救急当直や病棟当直をしていると、酸素状態が悪い患者さん意識障害の患者さんなどに血ガス検査をすることがありますが、採ったはいいが読めないのは困るので、まとめてみました。
血ガスデータの簡易的な読み方
血ガスのデータには無駄に?たくさん項目があり、何が重要なのかわかりにくいですよね。
NaやKなどは正常範囲から高い(H)か低い(L)か答えを書いてくれているので、高いか低いかを見ればいいだけです。
血液ガスで重要なのは、酸塩基平衡異常の診断とその鑑別です。
PaO2やSaO2も実はいらないですよね。
指でサチュレーション測ればわかるじゃないですか!
(もちろん確認にはなりますが)
呼吸器・循環器に関するデータ
- PaO2:動脈血酸素分圧(基準値80~100Torr)
- SaO2:動脈血酸素飽和度(基準値 96±2%)
- PaCO2:動脈血二酸化炭素分圧(基準値 40±5Torr)
酸塩基平衡に関するデータ
- PaCO2:動脈血二酸化炭素分圧
- pH:水素イオン指数(基準値 7.40±0.05)
- HCO3-:重炭酸イオン(基準値 24mEq/l)
- BE:ベースエクセス(基準値 0±2mEq/l)
step1 PHを見る。
PH < 7.40±0.05→アシデミア
step2 PaCO2とHCO3-を見る。
PaCO2 40±5Torr 、HCO3- 24mEq/l という正常値と比べて、どちらが変化しているかをチェック。
①アルカレミア(PH > 7.45)の場合
- PaCO2 < 35Torr のとき、 →呼吸しすぎ=過換気など。
- HCO3- > 24mEq/l のとき、 →HCO3-溜まりすぎ=H+などを喪失=激しい嘔吐など。
②アシデミア(PH < 7.35)の場合
- PaCO2 > 45Torr のとき、 →二酸化炭素溜まってる=ちゃんと呼吸できてない=肺炎など
- HCO3- < 24mEq/l →変な酸が溜まってるか、HCO3-を回収できてない=慢性腎不全、尿毒症、糖尿病性ケトアシドーシス、下痢など。
で、ほとんどの救急の現場で頻度が高い疾患はとりあえず、ここまで見れたらよい。
実際一番多いのは肺炎や呼吸不全で二酸化炭素が溜まっているという状態でしょうか。激しい嘔吐や、下痢で血ガスを採ることはまれだと思われます。
これ以降はstep2までで説明できない場合、意識障害がある場合、重症な貧血がある場合などは以下を考える必要があります。
step3 アニオンギャップを計算する。
これを計算することで、代謝性アシドーシスのより細かい病態がわかる。
AG >14 をAG上昇の代謝性アシドーシスといい、ケトン体などの変な酸が増えている状態。つまり、糖尿病性ケトアシドーシスや、乳酸性アシドーシス、尿毒症性アシドーシスなど。
※乳酸については、血ガスの機械によってはデータとして出してくれるものもあり。
step4 代償されている範囲を予測する。
血中の酸塩基のバランスが崩れると、体はバランスを保とうと、肺でCO2を出す量を調節したり、腎からのHCO3-の排泄の量を調節したりする。これを代償といい、その代償が適切かどうかを血ガスのデータからチェックすることができる。
ただし肺による調節はすぐに行われるが、腎による代償作用には数日かかる。
求めた値が適切じゃない場合は、混合性の酸塩基平衡障害があることになる。
- 呼吸性アシドーシス ΔPaCO2=1.2×ΔHCO3-
- 代謝性アルカローシス ΔPaCO2=0.7×ΔHCO3-
以内におさまっているかをチェックする。収まっていれば代償されている。
収まっていなければ混合性酸塩基平衡障害と判断する。
腎による代償には時間がかかるため、急性、慢性で代償の程度が異なるため、以下の式を用いる。(急性とは腎での代償が起こる以前の12~24時間以内をさす)
- 急性呼吸性アシドーシス HCO3-=0.1×PaCO2+21 (限界値30)
- 急性呼吸性アルカローシスHCO3-=0.2×PaCO2+17 (限界値18)
- 慢性呼吸性アシドーシス HCO3-=0.35×PaCO2+11 (限界値42)
- 慢性呼吸性アルカローシスHCO3-=0.5×PaCO2+5 (限界値12)
限界値を越えなければ、代償されいている。限界値を越えると別の原因による酸塩基平衡障害があるということになる。
ここまで考えないといけないことは実際の臨床の現場ではまれです。まずはSTEP2まででほとんどの病態は説明可能です。
説明つかない場合などには、考える必要がある程度に考えて、「血ガスは簡単!」と血ガスアレルギーを取り除くことが第一です。
簡単に血液ガスの異常には4つのパターン
パターン①呼吸性アシドーシス
換気がうまくいかず二酸化炭素を出せない状態。
PaCO2 > 40Torr(二酸化炭素が溜まるので)
PH < 7.35 (その結果酸性に傾くので)
例)肺炎、呼吸不全、COPD、ギランバレー症候群
パターン②呼吸性アルカローシス
換気がうまくいきすぎて(しすぎて)、アルカリ性に傾く状態。
PaCO2 < 40Torr(過換気により二酸化炭素が失われるので) PH > 7.4 (その結果アルカリ性に傾くので)
換気がしすぎて=正常よりも過換気の状態。
例)呼吸困難で過換気、精神的原因で過換気など。
パターン③代謝性アシドーシス
体内で産生される酸が増加したり、HCO3-が再吸収されない状態(HCO3-は酸を中和するが、それが失われると酸が中和されずに蓄積される。)
PH < 7.4
HCO3- < 24mEq/l PaCO2は変わらない。
例)慢性腎不全、尿毒症、糖尿病性ケトアシドーシス、下痢
パターン④代謝性アルカローシス
酸を中和するHCO3-が過剰に溜まる状態。逆に言えば、H+が失われる状態。
PH > 7.4
HCO3- >24mEq/l
例)激しい嘔吐など