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肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PE,PTE)

下肢や骨盤腔内の深部静脈に生じた血栓(深部静脈血栓症,deep vein thrombosis:DVT)が発生部位から剥離して、肺動脈に到達して閉塞することにより発症する疾患。

・急性の肺血栓塞栓症は、急性心筋梗塞、大動脈解離および破裂とともに致死的な循環器領域の救急疾患である。

・臨床症状は、呼吸困難や胸痛、全身倦怠感など。大量の血栓塞栓の場合は、ショックから突然死に至る場合もある。

・肺梗塞の頻度は10〜15%。

・発症後2週間以上経過しても血栓が残存している場合は、亜急性PTEと呼ばれることがある。6ヶ月以上経過し、肺血管の閉塞が持続固定した症例が慢性PTEと呼ばれる。

・日本では年間10万人あたり3人程度の発症。

・死亡数は年間10万人あたり0.8人程度。

・発症後10日目までの死亡率は8%。

・治療は、抗凝固療法(急性期にはヘパリン、急性期以降はワーファリン)、血栓溶解療法(ウロキナーゼ、t-PA)、カテーテルインターベンション、肺動脈血栓摘除術、下大静脈フィルター。

・慢性肺動脈血栓塞栓症は、肺高血圧症の一因であり、急性肺動脈血栓患者の約3.8%が慢性に進行するとされている。内膜摘除術により治療可能な病態であり、他の肺高血圧症と鑑別することが重要。

肺血栓塞栓症の検査所見

動脈血ガス分析

低酸素血症とこれを是正するための過換気を原因とする低二酸化酸素血症が特徴。

関連記事)血ガスの読み方の簡単な要点!見るべき3つの項目と評価方法。

心電図

急性のPTEでは右脚ブロックやV1-3のST上昇、種々の不整脈が起こる。発症後一定期間が経過すると右軸偏位やSⅠQⅢTⅢ波、胸部誘導V1-3の陰性T波が見られるようになる。

胸部レントゲン

心胸比の拡大や

  • 肺動脈の局所的な拡大(Knuckle sign)
  • 肺血管分布に一致する血管影減少(Westrmark’s sign)

が見られる場合がある。肺梗塞例では、

  • 胸水・胸膜面を底辺とする楔状の肺浸潤影(Hampton’s hump)

が存在する。

関連記事)knuckle sign、Westermark sign(肺塞栓症のX線所見)

症例 70 歳代の女性。突然の呼吸困難。

knuckle sign2012年放射線科診断専門医試験問題29より引用。

右肺動脈部にknuckle signあり。肺動脈血栓塞栓を疑う所見。

 

症例 60 歳代の女性。急激な呼吸困難

knuckle sign2008年放射線科診断専門医試験問題30より引用。

右肺動脈部にknuckle signあり。左肺の透過性は亢進しており、Westermark signを疑う所見。肺動脈血栓塞栓を疑う所見。

心エコー・ドップラ検査

極めて有用。近位肺動脈の拡大、左室と同等かそれ以上の右室拡大と壁運動低下、心室中隔の奇異性壁運動、三尖弁閉鎖不全などと、下大静脈径の呼吸性変動の消失など。

血液生化学検査

D-dimer値が500μg/L以下である場合には、除外できる。しかし担癌状態や感染、炎症など多くの病態でフィブリンは産生されるため、500以上でも診断はできない。

肺血流シンチ

肺門部方向を頂点とする楔型の陰影欠損があれば診断できる。

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肺動脈血栓塞栓症のCT所見

・第一選択。

・MDCTの発達により肺動脈主幹部や主肺動脈、区域枝肺動脈内までの血栓の描出ができるようになった。

造影CTでは血栓塞栓子を肺動脈内の造影欠損として確認できる。急性の場合は血栓は肺動脈内で浮遊しているように見える。

・慢性肺血栓塞栓症では、肺動脈から鈍角に立ち上がり、壁に接する血栓を認める。

・急性および慢性共に、右心系の拡大を認めることが多い。

・CTでは、右心系の拡大から右心不全の評価が可能。

慢性肺動脈血栓塞栓症の診断基準
  • 動脈の完全閉塞
  • 動脈壁と鈍角を成す三日月状の造影欠損
  • 血栓内の再開通
  • 造影剤で増強される動脈内のflapあるいはweb

・二次所見としては、気管支動脈系あるいは全身の動脈系の側副血行路の発達や随伴するモザイク灌流(肺動脈の慢性的な閉塞による血流低下域が肺野のX線透過性の上昇した領域として認められる)、偏心性に肥厚した肺動脈壁の石灰化など。

・副所見として肺高血圧による肺動脈本幹の拡張(33mm以上)や心周囲の液貯留など。

症例 70歳代女性 肺動脈血栓塞栓症と著名な右心系の拡大から右心不全

pulmonary thromboembolism

右肺動脈主幹に欠損あり。肺動脈血栓塞栓の所見。右房〜下大静脈の著明な拡張を認めており、胆嚢症漿膜下浮腫性変化、腹水あり。右心不全の所見。

動画で学ぶ肺動脈血栓塞栓症と深部静脈血栓症(60歳代女性)

▶キー画像
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症例 78 歳の女性。慢性腎不全にて治療中。呼吸困難,低酸素血症。

chronic pulmonary embolism2005年放射線科診断専門医試験問題21より引用。

右肺下葉では、肺動脈は伴走する気管支より明らかに細い。両側下葉には吸気・呼気CTとも斑状のすりガラス影がみられモザイクパターンを示している。そのうち相対的低吸収域では血管影が細く、高吸収域では末梢血管影がよく見える。モザイクの高吸収は呼気にてより顕在化している。右房の拡大あり。慢性肺血栓塞栓症を疑う所見。

症例 60 歳代の男性。

7 年前に心房細動と診断された。1 カ月前から胸痛を自覚し,2 日前から血痰が出現する ようになったため来院した。

pulmonary infarction2007年放射線科診断専門医試験問題69より引用。

中葉にコンソリデーションあり。肺血流シンチにて同部位に集積を認めず。エピソードからも肺梗塞を疑う所見。

症例 60 歳代の男性。呼吸困難感。

pulmonary embolism

2012年放射線科診断専門医67より引用。

肺換気に対して、血流が低下している。肺血栓塞栓症を疑う所見。

症例 30 歳代の男性。呼吸苦。統合失調症にて抗精神病薬を服用中。

pulmonary embolism spect2014年放射線科診断専門医試験問題71より引用。

両側末梢優位に血流欠損あり。肺動脈血栓塞栓症を疑う所見。

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