemia syndrome

■疫学
  • 頻度は10万人中5人。好発年齢は40歳代。女性:男性=1.5:1。
  • 原因は約1/3が外傷。その他、先天性の髄膜欠損、結合織異常など。
■定義概念
  • 立位や座位で増悪し、臥位で改善する起立性頭痛を特徴的な臨床症状とする疾患。
  • くも膜下出血で発症したり、聴覚・視覚異常を来すこともある。
  • 頭痛には、悪心・嘔吐を伴うことが多い。
  • 脳神経障害(外転神経麻痺)や意識障害が生じることもある。
  • 頭痛発生の機序は、脳を支持するCSFが起立時に脊柱管側へ移動するため。
■原因
  • 脳脊髄液産生の低下、脳脊髄液吸収の促進、脳脊髄液の硬膜外漏出が挙げられるが、脳脊髄液の硬膜外漏出が最多。
  • 脊髄手術や腰椎穿刺を施行した後に髄液が硬膜外腔へ漏出することによって髄液圧が低下し、起立性の頭痛を起すことがある。
  • また、水頭症に対して脳室一腹腔シャント術を施行した後に腹腔側へのドレナージが大きすぎた場合に同様の症状を起すことがある。
■検査 MRI、髄液漏出の診断はMRI(MR myelography)、CT myelography、RI cisternography(111-I DTPA)
■治療 治療は保存的、安静や、硬膜外腔への自己血注入(blood patch)。

 

画像所見

 画像診断
CT
  • 両側性硬膜下液体貯留(硬膜下水腫所見)
  • クモ膜下腔の狭小化・高吸収域(pseudo SAH)
  • 脳幹周囲の脳槽の不明瞭化
  • 脳室の狭小化
  • 皮質静脈の拡張 など
MRI
  • DA pattern(硬膜優位)の硬膜肥厚が特徴的。一般に硬膜肥厚は2mm以上、硬膜表面の少なくとも75%に肥厚がみられるものを指す。
  • 髄膜肥厚と異常増強効果
  • 小脳扁桃の下垂
  • 下垂体腫大
  • 橋前槽狭小化
  • 脳室狭小化など※更にCSFのリークを確認できれば画像的診断基準を満たす。ただしMRIでのCSF漏出診断の際は、脊椎レベルで硬膜外に漏出した液体は硬膜外を頭尾側に移動するため、 硬膜外液体貯留部位と漏出点が必ずしも一致しない点に注意。
※硬膜下血腫や水腫を合併することもある。外傷歴のない硬膜下血腫や水腫は低髄圧症候群を鑑別に挙げる。
動画で学ぶ低髄圧症候群(30歳代女性 頭痛)

▶キー画像

CSF hypovolemia syndrome

両側硬膜の肥厚もしくは硬膜下血腫を疑う所見を認めています。

CSF hypovolemia syndrome1

造影T1WIで両側の硬膜は肥厚を認め、造影効果を認めています。

CSF hypovolemia syndrome2

T2WIで両側硬膜の肥厚+硬膜下液貯留を示唆する高信号を認めています。

CSF hypovolemia syndrome4

矢状断像では橋前槽の狭小化、小脳扁桃の下垂、下垂体の腫大を認めています。

脳幹や小脳の周りの本来のくも膜下腔が失われかなり狭くなっている様子が分かります。

CSF hypovolemia syndrome6

C2/3レベルでCSF leakを疑う所見があり、これが原因で上記の現象が起こっている事が説明されます。

CSF hypovolemia syndrome7

参考)Monro-Kellieの法則とは?

▶頭蓋内容積は一定:

・脳組織容量、血管(血液量)、髄液
・Vbrain + Vblood +VCSF = 一定

▶髄液圧減少を髄液以外(血液量)で代償
・末梢の静脈の拡張、硬膜下水腫

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